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暴露-反応解析

ドキュメント内 40. Formaldehyde ホルムアルデヒド (ページ 71-75)

10. 実験室および自然界の生物への影響

11.1 健康への影響評価

11.1.2 暴露-反応解析

証拠の重みは、ホルムアルデヒドが細胞毒性に関係した増殖性再生反応の必須の前駆病 変を誘発する濃度でのみ発がん性があることを示しているが、DNA との相互作用も考慮 されねばならない。他の評価との一貫性と説明の容易さのために、発がん性と非発がん性 の影響はここでは別々に考察されているが、作用機序を考慮するとそれらは緊密に関係し ている。

11.1.2.1 吸入

11.1.2.1.1 非腫瘍性影響

実験動物で実施された実証研究による裏付けになる所見ばかりでなく、ヒトの集団の臨

床研究と横断的調査の十分なデータが、ホルムアルデヒドは非常に低い濃度で眼、鼻、お よび咽喉への刺激作用を起こすことを示している。個人による感受性並びに温度、湿度、

期間、他の刺激物への複合暴露といった暴露条件が反応が生じる濃度におそらく影響を及 ぼすが、信頼すべき研究の結果では、≦0.1 ppm(≦0.12 mg/m3)のホルムアルデヒドで暴 露後に刺激を感じるのは集団のほんの一部である。この濃度は、ヒトのボランティアでの 臨床研究で鼻腔前部の粘液線毛クリアランスを低下させる濃度(0.25 ppm [0.30 mg/m3])、

そしてまた暴露された作業員に関する横断的研究での鼻部上皮の組織病理学的影響を誘起 する濃度(0.25 ppm [0.30 mg/m3])よりも低い。より低濃度(40~60 ppb [48~72 µg/m3]) のホルムアルデヒドの住居環境における小児の肺機能への影響を示唆した予備的試験結果 (Krzyzanowski et al., 1990)の追加調査が必要である。

11.1.2.1.2 発がん性

このセクションで取り扱う用量反応モデルには2つのアプローチ法がある。生物学的誘 因による個別モデルとデフォルトの曲線当てはめ法である。がんリスクのもっとも納得で きる推定値を与えると考えられているのは生物学的誘因による個別モデルである。このモ デルは多くの選択肢の中からのパラメータの選択および単純化した仮説の利用を必要とす るなどがん生物学の単純化を必然的に伴うが、できるだけ多くの生物学的データを取り込 むとデフォルト法に勝ると考えられている。

よく用いられる生物学に基づく方法は、二段階クローン性増殖モデリング、並びに鼻部 の種々の部位におけるホルムアルデヒド流量の計算流体力学モデリングおよび下気道での シングルパス・モデリングによる暴露量測定を組み込んでいる。

モデルパラメータのうちどれがもっとも大きい影響をリスク推定に与えるかを決定する ために、またはこの生物学的誘因による個別モデルに対しどのパラメータがもっとも確実 であるかを確認するために実施された感度解析は、クローン性増殖の数個のパラメータ(す なわち、時間遅延、ラットの鼻への最大流量時の分配率、DNA-タンパク架橋相関濃度、

および細胞世代当たりの突然変異の確率)および暴露量測定(流量ビンの数)成分に限られて いた。しかしながら、モデルの結果は、ヒトの集団で感覚刺激14が起こらないように講じ られた対策が発がん性に関して十分に保護をしていることを裏付ける根拠として妥当であ

ると考えら

れる。

4 粘液線毛クリアランスへの影響またはヒトの鼻に対する組織病理学的障害よりも低濃 度で起こる。

生物学的誘因による個別モデルから導かれた結果は、実験的範囲における腫瘍発生濃度 の推定のための実証的なデフォルト方法論に基づいて導かれた結果と比較されている (Health Canada, 1998)。その上、物学的誘因による個別モデルをここで明らかに重要視し、

かつ優先している点から見て、デフォルト方法論による腫瘍発生濃度の計算(例えば、ラッ トに対する実証的用量測定基準を導くための用量・時間依存性)に生物学的データを一層多 く取り込む意図はなかった。

1) 生物学的誘因による個別モデル

ホルムアルデヒドはラットで吸入後に発がん性を示し、その発がん反応は接触部位(例え ば、げっ歯類の鼻孔)に限られるという疑う余地のない証拠がある。作用機序はよく理解さ れていないが、実験室での研究から得られたデータに主として基づくと、細胞毒性に関連 している再生増殖はホルムアルデヒドによるがん誘発において必須の中間ステップである ようである。DNA-タンパク架橋に起因する突然変異の可能性は不明であるが、遺伝物質 との相互作用(その可能性は DNA-タンパク架橋によって暗示される)もおそらく一因で あろう。

