日本語教育に関わる現職教師を対象として,教育現場で直面する教育上の課題を解決する ためのテーマや日本語教育の分野で現在重要とされるテーマについて研修する機会を提供 し,その資質,能力,知識の向上や日本語教育に関する情報獲得の方法習得を促すことを目 標とする。この研修は,国立国語研究所の行う日本語・日本語教育に関する研究事業の成果 を基盤として実施するものであり,同時に,研修の経過や成果から得られる各種の情報や知 見は,日本語教育における教師教育・教師研修に関する基礎的データとして,教師教育に関 する研究に寄与するものとなる。
以下の3種類の研修を実施している。
(1) 長期研修
日本語教育機関の中核的教員を対象にして,実践能力や教育関連の研究能力の伸長を図 るとともに,後進の育成等,日本語教育の各分野において指導力を発揮する人材を育成す ることを目指す。おおむね10か月の研修期間として行う。
(2) 短期研修
日本語学習者の増加と多様化に伴う新たな学習需要と指導上の必要性に対応できる能力 を養成するため,分野別,指導対象者別,テーマ別等の枠組みで短期集中型の研修を実施 する。
(3) 遠隔研修
インターネットを活用することを通して,広く国の内外の日本語教師が空間的距離によ る時間的・経済的制約を超えて,自らの教育実践現場で自己研鑽を積む機会を提供するこ とを目的とする。
担当
【長期研修】
研究員:杉戸清樹 石井恵理子 金田智子 菅井英明 小河原義朗 椙本総子 福永由佳 研究補佐員:成田高広 井上義勝
事務補佐員:舘野有希枝
非常勤研究員:池田玲子 岡部真理子 下平菜穂 富谷玲子
【短期研修】
研究員:杉戸清樹 石井恵理子 井上優 金田智子 宇佐美洋 杉本明子 椙本総子 事務補佐員:福富七重
【遠隔研修】
研究員:柳澤好昭 植木正裕
以上に加えて,各研修における講義・指導・情報提供等に,所外から多くの協力を得た。具体 的な協力内容と氏名等は下記の該当個所に掲げる。
○開催実績
【長期研修】 「日本語教育上級研修」と「日本語教育研究プロジェクトコース」の2種類の 研修プログラムを設定し,実施した。
(1) 上級研修
[研修期間] 平成15年5月10日〜16年3月12日
・ 平成15年度テーマ「教育内容の改善・教育環境の整備のための方法」(個人応募者に 対しては,15年度テーマの下,「授業の観察と分析」という枠組みの中で,各自の興味・
関心に応じて課題を設定し,研修活動を行った。)
[研修参加人員] チーム参加 3チーム(10名) 個人参加1名 計11名
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平成14年度には 参加のしやすさを考え 個人参加者の定例会合を土曜日に実施したが 平成15年度は金曜日に設定した。そのためか,個人参加者の応募が昨年度より減少し,受 れ入れ人数も少なくなった。平成16年は再び,定例会合を土曜日に設定し,応募の状況を 比較する予定である。
[活動内容]
① 課題に基づく研究活動
② 月一回の定例会合(チームごとに毎月の会合を設定した。個人参加者が今年は1名だ ったが,研究課題に共通点の多いチームとともに定例会合の機会を持たせ,参加者相 互の研鑚を促進するよう工夫した。)
③ レクチャーシリーズ(教師の資質・能力,授業観察・分析の目的と方法に関する講 義。オリエンテーション時から3か月の間に実施。)
第1回 「これからの日本語教師に求められること」尾崎明人(名古屋大学) 第2回 「なぜ授業観察・授業分析か その1」 金田智子(国立国語研究所) 第3回 「なぜ授業観察・授業分析か その2」 文野峯子(人間環境大学) 第4回 「日本語教育における実践研究‐観ること,聴くこと‐」林さと子(津田
塾大学)
④ 研究課題に関する専門家を講師とした勉強会(全2回)
「文章・談話のしくみ」 杉戸清樹(国立国語研究所)
「学習者の自発的な発話と教師の学習支援的言動:積極自発・消極自発」
野原美和子(岐阜大学留学生センター)
⑤ 中間発表会(公開) 平成15年9月13日に合同開催
⑥ 課題に基づく研究活動をまとめた修了レポートの作成 平成16年2月13日提出
⑦ 修了発表会(公開) 平成16年4月に開催予定
チームもしくは個人のそれぞれが設定した研究課題は以下のとおりである。
・ 「学習者の自発的発話を引き出す教師の対応」
・ 「客室乗務員に求められる発音・話し方の分析と指導法を探る」
・ 「中級前半の作文指導‐『文作』から『書く』へ‐」
・ 「学習者が授業に集中するインターアクションの諸相」
