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日本における RPS 法と太陽光 FIT 法に関する比較分析

ドキュメント内 著者 大平 佳男 (ページ 91-123)

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以下では、再エネの普及を目的に、RPS法や太陽光FIT法の特徴や電気事業者の行動に よる再エネの生産量などの変化に着目し、理論的に検証する132。具体的な流れとして、日 本のRPS法をもとに、再エネ利用の観点からRPS制度の3つの利用手段についてモデル 分析を行い、さらにRPS制度と太陽光FIT制度のポリシーミックスについて同様に分析を 行う。これまで風力発電やバイオマス発電、太陽光 FIT 法対象外の太陽光発電などの再エ ネに対しては、RPS 制度の対象であった。再エネ事業者は相対的に割安な風力発電と相対 的に割高な太陽光発電を用いて電力を生産し、電気事業者に卸供給するとする。一方、電 気事業者は火力発電などを用いて電力を生産し、さらにRPS制度の3つの利用手段で再エ ネを利用しなければならず、太陽光 FIT 制度では再エネを固定価格で買い取らなければな らないという状況を分析する。

第1節 RPS制度

1 RPS制度①――自ら発電するケース

ここではRPS制度①として、電気事業者が自ら再エネを生産するケースを分析する。再 エネ事業者が生産する再エネは、通常の電力として買い取られることになる。

再エネ事業者の生産量に関して、風力発電の生産量をqw、太陽光発電の生産量をqsとし、

それぞれの費用関数をCw

 

qw Cs

 

qs とする(ただし

C

i

q

i

C

qi

0

C

qqi

0

s w

i , )。また、RPS 制度の対象とならない再エネの電気としての買取価格をplとする。

以上のことから、再エネ事業者の利潤関数rは、

(1-1) r pl

qwqs

Cw

 

qw Cs

 

qs

となり、利潤最大化条件(

rqw 0、

2

r

q

w2

 0

、

rqs 0、2

rqs2 0) より、

(1-2)

p

l

C

qw

(1-3)

p

l

C

qs

が得られ、ここから最適生産量qw*

q

s*が得られる。電気事業者が自ら再エネを生産する 場合、再エネ事業者にとっては何ら影響を受けないことになる。また、(1-2)式、(1-3)式よ りCqwCqsが得られるが、実際は太陽光発電の方が割高であり、CqwCqsという関係にある ため、この条件を満たさない。図1-1はこの状態をグラフ化したものである。横軸に電力の

132 3章との違いとして、本章の電気事業者は一般電気事業者やPPSを指す。また、本章の再エネ事業 者はPPSではなく、売電事業者あるいは規模が大きく条件を満たせばIPPの位置づけにある。よって直接 自ら電力市場で電力供給を行うことはなく、一般電気事業者やPPSなどの電気事業者に対して電力を卸供 給する主体である。FIT法での再エネ事業の多くがこのような形態となっている。

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生産量、縦軸に価格と限界費用を取っている。価格がplで一定で、それぞれの限界費用に

qs

qw C

C  だけ差があるため、生産量に差が生じ、相対的に限界費用の低い風力発電の生産 量が多くなる。よって何ら対策を取らなければ太陽光発電は自然淘汰される恐れがあり、

補助金や太陽光FIT制度といった政策が求められる。

次に電気事業者について見てみると、生産量をq、費用関数を

C   q

とする(ただし

0

C q Cq

C

qq

 0

)。ここでは電気事業者が自ら再エネを生産することから、その

生産量をqn、その費用関数をCn

 

qn とする(ただし、

qn

0

n

n

q C

C

C

qqn

 0

)。ま た、電気事業者の電力市場への影響力を考慮して地域独占市場にあるとし、逆需要関数を

q qn

b a

P    (ただし、a,bはともに正の定数)とする。以上のことから、電気事業者

の利潤関数

は、

(1-4)

