麗 38
4 木製品
東院庭 園地区では、園池
SG5800の
堆積土 をは じめ として多量の本質遺物が出土 した。 これ らの多 くは破損あるいは腐蝕、分解 して しまってお り、原形 をとどめるものは少 ない。形態 も 多様で、種類お よび用途 を知 ることも難 しい。 また、調査当初の44次 調査か ら本報告 にいたる まで長期間が経過 したため、すで に保存処理 を終 えた遺物 も少 なか らずあ り、加工痕等の観察 を十分 にな し得 なかった もの も存在す る。記載 は基本的に遺構単位でお こない、園池、大垣関連遺構 、建物、塀、溝、井戸、土坑お よ び遺物包含層の順 とした。木製 品の名称 と形式分類 については、F木器集成 図録近畿古代篇』
(1985、 以下『集成』
)お
よびこれ までの F平城報告』 に したがい、F木器集成図録近畿原始篇』(1993、 以下 『原始篇』
)も
合 わせて参考 に した。樹種 については、特 に記 していない場合 はすべて ヒノキである。年輪年代測定 による値の得 られたものについても付記 した (樹種 の鑑定 と 年輪年代測定は、埋蔵文化財 セ ンター光谷拓実による)。 なお、すでに『集成』 に収録 された資 料 については、対応関係 を (集
2703)の
ように示 した。A SG5800出
土 木 製 品(PL.97〜 108)
園池
SG5800か
らは多量の木製品が出土 している。 ここでは85点 を図示 したが、 これ らの う ちSG5800Aに
対応す ると考 え られ る ものはわずかであ り、他 はすべて黒褐色砂 質土 を中心 にSG5800Bの
堆積土中より出土 している。そこで、園池 に関わる製品については一括 して種類 別に報告することとした。a.容
器・食事具 (PL 97〜 100)容器 とした ものには、曲物容器、挽物容器、栓、柄杓の柄、食事具 には箸、匙形木器がある。
物 容 器
1
曲物底板。ほぼ完形。全体 に腐蝕 が著 しい。側面 に釘孔 をとどめ、一部 に木釘 を残す。直 径21硼 、厚 さ5側。99次KQ66黒
褐色砂質土。2
曲物底板。ほぼ完形。全体 に腐蝕 が著 しい。側面 に木釘の孔 をとどめる。直径24 5cm。 厚さ6 nlln。 ヒノキか。99次
K071黒
褐色砂 質土 とKP67黒
褐色砂質土が接合す る。3
曲物底板片。推定径約1 4cmの円盤の断片。側面の1箇所 に木釘の子とをとどめる。現存長11cm、 同幅3 8cm、 厚 さ411m。 99次」
E72黒
褐色砂質土。4
曲物 底板片 。推 定径約20cmの円盤 の断片 。現存 長15,Ocm、 同幅3 7cm、 厚 さ5■14。 99次」E
71黒褐 色砂 質土 。
5
曲物底板片。推定径 14 4cmの 円盤 の断片 。側面 はわずか に傾斜 をつ ける。側面 に1箇所 木 釘 を とどめ る。現存長13,7cm、 同幅4 4cm、 厚 さ61m。 99次」B72黒褐 色砂 質土 。6
曲物底板 片。側面 の1箇所 に木釘 の孔 を とどめ る。現存長14.Ocm、 幅2 cm、 厚 さ711m。 99 次 」B71黒
褐色粘質土。7
曲物底板 。直径 19 2cmの 円盤 の断片 。側面 に木釘 の孔 をとどめ る。現存 幅11 3cm、 厚 さ 51m。 99次」
D71黒
褐色砂 質土 。年輪 年代測定の結果、842年 (Bタ イプ)。8
曲物蓋板 片 。推 定径 16.6cmの 円盤 の断片。側縁 に樺皮 で綴 じるための一対 の子とを もつ。現存 長
114硼
、 同幅3 1cm、 厚 さ5 olll。 99次KS71黒
褐 色砂 質土 。9
曲物 蓋 板 片 。全 体 に腐 蝕 が 著 しい 。2孔
一 対 の綴孔 が2箇
所 にあ り1箇所 は樺 皮 を残 す 。 綴 子とを結 ぶ よ うに側板 の痕 跡 が 認 め られ、頂 辺 のやや 内狽1に側板 を回 してい た こ とが わ か る。現存 長10cm、 同幅5 5cm、 厚 さ3 111nl。 99次」
E72黒
褐色砂 質土。10
曲物蓋板 片。推定径27cmの円盤 の断片 。2箇
所 に綴孔 の痕跡 を残 し、1箇所 には樺 皮 を と どめ る。現存長21,7cm、 同幅3 7cm、 厚 さ5 11al。 99次KN75石