しかしながら、ホルムアルデヒドは接触部位で極めて反応性が強いことから、実験動物 とヒトとの間の鼻腔と気道のかなり異なった解剖学的特徴に起因する組織への流量および 局部組織の感受性の関数としての反応の種間変動を予測するのに、暴露量測定は決定的に 重要である。

生物学的誘因による個別モデルは、再生細胞増殖、および変異原性(DNA-タンパク架 橋により特に規定されていない)の寄与を組み込んでいる。再生細胞増殖はホルムアルデヒ ドによる腫瘍誘発における必須ステップであり、変異原性は、がんに対する複雑な機能関 係のモデリングでは、ホルムアルデヒドの作用による突然変異、細胞複製、およびクロー ン増殖の急上昇によって、低暴露で最大の影響を及ぼすとされている。その組み込まれて いるクローン増殖モデリングは、他の生物学に基づく二段階クローン増殖モデル(MVKモ デルとしても知られている)に等しく、正常増殖、細胞周期時間、および危険にさらされた 細胞(気道の様々な部位の)に関する情報を組み込んでいる。暴露量測定の種間変動は、鼻 部の種々の部位におけるホルムアルデヒド流量の計算流体力学モデリングおよびヒトの下 気道のシングルパス・モデルにより考慮されていれる(CIIT, 1999)。

用量反応関係モデルの誘導と種々のパラメータの選択は添付資料4にまとめられており、

またCIIT(1999)で詳細に提示されている。生物学的誘因による個別モデルの開発は鼻腔の

みの解析を必要としていたが、ヒトの場合には、発がんリスクは全気道に沿った部位への ホルムアルデヒド量(すなわち、局所流量)の推定値に基づいた。

2) デフォルトモデリング

ちなみに、ホルムアルデヒドの腫瘍発生濃度05(TC05)(バックグラウンドよりも腫瘍発生 率を5%増加させる濃度)が 7.9 ppm(9.5 mg/m3)(95%信頼下限界[LCL] = 6.6 ppm [7.9 mg/m3])であることが、用量反応がもっともよく分かっている単一試験(すなわち、

Monticello et al., 1996)でのホルムアルデヒド暴露ラットにおける鼻部の扁平上皮腫瘍発 生率に関するデータから導かれた。5 添付資料5でTC05の推定に関する情報がさらに詳 細に提示されている

11.1.2.2 経口暴露

経口摂取したホルムアルデヒドの潜在的発がん性の証拠欠如によって、発がん性に対す る暴露反応関係の解析はなされていない。

ホルムアルデヒドの経口摂取に関係する非腫瘍性の影響に関するデータは、吸入の場合 よりもはるかに限られている。ホルムアルデヒドの反応性のために、経口摂取後の最初の 接触組織(すなわち、口腔粘膜や胃腸粘膜を含む気管食道領域)における非腫瘍性の影響は、

累積(総)摂取量よりもむしろ摂取されたホルムアルデヒドの濃度に関係すると考えられる。

ヒトに関する研究から得られる情報は、ホルムアルデヒドの長期摂取に関係する毒性影響 についての想定される暴露反応関係を確認するには不十分である。しかしながら、摂取さ れた製品中のホルムアルデヒドの耐容濃度(TC)は、ラットの口腔粘膜や胃腸粘膜を含む気 管食道領域における組織学的変化の発生に対する NOEL に基づいて以下のように導出さ れる:

TC = 260mg/L/100 = 2.6mg/L

5 1Kerns ら(1983)および Monticello ら(1996)により実施された試験からのデータを合 わせたホルムアルデヒド暴露ラットにおける鼻部の腫瘍発生率に基づくと、腫瘍発生率を

5%増加させるホルムアルデヒド濃度(最尤推定値)はおよそ6.1 ppm(7.3 mg/m3)であった

(CIIT, 1999)。

ただし:

# 260mg/Lは、2年間飲料水中のホルムアルデヒドをラットに投与して実施されたもっ

とも広範囲の試験(Til et al., 1989)で、口腔粘膜や胃腸粘膜を含む気管食道領域での影響

(すなわち、組織病理学的変化)に対するNOELであり、そして

# 100は不確実係数(種間変動が×10、種内変動が×10)である。6

ドキュメント内 40. Formaldehyde ホルムアルデヒド (ページ 71-75)

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