となる118)わけである。そして,この随伴方程式,すなわち,(5.127)が,〔二定 理4〕の条件(a),すなわち,(5.90)と等しくなり,また,それゆえに(5.
113)と等しくなるわけである。119)
ⅤⅠ
この章では,タイプ2の問題の応用として,すでに取り上げた投資の地域間 配分を問題とするラ・−マン・モデル120)に再度注目し,〔定理3〕を用いて求 めた解と,〔定理4一〕を用いて求めた解とが,全く同じになることを確かめる ことにする。121)いうまでもなく〔定理3二〕は,タイプ1の問題を解くために導 出されたものであり,また〔定理4〕は,タイプ2の問題を解くために導出さ れたものである。そのために,同じ内容をもつラーマン・モデルを,タイプ1 の問題,およびタイプ2の問題としてそ・れぞれ定式化して\おく必要がある0
まず,ⅠⅤ章の第1節で取り上げたラーマン・モデル(その1)は,タイプ
116)それゆえ,U(g(わ,ゎに含まれる制御祝(わ=(払C(f),払仏*(≠))を近傍の変換に用 いることができる。
117)ⅠⅠⅠ尊,第4節の(3.73)と比牧せよ。
118)ⅠⅠⅠ草,第4節の(385)と比較せよ。
119)ただし,ぴ(∬,払α*,ゎには.£0が明示的に含まれていないことに注意せよ0 120)ⅠⅤ草,第1節,参照。
121)脚注97),参照。
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−−JO61一−
1の問題であり,つぎLのように定式化された。122)
タイプ1のラーマン・モデル つぎの目的関数,
i:
iあ1gl(f)+み2∬2(f))df (6.1)を,以下の制約に従って最大にする配分パラメタ・−β(f),(0≦f≦γ)を求め よ。
(6.2)
(6.3)
(6巾4)
(6u5)
麒1(g)=β(f)・(glgl(f)+g−2麒2(£)〉
麒2(f)=(1−β(f))igl麒1(g)+g2∬2(f)†
軋(0)=互㌢(>0),g=1,2
0≦β(£)≦1
しかし,これと同じ内容をもつ投資の地域間配分の問題も,地域別の投資水 準を新たな制御変数とみなすことによって,つぎのようなタイプ2の問題に書
き換え.ることができる。12さ)
タイプ2のラーマン・モデル つぎの目的関数,
i;舶1(叫2虞鵡匝 (6一.6)
を,以下の制約に従って最大にする投資水準的(f),(ま=1,2;0≦f≦T)を求 めよ。
足1( )=弘1 濫2(古)=弘2
122)ⅠⅤ率,第1節のラーマン・モデル(その1),参照。ただし,釣=毎払(∠=1,2)
は,いずれも正であるものとする。
123)したがって,βでとらえ.る率から,勘,(ま=1,2)でとらえる盈へと変更している ことになる。
最適制御理論について 勾(0)=g㌢(>0),よ=1,2
弘1≧0 比2≧0
ひ1+罷2−g1麒−1−g−2足2=0
−ヱ∂7−
(6.9)
(6.10)
(6.11)
(6.12)
このうち,前者の問題に対して,すでにわれわれは〔定理3〕を適用して,
その最適解の吟味を試みている。124)そこで,後者の問題をここで具体的に求め ることは避け,それに代わって,叙上の2つの問題を最終的に解くことになる 常微分方程式とそれに付随した最適制御変数の決定ルールが同値なものになる
ことを確かめることにしよう。
そのために,まず後者の問題,すなわち,タイプ2のラーマン・モデルに対 して〔定理4〕を適用してみよう。いま,ん=1とおき,(5.92)にしたがっ てハミルトニアン関数を構成すれば,つぎのようになる。125)
2
茸=∑ん/f
ブコ0
=(る1麒1+み2互2)+ス1弘1+ス2王↓2
簡単化のため,
ぁま+スi=クj, £=1,2
とおき,128)(6.て),および(6.8)を(6、13)に代人すれば,
g=pl弘1+タ2α2
(6…13)
(6小14)
(6.15)
を得る。
さらに,また,このハミルトニアン関数を用いてラグランジュ形式エ を構 成すれば,(5.91)より,つぎのようになる。127)
124)ⅠⅤ肇,第1節の展開がこれにあたる。
125)Ⅴ乳 第4節の(592),参照。
126)ⅠⅤ帝,第1節の(4L.19),参照。
127)Ⅴ章,第4節の(5191),参照。
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3
エ=ガ+∑〟。¢。
α=1
−ヱ∂β− J.977
(6…16)
ただし,ここでの制約式¢α,α=1,2,3は,叙上の問題における(6..10),(6.