敷 。11
楕 円形 曲物底板 片。一面 は削 り調 整 を加 え、一面 は割面 となる。現存長8 5cm、 同幅20側
、 厚 さ4 nlm。 99次」B72黒褐色砂 質土 。12
円盤形 の板 材 の中央 に1,3cm四 方 の方 孔 を うが つ。狽1面 5箇所 に釘孔 を とどめ、 この うち2箇
所 に木釘 が残 る。 曲物底板 を転 用 した もの で あ ろ う。『集成』 で は こ う した製 品 を「 蓋板Jの項 で取 り上 げ、樺皮紐 な どを子しに とお してつ まみ に したのであろ うと した うえで、蒸 器 のサ ナ にあ て る説 もある とす る。直径
162∽
、厚 さ641111。 スギ。99次」B71黒褐色砂 質土。年輪 年代 測 定 の結果、751年 (Bタ イプ)。13
挽 物 皿。側面 に娩幅 の痕跡 を残 しわず か な段 をつ ける。表裏面 に多 数 の刃物傷 が認 め られ挽
物
皿 る。挽物 による食器類 の形態 はおお むね土器 や陶器 と一致す る ことか ら、奈 良 ・平安時代 の上
器 の呼称 に準 じた分類 がお こなわれ て お り、『集 成』 で は13を 高 台 のつ か ない皿
D類
(径18cm 内外)に
あて る。 口径19 0cm、 底径17 3cm、 高 さ1 2cm。 99次」A71黒
褐色砂 質土。(集2703)。14
漆 器蓋 。全体 に黒漆 をか けた挽 物 の 印籠 蓋 で あ る。2片
に割 れてい るが ほぼ完形 に なる。漆 器
蓋 笠形 の頂部 中程 に径6.2cmの 段 をつ け る。頂部 には径 2 cmの 算盤玉形のつ まみがつ く。類 例 は、
1)
平城 京左 京 一条三坊SD6501こ
9世
紀前 半 の ものが あ る。頂部径9 0cm、 高 さ8 0cm、 身深 さ5 6cm。広葉樹 。99次」
A71東
西畦床土。15
円盤状挽物 。 円盤形 の中央 に径 2 cmの 上 部 の欠損 した突 出部 を もつ。上 面 に幌幅 目が よ く 残 り、下面中央には長 さl cmの幌櫨の爪跡 を残す。F集成』では15を幌幅挽 きの蓋でつ まみを欠損 したものにあてたうえで、小型高杯の台脚 とすることも可能とした。台脚の例 としては正
高杯の台脚
2)
倉 院 中倉紺瑠璃 杯 に付属 す る銀 製台脚 が形状 ・底径 ともに15に ちか く参考 となろ う。直径5,3cm、
高 さ1.4cm。 99次」E63暗灰色粘 質土。(集4018)。
16
挽物底部片 。挽物 の器 の底 部 が剥離 した もの。側 面 に槻幅 目をの こす。全体 に腐蝕 が著 し い。底径7 6cm、 残存厚1.4側。広 棄樹 。99次KS66暗
灰 色粘質土 。17
厚板材 の先端 を尖 らせ 、両狽I縁の 中程 に切 り欠 きを もうけた もので、片方の側面 に1条
の 沈線 を もつ。先端 の2箇
所 には斜 め に打 ち込 ん だ木釘 を とどめ る。 曲物柄杓 の柄 と考 え この項 に含 め てお くが、他 の器物 の柄 となる可 能性 もあ る。長 さ36 6cm、 基 部幅2 1cm、 厚 さl cm。99次」B71黒褐色砂 質土 。
18
栓 。栓 は重 や瓶 の栓 にあて うる もので 、幌 輯 で挽 くもの もあ る。 18は 上 下 の面 を鋸 で切 断 し側面 は きれい な曲面 を呈す る。長 さ9.2cm、 上 面径3 9cm、 下面径2 4cm。 99次KP73石
敷 下 ・ 赤灰 色粘 質土。19
栓 。 丸棒 の一端 を一 回 り細 く削 出 した もの。全 体 に腐 蝕 が著 しい。長 さ10 5cm、 広 端 径3 cm、 狭端径2 cm。 スギ。99次」
D71黒
褐 色砂 質土 。(集4020)。20
箸 。細棒 を断面が扁平 にな る よ うに整形 した もの。基 部 は切 断、先端 はわず か に突 出 させ匙 形 木 器
織 機 部 材 の 板 台 盛 編 目
る。長 さ22 1cal、 基部 幅5111m、 厚 さ3.5nlnl。 120次池Aト レンチ第
1次
池 汀基礎 石掘 形青灰 色含 砂 暗黒色粘土。21
