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書 評

ドキュメント内 ときわ コミュ18.indb (ページ 112-124)

* 常磐大学コミュニティ振興学部 准教授

Lectures on American Literature for Japanese Students, by Toshio Watanabe. Kenkyusha, 2011, pp.274.

渡辺利雄『講義アメリカ文学史入門編』 (研究社、2011 年3月)

外 山 健 二 *

本書は、アメリカ文学史の全体像を把握するために、アメリカ文学の中核をなす文学者 23 人のエッセンスを紹介したものである。アメリカ文学に興味ある読者には薦めたい一 冊となる。というのも、アメリカ文学を学びたい読者に必要不可欠な時代背景、社会状況、

そして伝記的事実の基礎的情報が魅力的に記述されているからである。

まず、「アメリカ文学の全体像」を見渡したい。「植民地時代−ピューリタニズムと啓 蒙思想」では、イギリス人による北アメリカ大陸の最初の植民地は 1607 年の南部ヴァー ジニア・ジェイムズタウンであったが、文化の中心は、1620 年のメイフラワー号でマサ チューセッツのプリマスに上陸したPilgrim Fathersによって植民が始められた北部ニュー イングランドであったことが示される。その北部植民地の指導者William Bradfordと

John Winthropが記述した植民地建設に関する文書がアメリカ文学史の出発点とされる。

南部植民地では、Captain John Smithの報告書が伝えられている。

以上は、厳密な意味での文学作品ではないが、アメリカ文学を特徴づける初期の文献 として言及される。アメリカ最初の女性詩人Anne Bradstreet、アメリカ有数の詩人であ るEdward Taylor、当時のベストセラー作家Michael Wigglesworth、聖職者を代表する Cotton Mather、そして植民地で最初に印刷された書物Bay Psalm Book(1640)などは無 視することができない。

植 民 地 時 代 の 18 世 紀 に な る と、 神 を 中 心 と す る 信 仰 の 時 代 か ら 自 然 の 法 則 と 人 間 の 理 性 に 信 頼 を 置 く 人 間 中 心 の 世 界 へ と 移 る。Thomas Jeffersonの“Declaration of Independence”(1776)やThomas PaineのCommon Sense(1776)が重要な位置を占め る。この時代を代表するBenjamin FranklinのAutobiography(1818、完成版 1867)は合 理主義と功利主義のエッセンスである。一方、信仰復活を目指す神学者Jonathan Edwards

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は“Sinners in the Hands of an Angry God” (1741)で世俗社会を警告した。また、フラ ンスに生まれアメリカに移住したMichel-Guillaume Jean de Crevecoeurは、Letters from an American Farmer (1782)で「アメリカ人とは何か」という根本的な問題を投げかけ た。さらには、先住民インディアンに拉致された白人女性Mary Rowlandsonなどによる

「インディアン捕囚体験記」はアメリカ独自の小説の原点の一つと見なされることがある。

次に「独立戦争からアメリカン・ルネサンス」である。1776 年に政治的に独立した アメリカでは社会が安定するにつれて職業作家が姿を現す。アメリカ最初の文人の一人 Washington IrvingはThe Sketch Book (1819 − 20)を書いた。だが、アメリカ最初の職業 作家はCharles Brockden Brownとされ、Wieland (1798)で知られる。一方で、当時は女 性の読者も多かったと言われ、フェミニズム運動を背景に、アメリカ最初のベストセラー 小説Charlotte Temple (1791) を書いたSusanna Haswell Rowsonやその他、William Hill Brown、Hannah Webster Fosterなどの通俗作家にも光が当てられるようになった。

19 世紀初頭のアメリカ文学では、James Fenimore CooperのThe Last of the Mohicans 

(1826)らに見られる開拓地での文明と自然の対立をモチーフにする作品が特徴的である。

詩人としては、Edgar Allan Poeは疎外された非現実の幻想と美の世界を描き出しただけ ではなく、推理小説の開祖としても大きな影響を残した。1830 年代になると、超越主義 がアメリカの思想的主流となり、American Renaissanceと称されるアメリカ・ロマン主義 の時代となる。その中心となったのは、Ralph Waldo Emersonで“The American Scholar”

(1837)はアメリカの「知的独立宣言」とされる。同時に、彼はNature (1836) で自己 信頼に基づく精神風土を確立した。彼の思想に共鳴したHenry David Thoreauは、Walden 

(1854)で有名である。詩人Walt Whitmanもエマソンの思想をLeaves of Grass (1855 − 92)において発展させた。

しかし、エマソン流の考え方に懐疑的であったNathaniel HawthornやHerman Melville らは、それぞれThe Scarlet Letter (1850)とMoby-Dick (1851)において人間の暗い 一面と本質的な悲劇を追求した。ロマン主義を受け継いだのは、Henry Wadsworth Long-fellow、Oliver Wendell Holmes、James Russell Lowellらである。同時に、Harriet Beecher StoweのUncle Tom’s Cabin (1852)なども大きな影響力があった。