各種の活動を通じ,研修参加者は情報収集力・発信力,自己教育力を含める教師として の専門性を身に付け,リーダーシップを発揮するための能力を高めた。
(2) 日本語教育研究プロジェクトコース
[研修期間] 平成14年度研修 平成15年1月23日〜平成15年10月16日
平成15年度研修 平成16年1月22日〜平成16年10月21日(実施中)
[参加人員] 平成14年度研修 日本語教育の環境とリソース利用に関する調査研究「 」10名(う ち9名修了)
平成15年度研修「日本語作文の評価と,それに基づく指導法の開発に関する調 査研究」10名
[活動内容]
・ 1月〜3月 月2回の定例会合を持ち,各年度のコーステーマについて,母体となる研 究所のプロジェクトで既に得られている知見や研究の枠組みについての講義,及び関連 領域の諸内外の専門家による講義を軸に,各研修生の研究計画の立案・検討を進める。
・ 4月〜10月 月1回,定例会合を持ち,各研修生の調査研究の進捗状況について,報告 及び検討・修正を行う。研修生は調査結果を修了レポートにまとめ,提出する。
【短期研修】
平成15年度は以下の研修(3地域5回)を開催した。このうち,第4回「日本語学習をとらえな おす」は,IT研修と同時開催の形で実施した。参加者は延べ977名であった。ちなみに昨14年 度は,15年度と開催形態に違いがあるが,延べ571名であった。
第1回「多言語環境下の子どもの言語発達・言語学習」
(2003年8月8日(金)10:00〜16:00 国立国語研究所 参加者197名)
【講演】
「ことばの発達と学習」 (東京学芸大学 高木光太郎)
「多言語環境下の子どもに対する学習支援」 (国立国語研究所 石井恵理子)
「多言語環境下の子どもの言語発達上の問題」
(Putnam Northern Westchester BOCES バーンズ亀山静子)
【分科会】
1「ことばの学習と教科の学習」
2「言語発達上の問題に対する取り組み」
第2回「作文教育における,日本語教師と大学専門教員との協力のために」
(2003年10月25日(土)13:00〜16:00 国立国語研究所 参加者165名)
【講演とディスカッション】
「日本語教師と大学専門教員との作文指導における視点の違い」
(富山大学留学生センター 深澤のぞみ)
「論文作成や発表用資料作成の指導をどのように行うか」
(東京農工大学 高木隆司)
「作文指導における日本語教員と大学専門教員とのティームティーチングの試み」
(東京海洋大学 大島弥生) コメント,ディスカッション
第3回「日本語教育における文法の役割」(金沢大学留学生センターと共催) (2003年12月14日(土) 金沢大学サテライトプラザ 参加人数78名)
【講演・コメントとディスカッション】
「日本語教育に役立つ文法とは」 (広島大学 白川博之)
「 文法』をどう勉強するか」『 (国立国語研究所 井上優)
「 現場の声』報告」『 (金沢大学 長野ゆり)
コメント (佐賀大学 フォード丹羽順子)
ディスカッション1(登壇者4名)
ディスカッション2(会場との質疑応答) 第4回「日本語学習をとらえなおす」
(2003年12月21日(日),23日(祝) 東京国際フォーラム)
【基調講演】
(21日(日)10:00〜11:45 東京国際フォーラムD7ホール 参加人数157人)
「学習論の変遷−『できる ・ わかる ・ まなぶ』の関係をめぐって−」』『 』『
(青山学院大学 佐伯胖)
【シンポジウム「学習の普遍性と多様性 】」
(21日(日)13:15〜16:30 東京国際フォーラムD7ホール 参加人数148人)
「子どもはどのように動詞の意味を推論するのか」(東京大学 針生悦子氏)
「学習者要因としての動機づけ−個に応じた指導を目指して−」
(立正大学 小西正恵)
「学習環境としての教室づくり−総合活動型日本語教育の場合−」
(早稲田大学 細川英雄)
【分科会・全体会】
(23日(祝)10:00〜16:30 東京国際フォーラムG棟 参加人数140人)
A「 漢字』の認知・学習と教育実践」『 (担当:杉本明子) B「教科書をとらえなおす−学習に役立てるために−」 (担当:福永由佳) C「コンピュータを用いた学習環境作り」 (担当:植木正裕) D「主体的な学びに対する他者の関わり」 (担当:椙本総子) E「 教室』の役割」『 (担当:石井恵理子) 第5回「ひろげる・つなぐ 漢字教育の工夫」
(2003年2月28日(土)13:30〜16:45 東北大学マルチメディア教育研究棟M601教室 参加人 数 92名)
