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日本企業誘致戦略~具体的目標と措置の必要性

ドキュメント内 i (ページ 80-102)

前節では、カザフスタンの経済特区制度における問題点を指摘し、その改善に向けたい くつかの提案を行った。経済特区制度の改善は、特区への投資誘致を目的としたものであ り、その対象には無論、日本企業も含まれる。しかし、本事業の名称が示すように、誘致 対象を日本企業....

に特定するなら、経済特区制度の改善はその方策としては不十分であると 言わざるを得ない。

巻末付属資料のアンケートにおいて、回答企業数がわずか25社しかないことが示すとお り、日本企業の間では経済特区はおろかカザフスタンという国自体に対しても認知度は低 い。また、進出企業の多くが従事しているのは金属輸入や自動車・建機の輸出等、貿易であ り、製造業への進出は例外的である。これは、カザフスタンについて一定の知識をもつ企 業の間では、国内市場の小ささや国際市場からの遠さ、賃金や輸送コストの相対的高さ等、

中国や東南アジアあるいはロシアの様な、日本から見て「より近い」投資先との比較にお いて不利だと考えられる点が逆に良く知られているためであろう。

こうした現状に鑑み、では日本企業の誘致戦略として考えうるのはどのようなものか?

まず前提として上記の通り、そもそも日本企業によるカザフスタンへの進出例が限られ ていることに鑑みると、地方における製造業発展を目的とする経済特区への参入は、日本 企業にとってはあまりに高いハードルであることを認識する必要がある。真に日本企業の 誘致を望むならば、経済特区の一般的な制度改善とは別に日本企業誘致そのものを主たる 目的とする戦略を検討することが先決である。すなわち、当面は経済特区を「日本企業を 誘致するツールの一つ」程度に位置付けることとして、前項で記したような「経済特区制 度改善」と「日本企業誘致戦略」を同時並行的に進めることが、最も現実的なアプローチ となろう。

極めて一般的な方策ながら、まず誘致戦略として必須と考えられるのは経済特区制度の 改善策とも共通する日本向け広報活動の強化である。カザフスタン・ビジネスに関するアン ケートに回答しうる企業が二十数社しかいないという現状を、まず抜本的に改善しなけれ ばならない。このためには、先に述べた投資プレゼンテーションや各種会議の開催を含め、

代表団や研修生の派遣・受入れ等、包括的な人的交流の機会拡大を図る必要があろう。

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広報活動の強化が、一般的な日本企業のカザフスタンに対する注意喚起を目指すものだ とすれば、では一方、既に一定の関心を有する日本企業にカザフスタンに対する投資イン センティヴ創設のためにはいかなる方策がありうるだろうか?

この問題について検討する前に明らかにすべきは、そもそも何ゆえにカザフスタンは日本 企業を誘致する必要があるのか(なぜ日本なのか)、という点である。成長著しいカザフスタ ンには、欧米、中国、ロシア、インド等の企業が既に積極的に投資している。一方、本報 告書Ⅰ章の第4-3~4-4表が示すとおり、日本は貿易においても投資においてもプレセ ンスが低い。これは、先に述べた日本企業のカザフスタンに対する認知度の低さも大きな 要因ではあるが、カザフスタン市場における日本製品の需要の小ささ、競争力の低さも見 逃せない要因であろう。

日本の製品は総じて「品質は良いが価格が高い」と評される。日本市場の特殊な嗜好に 合わせ「ガラパゴス化」し国際競争力を失っている面があり、特に品質より価格が重要視 される市場では他国の「品質は中程度だが価格は安い」製品に負けてしまう。いわばカザ フスタンもそうした市場のひとつであり、現状で日本製品がシェアを獲得できているのは、

「高くても売れる」付加価値を持つ乗用車と、鉱山用機械や特殊な建機、あるいは高品質 の鋼管程度しかない。つまり、現状においてカザフスタンはこれら限定品目でしか日本製 品を必要としておらず、日本企業側はまさにそれら品目において一定のニッチを確保する ことに腐心してきたのだ。

こうして現状で一種の高原状態に達している貿易主体の従来の二国間関係からステップ アップし、また中国を筆頭に対カザフスタン投資に積極的な他の諸国が存在するにもかか わらず、敢えて日本からの投資促進を課題とするなら、そこには相応の理由があるべきで ある。それは同時に、どのような日本企業を誘致すべきか、という問いでもある。実効性を 担保する観点から、追加的投資インセンティヴの対象は無差別ではなく「カザフ側にとっ て必要な日本企業」にターゲットを絞ったものが望ましいからである。それは換言すれば、

