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本章では、暫定2車線区間ボトルネック交通容量推定の適用事例として、東海北陸道の4車線化 事業を対象に、顕在化しているボトルネックを解消することによって発生する潜在的ボトルネック の推定方法と、潜在的ボトルネックの交通容量の推定方法について述べるとともに、推定した潜在 的ボトルネックの交通容量および交通需要パターンを用いた渋滞予測手法と、これによって計画し た段階供用の結果検証について述べる。

東海北陸道の美濃IC〜美並ICは、平成16年12月に4車線化供用した。当該区間には、美並IC の直近下流に位置する「苅安 TN」が当該道路を代表するボトルネックとして存在しており、これ まで大きな渋滞要因となっていた。お盆や冬期スキーシーズンには、このボトルネックを先頭とす る渋滞が 30km以上延伸し上流の白鳥 ICまで繋がり、一般利用者を含め、少しでも早くボトルネ ックの解消が求められていた。

当初は美濃IC〜美並IC間の一括4車線化を予定していたが、こうした背景のもと、お盆時期の 大きな渋滞を低減することを目的に、苅安TNを含む大矢南IC〜美並IC間を8月のお盆前に先行 して4車線化を実施し、その後、新たなボトルネックとして想定した古城山TN 付近を 10 月に4 車線化し、12月に美濃IC〜美並IC間全線の4車線化を行った。

 

6-1  ボトルネックの推定

4車線化段階供用を効果的・効率的に進めるためには、ボトルネックの把握が必要である。

ここでは、供用済暫定2車線区間を対象とし、東海北陸道の美濃IC〜白鳥IC間において、フロ ーティング調査結果を基に潜在的ボトルネックの推定を行った。

なお、未供用の暫定2車線区間のボトルネックを推定する際、暫定2車線区間の縦断・平面線形 等の道路構造の整理し、サグ・トンネルに着目したボトルネックの抽出が必要である。

 

(1)フローティング調査時の交通状況 

図 6-1-1に車両感知器の設置位置を示すとともに、図 6-1-2に調査日の車両感知器データから作 成した速度コンター図を示す。

2月22日においては、美並IC先の苅安TN付近(48kp付近)を先頭に、13時30分頃〜20時頃 にかけて最大20km程度の渋滞が発生した。また、郡上八幡IC先の亀尾島TN付近(58kp付近)に おいても、速度低下傾向が見られる。2月23日は、渋滞が発生しなかった。

                                                                       

                                                                       

                             

図 6-1-2(1)  東海北陸道(上り線)美濃〜白鳥間の速度コンター図 

                                 

図 6-1-2(2)  東海北陸道(上り線)美濃〜白鳥間の速度コンター図 

調査日:平成16年2月22日

調査日:平成16年2月23日

(2)フローティング調査結果

図 6-1-3に非渋滞流時の地点別平均速度図を示す。

・  上り線の2月22日(日)の13時26分スタートと15時55分スタートの2回は、苅安TN付 近、亀尾島TN付近で渋滞列の中を走行した。

・  上記以外の上り線6回、下り線の8回においては、非渋滞流の走行環境下で走行した。

表 6-1-1に、非渋滞流時において、速度が低下している地点と、その時の速度低下状況、上流 側との速度差をとりまとめたものを示す。

表 6-1-1  東海北陸道(上下線)の速度低下地点と平均速度 

非渋滞時平均速度の 低下状況 上下 地点名 測  点

低下前速度1) 最低速度

上流側との速度差

(平均速度)

古城山TN付近 38kp付近 97.3 → 71.9 25.4 鶴形山TN付近 41kp付近 83.8 → 71.9 11.9 黒地TN付近 43kp付近 88.3 → 75.5 12.8 苅安TN付近 49kp付近 90.7 → 70.7 20.0 山田TN付近 52kp付近 90.0 → 75.5 14.5 亀尾島TN付近 58kp付近 89.1 → 78.5 10.6 神路TN付近 65kp付近 93.6 → 84.7 8.9 上り線

平山TN付近 68kp付近 104.9 → 82.6 22.3 美濃TN付近 33kp付近 −2) → 79.0 −

古城山TN付近 37kp付近 88.4 → 81.5 6.9 立花TN付近 40kp付近 84.4 → 75.6 8.8 鶴形山TN付近 41kp付近 78.9 → 75.0 3.9 黒地TN付近 44kp付近 86.8 → 74.7 12.1 勝原TN付近 45kp付近 86.8 → 72.9 13.9 野首橋付近 50kp付近 91.0 → 76.5 14.5 赤谷TN付近 54kp付近 86.8 → 81.7 5.1 雛成TN付近 57kp付近 83.6 → 78.3 5.3 小瀬子TN付近 62kp付近 90.6 → 79.5 11.1 大和橋付近 66kp付近 90.6 → 80.0 10.6 下り線

