• 検索結果がありません。

本研究の成果と意義

ドキュメント内 博士論文 (ページ 66-69)

62

5 総括

63

的な学習の時間などのように教員同士で話題が共有しやすい領域を題材にしたり,授業の設計には 言及せず,共有しやすいテーマを決めて対話をすることに留める場合も多々ある.そのような中で,

本研究では,第3章の実践において,複数の教科(技術科・美術科)の教員が協力して,ある特定 の教科(技術科または美術科)の授業を設計することが可能であることが明らかになった.ただし,

教科を超えて生徒の思考を多角的に予測するためには,授業の方略を視覚化して共有したり,新出 の概念を思考活動によって得ることができる学習場面を取り上げたりすることが重要である.

5.1.3 時間の制約:限られた時間で学び続けるための用具や方法

多忙な中で授業研究に取り組む時間を如何に捻出するか,という問題は,研修で習得した設計技 術や研究成果を継続的に活用することを保証できるかどうかに関わる.また,短い時間の中で授業 研究に取り組むことができる研究方法が求められるが,成長に影響しない枠組みであれば取り組む 意味はない.第4章の実践では,限られた時間に授業を改良するだけでなく,教員同士の関わり方 や授業の捉え方が変容するきっかけを得るためには,即時的相互通信機能(たとえばインスタント メッセンジャーアプリ)を用いて複数の異なる授業認知をその場で共有し,それを複数回継続する ことが有効であることを示した.なお,第4章では特定の協同開発者1名が継続的に関わっていた が,第2章,第3章のように同僚間でチームを組んで負担を分担しながら継続性を担保することも 考えられる.

5.1.4 新たな制約への対応

第2章から第4章の3つの制約を考慮することで実現できることは,勤務校に根ざした分散的な 学びを低予算で行うことが可能になるということである.

研修に要するコストとして,時間と同時に予算の制約も生じる.教員研修予算が大幅に削られた 都道府県では,教育センターに教員を集めるための交通費を支出するよりも,講師である指導主事 の旅費を支出するほうが効率的であるため,訪問研修が支持されている(千々布 2016).千々布は,

研修を集合型で行うのではなく,学校現場に分散化することは,日々の実践の文脈に根ざした研修 を行うことができたり,同僚と研修の成果を共有しながら実践を継続することができたりするとい うメリットがあると捉えている.また同氏は,初任者研修の日数が減りつつあるが,2・3年目研 修を新設し,初任者研修を複数年化させる自治体も多いと報告している.本研究の第2章から第4 章までで提案している研修は,学校現場での実践が可能であることと,採用1〜3年目(第4章の 事例については非常勤講師4・5年目)での実践を踏まえており,研修のコストの削減と継続的な

64

実践を願う自治体の需要に応えることが可能な枠組みを持っていると意義付けることができる.

5.1.5 研修を設計する上で3つの制約をクリアするための技術

本研究の実践により,研修を開発する際の3つの制約をクリアすることが可能であることがわ かった.これらをさらに整理すると,3つの制約をクリアするためには,研修の構造に下記の2点 の特徴をもたせることが有効ではないかという実践的仮説を挙げることができる.

1つ目は,繰り返しの構造である.これは,主に,第2章と第4章の取り組みから整理できる.

第2 章では,5.1.1でも述べたように,初任期の教員チームが順番に授業を担当し,協議を繰り返 す中で,自分自身の取り組みたいテーマとチームで取り組むべきテーマとの関わりが明確になるに つれ,チーム全体の研究意欲が高まった様子がみられたが,第2章の実践ではそれらの変化が3回 目の研究会(協議会)から確認できるようになった.第4章の実践では,全7回の試行のうち,5 回目の実践で授業担当者が新たな認知を納得できる形で獲得できるよう,協同開発者が支援できる ようになった.このプロセスに中堅教員や熟練教員が関わることができるようにすることによって,

変化のスピードを加速化させることができるかもしれないが,本研究の背景で既に述べたように,

全ての初任期教員が中堅教員や熟練教員からの支援を十分受けることができる環境で勤務できる とは限らない.初任期教員を中心としたチームによる学びを期待するためには,研修で一定の学習 プロセスが繰り返し起こるように設計することが重要である.

2つ目は,多様性を活かす構造である.これは主に,第3章と第4章の取り組みから整理できる.

第3 章では異なる教科の教員が設計に参加できるように,「わざカード」やカードシミュレーショ

図5-1 本研究の構成と結論のイメージ図

65

ンを導入したり,授業研究で取り上げる題材を工夫したりすることによって,生徒の反応の予測や 教材提示の方略に幅が広がる様子が確認された.第4章でも授業の教科内容を専門とする教員とそ うでない教員とが.授業中に学生の学習状態に対する異なる見解を共有した際に,双方の学習が生 じ,新たな認知と方略を見出すことができた.

以上のことから,繰り返し学習活動が起こるように研修を設計することと,参加者の多様性を活 かす形で設計することは,初任期の教員でも日常的な教育実践の中で自ら学び続けるための研修を 開発する技術として採用できる(図5-1).

ドキュメント内 博士論文 (ページ 66-69)

関連したドキュメント