11.1 日本国ODAの供与条件
1) 一般条件
• 借入れ人 : 政府機関または、国営もしくは国が管理している会社/銀行
(GOCC/GOCB)でなければならない。日本国 ODAは民間セ クターに直接融資できない
• 保証人 : フィリピン政府
• 実施機関 : 政府機関またはGOCC、もしくはGOCB
• 融資通貨 : 日本円 (為替リスクはフィリピン政府が負う)
2) 政府間援助の種類
無償資金協力や技術協力支援を除く政府間援助には、次の4つがある。
• プロジェクトローン
• ツー・ステップ・ローン(TSL)
• プログラムローン
• セクターローン
(a) プロジェクトローン
条件は以下のとおり;
i) セクター内で優先度の高いプロジェクトであること、
ii) 投資調整委員会による承認済みであること、
iii) 環境応諾書(ECC )取得済み
iv) 政府機関/国営会社は、プロジェクト実施に必要な自国負担分の資金調達が可能なこと v) ローン適用条件
• 税金は除外
• 用地取得費用は除外
• 事業費の80%が上限
• コントラクターは、国際競争入札(ICB)を介して選定すること vi) 円借款供与条件
所得段階 条件 基準/オプション 金利 (%)償還期間 (年) うち据置
期間 (年) 調達条件 基準 1.4 25 7
オプション1 0.95 20 6 一般条件
オプション 2 0.8 15 5
アンタイド
基準 0.65 40 10
オプション1 0.55 30 10 オプション 2 0.5 20 6 優先条件
オプション 3 0.4 15 5
アンタイド
基準 0.2 40 10 中所得国
STEP
オプション 0.1 30 10 タイド Source: JICA
(b) ツー・ステップ・ローン ( “物流インフラ開発プロジェクト”の場合) i) 借入れ人 : フィリピン開発銀行
ii) 保証人 : フィリピン政府
iii) 実施機関 : フィリピン開発銀行
iv) ターゲットとするエンドユーザー
• 民間企業(資本金の70%以上はフィリピンで賄われていること)
• 地方政府
• 国営会社
• 協同組合 v) 貸出方法
• 直接融資 (フィリピン開発銀行がエンドユーザーへ融資)
• 間接融資 (フィリピン開発銀行が民間金融機関(PFIs)もしくは、マイクロファイナ ンス機関(MFIs)を通して融資
vi) プロジェクト実施スケジュール
• JICAからフィリピン開発銀行へ出資完了時
• 2009年11月から2016年11月まで(85ヶ月/7.08年)
vii) 再融資特別会計
• サブローンと円借款の返済期間の差から生じる余剰資金を利用し、リボルビング ファンドを設立し、同じ条件の下で新しい融資を行う
(c) プログラムローン(開発政策支援プログラムの場合)
i) 借入れ人 : フィリピン政府
ii) 実施機関 : 財務省 iii) 該当項目 :
• マクロ経済と財政安定の維持
• ガバナンスの強化と公共支出管理における汚職防止
• 投資環境やインフラ整備の強化
- 投資手続き評価のための行動計画の策定 - PPPプロジェクトの標準入札図書の作成
• 社会参加の増加
(d) セクターローン
• プロジェクトローンと同様
• セクター(もしくはサブセクター)におけるマルチプロジェクトはパッケージ化され、
優先順位に従って実施される。
• 通常、中小規模のサブプロジェクトグループに適用する。
11.2 各種PPP事業方式と日本国ODAの適用性
各種PPP事業方式に対する日本国ODAスキームの適用性を表11.2-1および図11.2-1に示す。
表 11.2-1 各種PPP事業方式と日本国ODAの適用性
PPP 事業方式 フィリピン政府への融資 民間セクターへの融資
タイプ1:
BOT
• 政府の責任は用地取得のみであり、こ の部分にはODAは適用できない
• GOCBを通じたツース テップ・ローン
タイプ2:
官の補助金付き BOT
• このタイプにODAは適用できるのだろ うか?
• オプション1: 国際競争入札(ICB)を経て 民間投資家が選定される。大統領令423 号2005シリーズに従い、公共事業道路 省と民間投資家は合弁事業契約を結 ぶ。公共事業道路省 にODA資金は供与 され、政府補助金として利用される。
• オプション2: 公共事業道路省、もしく はDOFのような政府機関がPPPイン フラ開発基金を設立する。この基金は 現地ファンド、ODAローンと国際融資 機関ファンドで構成される。国際競争 入札を経た民間投資家に対し、政府は この基金から補助金を提供する。
• GOCBを通じたツース テップ・ローン
タイプ3:
区間分割
• 政府区間に対して日本国ODA資金をプ ロジェクトローンに供与できる。
• GOCBを通じたツース テップ・ローン
タイプ4:
サービス ペイメント
• このタイプに ODAは利用できるだろう か?