11),および(6.12)を,それぞれ表わしている。128)それゆえ,すでに導いた
(6.15)を考慮すれば,ラグランジュ形式(6.16)は,結局つぎのようになる。
エ=∬+〟1払1+〟2弘2+〟3(払1+弘2−g1麒1−g2足2)
=(タ1+〟1+〟3)比1+(p2十〟2+〟3)比2−〟3(gl∬1十g2麒2)
(6.17)
また,ハミルトニアン関数の構成の際に導入された乗数ん,(去■=1,2)は,〔定 理4〕の条件(a)によって,つぎの随伴方程式の解でなければならない。129)
スf=一− 哉=〟3gゎ g=1,2
(6・18)他方,(6.14)の関係式で,あゎ(よ■=1,2)が仮定により定数であることから,
人吉=タブ, £=1,2 (6.19)
が成立する。180)したがって,新しく導入された補助変数れ(よ=1,2)は,つぎ の常微分方程式(6.20)の解でなければならない。
動(f)=〟3g■ゎ g=1,2 (6..20)
さらに,また,この補助変数動,(去■=1,2)は,〔定理4〕の条件(d)により,
つぎに示す終端条件をみたさねばならない。まず,与えられた問題において,
初期時刻(£=0)における地域別資本ストノクの状態β0は,(6..9)によって,
つぎのように指定されている。
範(0)=麒ダ(>0), よ=1,2
(6.21)
しかし,最終時刻(f=γ)における地域別資本ストックの状態β1は,前以っ 128)Ⅴ章,第4節の(5107),(5.108),および(51109)に対応する。
129)Ⅴ章,第4節の(590),および(6、17),参照。
130)ⅠⅤ孝,第1節の(4.22),参照。
最適制御理論について ーヱ0.9−
て何ら措定されていない。それゆえ,そ・の状態が任意に変化する方向を示すベ クトルとつねに直交する放線ベクトルの成分(すなわち,ん(刀,去=1,2)は,
ゼロでなければならない。換言すれば,スゎ(去■=1,2)に関する終端条件は,
人吉(ア)=0, 去=1,2 (6.22)
となる。181)したがって,これを新しい補助変数動,(宣=1,2)について書き換え.
れば,(6い14)より,
A(r)=あゎ £=1,2
(6..23)
を得る。1$2)
つぎに,クーン・クッカーの条件である〔定理4一〕の条件(c)〜(c〝)を,与 えられた問題に対して逐一・求めれば,以下のように示される。まず,〔定理4一〕
の条件(c)は,ラグランジ、ユ.形式エが(6.17)で与えられていることから,
つぎのようになる。1B8)
∂弘よ =A+萌+β3=0, £=1,2 (6.24)
また,双対定理にもとづく〔定理4〕の条件(c′)は,不等式制約に対応する α=1,2に関して,〝α如=0と〃α≧0との2種類から成り立っている。184)その
うち,前者に対応するものとして,
〟1比1=0
〟2乙 2=0
を得,185)また,後者に対応するものとして,
〟1≧0 (6.27)
131)ⅠⅤ章,第1節の(4124),参照。
132)ⅠⅤ草,第1節の(4、25),参照。
133)Ⅴ章,第4節の(594),参照。
134)Ⅴ章,第4節の(5.ノ95),および(5‖96),参照。
135)さらに, 1+ぴ2−gl私−g2馬=0である結果,〃8(α1+α2−gl晶−g2品)を加えて もよい。をお,この点については,脚注108),参照。
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−ヱJ∂− J.977
〟2≧0 (6.28)
を得る。さらに,また,実現可能領域内の点であることを保証する〔二定理4〕
の条件(c〝)は,制御変数に関する不等式制約(6.10),および(6,.11)と等 式制約(6小12)が,そのままの形で生かされる。すなわち,
弘1≧0 比2≧0
比1+比2−gl惹1−g2g2=0
となる。1鋼)
そして,最後に,与えられた問題の最適条件は,〔定理4〕の条件(b)によ って,つぎのように示される。1a7〉
Max ∬=タ1弘1+タ2弘2
〟∈Ⅳ(Ⅹ(才),チ)
(6.32)
したがって,最大原理は,この場合,(6.15)のハミルトニアン関数ガが最大 となるように,制約変数αゎ(よ=1,2)を許容された−すなわち,〔定理4〕
