-69- 3.1 概 要
在来 軸組 工 法住 宅の 水 平力 に 対す る層 の 水平 耐力 の評 価 は、 一般 的 に壁 倍 率 を加 算す る 壁量 計 算ま たは 、 鉛直 構面 の 許容 せん 断耐 力 を加 算 する 許容 応 力度 計算 が用 い られ て いる 。こ れ らの 耐力 は 、水 平耐 力要 素 の面 内 せん 断試 験 から 得ら れた 荷 重- 変 形角 関係 の 包絡 線を 完 全弾 塑性 モデ ル に置 き 換え たと き の特 性値 より 決 定さ れ てい る。 こ のと き、 耐 力決 定に 変形 を 考慮 せ ず、 一義 的 に単 体要 素耐 力 の和 ( 単純 加算 ) を層 の耐 力 とす ると 、組 み 合わ せ によ って は 危険 側に なる こ とが ある 。
文 献 3-1)に は、 許 容せ ん断 耐 力の 算出 方 法を 示し 、以 下 の注 意点 を 記し て い る。「 許容 せ ん断 耐 力の 算出 方 法は 、荷 重 - 変 形角 曲線 を 完全 弾塑 性(Bi-linear)
型モ デル に 置換 し て評 価し よ うと する も ので 、地 震に 対 する 保 有水 平耐 力 に主 眼を おい た 評価 方 法と いえ よ う。 この 方 法に より 、耐 力 壁の 粘 り強 さの 指 標で ある 塑性 率 をせ ん 断耐 力評 価 に反 映で き ると ころ に大 き な特 徴 があ る。 特 に、
単一 仕様 の 耐力 壁 で構 成さ れ る建 物の 場 合に は、 その 建 物の せ ん断 力に 対 する 終局 状態 に つい て 有力 な情 報 を与 える も のと なろ う。 し かし な がら 、こ の 方法 によ り得 ら れた 許 容せ ん断 耐 力を 、複 数 の仕 様の 耐力 壁 で構 成 され る建 物 に適 応す る場 合 には 、 その 運用 に つい て注 意 が必 要と なろ う 。す な わち 、異 な る仕 様の 耐力 壁 の許 容 せん 断耐 力 に加 算則 を 適用 でき るか 否 かの 確 認と 、耐 力 壁単 体の 構造 特 性と 建 物の 構造 特 性と は異 な る可 能性 があ る 点に 留 意す るこ と が必 要で ある 。」
第 2章で 、 木質 ラ ーメ ンの 試 験結 果か ら 構造 特性 を示 し た。 また 、 柱- は り 接 合 部 と 柱 脚 接 合 部の 試 験 結 果 を 回 転 ば ね に 置 換 し た ケ ー ス と LSB の 軸 力-
変位 関係 か ら軸 方向 ば ねに 置 換し たケ ー ス の 2ケー ス につ い て解 析し た 。そ の 結果 、木 質 ラー メン の 試験 の 荷重 -変 形 角関 係を 追従 で きる こと を 示し た 。
第 3章で は 、復 元 力特 性の 異 なる 構造 用 合板 壁と 木質 ラ ーメ ン工 法 の耐 力 の 加算 方法 に つい て 検討 する 。 実際 の住 宅 に木 質ラ ーメ ン 工法 が 持つ 復元 力 を混 在さ せた 場 合の 特 性値 の単 純 加算 結果 と 、各 水平 耐力 要 素の 荷 重- 変形 角 包絡 線を 累加 し た層 の 荷重 -変 形 角包 絡線 を もと に評 価し た 耐力 お よび 剛性 を 比較 し、そ の乖 離の 程 度を 明ら か にす る 。そ して 、LSBを 用い た 木質 門型 ラ ーメ ン に、 構造 用 合板 を混 在 させ て 用い る場 合 の留 意点 につ い て 示 す。
また 、木 造 住宅 を想 定 して 、 住宅 性能 表 示制 度を 利用 し た耐 震等 級 3 の 間 取 り分 析を 実 施し 、 木質 ラー メ ンと 合板 壁 等を 併用 した 場 合を 考 える 。そ し て、
並列 加算 に つい て、 追 加検 討 する 。
示す 結果 は 、次 の① ~ ③で あ る。
① 合板 壁・ 筋 かい ・石 こ うボ ー ドの 耐力 試 験の 結果
② 木質 ラー メ ンと 合板 壁 の耐 力 加算 に関 す る検 討結 果
③ 木質 ラー メ ンと 筋か い ・石 こ うボ ード の 耐力 加算 に関 す る検 討結 果
-71- 3.2 木 質ラ ー メン と合 板 壁の 並列 加 算