- 政府資金の償還期間は30年と長期 である (もしくは運営維持管理期 間)。その金額は各年度毎に一般会 計予算法により承認が必要
- 逆にODAの支払い期間は 5-10年で
• ODAある の適用可能な方法はPPPインフラ 開発基金とよく似ているか
• GOCBを通じたツース テップ・ローン
Type-5:
リース
• プロジェクトの設計と建設については 日本国ODA資金をプロジェクトローン として供与できる。
注 政府による補助金、保証、出資が禁止されているため、自発提案型プロジェクトにODA資 金を利用することはできない。
Source: JICA Study Team
Source: JICA Study Team
図 11.2-1 PPPプロジェクトへの日本国ODAの適用性
政府への融資 民間セクターへの融資
• タイプ3 区間分割 方式の政府区間
• タイプ5 リース方式 プロジェクト・ローン
タイプ1: BOT方式 タイプ2: 官の補助金付き
BOT方式 タイプ3: 工区分割方式の
民間区間
タイプ4: サービスペイメ ント
ツーステップ・ローン
• 公共事業道路省と民間 投資家間の合弁契約が 締結された場合は政府 補助金として利用可能 プロジェクト・ローン
• タイプ1,2,3,4 PPP インフラ
開発基金
• タイプ2の政府補助金、
タイプ3の政府区間、タ イプ4のサービスペイメ ント、タイプ5
PPP インフラ 開発基金 現行の財政融資
制度の場合
PPP インフラ 開発基金が創設
された場合
11.3 PPP事業基金創設の検討
1) PPP事業のニーズ
調査団が情報収集した範囲において表11.3-1に示すとおり、運輸部門単独でも非常に高いニー ズがあることが判明した。
表 11.3-1 運輸部門インフラ整備ニーズ
サブセクター プロジェト数 概算(Billion Php) 有料道路開発
都市鉄道開発 港湾開発 空港開発
13 7 3 3
258.9 249.5 5.5 6.4
合計 25 520.3
Source: Compiled by the Study Team based on the information from DPWH and DOTC
これらの事業は一刻も早く人々へ運輸サービスを提供するためにも、また国の経済社会発展の ためにも実施する必要がある。巨額な資金は、これらの事業の早期完了のために、公共セクタ ーと民間セクターで適切に分担されるべきである。
PPP事業基金が一度創設されると、公共セクターは毎年国家予算の準備なしで、持続可能な資 金が確保できる。他方で、民間セクターはそれほど利益を見込めないプロジェクトにも挑戦す ることが出来るように、長期返済期間における低金利のローンを確保できる。このように、
PPP事業の推進のためにPPP事業基金創設の検討は実施する価値がある。
2) PPP事業基金のタイプ
PPP事業基金のタイプは、表11.3-2に示すとおりに分類される。
表 11.3-2 PPPファンドの種類
融資を行うセクター
•困難
•自発的提案型プロポ ーザルには消極的
プロジェクト段階
プロジェクト
開発段階 (ビジネスケース
スタデイ・FS)
プロジェクト開発 基金(PDF)
実施段階 (設計/ 建設/
運営・維持管理)
PPPインフラ開発 基金
• 国営プロジェクト融 資会社
政府への融資 民間セクター への融資
3) PPP事業の資金調達
PPP事業の資金調達源は下記のとおりである。
PPP事業資金
国際援助期間や二国間援助機 関からの技術支援
BOTセンターのプロジェクト 開発基金 (PDF)
[参考事例]
India Infrastructure Project Development Fund (IIPDF), India
プロジェクト・ローン(国際援 助機関、二国間援助機関)
PPP基金の創設の検討が必要
(PPPインフラ開発基金)
JICAツーステップ・ローン
ADB and IFCによる民間セク ター融資
国営PPPプロジェクト融資 会社の設立
オプション 1: 国家開発会社 (NDC)に基金創設
オプション2: 新たなPPPプロ ジェクト融資会社の 設立 [参考事例]
Agriculture Competitiveness Enhancement Fund, Philippines
インドの事例
インドネシアの事例 注: 黒色 – 現存基金 朱色–まだ 現存しない基金
4) プロジェクト開発基金 (PDF)
プロジェクト開発基金は、2000年に BOT センターに創設され、PPPセンターで再活性化され る予定。 (BOT センターは2010年度にPPPセンターへ改称。)
現行のプロジェクト開発基金の課題
• 当初運用できる基金はそれほど多くなかったにもかかわらず、BOT センターでその全 てを利用できなかった。投資計画が不十分であることや BOTセンターが基金活用を積 極的に提唱しなかったためと思える。
• プロジェクト毎のコンサルティングコストは、US$51,000 ~ 150,000の範囲で非常に少な い。これらのコストでは、完璧な事業採算性調査を実施することは難しい。
• リボルビングファンドへ資金を回収しきれていない。政府機関は、プロジェクトがPPP 事業方式の下で、実施されているかどうか認識できていなかった。
• PPP事業方式の不適切な調査より、入札に失敗し、リボルビングファンドが実施機関か 政府への融資 民間セクターへの融資
プロジェクト開発 段階
(ビジネス・ケース スタデイ、事業採 算性調査、入札支
援)
実施段階
(設計、建設、
運営・維持管理)
提案
• リボルビングファンドが機能する形のシステムの整備が必要。
• BOT センターは、プロジェクト開発基金利用のためのプロジェクト選定基準を作成す る。
• ビジネス・ケーススタデイや事業採算性調査用の標準業務指示書(TOR)を策定す る。調査完了後すぐに政府が入札段階へ移行できるような万全な調査を実施する。
• BOT センターは、実施機関へのプロジェクト開発基金(PDF)利用を提唱するキャン ペーンに着手する
5) 政府への資金融資
現在、政府に資金融資できるPPP基金は存在しない。政府利用が可能なPPP基金を検討するこ とは、政府にとって価値がある。
6) 民間セクターへの資金融資
民間セクターの主なボトルネックは、低金利で長期返済期間が可能なローンを調達することで ある。この問題は、財務クロージャーの遅延をひき起こしていた。融資機関の立場では、デー タや情報が不十分なため、プロジェクトのリスク評価、特に収入リスクについて多大な時間を 要していた。PPP インフラ事業の民間投資家を充分に支援するには、基金の創設が必要である と考えられる。
少なくとも 2つのオプションがある。ひとつは、民間セクターへの資金融資を担当している国 営企業である国家開発会社(NDC)に新たな PPP基金を設けることである。もうひとつは、
民間セクターへのPPP事業融資に特化した新しい国営企業を設立することである。政府は、こ れらのオプションを検討する必要がある。