第 3 章 ひずみ仮定を用いた非圧縮超弾性シェル要素の開発 33
3.2 非圧縮大ひずみシェル要素の定式化
3.2.3 有限回転増分と板厚増分
本節では,各増分ステップ間の有限回転量および板厚の更新について示す.なお,変位 の3次以上の項は接線剛性を導く線形化の際消滅するため,ここでは2次項までを考える. いま,軸性ベクトルがtt0θkである反対称テンソルtt0Φkを定義する.反対称テンソルtt0Φk と軸性ベクトルtt0θkは次式のような関係がある.
∆t→0lim 1
∆t
t0
tΦktV3k= lim
∆t→0
1
∆t
t0
tθk×tV3k= ˙tV3k (3.9)
このとき,有限回転テンソルtt0Rは,幾何学的関係から次式のように厳密に求めることが できる(3.15).
t0
tR=I+h1(ω)tt0Φk+h2(ω)(tt0Φk)2 (3.10) ここで
h1(ω) =sinω
ω , h2(ω) =1 2
µsin(ω/2) ω/2
¶2 , ω=
¯¯
¯tt0θk
¯¯
¯ (3.11)
ωが微小のとき,sinω,sin(ω/2)をTaylor展開すると次式が成り立つ.
t0
tR=I +tt0Φk+ 1
2!(tt0Φk)2+· · · (3.12) いま,軸性ベクトルtt0θkはシェルのディレクターベクトルtV3kに直交する面内の2つの ベクトルtV1k,tV2kに分解されると定義すると次式が成り立つ.
t0
tθk =αktV1k+βktV2k (3.13) この場合tt0Rはtt0θkのまわりのp
(αk)2+ (βk)2だけの有限回転を表している.回転が微 小なときには,ディレクターtV3kのtV1k,tV2kのまわりの回転角をそれぞれαk,βkとみな すことができ,ディレクター自身のまわりの回転は考慮されない.
次に板厚とその増分量を考える.いま,t0C の第3不変量III(t0C)は次式のように式展 開できる.
III(t0C) = dett0C = [tg1tg2tg3]2
[G1G2G3]2 (3.14)
なお,[ ]は,スカラー3重積を表す.ここで,
tg = [tg1tg2tg3]2 = det£t gij¤
=εijptgi1tgj2tgp3
G = [G1G2G3]2= det [Gij] =εijpGi1Gj2Gp3 (3.15) とおく.なお,εijpは交代記号である.このとき,非圧縮条件式(3.6)は次式のようになる.
tg
G = 1 (3.16)
3.2.1節式(3.2),(3.6)より,式(3.16)はFig.3.1の点Mにおいて成立する.よって時刻t の板厚thは,
th= 2√ G [tg1tg2td]rr12=0=0
r3=0
(3.17)
で与えられる.ここで,
tg3= 1 2
thtd (3.18)
の関係を用いた.tdは要素内の任意の点のディレクターベクトルであり、形状関数Niを 用いて次式のように表される.
td=NktV3k (3.19)
なお,tdは,要素内の任意の点における補間されたディレクターベクトルであり,初期形 状が曲面の場合や,あるいは大変形により各節点におけるディレクターの方向が異なる時 には,0<|td| ≤1であり,単位ベクトルとはならない.この現象は,通常の板厚が変化 しない微小ひずみ問題においても生じ,計算に用いられる実効板厚が低めに見積もられる.
本要素での式(3.17)による板厚の更新は,それを補正する役割を果たしている.曲面の曲 率が小さい場合等は,tdを|ttdd|と正規化してもよい.なお,本シェル要素では,板厚変化 は面内ひずみの影響が支配的であるとの仮定の下,式(3.17)より板厚を算出するにあたっ ては,面外せん断項を次式のように無視する.
tgα3 =gα·g3≈0 (3.20)
時刻tの板厚thを式(3.17),(3.20)を用いて求めるとき,点Mにおいては式(3.8)の第 2,3項すなわち回転項は消滅するため,thは並進変位自由度ukのみの関数とみなすこと ができる.ukが微小なとき,時刻t0の板厚t0hに関して次式のようなTaylor展開が成り 立つ.
t0h=th+πk·uk+ul·Πlm·um+· · · (3.21) ここでπk,ΠlmはそれぞれTaylor展開の際に現れる係数ベクトル,係数テンソルである. それぞれの具体的な成分表示は,以下に示す通りである.
時刻t0の板厚t0hを次式に示す.
t0h= 2√ G
[t0g1t0g2t0d] (3.22) いま,板厚t0hはFig.3.1のサンプリング点Mで評価されるため,t0giは次式のt0giM に置 き換えられる.
t0giM = ∂NkM
∂ri
txk+ ∂NkM
∂ri uk (3.23)
なお,添え字Mはその諸量がサンプリング点Mで評価されたことを示すものとし,∂N
M k
∂ri
は次式のように置いた.
∂NkM
∂ri = ∂Nk
∂ri r1=0 r2=0
(3.24)
以上より,tgij =tgi·tgj,td=td·tdと式(3.20)を用いて式(3.22)を書き直すと次式のよ うになる。
t0h= 2 rGM
t0dM q 1
t0gM11t0gM22−(t0g12M)2
(3.25)
式(3.25)より板厚t0hは並進変位自由度ukの関数であることがわかり,これをTaylor展 開すれば係数ベクトルπk,テンソルΠlmはそれぞれ以下の式になる.
πk = −2 rGM
tdM
¡t
gM11tgM22−(tg12M)2¢−3
2
·
tg22M∂NkM
∂r1
tgM1 +tgM11∂NkM
∂r2
tg2M
−tg12M
µ∂NkM
∂r1
tg2M +∂NkM
∂r2
tgM1
¶¸
(3.26)
Πlm = −3¡t
gM11tgM22−(tgM12)2¢−1
πl⊗πm
−2 rGM
tdM
¡t
gM11tgM22−(tg12M)2¢−3
2
·
tg22M∂NlM
∂r1
∂NmM
∂r1 I+tg11M∂NlM
∂r2
∂NmM
∂r2 I +2∂NlM
∂r1
tgM1 ⊗∂NmM
∂r2
tg2M + 2∂NlM
∂r2
tgM2 ⊗∂NmM
∂r1
tg1M
−
µ∂NlM
∂r1
tg2M +∂NlM
∂r2
tgM1
¶
⊗
µ∂NmM
∂r1
tg2M +∂NmM
∂r2
tgM1
¶
−tg12M
µ∂NlM
∂r1
∂NmM
∂r2 +∂NlM
∂r2
∂NmM
∂r1
¶ I
¸
(3.27)