の条件(c)〜(c〝)をみたサー制御領域U(方(わ,わ のなかから選択すべきこ とを,われわれに教えている。
そこで,つぎに〔定理4〕の条件(c){一(c′′)を考慮しながら,かかる最適性 の条件を吟味することにしよう。いま(6小24)により,補助変数動,(宣=1,2)
と未知乗数〃ゎ(左=1,2)との関係が,つぎのように導かれる。
ク1一夕2=〟2−〟1 (6.33)
ここで,−・般性を失なうことなく,つぎの仮定を導入することにしよう。
ク1>p2 (6,34)
すなわち,この仮定は,第1地域における投資の影の価格が,第2地域のそれ よりも高いことを意味している。188)その結果,われわれは,(6.33)の関係よ
136)Ⅴ草,第4節の(5.97),および(598),参照。したがって,J′=2,J=3となる。
137)Ⅴ章,第4飾の(593),および(615),参照。
138)ⅠⅤ草,第1節の脚注174),参照。
最適制御理論について ーJJヱ】
り,未知乗数〃ゎ(去■=1,2)に関するつぎの不等式を得る○
〟2>〟1 (6・35)
もとより,この未知乗数拘,(去=1,2)は,〔定理4〕の条件(♂)の拘束を受 けており,それゆえに,いずれも非負でなければならない。139)
このとき,つぎに示す2つの場合が考えられる。そ・の第1は,拘,および〃2 がともに正である場合であり,その第2は,〃1はゼロであるが,〝2は正とな る場合である。そこで,この各々の場合について,さらに検討■してみよう。
まず,第1の場合には,
β2>〟1>0 (6・・36)
が成立する。それゆえ,この関係は,(定理4:〕の条件(c′)によって,
比1=0 (6=37)
弘2=0 (6=38)
を意味する。140)しかしながら,このことは,われわれの最初の仮定と矛盾する。
なぜなら,つねに正倍をとるgゎ(去=1,2)141)と経済学的に有意な地域別初期 資本ストックの水準142〉に関して,(6.12)をみたす許容制御びゎ(よ=1,2)は,
決してゼロにはなり得ないからである。したがって,この第1の場合は,最適 条件をみたすものではないことが判明する。
つぎに,第2の場合を検討してみよう。この場合には,
〟2>〟1=0 (6・39)
が成立している。そして,〃2が正であることは,〔定理4〕の条件(c′)によ って,
(6.40)
〃::こ∴lI
139)(6い27),および(628)による。
140)(6.25),および(6け26)による。
141)ⅠⅤ牽,第1節の(4‖5),および脚注122),参照。
142)(64),または(6小9)の成立を意味する。
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−ヱヱ2−
を意味する。14a)その結果,(6.40)を(6.31)に代人すれば,
払1=gl麒1+g2麒2
となり,さらに(6.7)を考慮すれば,
廠1(£)=g1麒1+g2g2
となる。また,(6.40)を(6l8)に代人すれば,
廠2(f)=0
(6.41)
(6.42)
(6.43)
となる。
さらに,また,(6.39)によって,〃1がゼロである結果,これを〔定理4〕
の条件(c),すなわち,(6い24),に代入すれば,
(6..44)
ク1= ̄β3
となることが判明する。
つぎに,タイプ1の問題に対する〔足理.3)の適用結果を検討することにし ょう。ク1が♪2よりも大であるとするわれわれの仮定144)は,〔定理3〕を用い てタイプ1のラーマン・モデルを解いた最適条件のうち,
β=1 (6・45)
であることを意味している。145)すなわち,このことは,当該2地域より生ずる 総貯蓄をつねに第1地域のみに投資配分すべきことを教えている。したがって,
ここでの帰結,すなわち,(6.45)をタイプ1の問題における状態方程式146)に それぞれ代人すれば,つぎのようになる◇
麒1(£)=glgl+g2g2
麒2(£)=0
143)(6,26)による。
144)すなわち,(634)の成立を意味する。
145)ⅠⅤ執 第1節の(427),参照。
146)ⅠⅤ章,第1節の(413),および(414)を意味する。