「リアリズムから自然主義へ」であるが、南北戦争(1861 − 65)が大きな変化をもた らした。南北戦争が、急激に変化するアメリカの現実に目を向けた作家Mark Twainは The Innocents Abroad (1869) で有名になり、Adventures of Huckleberry Finn (1885)で

アメリカ的な文学の伝統を築いた。一方、Henry JamesはThe Portrait of a Lady (1881)

The Ambassadors(1903)などによってアメリカ文化とヨーロッパ文化を対比的に描き、

「国際状況」小説を発表した。この二つの流れに沿うように、William Dean Howellsがア メリカ・リアリズム運動を推進させた。その他、19 世紀後半の通俗的小説家F. Marion CrawfordのSaracinesca (1887)やHoratio Algerなど文学史的には重要である。

この時期は、地方色の文学が現れたのも特徴的である。また、1890 年代になると、

Stephen CraneのThe Red Badge of Courage (1895) などで自然主義文学への傾向が強ま り、Frank NorrisやJack Londonらが代表的な存在になる。

「20 世紀――モダニズムと抗議の文学」になると、Lost Generationの作家が登場する。

F. Scott FitzgeraldのThe Great Gatsby (1925) やErnest HemingwayのThe Sun Also Rises 

(1926) が書かれる一方、Upton Sinclairによって「抗議小説」も書かれた。20 世紀初め には、Sherwood AndersonのWinesburg, Ohio (1919)とSinclair LewisのBabbitt (1922)

が現れ、ルイスは 1930 年にアメリカ文学者として初めてノーベル文学賞を受賞した。他 にも、Edith Wharton、Sarah Orne Jewett、Willa Cather、Ellen Glasgow、Kate Chopinらが いる。特に、ショパンのThe Awakening (1899)はアメリカのMadame Bovaryと称され る。この運動のなかで、Charlotte Perkins Gilmanの“The Yellow Wall-Paper” (1892)は 評価されるようになった。南部では、William FaulknerのThe Sound and the Fury (1929)

やThomas WolfeのLook Homeward, Angel (1929) が登場した。なかでも、Dawn Powell は 2001 年に‘Library of America’に主要作品が収録された注目すべき作家である。

このような「失われた世代」の時代には、詩の動きも顕著となる。Emily Dickinson、

Hart Crane、T. S. Eliot、Ezra Poundらが重要となり、モダニスト詩人として活躍する。他 にも、William Carlos Williams、Robert Frost, Wallace Stevensなども忘れ難い存在であ る。演劇では、Eugen O’Neillが注目された。南部では、John Crowe Ransom、Allen Tate らが「新批評」として分析批評が定着した。この南部では、Robert Penn Warren、Truman Capote、Katherine Anne Porter、Carson McCullers、Eudora Welty、Flannery O’Connor な どがSouthern Renaissanceと称され活躍した。

1929 年の大恐慌を契機として、アメリカ 1930 年代は左傾化し、社会意識の強い文 学が生成されるようになる。John Dos Passosは三部作U. S. A (1938) を発表し、John SteinbeckはThe Grapes of Wrath (1939)でアメリカの革新運動を展開する。James T.

FarrellのStuds Lonigan三部作(1932 − 35)、Erskine CaldwellのTabacco Road (1932)、

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Nathanael WestのA Cool Million (1934)、Dashiell HammettのThe Maltese Falcon (1930)

らも特徴的である。

「 第 二 次 大 戦 後 の 文 学 」 で あ る。Norman MailerのThe Naked and the Dead (1948)、

Irwin Shaw の The Young Lions (1948)、James Jones の From Here to Eternity (1951)

が 登 場 し、 同 時 に、J. D. SalingerのThe Cather in the Rye (1951)、Joseph HellerCatch-22 (1961)、Ken KeseyOne Flew Over the Cuckoo’s Nest (1962)、Kurt Vonnegut

Slaughterhouse-Five (1969)などは当時の若者のバイブルとなった。また、1950 年

代はBeat Generationの時代であり、Jack KerouacのOn the Road (1957)や詩人Allen Ginsberg、Henry MillerのTropic of Cancer (パリ版 1934、アメリカ版 1961)が評価さ れる。演劇では、Tennessee WilliamsのA Streetcar Named Desire (1947)やArthur Miller のDeath of a Salesman (1949)が際立つ。

