第1章 歯科業界全体の現状
5. 本章のまとめ
以前の歯科医院経営は、「患者さんは待っていれば来るもの」として捉えていた。実際、歯科医 師数と医療需要の関係から見ても、この認識で患者数を確保することは可能であった。しかしな がら、歯科医院業界の外部環境は、「患者数の減少」「歯科医療費の伸び悩み」「歯科医師数の増加」
といった状況に変化し、マクロ的に歯科医師過剰状態となってしまった。また、以前は患者のほ うも歯科医療に関する情報を得る機会が少なかったため、歯科医師を選ぶことは少なかったが、
インターネットなどの普及により、患者が歯科医師についての口コミ情報などを得ることが可能 になり、「待っているだけで患者が来る」という認識は通用しなくなってきた。つまり、歯科医院 は患者に選ばれる時代になってきた。
これらを背景に、歯科医院の経営状態は徐々に悪化し始めた。そこで、歯科医院はコストの削 減に主眼をおいて収益の確保を目指したが、今後も続くと予想される歯科医師の増加と患者の減 少に対しての対応としては限界がある。歯科医院経営は、次のステップとして、競争に打ち勝ち、
売上を伸ばしていくためには、患者に対して自医院をプロモーションしていくことが重要であ るが、歯科業界は広告規制などにより自由なプロモーション活動ができず、限られた範囲で戦略 を考えていく必要がある。また、歯科治療に対する患者ニーズは、基本的にはネガティブな要望 であり、本質的に患者は歯科医院には行きたくないと考えていることから、歯科医院は「かかり つけだから」という理由で選ばれることが多い。このような状況で重要になってくるのは、患者 維持のための関係マーケティングということになる。
患者と良い関係を築いていくためには、基本的な治療に関するスキルはもちろん重要であるが、
それと共に「治療に時間を取らせない」「診療内容や料金について説明し、理解を得る」といった 患者満足が重要なポイントとなる。また、院内の清潔さやスタッフの接客態度などのサービス業 一般において重要な顧客満足要因も同様に重要になる。
そのためには、良いスタッフの確保と育成が重要となってくる。しかしながら、現状での経営 者のスタッフに対する意識は低く、スタッフの離職率が高くなってしまっている。まずは、経営 者のスタッフに対する意識を変革していくことが必要であろう。
一方で、8020運動の取組や、近年の健康や美容に対するニーズの高まりを機会として如何に捉 えるかも重要なポイントである。美容歯科などに対する要望は、治療に対するネガティブな要望 ではなく、「綺麗になりたい」といったポジティブな要望である。そのため、患者から見て割高に なる自費診療であっても、診療代を支払う可能性は高い。
以上のように、歯科業界の現状は厳しい状況だが、改善の余地は多く存在しており、的確な診 断を行うことにより、歯科医師の経営状況は上向きに変わるだろう。次章では、個別の診断事例 を紹介していく。
付録1
※厚生労働省ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/topics/0106/tp0604-1.html)より抜粋
医療広告規制緩和のポイント
平成13年4月
1 広告規制の概要
(1)基本的な考え方
◎医療に関する広告については、利用者保護の観点から、次のような考え方に基づき、限定的に認め られた事項以外は原則として広告が禁止されています。
1 医療は人の生命・身体に関わるサービスであり、不当な広告により見る側が誘引され、不適 当なサービスを受けた場合の被害は、他の分野に比べ著しい。
2 医療は極めて専門性の高いサービスであり、広告の受け手はその文言から提供される実 際のサービスの質について事前に判断することが非常に困難。
(2)制度の概要
◎原則として、医療機関、医業等に関する広告は禁止されています。
◎事実や客観的な情報として個別に定められた事項についてのみ、広告できることとされています。
→ 具体的に広告し得る事項については、2、3を参照して下さい。
◎広告の方法及び内容に関して、次のとおりの規制が行われています。
• 虚偽広告の禁止
• 比較広告の禁止
• 誇大広告の禁止
※広告規制に違反した場合
医療法(昭和23年法律第205号)第73条の規定により、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下 の罰金となります。
(なお、詳細については、各都道府県の医務主管課までお問い合わせ下さい。)
