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3月15日 (土)  13:00〜15:00

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著作権の保護と利用について

三田 誠広(作家/日本文藝家協会副理事長)

大学等における知識資源をめぐる諸問題

山田 篤(京都高度技術研究所/京都大学情報学研究科)

原文と訳文の対から翻訳機を自動生成する話

隅田 英一郎(国際電気通信基礎技術研究所/情報通信研究機構)

適法・不当・違法の狭間での、動的著作権処理

藤波 進(学際統合創研)

言語コーパスのための著作権処理

前川 喜久雄(国立国語研究所)

著作権の保護と利用について

三田誠広(作家/日本文藝家協会副理事長)

[email protected]

著作権は私権である。個人の権利であるから、小さな権利だということもできるが、同 時に、個人の権利だからこそたやすく侵してはならない権利だということもできる。たと えばどこかの土地に空港なり鉄道なり道路を敷設するとしよう。これらは公共性のある事 業である。社会主義国家なら、その土地に個人が住んでいようと、そこで営業活動をして いようと、公共性を優先させて、土地を収奪し有効利用することもできるだろう。しかし 民主主義国家では、そのようなことは許されない。たとえ一坪といえども、個人の権利を 奪うことはできない。最終的に強制撤去などが実施されたとしても、その土地の代金や移 転のための費用は補償されなければならない。

著作権も同様である。どれほどの公共性があろうと、私権である著作権を剥奪すること は許されない。とはいえ、著作権法には「権利制限」という規定があって、公共性のある 利用に関しては、ある程度の権利の剥奪が認められている。例えば入学試験や検定試験の 国語の問題に文学作品を使用することは「権利制限」だとされている。ただし試験問題の 譲渡が認められているのは受験者だけで、市販の入試問題集などは著作者の許諾が必要で 著作物使用料を払わなければならない。もう一つ例を挙げれば、教科書への掲載である。

これも著作者に拒否権はない。ただし一定の補償金が支払われることになっている。

このように著作物の利用は大変に難しい。過去の著作物をアーカイブするとか復刻版を 出すといった作業も、著作権の存続期間(日本では死後50年/先進主要国では70年)

の範囲内であれば、著作者や著作権継承者(遺族など)の許諾が必要だ。有名な作家なら ともかく、著作権継承者が不明な場合も多く、また著作者によってはいつ亡くなったかも わからない場合がある。このような著作物はオーファン・ワーク(著作権者不明の作品)

と呼ばれ、利用者にとっては大きな障害となっている。

こうした障害の解決のために、日本文藝家協会や日本音楽著作権協会など著作権に関わ る17団体は、著作者データベースの構築を準備するとともに、データベースに登録され ていない著作物(オーファン・ワーク)の利用を促進するために、簡易な裁定制度システ ムの確立を提案している。これは著作物利用の利便性を実現するためにぜひとも必要なシ ステムであり、利用者の立場に立ったシステムの実現を図りたいと考えている。

大学等における知識資源をめぐる諸問題

山田篤(京都高度技術研究所/京都大学情報学研究科)

[email protected]/[email protected]

近年,大学や研究機関において,知的財産に対する取り組みが活発になってきている。

特に大学で生まれた知的財産については,各機関において知財ポリシーを設定し,管理運 用をはかる傾向にある。これは主に知的財産の権利者としての側面であるが,他方で知的 財産の利用者としての側面が問題になることがある。たとえば特許に関しては,例外とし て規定されている「試験研究のための実施」が問題となろう。簡単に言えば,これまでは 対企業の場合と異なり,大学等に対しては比較的大目に見られてきたが,大学等がビジネ スのプレーヤとして積極的に参画するようになれば状況が変わってくるということもあり 得る。

特許の問題はさておき,以下では著作権について考えてみる。論文等を別にして,大学 において日々生産される知的資源として講義に関連するものがある。たとえば講義資料は それ自体著作物である。ところで,多くの場合,それは教科書等,他の著作物の利用のも とに成り立っている。これを大学の講義室の中で用いている分には問題がなかった。とこ ろが,これを広くウェブ上で公開しようとしたときに問題が生じる。最近,講義のアーカ イブを作成している大学が結構あるが,この公開にあたっても著作権処理という困難な問 題が発生する。そして現状ではこれには相当な手間がかかるのである。

基本的には,これは著作権者から許諾を得るという作業であり,必要に応じて対価を支 払うことになる。ところで,講義においてはオリジナルの著作物の内容を一部改変して用 いているかもしれず,その場合には単に複製権の問題ではなくなる。

