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第 4 章 コミュニティ心理学の視座を活かしたスクールカウンセラー活動

第 1 節 本研究の成果と社会的意義

本研究では、第 1章において、文部科学省が「チーム学校」という取り組みの中でSCも常勤 勤務となり、多くの職種の人々が協働して子どもを支援することが検討されている現在、日本に おいて共通した SC 活動のスタンダードモデルが存在していないことが問題であり、日本の学校 現場の特徴に即した SC 活動のスタンダードモデルの構築が必要であることを示した。そして、

日本におけるSC活動のスタンダードモデルを構築していく際には、全米SC協会(ASCA)が発 達理論に基づいて2003年に制定したASCAナショナルモデルが参考となることを示した。

第2章では、コミュニティという言葉の定義やコミュニティ心理学の独自性を整理し、コミュ ニティ心理学の視座を持った実践研究を分析することで、これまで蓄積されてきたコミュニティ 心理学の概念がSC活動に有効であることを示した。

第3章では、SC活動のスタンダードモデルの構築に際して、理論だけではなく、実践に基づい たモデルを構築するために、滋賀県で行われている複数のSCが曜日ごとに勤務することでSCが 学校に常駐する取り組み(常駐型)の実践をまとめ、常駐型SCに対するアンケートも行い、スタ ンダードモデルの基礎となる根拠を見出した。

第4章では、第2章で整理したコミュニティ心理学の概念と第3章で見出した実践に基づく根 拠を融合し、今後の SC の在り方をモデルとして示した。本研究において見出した SC 活動のモ デルは、今後 SC の常勤勤務が拡大していく中で、滋賀県だけではなく他の地域でも有効である と考える。

本研究においては、日本において共通した SC 活動のスタンダードモデルが存在していないこ とが問題であるとの問題意識に基づいて研究を行い、コミュニティ心理学の枠組みから SC 活動 全体を包括的にとらえ直し、一般化できるSC活動モデルの基本理念と軸となる活動を構築した。

さらに、SC活動をコミュニティ心理学の概念である「予防」という視点からとらえなおし、各 活動を行う際により広義の予防を検討することでより有効な支援を行うことが可能であることを 明らかにした。予防という視点から SC 活動全体をとらえることは、これまで例がなく、本研究 の独自性にあたる部分である。また、「チーム学校」として、SCも含めた多くの専門職が協働し て子どもや保護者、学校を支援していく方向で検討されている現在、「チーム学校」の取り組みに 近い形態で実践を行っている滋賀県の取り組みをまとめ、そこから一般化することのできる活動 モデルを示したことも本研究の成果である。

本研究では、SC制度が、1995年にSC活用調査研究委託事業として開始し、2001年度からは SC等活用事業となり、その実践が約20年蓄積されているにもかかわらず、日本全体で認識され るスタンダードモデルが示されていないことについて一つのモデルを示したという意味で意義が ある。行うべき活動に加えて、SCが持つべき基本姿勢を示したことで、SCが目指すべき方向性 を示すことができた。スタンダードモデルや基本理念が明確に示されていないことは、教育現場

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で活動している SC にとっては、大変不安なことであった。特に、初めて教育現場で活動を行う SCにとっては、学ばなければいけない範囲すらわからない状況であった。スタンダードモデルが 広く認識されれば、最低限どの部分の知識を有し、どのような方向を目指して活動すれば良いか が明確になる。本研究で行ったスタンダードモデルの構築は、そのような意味で教育現場におい て日々実践しているSCのエンパワメントとなる可能性がある。

当然、本研究で示したモデルは、この活動を全て行わなければいけないという性質のものでは なく、多くの実践研究などを経て修正が加えられていくことで質を高めていくことのできるもの である。さらに、あくまでもスタンダードモデルとして、活動し得る全体像を示すことを目的と しており、SCの専門性や学校のニーズなどによって、必要な活動を選んだり、優先順位をつけて 活動したりすることができるモデルである。

さらに、スタンダードモデルが示されれば、最低限それらの活動を行うことができることが求 められるということでもあり、今後常勤勤務となり、SCの数が増えていく場合にも、SCの最低 限の質の保証を行うことにもなる。筆者は、滋賀県臨床心理士会のスクールカウンセラー担当理 事として研修会の運営を行う立場でもあったが、現在のSC制度では、毎年20名近くの新任SC が参入することとなる。滋賀県では、1年に6回のSC 研修会に加えて、滋賀県内を湖北ブロッ ク、湖西ブロック、湖南ブロック、湖東ブロックの4ブロックに分け、各ブロック2名のスーパ ーヴァイザー(以下SV)がスーパービジョンを担当する形態をとっている。滋賀県で新任となる SCには、年に数回SVが個別にスーパービジョンを行うこととし、必要に応じてSVが学校に出 向くことも可能な形態で実施している。これらのように、研修会やスーパービジョンによって、

