考察
6.2 本研究の応用例
本研究で取り組んだ 3 つの活動を支援する手法における応用例について,以下で述 べる.
6.2 本研究の応用例 53 ユーザが新たにサービスを利用した際の情報推薦による活動支援
ユーザ間に共通する嗜好が見つけられない別の例として,これまでサービスAを利用 しているあるユーザaが,新たにサービスBを利用する場合がある.サービスBでは,
ユーザaの情報利用履歴がないため,推薦ができない.しかし,本研究で提案した手法に おけるユーザの嗜好は,本質的にサービスに依存しないと考えられる.そのため,サービ スBでのユーザaの嗜好をサービスA での情報利用履歴から生成したもので代用するこ とで,推薦を行なえることが期待できる.
大画面デバイスにおけるグループワークでの情報分類による活動支援
テーブル型に代表される大画面ディスプレイを用いてグループワークが行なわれること を考える.グループワークには,ある問題に対してグループ内で議論する作業と,議論の 内容をまとめる作業といったように複数の作業がある.グループメンバーがグループワー クの作業に関連する情報を開いていくことが想定され,作業に利用した全ての情報を把握 している人がいないことが考えられる.このため,グループワークの各作業で利用した全 ての情報を作業ごとに集約させることが手間となる.しかし,ユーザから見える情報の割 合を利用することで,情報の自動分類が期待できる.
漸進的な作業における利用情報の予測による活動支援
たとえば,ユーザがデザインパターンが記載されているWebページ aを参考にして コーディングファイルbを編集した後,ファイルbを参考にしながらコーディングファ イルcを編集している場合を考える.Webページaとファイルcは同一の作業に関する リソースであるため,ファイルcの編集時に,元々参考にしていたWebページaへアク セスされる可能性がある.従来の頻出アクセスパターンに基づく予測手法では,ファイル cからWebページaへのアクセス関係が過去に存在しないため,予測できなかった.し かし,関連情報集合内における情報の重要度に基づくことで,ファイルcからWebペー ジaへのアクセスが予測できる.
55
第 7 章
おわりに
本論文では,情報利用履歴に基づいたユーザの活動を支援することを目的とし,1. 情報 収集活動における問題,2. 情報整理活動における問題,3. 情報アクセス活動における問 題という3つの問題に取り組んだ.
第1章では,本研究の背景について述べ,取り組むユーザの活動を「情報の収集」「情 報の整理」「情報へのアクセス」の3つにまとめた後,本研究の目的について述べた.
第2章では,情報利用履歴と活動支援に対する関連研究を分類,考察することによっ て,本研究で取り組む課題を導出した.情報利用履歴に対して,その利用方法の観点から
「集団」と「個人」で分類し,考察した結果,利用すべき情報利用履歴の種類や利用方法 は,提供したいサービスによって定まるということがわかった.活動支援に対して,「情 報推薦」「情報の自動分類」「利用情報予測」という軸で分類し,それぞれ考察した結果,
「ユーザ間に共通する嗜好が存在しない場合に推薦できない」「複数の作業を同時に行なう 場合に元来の作業と関連の低い情報が含まれて分類される」「ユーザが自由に情報利用を 行なえるため過去に存在しない利用パターンに対応できない」という課題を見出した.
第3章では,「ユーザ間に共通する嗜好が存在しない場合に推薦できない」という課題 について,実世界に存在する店舗・名所を対象として取り組んだ.店舗・名所といったコ ンテンツを評価する際に付与するタグやコメントを利用してユーザの嗜好を生成する手法 を提案した.被験者による主観評価実験の結果,初めて訪れるエリアにおいても従来の精 度を損なうことなく,高い被覆率で嗜好に合った情報推薦が行なえることを確認した.
第4章では,「複数の作業を同時に行なう場合に元来の作業と関連の低い情報が含ま れて分類される」という課題について,ユーザのパソコン利用におけるファイルや Web ページ,ウィンドウといったリソースを対象として取り組んだ.共起に基づく関連性抽出 に,ユーザから見えているリソースの割合であるリソース可視率を利用して全リソースを 作業ごとに集約する手法を提案した.評価の結果,分類精度ではリソース間のアクセス関 係から関連性を抽出し分類する手法と同程度であり,マルチディスプレイ環境において
56 第7章 おわりに ディスプレイごとの作業状況の考慮が必要であることがわかった.
第5章では,「ユーザが自由に情報利用を行なえるため過去に存在しない利用パターン に対応できない」という課題について,パソコン上におけるユーザの自由なリソース利用 を対象として取り組んだ.デスクトップ上の最前面で利用しているリソースが属する関連 情報集合における各リソースの重要度を,リソース間の関連性に基づき算出し,その重要 度に応じて将来の利用リソースを予測する手法を提案した.評価の結果,予測精度では頻 出アクセスパターンに基づく手法より低かったが,過去のアクセスパターンに存在しない 利用リソースを適確に予測できた.
第6章では,各提案手法の研究成果をふまえて,情報利用履歴に基づくユーザの活動支 援に関して考察し,本研究の応用例について述べた.
今後の課題として,第3章で述べた,「ユーザのコンテンツに対する否定的なタグ付け,
コメントの考慮」と,第4章で述べた,「人や作業ごとにおける作業状況の違いの考慮」,
さらに第5章で述べた,「他の予測手法との組み合わせによる予測精度の向上」がある.
57
付録 A
buzzmap における画面遷移
実際に,buzzmapで「マイ地図帳に登録」するときの画面遷移を示す.図A.1のよう
に「みんなの地図帳」からあるスポットを選択し,[地図帳に書き込む]をクリックすると 図A.2に遷移する.図A.2では,スポットマークのタイトルや本文(本論文でいうコメン ト)やタグを記述する.そして,一番下の[保存]をクリックすると「マイ地図帳に登録」
される.このマイ地図帳に登録されたコメントとタグを作成したプログラムで取得して いる.
図A.1 みんなの地図帳
図A.2 マイ地図帳に登録
59