本章では,我が国における自転車関連交通事故と自転車利用率の相関関係について,全 自転車交通事故,四輪車対自転車交通事故,二輪車対自転車交通事故,自動車対自転車交 通事故,そして自転車対歩行者交通事故に大別した上で,都道府県別および都市別に詳細 な検証を行う.
4.1
相関係数と相関関係以下では,
2
つのデータ群の関連性を客観的に判定するために,相関係数を利用する.相関係数の取り得る値の範囲は-
1
≦R
≦1
であり,プラスの値を取る時は正の相関が,マ イナスの値を取る時は負の相関がある.-1
の時は完全な逆相関,1
の時は完全な正相関で あり,その2
つのデータ群には強い関連性が存在することを示す.一方,0
の時には無相 関であり,その2
つのデータ群には関連性がないと判断される.2
つの変数x
とy
の平均を,それぞれx
,y
とすると,相関係数(R
)は,以下の式(1
) で表される.( )( )
( ) ( )
−
−
−
−
=
∑
∑
∑
=
=
=
n
i i
n
i i
n
i i i
y y x
x
y y x x R
1
2 1
2
1
( 1
)一般的に,相関係数の絶対値と相関関係の程度の間には,表
4.1
に示すような対応関係 があると考える.4.2
自転車利用率と自転車普及率の相関関係図
4.1
は,平成22
年における我が国の都道府県別自転車利用率と自転車普及率(1
人当 たり自転車保有台数)の散布図と相関係数を示したものである.ここで,自転車利用率① とは利用交通手段が1
種類のケース(自転車)であり,自転車利用率②とは利用交通手段 が1
種類のケース(自転車),および利用交通手段が2
種類のケース(鉄道あるいは電車,および自転車)である.
相関係数については,自転車利用率①の場合は
0.708
,自転車利用率②の場合は0.839
表4.1
相関係数と相関関係相関係数 相関関係の程度
0.7
≦|R|
≦1.0
極めて高い相関関係がある.0.5
≦|R|
≦0.7
高い相関関係がある.0.4
≦|R|
≦0.5
中程度の相関関係がある.0.3
≦|R|
≦0.4
ある程度の相関関係がある.0.2
≦|R|
≦0.3
低い相関関係がある.0.0
≦|R|
≦0.2
ほとんど相関関係がない.29
であり,両ケースとも極めて高い相関関係が観察された.したがって,我が国の都道府県 においては,自転車が普及するほど,自転車利用率は高まるといえるだろう.
4.3
自転車関連交通事故死傷者数と自転車利用率の相関関係4.3.1
全自転車交通事故4.3.1.1
都道府県図
4.2
は,平成22
年における我が国の都道府県別人口10
万人当たり全自転車交通事故 死傷者数と自転車利用率の散布図と相関係数を示したものである.ここで,全自転車交通 事故とは,四輪車対自転車交通事故,二輪車対自転車交通事故,自動車対自転車交通事故,自転車対歩行者交通事故,および自転車対相手なし交通事故の合計である.
相関係数については,自転車利用率①の場合は
0.662
,自転車利用率②の場合は0.722
であり,高い,あるいは極めて高い相関関係が観察された.したがって,我が国の都道府 県においては,自転車利用率が高いほど,人口10
万人当たり全自転車交通事故死傷者数は 増加するといえるだろう.図
4.1
都道府県別自転車利用率と1
人当たり自転車保有台数の散布図(平成22
年)出所)筆者作成.
0.02 0.07 0.12 0.17 0.22
0.13 0.33 0.53 0.73
自転車利用率①
自転車普及率
0.01 0.06 0.11 0.16 0.21 0.26
0.13 0.33 0.53 0.73
自転車利用率②
自転車普及率
R=0.708 R=0.839
15 65 115 165 215
0.02 0.12 0.22
人口10万人当たり全自転車 交通事故死傷者数
自転車利用率①
14 64 114 164 214
0.01 0.11 0.21
人口10万人当たり全自転車 交通事故死傷者数
自転車利用率②
R=0.662 R=0.722
図
4.2
都道府県別人口10
万人当たり全自転車交通事故死傷者数と自転車利用率の散布図(平成
22
年)出所)筆者作成.