中津屋橋付近 74kp付近 85.2 → 74.4 10.8 注1)最低速度に至る一連の速度低下が始まる直前の速度を読み取った。

注2)走行開始地点直近のため把握できない

                                                                     

図 6-1-3  東海北陸道(上下線)美濃〜白鳥間フローティング調査結果と速度低下図 

120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10

120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10

52 54

44 46 48 50

54

下り線

上り線

40 42

32 34 36 38 40 42

32 34 36 38 44 46 48 50 52

0

0

進行方向 美濃TN付近

(追従不完全のため速度高め?) 古城山TN付近

立花TN付近鶴形山TN付近 勝原TN付近 赤谷TN

古城山TN付近 鶴形山TN付近 黒地TN付近 苅安TN付近

81.5 88.4

▲6.9

75.6 84.4

▲8.8

75.5 88.3

▲12.8 70.7

▲20.0 90.7 75.0

78.9

▲3.9

72.9 86.8

▲13.9 81.7

86.8

▲5.1

71.9 97.3

▲25.4 71.9

83.8

▲11.9

山田TN付近 野首橋付近 黒地TN付近

74.7 86.8

▲12.1

76.5 91.0

▲14.5

75.5

▲14.5 90.0

120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0

120 110 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 76

68 70 72 74

60 62 64 66

56 58

70 72 74 76

62 64 66 68

56 58 60

進行方向 付近

   各回の走行速度    空間平均速度    顕在化ボトルネック    潜在的ボトルネック

亀尾島TN付近

平山TN付近

▲10.678.5 89.1

▲22.382.6 104.9

雛成TN付近 大和橋付近 中津屋橋付近

神路TN付近 小瀬子TN付近 78.3

83.6

▲5.3

79.5 90.6

▲11.1 80.0 90.6

▲10.6 74.4

85.2

▲10.8

▲8.984.7 93.6

(3)ボトルネックの推定結果

フローティング調査の速度低下箇所を潜在的ボトルネックとして推定した。

東海北陸道の美濃 IC〜白鳥 IC 間における顕在化ボトルネックと潜在的ボトルネックは表 6-1-2のとおりである。

表 6-1-2  東海北陸道(上下線)美濃〜白鳥間のボトルネック推定結果 

区  分 上り線 下り線

顕在化 ボトルネック

古城山TN付近 苅安TN付近 亀尾島TN付近 平山TN付近

美濃TN付近    古城山TN付近 立花TN付近    鶴形山TN付近 勝原TN付近    赤谷TN付近

潜在的 ボトルネック

鶴形山TN付近 黒地TN付近 山田TN付近 神路TN付近

黒地TN付近    野首橋付近 雛成TN付近    小瀬子TN付近 大和橋付近    中津屋橋付近

 

6-2  ボトルネック交通容量の推定

潜在的ボトルネックの交通容量の推定は、まず顕在化ボトルネックの交通容量を算出し、その 上で、フローティング調査の走行速度や車両感知器データを勘案して行った。

6-2-1  顕在化ボトルネックの交通容量の算出 

顕在化ボトルネックの交通容量は、Q-V図で渋滞発生時交通量と渋滞発生後捌け交通量の範囲 を把握するとともに、渋滞発生日毎の交通量速度変動図から読み取って算出した。

 

(1)顕在化ボトルネックの交通容量の範囲

表 6-2-1に顕在化ボトルネックの交通容量の範囲を示すとともに、図 6-2-1に観測した車両感 知器データのQ-V図を示す。

表 6-2-1  東海北陸道(上り線)美濃〜白鳥間の顕在化ボトルネックの交通容量の範囲 

ボトルネック 名称

測点

(KP)

車両感知器の

測点(KP) 交通容量の範囲 上り線

古城山TN付近 37.0 37.78 渋滞時のサンプルが存在していないため、範囲 の把握が困難である。

上り線

苅安TN付近 48.6 48.43 48.92

渋滞発生時交通量      950〜1,250台/時 渋滞発生後捌け交通量  850〜1,050台/時 上り線

亀尾島TN付近 58.7 59.07 渋滞発生時交通量    1,050〜1,300台/時 渋滞発生後捌け交通量  950〜1,150台/時 上り線

平山TN付近 69.0 73.22 車両感知器が対象ボトルネックから離れている ため、範囲の把握が困難である。

                         