P

qqn

C

 

q Cn

 

qn

となり、利潤最大化条件(

   q  0

2

  q

2

 0

   q

n

 0

、2

qn2 0)より、

(1-5) q qn

b C b

qa   2 2

(1-6) q

b C b q a

qn

n   

2 2

さらにここから電力の市場価格を導出すると、

(1-7)

b C q C

q P

n q n q

2

 

図1-1 RPS制度①のケース

O

90

が得られる。(1-5)式、(1-6)式からCqCqnが得られるが、実際にはこの条件を満たしてお らず、CqCqnであると考えられる。そのため、利用義務がなければ再エネを利用しようと するインセンティブはなく、その普及のためには技術開発等によるコストの低減や、補助 金等の政策が必要である133

2 RPS制度②――再エネ事業者から購入するケース

次にRPS制度②として、電気事業者が再エネ事業者から再エネを購入するケースについ て分析する。RPS 制度では電気事業者の買い取る再エネ量が決められていることから、再 エネ事業者の生産量はRPS制度の対象になるものとならないものに分けられる。その比率 をr:1r(ただし0r1)とする。電気事業者はRPS制度の対象となる再エネをpr(ただ

prpl)の価格水準で買い取る。つまりprはRPS制度の再エネ買取価格となる。以上の

ことから、再エネ事業者の利潤関数は、

(2-1)

r prr

qw qs

pl

1r

 

qwqs

Cw

 

qw Cs

 

qs

となり、利潤最大化条件(

rqw 0、

2

r

q

w2

 0

、

rqs 0、2

rqs2 0) より、

(2-2) prrpl

1r

Cqw

(2-3) prrpl

1r

Cqs

が得られ、ここから最適生産量はqw*qs*となる。最適条件としてCqwCqsが得られるが、

実際は太陽光発電の限界費用の方が割高であることからCqwCqsという関係にあり、最適条 件を満たすことができない。図5-2はこの状態をグラフにしたものである。再エネの価格水 準はprrpl

1r

となり、prplの間に位置することになることから、価格水準がplで あった図1-1のときに比べて上昇している。ここからRPS制度②では、RPS制度①に比べ て風力発電、太陽光発電の生産量は増加することになる。さらにrが1に近づけば近づくほ ど、つまり再エネ事業者の生産量がRPS制度の対象となるほど、価格水準はprに近づき、

再エネの生産量が増加することになる。また、pr自体の上昇でも再エネの生産量が増加す る。

電気事業者について見てみると、電気事業者はRPS制度に基づき再エネ事業者から再エ ネを購入する。その量は自らの生産量の一定割合、つまりqとなる(ただし01)。 RPS 制度の定める再エネの利用目標率である。一方、再エネ事業者が電気事業者に卸供給 する再エネの量はr

qw qs

であるから、qr

qw qs

という関係にある134。逆需要

関数を

Pab   q   q

とすると、電気事業者の利潤関数は、

133 再エネ事業者から購入する場合と自ら発電する場合とでは、取引コストや再エネ事業のノウハウといっ た観点から電気事業者が自ら再エネ事業を行った方が安いと言える(

C

qn

C

qw

C

qs)。しかし、再エネ 事業のリスク、再エネ適地の選定、用地確保、既設の再エネ設備など、場合によっては必ずしも電気事業 者が自ら再エネ事業を行った方が安いとは限らない。

134 qr

qwqs

の関係から、利用目標率が上昇した場合、rが一定でも再エネの生産量は増加する ことになる。

91 (2-4)

P

q

q

  

C qpr

q

となり、利潤最大化条件(

   q  0

2

  q

2

 0

)より、

(2-5)

 

 

b

p C q a

r q

1 2

2 1

 

さらにここから電力の市場価格を導出すると、

(2-6)

  

 

 2 21

r

q p

a C P

が得られる。これがRPS制度②での電気事業者の最適生産量と最適価格となる。ここから 比較静学分析によってパラメータの変化の効果に関する考察を加える。まず、電気事業者 の生産量を再エネの買取価格で微分することで、

(2-7)

10

2

2

 