分野あるいは対象を絞った合目的的な日本企業誘致戦略の検討、ということになる。

無論、ここで述べる「投資インセンティヴ」とは、特定の日本製品を対象とした免税制 度の類を指すものではない。既にWTO加盟を視野に入れているカザフスタンがこうした措 置をとることは不可能であり、加盟国である日本がそうした方針を推奨することもありえ ない。想定しているのはカザフスタンあるいは/および日本における一般的な制度・スキー

ムのパッケージが、カザフスタン側の戦略的意図の下に、日本企業の誘致に活用されるこ とである。

どのような日本企業を誘致すべきか―この問題に対する回答を検討すべきは、本来、カ ザフスタン側である。しかし、現行の同国の経済政策の重点課題に貢献するという観点か らこれを予測するなら、それは「高度技術導入・イノベーション推進による資源依存脱却」

に役立つ日本企業ということになろう。実際、日本の高度技術導入に対する期待は、近年 の往来の際、しばしばカザフ側要人が口にするところである。

しかし、単なる「高度技術」では、あまりに漠としており、具体性に欠ける。仮にカザ フ側が日本企業誘致のための戦略的方向性を示すなら、それはより具体的、選択的である 方が効率的であり、潜在投資家に与えるインパクトも強いものとなろう。こうした日本企 業誘致優先分野として、相応しいものをいくつか例示するなら、①省エネルギー、②再生 可能エネルギー、③水関連技術、④廃棄物処理・汚染除去、⑤医療等が挙げられる。これ らは、カザフ側が導入するに相応しい高度技術であると同時に、先に述べた「高くても売 れる」日本が競争力を有する分野にも該当する。すなわち、これらの分野における日本企 業のカザフスタン進出を図る戦略を検討することにより、相互利益の確保が期待できるこ ととなるだろう。

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付属資料

1.日本企業向けカザフスタン投資環境に関するアンケート結果

カザフスタン投資環境評価等に関わる調査票 集計結果(平成 27 年 3 月 13 日集計)

(一社)ロシア NIS 貿易会

Ⅰ. 回答者情報:

回答総数 25 社 (うち日本カザフスタン経済委員会会員 10 社)

Ⅱ. 対カザフスタン進出状況

御社は、カザフスタンとビジネスを:

A.現在行っている → 18 社 (設問 A 群へ)

B.過去に行った経験がある → 3 社 (設問 B 群へ)

C.行っていない(行った経験がない) → 5 社 (設問 C 群へ) (注)A と B は複数選択可。

設問 A 群:御社が現在、カザフスタンと行っているビジネスについて、以下の設問にお答えく ださい。

1.事業内容(複数回答可)

※参考:具体的業務

日本からの輸出:自動車、建設機械、鉱山用機械、医療・診断機器、PC・コピー機、通信機器、

鋼管、化学品等。

直接投資:石油・ガス・ウランの探鉱・開発、レアアース製造、たばこ製造・販売、自動車・建機 等の販売・アフターサービス等。

その他:物流手配、金融等。

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2.事業開始時期

3.現地における体制

※注: 「その他」は、現地に出先を持っていない企業。

4.ビジネスにおける今後の見通しは

→上記で a(現在のビジネスの規模を拡大)あるいは b(現在のビジネスの規模を維持)を選 択された場合、その理由は(複数回答可):

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○「『現地法制度の改善』以外のカザフスタンの投資環境の改善」について具体的に

短期滞在ビザが不要となったこと 他

○「その他」について具体的に

カザフパートナー企業との取組拡大

弊社ロシア現法の体制が強化され、隣国でのビジネス展開がよりしやすくなった。

国営企業におけるファイナンスニーズの拡大

経済停滞の見込まれるロシアに代わる、ロシア+1として有望

2017 年アスタナ万博

※コメント:

「ビジネス規模を拡大」と「新たなビジネスを開始」合計で 75%である一方、縮小・撤退という回答 はゼロ。総じてビジネスの展開には明るい見通しをもっている。

その要因は、①カザフ経済の現状あるいは将来展望に対する評価の高さ、②日カ投資協定の 調印を含む投資環境の改善。

5.カザフスタンのビジネス環境を相対的にどのように評価なさいますか。

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