30
4.3.1.2
都市図
4.3
は,平成22
年における我が国の都市別人口10
万人当たり全自転車交通事故死傷 者と自転車利用率の散布図と相関係数を示したものである.相関係数については,自転車利用率①の場合は
0.695
,自転車利用率②の場合は0.741
であり,高い,あるいは極めて高い相関関係が観察された.したがって,我が国の都市に おいては,自転車利用率が高いほど,人口10
万人当たり全自転車交通事故死傷者数は増加 するといえるだろう.4.3.2
四輪車対自転車交通事故4.3.2.1
都道府県図
4.4
は,平成22
年における我が国の都道府県別人口10
万人当たり四輪車対自転車交 通事故死傷者数と自転車利用率の散布図と相関係数を示したものである.相関係数については,自転車利用率①の場合は
0.620
,自転車利用率②の場合は0.664
であり,両ケースとも高い相関関係が観察された.したがって,我が国の都道府県におい ては,自転車利用率が高いほど,人口10
万人当たり四輪車対自転車交通事故死傷者数は増 加するといえるだろう.図
4.3
都市別人口10
万人当たり全自転車交通事故死傷者と自転車利用率の散布図(平成
22
年)出所)筆者作成.
-26 74 174 274 374 474
-0.02 0.08 0.18 0.28
人口10万人当たり全自転車 交通事故死傷者数
自転車利用率①
-26 74 174 274 374 474
-0.02 0.18 0.38
人口10万人当たり全自転車 交通事故死傷者数
自転車利用率②
R=0.695 R=0.741
13 33 53 73 93 113 133 153 173 193
0.02 0.12 0.22
人口10万人当たり四輪車対 自転車交通事故死傷者数
自転車利用率①
13 33 53 73 93 113 133 153 173 193
0.01 0.11 0.21
人口10万人当たり四輪車対 自転車交通事故死傷者数
自転車利用率②
R=0.620 R=0.664
図
4.4
都道府県別人口10
万人当たり四輪車対自転車交通事故死傷者数と自転車利用率の 散布図(平成22
年)出所)筆者作成.
31
4.3.2.2
都市図
4.5
は,平成22
年における我が国の都市別人口10
万人当たり四輪車対自転車交通事 故死傷者と自転車利用率の散布図と相関係数を示したものである.相関係数については,自転車利用率①の場合は
0.659
,自転車利用率②の場合は0.695
であり,両ケースとも高い相関関係が観察された.したがって,我が国の都市においては,自転車利用率が高いほど,人口
10
万人当たり四輪車対自転車交通事故死傷者は増加すると いえるだろう.4.3.3
二輪車対自転車交通事故4.3.3.1
都道府県図
4.6
は,平成22
年における我が国の都道府県別人口10
万人当たり二輪車対自転車交 通事故死傷者数と自転車利用率の散布図と相関係数を示したものである.相関係数については,自転車利用率①の場合は
0.747
,自転車利用率②の場合は0.828
であり,両ケースとも極めて高い相関関係が観察された.したがって,我が国の都道府県 においては,自転車利用率が高いほど,人口10
万人当たり二輪車対自転車交通事故死傷者 数は増加するといえるだろう.-5 0 5 10 15 20 25
0.02 0.12 0.22
人口10万人当たり二輪車対 自転車交通事故死傷者数
自転車利用率①
-6 -1 4 9 14 19 24
0.01 0.11 0.21
人口10万人当たり二輪車対 自転車交通事故死傷者数
自転車利用率②
R=0.747 R=0.828
図
4.6
都道府県別人口10
万人当たり二輪車対自転車交通事故死傷者数と自転車利用率の 散布図(平成22
年)出所)筆者作成.
-20 30 80 130 180 230 280 330 380
-0.02 0.08 0.18 0.28
人口10万人当たり四輪車対 自転車交通事故死傷者数
自転車利用率①
-20 30 80 130 180 230 280 330 380
-0.02 0.18 0.38
人口10万人当たり四輪車対 自転車交通事故死傷者数
自転車利用率①
R=0.659 R=0.695
図
4.5
都市別人口10
万人当たり四輪車対自転車交通事故死傷者と自転車利用率の散布図(平成
22
年)出所)筆者作成.
