第 4 章 コミュニティ心理学の視座を活かしたスクールカウンセラー活動
第 5 節 コミュニティ心理学の視座を活かしたスクールカウンセラー活動
教員との協働(コラボレーション)・コンサルテーション アセスメント・プランニング・各部会への参加 いじめ事案への対応・心理授業などの心理教育 不登校の子どもへの支援のプログラミングや家庭訪問など
学校の支援システム構築に関するコンサルテーション
特別支援(子どもや保護者へのアプローチと支援のプログラミング)
子どものカウンセリング・保護者面談 SC 通信の発行・養護教諭との連携
緊急時に行う活動
緊急支援(子どものカウンセリ ング・保護者面談・管理職との コンサルテーション・保護者説 明会参加・アンケート実施のコ
ンサルテーション等)
選択的に行う活動
相談室開放 学年全員面談
基本理念
システムや環境に働きかける・原因探索的な視点ではなく、支援志向的な視点
「成長モデル」と「修理モデル」の両面から理解する・予防的な活動の重視 間接支援(支援者支援)やチームとしての支援を重視する
エビデンスに基づく支援を志向する・新しい変化に対して開かれている 子どもに対するソーシャルサポートの充実を目指す
必要時に行う活動
教員研修・ケース会議への参画・小中連携 関係機関連携・小学校での活動・生徒会との連携 アンケート実施(健康度アンケート、ニーズ調査等)
PTA との連携(保護者向けの研修等)・心理検査 学校保健委員会等への参加
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日本では、近年「学校に入った SC は、個人と同時に学校というコミュニティの特性を見立て てその構造に応じる工夫を重ね、すでにある資源の活用、予防と成長促進、支援ネットワークの 形成、教師との協働を重視して活動し、必然的にコミュニティ・アプローチの方向に向かってき た」(窪田、2009a)と言われるように、コミュニティ心理学の視座を活かしたコミュニティ・ア プローチが注目されている。SCの活動をコミュニティ心理学の枠組みでとらえ直していくために は、第2章第1節第5項で述べた山本(2000)がコミュニティ心理学の発想をもった心理臨床家 の基本姿勢として挙げた以下の 12 項目と比較することで学校での活動においてコミュニティ心 理学の発想が活かされていることが明らかになるため、比較して検討する。それぞれの基本姿勢 に相当するSC活動を表記すると表10のようになる。なお、表10は飯田が実践から独自に分類 したものである。
表10 コミュニティ心理学的臨床の基本姿勢と各基本姿勢に該当する具体的SC活動(飯田作成)
79 コミュニティ心理学の発想をもった
心理臨床家の基本姿勢(山本、2000)
コミュニティ心理学に基づく各基本姿勢を持った SC の活動
1 心的内界至上主義ではなく、心的内界の要因 と同時に社会的環境の要因をも重視する
コンサルテーション、アセスメント、プランニング、教員との協働、関 係機関との連携、PTA との連携、保護者向けの研修、保護者支援の場の 設定、教員研修、学校の支援システム構築に関するコンサルテーショ ン、各部会への継続参加、ケース会議への参画、小中連携、いじめ事案 への対応(アセスメント、コンサルテーション)
2 個人の心的内界に介入するよりも、社会的・
コミュニティ的介入の方が効果的と考える
3 予防の視点を重視する 心理授業等の心理教育、相談室の開放、SC 通信発行等による啓発
(健康度の高い子どもをより健康にするような予防的介入)
4 心理的悩みの軽減よりは、むしろ社会的能力 を強化することを目標とする
5 コミュニティ心理学的心理臨床家の土俵は、
地域社会の人々が生活している場である
関係機関との連携、PTA との連携、保護者向けの研修、小中連携、間接 支援 (直接支援だけでなく、状況を生態学的視座から見立てること、
環境調整を行うことを含む。SC も学校スタッフの一人であり、生活の 場での支援でもある。)
6 臨床家の方から来談者の方へ積極的に近づ いていく(seeking mode)
全員面接、小学校での活動、校内巡回、不登校ケースへの家庭訪問等の アプローチ
7 クライアントを支えているのは地域社会の 人々である(地域社会中心主義)という認識 のもとに、地域社会にいる非専門的協力者を 大切にする
学校保健委員会等への参加、生徒会との連携、関係機関との連携、PTA との連携、保護者向けの研修(支援者支援)
8 地域社会の人々のニーズに敏感に新しいサ ービスを模索していく
PTA 対象の研修会実施や、学校が行うコミュニティ・スクールの取り組 み、保護者会実施など新しい活動の模索
9 家庭、近隣社会、職場、学校、居住環境、騒 音などの都市環境、生活環境、人間環境、社 会システムの問題に広く目を向け、様々な専 門家との協同の中で支援を展開する
