平成20年11月25日/11月28日 京都産業大学法学部・吉永一行 一 事案 の概要
1 事実 関係 (1)事 故の発 生
X1は、昭和24年2月14日、不発弾の処理作業中に不発弾が爆発したことによって重傷を負った。この 事故は、不発弾の処理にあたっていた国家地方警察の巡査(又はその要請を受けた米軍将兵)の過失に よって発生したものである。Y(国)は、X1及びその妻であるX2に対して各種制度に基づく給付金を 支給してきたが、Xらは、さらにこの事故に基づく精神的損害の賠償を求めて、事故から28年10ヶ月が 経過した昭和52年12月17日に、国家賠償法1条に基づいて、損害賠償を求める訴訟を提起した。
(ここにさらに、①Yの被用者においてYの損害賠償義務を知り又は容易に知り得べかりし状況にあっ たこと、②自己直後、警察署長名で責任の所在を不明確にする被害調査書が作成されたこと、③XはY の出先機関等に幾度となく被害の救済を求めたいたこと、といった事情を書き加えてもよい。)
(2)除 斥期間 の主張
これに対してYは、公権力行使の有無、過失の有無などを争うとともに、訴えの提起までに事故から 28年10ヶ月が経過しており、民法724条後段の定める除斥期間が経過したとして訴えの棄却を求めた。
2 原審 までの 判決
原々審が請求を棄却したために、Xらが控訴した。
控訴を受けた原審は、まず、民法724条後段の定める20年の期間は、(長期の)消滅時効、または「仮 に、これを除斥期間と解するとしても、被害者保護の観点から中断、停止を認めるいわゆる弱い除斥期 間(混合除斥期間)」であると解すべきであると判示した。そして、①Y(の被用者である警察署係員)
は、事故がXに対して損害賠償義務を負う立場にあることを容易に知りうる立場にあったこと、②Y(の 被用者である警察署長)の名で、本件事故の責任の所在を不明確にしたと認められる被害調査書が作成 されたこと、③Xらは本件事故後、Yの出先機関等に被害の救済を求めており、権利の上に眠るものと はいえないことなどを認定した。そして原審は、こうしたことを理由として、Yによる長期消滅時効の 援用(ないし「弱い」除斥期間の主張)は信義則に反し、権利の濫用にあたると判示し、Yの抗弁を退 けた上で、Xらの請求の一部を認容した。これに対してYが、724条後段に定める期間は除斥期間であ り、当事者の援用・主張を要するものではないとして上告したのが本件である。
二 判旨 1 判決 要旨
最高裁は、次のように述べて原判決を破棄し、Xらの請求を棄却した原々審判決を支持した。すなわ
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らして、この期間が経過すれば、当事者の主張がなくても損害賠償請求権が消滅すると判断するべきで あるとした。従って、Yの主張について、信義則違反や権利濫用を問題にする余地はなく、この点で原 審判決に誤りがあると判示した。
2 要旨 を基礎 付ける 根拠
その際最高裁は、724条が「不法行為をめぐる法律関係の速やかな確定を意図する」趣旨であるとい うところに根拠を求めている。この趣旨にのっとって考えれば、724条は、被害者側の主観的な事情(損 害及び加害者の認識)によって完成が左右される3年の時効(前段)とともに、「被害者側の認識のい かんを問わず一定の時の経過によって法律関係を確定させるため請求権の存続期間を画一的に定めた」
20年の期間を定めたものと解するのが相当であるという。最高裁はこのことから、724条前段の定める3 年の期間と、後段の定める20年の期間とで、性質が異なることを説明しようとしている。
長文要約課題に関する中間講評
2008年11月18日(火)/21日(金)
長文要約課題を毎週提出している受講生は、先日半分となる第5回目の課題を提出しました。ちょうど折 り返し点ということで、これまでに気がついたことを簡単にコメントしておこうと思います。
1. 陥りやすい落とし穴
学生のみなさんの提出した要約を見ていると、学生が必ずと言っていいほどやっていることで、採点する 私の側からすると疑問となることというのが3つあります。
(1) 課題文冒頭第1文の抜き出し
第一は、課題文の最初の1文をそのまま(あるいはいくつかの単語を落とすのみで)要約文の第1文とし て抜き出してくるパターンです。
おそらく「文章の読み方」のテクニックとして、「文章は最初と最後に大事なことが書いてある」と学ん だことがあるのでしょう。あるいはそうでなくても、最初の文を読んだ時に、強烈なイメージが残って、
「この文は大事だ」と思ってしまうのかもしれません。しかし、第1文は問題を提起しているのであって、
問題に答えているわけではない、だとすると「言いたいこと」の核心そのものではないはずです。
例えば、課題No.1の冒頭は、「思春期が誰しも疾風怒濤の激しい表情をともなうものであるかどうかは わからない。」というものですが、この著者は別に「わからない」ということを言いたいわけではないので すね。むしろその後に出てくる「授業中無表情無反応を通す生徒がいる」という情報の方が大事です。