第 3.2 節 で は、 ま ず、 木造 軸 組工 法住 宅 で一 般的 に採 用 され てい る 構造 用 合 板壁 のせ ん 断性 能を 把 握す る ため に、 耐 力試 験を 実施 し 、そ の結 果 を示 す 。
さら に、 木 質ラ ーメ ン と構 造 用合 板壁 と の並 列加 算に つ いて 検討 す る。
3.2.1 構造 用 合板 壁の 構 造性 能
(1) 構造 用 合板 壁の 水 平せ ん 断性 能試 験
① 試験 体と 試 験方 法
構造 用合 板 壁の 試験 体を Photo3-1 に示 す 。試 験方 法及 び 試験 結果 の 評価 方 法 は、 文献 3-2)に示 され る 標準 試 験法 と評 価 法 に準 拠し た 。
試験 で実 施 した 構造 用 合板 壁 及び 軸組 等 の試 験体 緒元 を Table3-1(a),(b)に 示 す。試験 体の 外 形は 、幅 2P×高さ 3P(1820mm×2730mm)とし 、面 内せ ん 断試 験方 法は 、 無載 荷柱 脚 固定 式 を採 用し た 。な お、 標準 試 験法 では 1 種類 に つき 試験 体数 が 3 体と 規 定さ れて い るが 、1 体と した 。本 試 験で 採用 し た載 荷 スケ ジュ ール は 、1/450rad~1/50radま で、 標 準試 験法 に準 じ た設 定と し た。 ま た、
終局 時の 破 壊モ ード を 確認 す るた めに 1/15rad を 1 サ イク ル、1/10rad を 0.5 サ イク ル加 力 した 。
Photo3-1 構 造 用合 板壁 の 試験 体
Table3-1(a) 試験 体緒 元 (面 材)
Table3-1(b) 試 験体 緒 元( 軸組 等 )
② 試験 結 果
面内 せん 断 試験 の荷 重 -変 位 関係を Fig.3-1、荷重 -変 形 角関 係の 包 絡線 図 を Fig.3-2、試 験結 果を Table3-2 に示 す 。こ こ で 、試験 体数 が 1 体 なの で 、ばら つ き係 数等 を 考慮 し てい ない が 、告 示に 示 され る壁 倍率 の 傾向 は 、概 ね再 現 でき てい る 。な お 、Fig.3-2 には 第 2章 で実 施 した 木質 ラー メ ンの 荷重 - 変形 角 関係 を同 時に 示 した 。Fig.3-2 の縦 軸は 、 木質 ラ ーメ ンが 荷 重、 構造 用 合板 壁が 1m あた りの 荷 重で ある 。
Fig.3-1 荷重 -変 位 関係
くぎ ピッチ 壁倍率
N50 @150mm 2.5
JAS構造用合板 厚12mm
部 位 樹 種 寸法(mm)
柱 スプールス (集成材) 105×105 はり ベイマツ (集成材) 105×180 土台 ベイマツ (製材) 105×105 間柱 ベイマツ (製材) 27×105
試験体幅 : 1P×2
-50 -40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50
-250 -200 -150 -100 -50 0 50 100 150 200 250
変位(mm)
荷重(kN)
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Fig.3-2 木質 ラー メ ンと 構 造用 合板 壁 の荷 重 -変 形角 関 係の 包絡 線
Table3-2 特性 値の 結 果
初期剛性(K0) Ds 降伏耐力 (0.2/Ds)×Ds 最大荷重×2/3 1/150時の荷重1/120時の荷重 参考倍率 (※1)
壁倍率 (※2)
(kN/rad/m) Py(kN/m) (kN/m) (kN/m) P150(kN/m) P120(kN/m)
合板壁 834.87 0.30 5.74 6.05 6.63 5.68 5.89 2.90 2.50
※1 : 壁倍率は、ばらつき係数を考慮していないため参考倍率とする。
※2 : 告示による倍率 備 考
3.2.2 木質 ラ ーメ ンと 構 造用 合板 壁 の並 列 加算
(1) 概 要
木造 住宅 を 許容 応力 度 計算 で 構造 設計 を する 際に 、そ れ ぞれ の耐 力 要素 の 許 容せ ん断 耐 力の 和 を住 宅全 体 の耐 力と す る手 法が 、多 く 行わ れ てい る。 本 節で は、 この 手 法が 、 木質 門型 ラ ーメ ン工 法 と構 造用 合板 を 混在 さ せた 住宅 の 構造 設計 に採 用 可能 かを 探 るこ と を目 的と す る。