32
4.3.3.2
都市図
4.7
は,平成22
年における我が国の都市別人口10
万人当たり二輪車対自転車交通事 故死傷者と自転車利用率の散布図と相関係数を示したものである.相関係数については,自転車利用率①の場合は
0.674
,自転車利用率②の場合は0.723
であり,高い,あるいは極めて高い相関関係が観察された.したがって,我が国の都市に おいては,自転車利用率が高いほど,人口10
万人当たり二輪車対自転車交通事故死傷者は 増加するといえるだろう.4.3.4
自動車対自転車交通事故4.3.4.1
都道府県図
4.8
は,平成22
年における我が国の都道府県別人口10
万人当たり自転車対自転車交 通事故死傷者数と自転車利用率の散布図と相関係数を示したものである.相関係数については,自転車利用率①の場合は
0.519
,自転車利用率②の場合は0.674
であり,両ケースとも高い相関関係が観察された.したがって,我が国の都道府県におい ては,自転車利用率が高いほど,人口10
万人当たり自転車対自転車交通事故死傷者数は増 加するといえるだろう.-2 0 2 4 6 8 10 12
0.02 0.12 0.22
人口10万人当たり自転車対 自転車交通事故死傷者数
自転車利用率①
-3 -1 1 3 5 7 9 11 13
0.01 0.11 0.21
人口10万人当たり自転車対 自転車交通事故死傷者数
自転車利用率②
R=0.519 R=0.674
図
4.8
都道府県別人口10
万人当たり自転車対自転車交通事故死傷者数と自転車利用率の の散布図(平成22
年)出所)筆者作成.
-6 4 14 24 34 44 54
-0.02 0.08 0.18 0.28
人口10万人当たり二輪車対 自転車交通事故死傷者数
自転車利用率①
-7 3 13 23 33 43 53
-0.02 0.18 0.38
人口10万人当たり二輪車対 自転車交通事故死傷者数
自転車利用率②
R=0.674 R=0.723
図
4.7
都市別人口10
万人当たり二輪車対自転車交通事故死傷者と自転車利用率の散布図(平成
22
年)出所)筆者作成.
33
4.3.4.2
都市図
4.9
は,平成22
年における我が国の都市別人口10
万人当たり自転車対自転車交通事 故死傷者と自転車利用率の散布図と相関係数を示したものである.相関係数については,自転車利用率①の場合は
0.492
,自転車利用率②の場合は0.576
であり,中程度の,あるいは高い相関関係が観察された.したがって,我が国の都市にお いては,自転車利用率が高いほど,人口10
万人当たり自転車対自転車交通事故死傷者は,比較的増加するといえるだろう.
4.3.5
自転車対歩行者交通事故4.3.5.1
都道府県図
4.10
は,平成22
年における我が国の都道府県別人口10
万人当たり自転車対歩行者 交通事故死傷者数と自転車利用率の散布図と相関係数を示したものである.相関係数については,自転車利用率①の場合は
0.393
,自転車利用率②の場合は0.539
であり,ある程度の,あるいは高い相関関係が観察された.したがって,我が国の都道府 県においては,自転車利用率が高いほど,人口10
万人当たり自転車対歩行者交通事故死傷 者数は,比較的増加するといえるだろう.-4 1 6 11 16 21 26 31
-0.02 0.08 0.18 0.28
人口10万人当たり自転車対 自転車交通事故死傷者数
自転車利用率①
-4 1 6 11 16 21 26 31
-0.02 0.18 0.38
人口10万人当たり自転車対 自転車交通事故死傷者数
自転車利用率②
R=0.492 R=0.576
図
4.9
都市別人口10
万人当たり自転車対自転車交通事故死傷者と自転車利用率の散布図(平成
22
年)出所)筆者作成.
-0.5 1.5 3.5 5.5 7.5
0.02 0.12 0.22
人口10万人当たり自転車対 歩行者交通事故死傷者数
自転車利用率①
-0.9 1.1 3.1 5.1 7.1
0.01 0.11 0.21
人口10万人当たり自転車対 歩行者交通事故死傷者数
自転車利用率②
R=0.393 R=0.539
図
4.10
都道府県別人口10
万人当たり自転車対歩行者交通事故死傷者数と自転車利用率 の散布図(平成22
年)出所)筆者作成.