おそらく「どちらの情報の方が大事なの」と聞かれれば、みなさんは正しい方を答えるのだと思うのです が、それだけに何だか自動的に「冒頭第1文抜き出し」という「作業」をしてしまうのはもったいないよう に思います。
(2) 「比喩」の使用
第二は、課題文の中で用いられている比喩、とりわけ印象的な比喩をそのまま要約文にも用いてしまうと いうパターンです。
これも、比喩が印象的であるが故に「大事なこと」と思い、要約文から落とせなくなるのでしょう。しか し、比喩というのは、何か言いたいことが別にあって、その言いたいことを強調するために持ち出してくる ものです。例えばこれも課題No.1から例をもってくると、最後の1文に「むしろしっかり降りられれば仮面 のような無表情が素の表情に戻る。」とありますが、この文の著者は、別に表情そのものについて語りたい わけではないのです。本当は子どもたちの心の中に焦点をあてているのですが、心の中のことは見えません から、外に現れた表情について描写することで、心の中のことを描き出そうとしたわけです。ですので要約 文には、本当に言いたいことである心の中の動きの方こそ盛り込まなくてはなりません。
(3) 課題文後半部分に割く字数の不足
提出された要約文を見ていて気がつくこととしては他に、課題文の前半部分については詳しく書かれてい るのに、後半部分はごく簡単にすまされているというパターンが多いことです。文章全体からバランスよく 要約するということができていないという以上に、文章は通常、むしろ後半にこそ言いたいことが出てくる ものですから、大事なことが出てくる部分の方が要約文では軽く扱われているという点で大きな問題がある と言えます。
長文要約課題に関する中間講評 p. 1
こうしたパターンに陥ってしまう理由を推測するのは簡単です。つまり前から順番に要約を作っていたと ころ、課題文の半分くらいのところまでですでに規定の字数に近くなってきてしまったので、あわてて後半 部分は思い切って切り捨てていくという要約の作り方をしているものと思います。
確かに、せっかく頑張って前半部分の要約を作ったから、もう手を加えたくないという気持ちはわからな くはありません。しかしそれでは、彫刻を作るのに彫刻刀で荒く削りだしただけで終わりにし、紙ヤスリな どで丁寧に研ぎだしていく作業をさぼるようなものになってしまいます。課題文の前半までのところで、要 約文が規定字数の半分を超えているのなら、これが規定字数の半分以下になるように見直さなくてはなりま せん。
最初から規定字数通りの要約を作ろうとすると大変ですから、まずは規定字数の2〜2.5倍くらいの字数で 要約文を作るつもりでいるとよいと思います。そうすれば、課題文後半についても丁寧に拾い上げた要約に なるでしょう。そこから徐々に字数を削っていくという作業を行い、それでもどうしても規定字数にまで減 らない部分は、要点を表現する文を自分で作文するというイメージで課題にあたると、文章の中の後半部分 だけが極端に軽く扱われた要約を作らずにすむと思います。
2.二つの心がけ
技術的なアドバイスは以上のようになりますが、もう2点、心がけという意味でのアドバイスをしておこ うと思います。
(1) 解けない課題はない
まず大事なことは、「字数が足りないから要約文を作れない」ということはないはずだということです。
私は、一作年度までで10個、今年度もすでに6個の課題について要約文の解答例を作成しましたが、その経 験から、「課題文の要点をすべて含みながら、課題文の字数の1割の字数に要約することは可能」だと自信 をもって言うことができます(そもそも、こうした要約を作ることができないような文章は、内容が極度に 散漫で、課題文として採用されないのだと思います)。ですから、「この文章は、本当に文章全体からバラ ンスよく要点を抽出した要約を作れるのだろうか」という疑問はもたず、「絶対に規定字数以下で、『本当 に』大事なことをすべて書き出した要約は作れるはずだ」と信じて、課題に取り組んでほしいと思います。
(2) うまくなるために練習をする
もう一つは、この長文要約課題は、要約がうまくなるために取り組むという気持ちをもってほしいという ことです。
下手でも下手なりにやっていくことで得るものがあると私は思っています。しかし、その「下手なり」と いうことすらしないで、ただ数をこなすだけでは決してうまくなりません。このプレップセミナーも、折り 返し点を過ぎて、長文要約課題をこれまで継続してきた学生も、あるいはそろそろ単位のことが気になって
(?)課題に取り組もうかと思い始めた学生も、今一度、自分がなぜ課題に取り組むのかということを真摯 に考えてほしいと思っています。
民法においては、高度の注意義務として善良なる管理者の注意を定める一方、それ以外の場合について
「自己の財産に対すると同一の注意」ということを要求しています。要するに「自分なりに頑張った」とい うことでよいわけですが、逆にいえば注意義務を軽減される場合であったとしても「自己ベスト」は常に尽 くしなさいということです。課題に取り組むにあたって、常にみなさんが自己ベストを尽くしてくれること を切に希望しています。
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