(2) 検討 方 法と 結果 ( その 1)
住宅 全体 と して の耐 震 性能 を 把握 する た めに 、木 質門 型 ラー メン 工 法に 負 担 させ る応 力 の割 合 を変 化さ せ て、 試験 結 果の 各耐 力要 素 の同 一 変形 角に お ける 荷重 を足 し 合せ る。
そし て、 各 々の 耐力 要 素の 短 期基 準せ ん 断耐 力の 単純 加 算と 耐力 要 素の 同 一 変形 角で 荷 重を 加算 し た荷 重(P)-変 形 角( γ)関係 か ら完 全 弾塑 性型 に モデ ル化 した 後 に、 文 献 3-2)の 評 価方 法に よ り算 出し た短 期 基準 せん 断 耐力 ( 層と して のせ ん 断耐 力の 算 出方 法 )と を比 較 する 。
Table3-3 に同 一変 形 角か らの 耐 力算 出 と耐 力 の単 純加 算 の結 果を 示 す。ま た、
Fig.3-3 に耐 力 の比 (=包絡 線 加算 /単 純 加算 )と 木質 ラ ーメ ン長 さ の比 の 関係 を示 す。 す べて の 割合 にお い て、 単純 加 算の 耐力 が耐 力 を高 く 評価 して い る。
また 、こ の とき 構 造用 合板 耐 力壁 の混 在 割合 を高 くし た 場合 の 方が 、耐 力 を高 く評 価す る 傾向 に ある 。逆 に 、木 質門 型 ラー メン 工法 の 比率 を 高く して い くと 単純 加算 と 同一 変形 角 での 耐 力算 出は 、 近似 する 傾向 に ある 。
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Table3-3 せん 断耐 力 の単 純加 算 と層 と して のせ ん断 耐 力の 比較
Fig.3-3 耐力 の比 と ラー メ ン長 さの 比 の関 係
単純加算
ラーメン 合板 (kN)
A 1 1 78.87 0.486 41.60 52.58 30.31 37.35 30.31 32.24 0.94
B 1 2 96.60 0.431 49.12 64.40 40.74 54.30 40.74 42.71 0.95
C 1 3 114.42 0.409 58.74 76.28 50.51 69.84 50.51 53.18 0.95 D 1 4 132.24 0.380 66.98 88.16 62.06 90.64 62.06 63.65 0.98 E 1 5 150.05 0.376 76.64 100.04 71.30 104.91 71.30 74.12 0.96 F 1 6 167.87 0.373 86.46 111.91 80.54 119.16 80.54 84.59 0.95 G 1 7 185.69 0.371 96.33 123.79 89.75 133.38 89.75 95.06 0.94 H 1 8 203.51 0.369 106.52 135.67 99.05 147.82 99.05 105.53 0.94 I 1 9 221.33 0.367 117.12 147.55 108.45 162.60 108.45 116.00 0.93 J 1 10 239.14 0.365 127.72 159.43 117.85 177.38 117.85 126.47 0.93 K 2 1 140.32 0.501 74.28 93.55 52.28 63.22 52.28 54.01 0.97 L 3 1 201.77 0.512 107.19 134.51 73.92 88.31 73.92 75.78 0.98 M 4 1 263.22 0.515 139.53 175.48 95.79 113.99 95.79 97.55 0.98 N 5 1 324.67 0.518 172.33 216.45 117.61 139.53 117.61 119.32 0.99 O 6 1 386.12 0.520 205.22 257.41 139.43 165.06 139.43 141.09 0.99 P 7 1 447.57 0.521 238.12 298.38 161.24 190.60 161.24 162.86 0.99 Q 8 1 509.02 0.522 271.01 339.35 183.06 216.14 183.06 184.63 0.99 R 9 1 570.47 0.523 303.94 380.31 204.87 241.67 204.87 206.40 0.99 S 10 1 631.92 0.524 336.99 421.28 226.68 267.18 226.68 228.17 0.99 記号 Pmax : 最大耐力 (kN)