コンサルテーション、アセスメントとプランニング、教員との協働、
関係機関との連携、学校の支援システム構築に関するコンサルテーシ ョン、各部会への継続参加、ケース会議への参画、小中連携
10 メンタルヘルス教育・啓発活動等の予防を行 う
*3,4 と同じ 心理授業等の心理教育、相談室の開放、SC 通信発行等に よる啓発(健康度の高い子どもをより健康にするような予防的介入) 11 メンタルヘルス問題は広範囲の社会問題と
関係しており、問題を明確化するデータを提 供し、改善策を示しながら上位レベルの社会 問題にコミットしていく「研究データに基づ く介入」を行う
教育相談にまつわる子ども対象のアンケートにメンタルヘルスのスク リーニング項目を入れて結果を検討する、年に数回教員を対象に SC 活 動についてのアンケートを行う、子どもや保護者対象のアンケートを 行いその結果に基づく SC 活動の検討
12 自然観察的(naturalistic )、生態学的
(ecological)研究法を活用する
校内巡回、コンサルテーション、アセスメントに学校の定期テストや提 出物・子どもの作った作品などの活用
このように、SCの活動はコミュニティ心理学の視点から説明可能であることが多い。さらに、
コミュニティ心理学の視点を活かした「心理臨床家」というだけではなく、コミュニティ心理学 の視点を活かした「SC」である条件としては、どのようなものがあるだろうか。伊藤(2007)は、
学校臨床においては、子どもの成長を願って努力を惜しまない教師、支えあう同年代の多くの子 ども、長時間にわたる日々の学校生活などの治療機関には見られない支援があり、心理臨床が蓄 積してきた支援の原則を援用しながら、学校の場に特有の要素をうまく生かす「学校という場を 活かした支援」が基本であると述べている。学校自体を一つの「学校コミュニティ」としてとら え、そのコミュニティの状態について見立て、持っている資源を有効に活かしながらその学校コ ミュニティの中にある、学級コミュニティ、学年コミュニティ、あるいは教室に入りにくく別室
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で過ごす子どものコミュニティなどの各コミュニティそれぞれについての支援やそれぞれの関係 性なども見ながら「学校という場を活かした支援をしていくこと」、それがコミュニティ心理学の 視点を活かした SCの特徴であると考えてよい。そして、伊藤(2007)は学校の場を活かした支 援を考えていくにあたって、学校現場と治療機関の違いを挙げている。学校現場では、目的が教 育であり、対象は健康な子ども集団であり、中心となるスタッフは教員である。治療機関では、
目的が治療であり、対象は治療を必要とする個人であり、中心となるスタッフは医師・看護師・
パラメディカルスタッフであるという違いがある。また、鵜養(2011)は、SCは学校という場と 個人に関する見立てを手がかりとして、学校現場が自分に何を求めているかを知り、またその現 場の特徴を理解しつつ、そこで教育を受けている子どもたち一人一人の成長発達にかかわってい くことが仕事であり、「支援の必要な子ども、保護者、教員に個別に関わりつつ、学校という場の 力や、集団力動を熟知してそれを活かしていく能力や学校コミュニティ自体が不健康な状態にあ るときには、そこが健康な場となるよう、どこにどのように働きかけていくかを検討でき、介入 していくことが必要である」と述べている。さらに、千原(2011)は、SCは学校というコミュニ ティに参画して心理臨床活動を行う場合、「配置された学校のニーズに応じて、臨床心理面接、臨 床心理査定、臨床心理地域援助を行い、さらに臨床心理研究をし、学校コミュニティにとって最 も適した必要性の高い活動をすることが求められる」と述べている。
これらに共通する概念としては、学校を一つの「学校コミュニティ」として考え、その中に含 まれるよりミクロなシステムとしての個人の課題への援助や、ミクロなシステム同士である教員 同士の関係性も支援対象として考え、学校コミュニティよりさらにマクロなシステムである地域 コミュニティの状況や地域コミュニティと学校の関係、さらにその周囲に広がる世の中の文化な ど、さまざまな階層のコミュニティに着目し、それらのコミュニティ同士の関係やそれぞれのコ ミュニティの中で生じる課題なども支援対象として考える視点がある。このように、学校を一つ の場(学校コミュニティ)としてとらえ、階層的につながるさまざまな人や組織のつながりも意 識しながら、学校の場を活かした支援を行っていくことが、コミュニティ心理学の視点を活かし たSCには必要である。
さらに、今回の研究によって検討してきたコミュニティ心理学の視座を活かした SC 活動の図 式化を試みる(図5)。
コミュニティ心理学の視座を活かした SC 活動モデル