滋賀県での新任 SC となる人々の支援を行ってきたが、年に数回の研修会とスーパービジョンだ けでは不十分であると感じていた。スタンダードモデルが存在していれば、学ぶべき範囲も明確 となり、SC として活動する前に各分野の知識を有しておくことが可能になる。SC にとっても、

学ぶべき範囲が明確となり、そのことで学校にとっても即戦力として活動できるという意義があ る。さらに、前提条件のいくつかが十分に整っていない場合、その前提条件を整えるところから 活動する等、活動の指針とすることも可能である。

そのような意味でも、SC活動のスタンダードモデルが広く認知を獲得していくことが必要であ る。筆者は現在まで他の SC と共に、常駐校での活動について学会発表を行ったり、個人として 学会誌における発表を行ったりしてきた。今後は、本研究で見出した SC 活動のスタンダードモ デルについても、広く認知を獲得していくことを目指して、学会発表や学会誌での発表などを行 っていきたい。

第 2 節 本研究の限界と今後の課題

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コミュニティ心理学の枠組みから SC 活動全体を包括的にとらえ直したことが本研究の最大の 独自性である。文部科学省が「チーム学校」というコンセプトのもと、チーム支援を志向してい る中で、SCは個別カウンセリングのみの活動ではなく、予防的な視点を持ち、学校システムや地 域システムなどより広いシステムとの関わりを行うことが必要になる。本研究では、このことを 複数の SCが1校に交代で常駐する取り組みを通して検討した。一方、従来の心理臨床の本質で もある個別のカウンセリングで SC が行い得る支援も存在する。子どもが様々な人間関係の中で 自尊感情が傷ついている場合など、子ども本人を個別カウンセリングの中でエンパワメントする ことで子どものエネルギーを取り戻したり、SCとの間で受容的でサポーティブな人間関係を体験 することで、その体験が子どもにとって人間関係の修正体験として作用し、人間関係を築いてい く力を育み直したりすることも SC の役割である。しかし、本研究では、これまで言及されるこ との少なかったコミュニティ心理学の視座を活かした SC 活動として、予防的な視点を持ち、学 校コミュニティや地域コミュニティなどより広いコミュニティシステムとの関わりを行うことを 中心に検討を行ってきた。そのため、SCが行う個別カウンセリングの意義については十分に言及 することができなかった。今後の研究においては、SCが個別カウンセリングで担う役割も含めた モデルの構築を目指していきたい。

また、本研究で構築したコミュニティ心理学の視座を活かしたスクールカウンセリングモデル が他の地域でも広く有効であるかについては、今後の検討を待ちたい。

さらに、本研究では、全国で先駆的な取り組みとなる複数の SCが1校に交代で勤務する常駐 型の取り組みを通して有効な SC 活動を検討した。この際、全国でも先駆的な取り組みであるた め、アンケートの対象者が12名であり、有効回答数が10名分となった。そのため、統計的な特 徴から検討することは難しく、SCが重要と考えている活動や学校からニーズのある活動の順序性 を示すことが限界であった。今後、「チーム学校」という取り組みが始まると、常勤として教育委 員会に所属し 1人のSC が複数校を担当する形態(常勤型)での常勤になる見通しである。本研 究で検討した複数のSCが1校に交代で勤務する常駐型の取り組みと形態は違うが、常勤型とし ての事例が大幅に増加することとなる。常勤型は 1人で複数校担当する形態であり、1 校に常に SCがいるわけではないが、拠点となる場所に常にいて、各学校への配置時間も本研究で定義した 週1回程度配置型よりも増加すると考えられる。今後、そのような常勤型が、週1回程度配置型 や常駐型とどのように違うのかについて検討することによって、勤務する頻度や時間数の影響や、

「常に学校にいずれかの SC がいる」形態と「学校に常にいるわけではないが拠点に常にいる」

形態の影響の違いを見出すことができる。これらの分析から、学校現場で有効な SC 活動を検討 することが可能になる。今後は、「チーム学校」としての実践が全国的に展開されるようになり、

統計的な特徴の分析も可能になる。そのような統計分析に基づく研究を行うことを自身の今後の 課題とし、さらに多くの研究によって検討を加えられていくことも期待したい。