Ds : 構造特性係数 Py : 降伏耐力 (kN)
Pu : 終局耐力 (kN)
γ 特 : 特定変形角時の耐力(=1/120)
P0 : 短期基準せん断耐力 (kN)
混在させる割合 耐力比
ケース Pmax
×2/3 Pu×
(0.2/Ds) γ特 P0
Pmax Ds Py
(3) 検討 方 法と 結果 ( その 2)
木質 門型 ラ ーメ ン工 法 の応 力 の負 担割 合を 50% 程度 と想 定 して 、住宅 に 構造 用合 板 1.82mと 今回 採 用し てい る 木質 門 型ラ ーメ ン工 法 4m で 混 在 して 用 いる 場合 を考 え る 。そ して 、各 々の 耐力 要 素 荷 重(P)- 変 形角( γ )関 係 と層 とし ての せん 断 耐力 の算 出 方法 に よる P- γ 関係 につ いて 考 察す る。
さら に、 構 造用 合板 と 木質 門 型ラ ーメ ン 工法 を 並 列に つ ない で、 静 的増 分 解 析を 実施 す る。 この と きの 木 質門 型ラ ー メン のモ デル 化 は、 第 2 章 の柱 - はり 接 合 部を 回 転 ば ね モデ ル ( 解 析 モデ ル-1) と し た 。構 造 用 合 板 壁は 、 せ ん 断ば ねで モデ ル 化し た 。構 造用 合 板の スケ ル トン カー ブは 、降伏 点 Py を 折れ 点と す る完 全弾 塑 性型 とし た 。
Fig.3-4(a)に 試験 の 構造 用合 板 耐力 壁及 び 木質 門型 ラー メ ン工 法の P-γ 関 係 の包 絡線 を 示す 。さ ら に、 同 一変 形角 に おけ る荷 重を 足 し合 わせ た P- γ 関係 を同 図に 合 わせ て示 す 。ま た 、そ れぞ れの P-γ 関係 を 完全 弾塑 性 モデ ル に置 換し た結 果 を Fig.3-4 の(a)と(b)に示 す 。な お 、こ こで 用 いる P-γ 関 係に つ い ては 、試 験 体数 の 関係 から ば らつ き係 数 及び 低減 係数 は 、乗 じ てい ない 。 木質 門型 ラ ーメ ン 工法 に つい ては 、 統計 処 理前 の No.1 の結 果 のみ を 示し た 。同 時 に、Fig.3-4(a)に、静的 弾塑 性 解析 の結 果 を示 した。こ こに 示す 解 析結 果は 、試 験結 果を 追 跡し てい る 。
Fig.3-4(a) 試験 の P- γ関 係と 解 析の P- γ 関係
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Fig.3-4(b) 完 全弾 塑 性モ デ ル
(4) 考 察
試験 結果 か ら構 造用 合 板壁 の 短期 基準 せ ん断 耐力(Po)の 決 定要 因は 、Pyで ある 。ま た 、木 質門 型 ラー メ ン工 法の Po の 決定 要因 は 、Pu×(0.2/Ds)で ある 。 この よう に Po の 決定 要因 が 異な る耐 力 を加 算し て、 住 宅の 耐力 を 算出 す る方 法は 、各 耐 力要 素 が破 壊す る とき の変 形 状態 にお いて 、 各耐 力 要素 が負 担 する 水平 せん 断 力の 和 とし て求 め る必 要が あ る。 各々 の耐 力 要素 の 単純 加算 の みの では 、住 宅 の耐 力を 危 険側 で 設計 をす る 可能 性が ある 。
また 、変 形 角γ のク ラ イテ リ アを 1/150 と設 定す ると 木 質門 型ラ ー メン 工 法 部の 許容 耐 力は 、ラ ーメ ン工 法 部の 終局 耐 力 の 40%程 度の 低い と ころ に 決定 さ れて おり 耐 力と し て有 効 に 寄 与し てい な い。 純ラ ーメ ン 工法 で 住宅 を設 計 する には 、変 形 角に 十分 注 意す る 必要 があ る 。同 時に P- γ 関係 か ら終 局耐 力 の高 い木 質門 型 ラー メ ン工 法と そ れ以 外の 耐 力壁 を組 み合 わ せて 住 宅を 設計 す る際 は、 耐力 要 素の 組み 合 わせ 方 に工 夫が 必 要に なる 。