この時代は、マイノリティ・グループの文学者の台頭もある。一つは黒人(アフリカ 系アメリカ人)であり、Richard WrightのNative Son (1940)が抗議小説として、Ralph EllisonやJames Baldwinらに受け継がれ、1960 年代に黒人作家が活躍する。1970 年代 以降は、黒人女性作家が活躍し、Alice WalkerのThe Color Purple (1982)や黒人女性 作家として初めてノーベル文学賞を受賞したToni MorrisonのThe Bluest Eye (1970)や Beloved (1987)らが評価される。他方、Saul Bellow、Bernard Malamud、Philip Rothら のユダヤ系作家が輩出され、アメリカ文学の主流をなす。

この時代のアメリカ文学は、実験的手法による新しい小説の可能性を求める動きもあ る。John BarthのThe Sot-Weed Factor (1960)やWilliam BurroughsのThe Naked Lunch 

(パリ版 1959、ニューヨーク版 1962)、そしてJames Purdyらの「ブラック・ユーモ ア」派の小説家、さらには、John UpdikeのRabbit, Run (1960)、John Cheever、Richard Brautigan、Donald Barthelme、Jerzy Kosinski、Thomas Pynchon、Joyce Carol Oates、Wil-liam Styron、John Gardner、Vladimir Nabokov、Isaac Bashevis Singerらが意欲的に作品を 発表した。20 世紀は小説が主流を占めるが、詩では、Sylvia Plath、Robert Lowell、John Berryman、Adrienne Richらがいる。「イマジズム」の系譜では、e. e. cummings、Charles Reznikoff、Louis Zukofskyらがいる。

「注目すべき最近の動向」である。アメリカは 1960 年代に大きく変化した。ベトナム 戦争に対する若者の抵抗、女性や同性愛者などの社会的弱者の権利要求運動などがある。

さらには、エコロジー運動も活発化した。Richard CarsonのSilent Spring (1962)を契機

として人間と自然の共生関係を追及する‘Nature Writing’が注目される。さらには、カリ ブ海諸国やアフリカ諸国の文学と共通する「英語圏文学」との連携も視野に入れるアメリ カ文学の動向があり、新たしい衣装をまとったアメリカ文学が立ち現れてくる。新しい 動向では、さらに、アメリカ・インディアンとよばれていた先住民の作家たち、Marmon Silko、N. Scott Momaday、Louise Erdrichらがユニークな作品を発表している。また、日 系のJohn Okada、中国系のAmy Tan、Maxine Hong Kingston、中南米系のヒスパニック 文学者、ゲイ・レズビアンの作家、SF、ファンタジー、ホラー小説、推理小説なども文 学史で認知される。演劇では、Edward AlbeeのThe Zoo Story (1960)やWho’s Afraid of Virginia Woof? (1962)、David MametOleanna (1991)、Neil Simon、Sam Shepard、

Tony Kushner などが活躍している。こうした新しい動きに合わせ、伝統的な文学を保 持 す るJohn IrvingのThe World Acording to Garp (1978) や ミ ニ マ リ ス ト のRaymond CarverやBobbie Ann Mason、80 年代のアメリカ生活の細部を描くAnn Beattie、現代社 会の不可思議さを描くPaul Auster、イタリア系のDon DeLillo、Cormac McCarthyなども 翻訳を通して日本の読者に影響を及ぼしている。アメリカ文学は世界文学のなかで重要な 位置を占めている。

第一章「ウィリアム・ブラッドフォードとジョン・ウィンスロップ」では副題が端的に 要点を示している。つまり副題「アメリカ文学は、ピューリタン・ニューイングランド 植民者たちの理想社会追求と植民地建設の苦難の体験の記録文書に始まった」である。

ブラッドフォードやウィンスロップの略伝が分かるだけではなく、ウィンスロップの

「Nathaniel Hawthornの 17 世紀のニューイングランド植民地を舞台にしたThe Scarlet Let-ter (1850)や、短編“Endicott and the Red Cross”, “Howe’s Masquerade”に姿を見せる」

といった記述は文学史が読者に直接作品を読むことを刺激する。

第二章「ジョナサン・エドワーズ」の副題は「『ニューイングランド的良心』の原点 / 個人の魂を揺さぶる熱烈な信仰と人間の内面心理の解明」である。フランクリンと対照的 なエドワーズは、時代に逆行した神学者として知られるが、彼の背後には当時の〈科学の 新知識〉があった。1735 年頃からの宗教の世俗化に抵抗する「信仰復興運動」とのかか わりで、George White eld (1714 − 70)が登場するのは興味深い。さらには、エドワー ズの“Personal Narrative”などは文学作品として無視できない。

第三章「ベンジャミン・フランクリン」の副題は「『すべてのヤンキーの父』/ フラン クリンを知らずしてアメリカ文学を理解することはできない」である。この副題によって

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