箸。 断面 が扁平 にな る よ うに調整 し、やや先細 りにつ くる。先端 は削 りを加 えわずか に圭 頭状 につ くる。一端折 れ。現存長13.2cm、 幅7 nlal、 厚 さ5111111。 99次KM73暗
灰 色 粘質土。22
匙形 木器 。『集成』 で は、なJ物 の匙 お よびそれ に類す る もの に対 して、小 さな細板 を削 っ てつ くる匙形 の木器 を「匙形木器」 とす る。 身の形態か ら3形
式 に区分 し、A形
式 は、 身の先 縁 を一直線 にす る もの、B形
式 は先縁 を半 円形 にす る もの、C形
式 は身の先縁 が半 円形 を呈す るが 身の幅がせ ま く細 長 い もの とす る。B形
式 を除 くA・C形
式 は漆 箆 や銀 等 との形態上 の識 別が難 しい。221よB形
式 。板材 の側 面 を削 り、肩 とまっす ぐな柄 をつ くる。身の先端 は九 くし、柄 に対 して 身 の厚 さが 薄 くな る よ うに両面 を調 整す る。柄 先端 を欠損 。現 存 長19 2cal、 身幅
3 4cm、 柄 幅13c14、 厚 さ6 nlm。 99次
KS70黒
灰 色砂土。(集4214)。23
匙形木器。C形
式 の うち、 身 と柄 の境界 が明瞭 な もの。全体 に腐蝕 が著 しい。板材 の狽1面 を調整 し、 ゆるやか な肩 をつ くる。 身の先端 は両面か ら削 りを加 え、剣先状 に尖 らせ る。柄部 欠損 。現存長18 5cm、 身幅3.4cm、 厚 さ4 nlln。 スギ。99次」E65黒褐 色砂 質土。24
匙形木器。現状 で笹葉形 を呈す る板状 品であるがC形
式 の匙形木 器 と考 えた。上 半 の両狽‖縁 は削 り面 を とどめ るが 、柄 部 を欠 き全体 に腐蝕 が著 しい。長 さ24cm。 幅4 9cm。 厚 さ7 mln。 ス ギ。44次 L176池黒色土 。
b.農
具・紡織具 (PL 101)農具 。紡織具 とした もの には、 も じり編 みに用 いた編台の 日盛板 、織機部材 が ある。
25
もじ り編 み に用 い た編台 の 日盛板 。細長 い板材 の側面 に三角形 の刻 目をいれた もので、厚9 い方 を上辺 とす る と、上辺 に14箇所 以上 、下辺 は破損 が著 しいが1箇所 刻 目を確 認 で きる。刻 目はおお むね95〜
1 lcm、 狭 い ところで35c14間 隔 になる。 また刻 目の頂点 か ら、あ るいは刻 目 間 に垂線状 の細 い切 れ 目を入 れた箇所 があ る。現存長169.5cm、 幅6 9cm、 厚 さ8 nul。 ス ギ。99 次KS66暗
灰色粘質土。26
編台の 目盛板 。25と よ く似 た板材 であるが、幅が異 なるため、別個体 と した。両端 は隅九 方形 に整形 されてい た可 能性 が あ る。上辺 に2箇
所 の刻 みが認 め られ る。現存 長51cm、 幅8,2cm、厚 さ944。 スギ。99次
KS66暗
灰 色 粘 質土 。27
織機部材 。角棒 に削 りを加 え、両端 に節 を もうける。図の上端で は突起 の基部 に円孔 をも うけ、その対 面 の身部側 面 に も方子とが1つあ る。下端 の節 には2条
の刻線が め ぐる。『集成』で は織機 の部品 となる もの には小 型 の もの と大型 の ものが あ り、両者 は無機 台 と有機台 の違 い を 示 してい るか も しれ ない と し、271よ小 型 で、経巻具 ない しは布巻具 にあた る可 能性 を示 した。長 さ34 5cm、 1 4cm角 。99次」
B72黒
掲色砂 質土。スギ。(集H08)。28
織機部材。角棒の両端 に両側面か ら袂 りを入れて、ひもかけをつ まみ状 につ くった もの。経巻具ない しは布巻具 になろう。なお、F原始編』では、経巻・布巻具のなか にこの形態の部材 を含めたうえで、織機部材 に用途 を限定す る根拠 は必ず しもない とす る。長 さ40 7cm、 現存幅
1,9cm、 厚 さ9 1nm。 スギ。 99次
K079責
褐色砂 と276次 第6ト レンチ北灰色粘質土が接合。c.祭
iB具 (PL 102・ 103)祭祀具 としたものには、舟形木製品、斎串お よび刀形がある。