 

p b

q

r

が得られ、RPS制度の再エネ買取価格prが上昇することで電気事業者の生産量qは減少す る。同様に電力の市場価格についても見てみると、

(2-8)

 1  0

2 

 

p

r

P

が得られ、RPS制度の再エネ買取価格prが上昇することで電力の市場価格も上昇する。

次に、電気事業者の生産量を再エネの利用目標率で微分することで、

図5-2 RPS制度②のケース

O

92

(2-9)

     

 

b

p a C

p C

q a q r

r q

1 3

2

 

が得られ、aprCqと仮定すると、再エネ利用目標率が上昇することで(2-9)式は負と なり、電気事業者の生産量qは減少する135。同様に電力の市場価格についても見てみると、

(2-10)

 1 

2

2 

 

q

r

C

P p

が得られる。aprCqの仮定より、これは正となることから、再エネ利用目標率が上 昇することで電力の市場価格も上昇することになる。

ここから均衡点に関する比較分析を行う。まず図5-3はprが変化したときの状況を表し ている。prは費用関数に影響を及ぼしており、限界費用曲線の変化(

MC

1からMC2)をも たらす。よって変化前は

E

1で均衡していたものが、prの変化(上昇)によって均衡点はE2と なる。これにより電気事業者の生産量は減少し、電力の市場価格は上昇することになる。

次に図5-4は

が変化したときの状況を表している。

は限界費用曲線と需要曲線の両方

135 RPS法のもとでは、一般電気事業者の余剰電力購入メニュー(太陽光発電)は一般電気事業者の電気料金

単価相当額で購入料金単価を定めていた。例えば経産省新エネルギー部会RPS法小委員会第6回資料4 よると19~23円/kWhとなっていた。このことから、電気料金(電力の市場価格)とほぼ同じ水準(Ppr) と言える。よってPabqPprから、aprCqが成立すると言える。風力発電やバイオマス発 電については脚注で後述するが、電力とRPS相当量で構成され、太陽光FIT制度の導入される直前の2009

8月段階で8.0~10.4円/kWhであり、大口需要家対象の電気料金よりも低い水準となっていた。

図5-3 外生変数 の変化による均衡点の変化

O

93

に変化をもたらす136。変化前は

E

1で均衡していたものが、

の変化(上昇)によって均衡点 はE3となる。これにより電気事業者の生産量は減少し、電力の市場価格は上昇することに なる。さらに考察を加えると、prの変化に比べて

の変化は逆需要関数に影響を及ぼして いる分、電気事業者の生産量の減少分が相対的に大きくなる一方、電力の市場価格の引き 上げを抑制している。

3 RPS制度③――再エネ等電気相当量を購入するケース

ここではRPS制度③として、電気事業者が他から再エネ等電気相当量を購入するという ケースを分析する。再エネの環境付加価値分のみがRPSクレジット価格mで購入され、電 気としての再エネは通常の電力として、価格plで全てを卸供給することになる。また、RPS クレジットの買い取られる量は、RPS制度で義務づけられている量になるのでr

qw qs

となる。以上のことから、再エネ事業者の利潤関数は、

(3-1)

r pl

qwqs

mr

qwqs

Cw

 

qw Cs

 

qs

となり、利潤最大化条件(

rqw 0、

2

r

q

w2

 0

、

rqs 0、2

rqs2 0) より、

(3-2) plmrCqw

(3-3) plmrCqs

が得られる。ここから最適生産量qw*qs*が導出され、最適条件としてCqwCqsが得られ る。しかし、実際にはCqwCqsであることから、最適条件を満たすことができない。ここか ら考察を加える。まず、RPS クレジット価格m並びにrが上昇した場合、価格水準が上昇 するため、再エネ事業者の生産量は増加する。次にRPS制度②と比較を行う。(2-2)式、(2-3)

136 逆需要曲線について、

は傾きに影響を及ぼしていることから、切片は同じになっている。

図5-4 外生変数 の変化による均衡点の変化

O

ドキュメント内 著者 大平 佳男 (ページ 91-123)

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