• 検索結果がありません。

「日時計の数学」(第 6 章)の教材化

第7章 総合考察

付録 2 「日時計の数学」(第 6 章)の教材化

はじめに:

本教材は,高校2年生の生徒を対象に教材化されたものである。なお,本教材において主 に理解が必要なのは高等学校数学Ⅰで学ぶ三角比の導入レベルである。本実験では,高校 2年生を対象としたが,本来であれば高校1年時の数学Ⅰで十分実施可能である。

授業のねらい:

日時計のことを学んだ上で,赤道型日時計の原理を理解し作成する。その上で,赤道型日 時計を利用して水平型日時計を作製することを目指す。まず,平面図形,空間図形を活用し て赤道型日時計の原理を理解する。ここで,三角比を用いて赤道型日時計をより正確に作製 する。さらに,三角比,三角関数を利用して,水平型日時計の時刻盤を作製する。

この活動の中で,主に三角比を活用し,三角比の理解を深めることを目指す。

授業内容:

(1) 日時計の科学史について知る(導入として15分)

授業での導入として日時計がどこでどのように使われてきたかを示した。その後,日時計に ついて調べるレポート課題を課して日時計の知識を広げさせた。

(2) 赤道型日時計の原理についての学習及び作製(2時間)

赤道型日時計の原理の理解と作製については,中学 2 年生を対象に作られたテキスト(守 屋ら(2001))を使用した。こちらを参照されたい。なお,このテキストや先行研究においては,

赤道型日時計を作品と仕上げているが,本実験では赤道型日時計から水平型日時計を作製 することを目標としているので,簡単な模型を作製するに留めた。

147

図1 守屋ら(2001)のテキストを基に授業で用いたスライドの一部

ここで,図 2 のように,ノーモンを時刻盤に垂直に立てる必要が出てくる。このとき,平面 に対して垂直な直線を三垂線の定理から考えたり,∠CBA=90°-緯度,∠BCA=90°である ことから,∠BAC=緯度であることを導いたりしながら,ノーモンを時刻盤に対して垂直に立て る活動を行う。

図2 ノーモンを時刻盤に垂直に立てる

しかし,高校生に実際に作らせてみると,時刻盤の書かれた厚紙に若干の湾曲があることな どから点Aや点Cの位置がずれることもあり,苦労する姿がみられた。そこで,BCの長さを実 測し,実測した BC の長さと日時計の使用場所の緯度から求められた∠CAB(=θ とする)の 大きさから,三角比を用いてABおよびACの長さを求めることにした。

実際には,AB=BC/sinθ,AC=BC/tanθ となる。この導き出した AB,AC の長さから

148 点A,Cの位置を定めることができた。

三角比は高等学校数学Ⅰで学ぶが,実際に必要に迫られて三角比を活用するという場面 に直面することは少ないだろう。この活動は,より正確に作製したいという生徒の要求を満たす 上で三角比を使うことに意義があることを示せる機会となった。また,この機会に三角比の定義 を習得しきれていなかった生徒に対して確認することもできた。

図3 作製した赤道型日時計の模型

(3)水平型日時計の原理についての学習および製作(2時間)

(2)で作成した赤道型日時計から水平型日時計を作製することを目指した。まず,図4,5の ように,赤道型日時計と水平型日時計における時刻盤にできる影の違いの説明を行った。ここ では,太陽光によって作られるノーモンの影について,赤道型日時計の時刻盤にできる影は ORで,同時刻の太陽光によって水平面に作られるノーモンの影はPRになることを確認した。

図4/5 赤道型日時計と水平型日時計における時刻盤にできる影の違いの説明

149

図 6 ∠tから∠xを求める公式をつくる

その上で,水平型日時計の時刻盤をつくるためには,図 6 における∠tから∠xを求める公 式をつくることが必要であることを確認した。この公式は図7のように求めることができる。

図 7 赤道型日時計を基にして水平型日時計の時刻盤を製作するための公式 ここでは,空間において3つの三角形を見いだしてこれらの関係に注目することが求められ る。数学教育においては空間図形に苦手意識を持つ生徒が多いという指摘はよくなされるが,

この公式を求める過程においてこの課題に向き合うことになる点で意義があるといえるだろう。

150

生徒らにとって,この公式を導く過程が今回の教材において最も難易度の高いものとなった。

この公式を導く過程に対して,いかに生徒に主体的に向き合わせるかが求められる。 この課 題に主体的に向き合わせるための手段として,交信授業は有効であったと示唆されることは本 文でも述べた。

その後,図8,9のように公式に値を代入して電卓を用いて計算することによって,水平型日 時計の時刻盤を完成させた。完成できたら,水平型日時計の時刻盤が正しく作製されている かを確かめるために,水平型日時計の目盛と赤道型日時計の目盛の延長線が時刻盤と水平 面の二平面の交線で一致しているかを確認した。

図8/9 公式を用いて∠xを求めて時刻盤をつくる

最後,作製した水平型日時計を使用するためには,赤道型日時計の時刻盤をとりはずせば よいことを確認して,水平型日時計の完成とした。

参考文献

1. 守屋誠司・丹洋一(2001):「第Ⅳ章 幾何の公理と証明―論証の考え方とその利用―」

『中学校「選択数学」の新展開3 第二学年の「選択数学」』,明治図書,56-77

2. 守屋誠司・丹洋一・宮本俊光(2010):「数学の授業における水平型日時計の扱いと授業 実践の成果」,玉川大学学術研究所『教師養成研究センター紀要』第2号