【講演とディスカッション】
「漢字教育を見直す」(国立国語研究所 石井恵理子)
「漢字力を伸ばす−シラバス,評価の観点から−」(筑波大学 加納千恵子)
「漢字力を伸ばす−漢字語彙の観点から−」(東北大学 稲村真理子) グループ討論・全体検討
【遠隔研修】
以下のツールを用いた活動を実施。参加費は無料。
・ グループウェア「サイボウズ6」を利用した教育情報・活動情報の共有
対象:平成14年度実施したeJapan対応事業「ITを活用した日本語学習環境の整備」の中の
「ITを活用した日本語指導能力の向上」(略称,IT研修)の受講者のうち,希望者11名 が所属機関内での共有の場として活用(平成15年12月より平成16年7月まで実施)。
その活動に関するレポートを提出。
・ WebCTによる遠隔学習
対象:平成15年12月実施したeJapan対応事業「IT研修」のセミナー受講者(40名 平成15 年10月より実施),並びに14年度の受講者(12名 14年度から継続)を対象に,マルチ
メディア教材作成,作成教材の素材の相互利用を実施。
いずれも,平成16年1月以降,ワーム対策のため,一時中断中。3月には再開予定。
受講者のうち4名が印刷物教材,CD教材,ネットワーク教材を刊行。受講者の諸活動 の情報は,ネットワーク上の電子化情報として蓄積されており,ログ解析をはじめ,
分析対象資料として収集している。これらを基に,eJapan対応事業と共同で普及型の 文献と研究報告書の2種類を刊行(前者は16年度,後者は17年度)する予定である。
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なお 本研修事業の経費は eJapan対応事業 ITを活用した日本語学習環境の整備 の予算も活用している。
○研修実施に際しての広報手段の適切性
[長期研修]
上級研修及び日本語教育研究プロジェクトコースを紹介するホームページを作成し,研修 の趣旨・内容・過去の研修テーマ等,最新の情報を配信できるようにした。また,平成15年 度,当研究所のホームページ自体が再構成され,トップページから研修関係のページへのリ ンクが容易となった。インターネットの使用率が上昇したこととあいまって,募集要項をホ ームページから直接入手する人が増え,郵便での取り寄せ希望者は減少した。
また,上級研修・プロジェクトコースが関係者に広く認知され,研修参加を希望する方々 に直接・間接に情報が伝わるよう,各種学会,研究会等で,年間を通じて案内を配布してい る。募集案内は,全国の日本語教育機関,国際交流団体,教育委員会等に送付し,関係者に 広く参加を呼びかけている。その結果,直接案内を送付してはいない,ボランティア団体や 小中学校に所属する方からの問い合わせや応募も増えつつあり,情報網の要への案内送付が 適切に機能していると考えられる。
[短期研修]
短期研修の広報は次の三つの方法で行っている。
(1) 電子メール(メーリング・リストその他),ホームページ
(2) ポスター・チラシの送付(地方開催の場合は開催地域及びその近郊) (3) 雑誌(アルク『日本語』)
他機関との共催で実施する場合は,共催機関の地元地域におけるネットワークを最大限活 用し,全国規模の広報を研究所が,開催地域周辺の広報を共催機関が重点的に行うという分
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担によって 効率的かつ効果的な広報を心がけた 第3回 日本語教育における文法の役割 では,共催機関である金沢大学留学生センターでもポスターとチラシを作成し,北陸地方の 大学及び日本語学校に対して広報が行われ,その結果,北陸地域の日本語教育関係者人口に 比してかなり多い78名の参加があった。
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各研修とも 参加申し込みは順調で 定員超過のために参加を断らせざるをえない回もあった 参加人数の点からいえば,広報手段はおおむね適切であったといえる。
申し込みの受付は,原則として電子メールまたはファックスであるが,第4回「日本語学習を とらえなおす」については,IT研修との同時開催ということもあり,IT研修と共同でインターネ ットでの申し込みの受付を行った。ただし,この方法については,申し込みが手軽にできるため か 「申し込みだけして当日来ない」というケースが他の回に比べて多かったという問題が見ら, れた。
[遠隔研修]