図 6-2-1  東海北陸道(上り線)美濃〜白鳥間の車両感知器データ Q-V 図  苅安TN付近(顕在) 

発生後850〜1050台/時 発生前 950〜1250台/時

亀尾島TN付近(顕在)  発生後950〜1150台/時

発生前1050〜1300台/時

(2)交通量速度変動図による交通容量の算出

交通量速度変動図を用いた交通容量の算出方法、算出手順、算出結果について示す。

1)算出方法

美濃IC〜白鳥IC間は、1IC区間に1箇所ずつループ式車両感知器が設置されている区間 であるため、ボトルネックと車両感知器の距離が離れている場合が多い。このため、ループ 式車両感知器データのQ-V図から交通容量を算出することは好ましくない。

したがって、ここでは、車両感知器データを用いて渋滞発生日毎に交通量速度変動図を作 成するとともに、道路巡回車の情報から得られる渋滞データを照らし合わせ、日々の渋滞時 間帯を分析することにより交通容量を算出する。なお、算出した渋滞発生時交通量は、集計 単位1時間の渋滞予測モデル等に適用することから、15分間フローレート値を用いて算出 することとする。

2)算出手順

算出手順は以下のとおりである。 

(1) 渋滞データをもとに渋滞発生日を抽出し、日毎に交通量速度変動図を作成する。

(2) ボトルネックの直近上下流に車両感知器がある場合、交通量速度変動図の速度低下 状況に応じて渋滞時間を把握する。速度低下が確認できない場合、渋滞データに記 録されている渋滞時間内および直前の交通量を集計する。

(3) 欠測サンプル・交通量過小サンプルなどは集計対象外として、渋滞発生時交通量、

渋滞発生後捌け交通量を集計し、その平均値を算出する。

3)算出結果

表 6-2-2  東海北陸道(上り線)美濃〜白鳥間の顕在化ボトルネックの交通容量算出結果 

(単位:台/時)

渋滞発生時交通量 15分間フローレート

渋滞発生後 捌け交通量 顕在化

ボトルネック

名称 平均値 標準偏差 平均値 標準偏差

苅安TN付近 1,094 89 932 54

亀尾島TN付近 1,208 74 1,067 55

注:古城山TN付近と平山TN付近は、渋滞サンプルが少数であったため、個別に交通容量を算 出する。

6-2-2  潜在的ボトルネックの交通容量の推定 

(1)確定的推定方法を用いた潜在的ボトルネック交通容量の推定

ここでは、4-1 項での交通容量と道路構造との関係から導き出したボトルネック交通容量の確 定的推定方法をもとに、潜在的ボトルネックの道路構造を用い、潜在的ボトルネックの交通容量 を推定する。

                   

表 6-2-3  確定的推定方法によるボトルネック交通容量の推定結果一覧 

道路構造 IC

区間 名

地点

(TN名) 区分 下流側 縦断勾配

(%)

付加車線 延長

(m)

渋滞 要因

渋滞発生時 交通量 (台/時)

渋滞発生後 捌け交通量

(台/時)

古城山 顕在化 2.0 1,000 トンネル・サグ 1,137 933 鶴形山 潜在的 0.9 500 トンネル・サグ 1,229 1,017 黒  地 潜在的 3.0 500 トンネル・サグ 1,052 856 美濃

〜美並

苅  安 顕在化 2.6 500 トンネル・サグ 1,086 887 山  田 潜在的 2.9 800 トンネル・サグ 1,061 864 美並

〜郡上八幡 亀尾島 顕在化 3.0 800 サグ 1,159 1,018 郡上八幡

〜ぎふ大和 神  路 潜在的 1.2 500 トンネル・サグ 1,204 994 ぎふ大和

〜白鳥 平  山 顕在化 1.7 500 トンネル・サグ 1,162 956  

       

渋滞発生時交通量  =(-84.414)×[下流側縦断勾配(%)] 

+(-106.85)×[トンネル要因(0,1)] 

+  1412.3 

渋滞発生後捌け交通量  =(-76.667)×[下流側縦断勾配(%)] 

+(-161.61)×[トンネル要因(0,1)] 

+  1247.5