2 医業等に関して広告し得る事項
法律
(医療法第69条)
• 医師又は歯科医師である旨
• 診療科名(政令で定めるもの、厚生労働大臣の許可を受けたもの)◎下記参照
• 病院又は診療所の名称、電話番号及び所在地
• 常時診療に従事する医師又は歯科医師の氏名
• 診療日又は診察時間
• 入院設備の有無
• 紹介することができる他の病院又は診療所の名称
• 診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報を提供することができる旨
厚生労働大臣の定める事項(告示)
(平成13年厚生労働省告示第19号)
• 保険医療機関、救急告示病院、労災保険二次健診等給付病院又は労災保険二次健診等給付 診療所等である旨
• 厚生労働大臣の定める施設基準に適合する保険医療機関である旨(別表1参照)
• 指定居宅サービス事業者又は指定介護療養型医療施設である旨
• 財団法人日本医療機能評価機構が行う医療機能評価の結果
• 予約診療の実施
• 休日診療の実施
• 往診の実施
• 在宅医療の実施
• 訪問看護に関する事項
• 健康診査の実施
• 保健指導又は健康相談の実施
• 予防接種の実施
• 薬事法に基づく治験に関する事項
• 費用の支払方法又は領収に関する事項
• 入院患者に対して提供する役務及びそれに要する費用
• 医師又は歯科医師の略歴、年齢及び性別
• 医師、歯科医師、薬剤師、看護婦その他の従業員の員数
• 病床数又は病室数
• 共同利用をすることができる医療機器に関する事項
• 病室、機能訓練室、食堂又は浴室に関する事項
• 対応することができる言語
• 医療機関に併設されている介護老人保健施設又は医療法人の行うことができる業務に関する 施設の名称
• 紹介することができる他の指定居宅サービス事業者、指定居宅介護支援事業者、指定介護老 人福祉施設、指定介護療養型医療施設又は介護老人保健施設の名称
• 駐車設備
• 都道府県知事の定める事項
※下線は今回の改正で追加されたもの
◎標榜できる診療科名(医療法第70条、医療法施行令第5条の11)
(医業)
内科、心療内科、精神科、神経科、神経内科、呼吸器科、消化器科、胃腸科、循環器科、アレルギー 科、リウマチ科、小児科、外科、整形外科、形成外科、美容外科、脳神経外科、呼吸器外科、心臓血管 外科、小児外科、皮膚泌尿器科、皮膚科、泌尿器科、性病科、こう門科、産婦人科、産科、婦人科、眼 科、耳鼻いんこう科、気管食道科、リハビリテーション科及び放射線科
(歯科医業)
歯科、矯正歯科、小児歯科及び歯科口腔外科
個別に厚生労働大臣の許可を受けた場合のみ、標榜することができる診療科名 麻酔科
3 主要な個別項目の概要
◎診療録その他診療に関する諸記録に係る情報を提供することができる旨
○カルテ等の診療情報の提供について、関係者の自主的な取り組みが進められていることから、医業 等に関して広告できる事項として新たに広告できることとなりました。
◎財団法人日本医療機能評価機構が行う医療機能評価の結果
○財団法人日本医療機能評価機構が行う審査を受けた結果、認定を受けた旨を広告できます。
※個別具体的な審査項目は、広告できません。
◎健康診査の実施(個別の健診名について広告できることとなりました)
○実施する健康診査の種類、対象者や部位の付記も可能です。
(例)乳幼児健診、胃がん検診
※医学的・社会的に評価が定まっていないものは、広告できません。
(例)遺伝子検査
※「健康診査」とは、医師等が診断・治療を目的とした通常の診療とは別に、その有する医学的知識を 用いて健康診査を行うことを言います。
◎保健指導の実施(従来の健康相談に加え、保健指導についても広告できることとなりました)
○対象者や指導対象を付したものも広告可能です。
(例)乳幼児保健指導、禁煙指導
※症状、疾患名、治療行為等や、医学的・社会的に評価が定まっていないものは広告できません。
※新たに追加された「保健指導」とは、主として予防的なものであって、医師等が診断・治療を目的とし た通常の診療とは別に、その有する医学的知識を用いて相談者に対し、健康の保持増進のための日 常生活上の指導等を行うことを言います。
◎予防接種の実施
○予防接種法(昭和23年法律第68号)において規定されているもの及び薬事法(昭和35年法律第14 5号)において承認されているワクチンを使用した予防接種についてのみ広告できます。
◎薬事法に基づく治験に関する事項
○当該治験薬の対象となる疾患名及び治験を実施する医療機関名などを広告できます。