これに対して,いちいち許諾を取るのは面倒だから,著作権を許諾権ではなく報酬請求 権にしてしまえばよいといった極端な意見もときどき出てくるが,理解に苦しむ。著作者 は自分の著作物がどんな使われ方をしようが文句を言うなということなのだろうか。確か に財産権も重要だが,著作権における人格権の存在こそが,他の産業財産権とは異なる著 作権の特徴ではないだろうか。もちろん,だからといって権利者の言いなりという状況が 好ましいわけではない。

これに対して,契約による解決策が模索されている。日本では北川善太郎氏によって提 唱されたコピーマートも当初はそのような方向性であったと考えられる。最近使われるよ うになってきているCreative Commonsも,契約により予め権利者が設定した範囲内での利 用を許諾するものである。

これが難しいのは,典型的な利用法をある程度想定することはできるが,将来にわたっ てすべての可能性を予め想定することは不可能である点である。また,当然ながら,その ような契約の付帯していない著作物についてはどうしようもない。これについては,万能 の方法を指向するのではなく,限られた範囲でも有効な形態を設定し,賛同者を得て広め ていくしかないのではないかと考えている。

文献およびURL

コピーマートホームページ:http://www.copymart.jp/cmi/outline/cm_cm_f.html Creative Commonsホームページ:http://www.creativecommons.jp/

原文と訳文の対から翻訳機を自動生成する話

隅田英一郎(ATR & NICT)

[email protected]

至る所に言葉の壁がある。海外旅行に行けば、現地の人とコミュニケーションが取れな いと楽しみが半減する。外国の品物をオークションで購入するにも外国の言葉が必要であ る。地方自治体は、外国人住民に、ゴミの捨て方など日常生活、医療・保健・教育など各 種サービス、防災等に関わる情報を正しく伝える必要がある。企業はマニュアル・特許・

契約書などの翻訳に多額の出費をしている。一方、学校で3~8年間も英語を勉強している にもかかわらず、英語が苦手な日本人が多い。

そこで、自動的に翻訳する機械が必要になる。半世紀にわたる研究の成果で、現在、多 数の翻訳機が市販され、WEBで公開されている。これらの翻訳機で採用されているのはル ールに基づく方式と呼ばれていて、対訳辞書、原文を分析する文法ルール、翻訳先の文法 へ変換するルール、活用処理をして訳文を生成するルールを専門家が記述する。翻訳機の 構築にかかる時間と費用が膨大であり、翻訳する言語を増やすためには相当のコストを追 加投入する必要があり、実際なかなか多言語化が進まないという問題がある。

ところが、最近、翻訳機の構築技術に革命が起こった。新たに、コーパスに基づく方式 と呼ばれるものが編み出され、コストが大幅に削減され、さらに、翻訳品質も飛躍的に改 善された。コーパスに基づく方式では、対訳コーパス(大量の原文と訳文の対)を用意し、

そこから、翻訳に関する確率的モデル(確率の付いた対訳辞書)と語順に関する確率的モ デル(確率の付いた語順変更のパターン)を学習する。新規に入力された原文に対して、

これらのモデルから得られる確率を最大化するように訳文を構成する。対訳コーパスのモ デル化によって、新規の文を翻訳するという新しい能力が創出されるのである。

これは優れた能力を有する者が、大量の原書・翻訳・母国語の文章を読んで、対訳辞書 や語順変更のパターンを、自らの脳、ノートやカードなどの紙媒体、あるいは、パソコン に格納し、新たな原文を翻訳する時に、利用するのと同じである。翻訳者は、読んだもの を新しい翻訳知識へと変容させるのである。

この方式を活用して、ATR では旅行会話を対象として、多言語の音声翻訳機を構築し、

他の及ばない高品質を実現した。そして、昨年12月に世界で初めて携帯電話を使った音声 翻訳機の商用サービスを開始した。

コンピュータのハードとソフトの進展によって、対訳データがあれば翻訳機が作れる素 晴らしい時代になった。しかし、残念ながら、日本では著作権の束縛のない対訳データは 少ない。WEB上に大量の対訳が存在するが、クローリングすること自体、著作権法に違反 する可能性があり、研究や開発には危なくて使えない。

様々な著作物を自動翻訳機の構築に安心して利用でき、語学下手でも困らない日本の到 来を切望してやまない。

ドキュメント内 corpus.indd (ページ 66-72)

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