日中間の環境協力は、関係省庁、関係特殊法人、学術団体、公益法人、地方自治体、NGO、
企業等広範な主体が、それぞれの所管事項、国際協力への関心、人道的見地、ビジネス拡 大等を意図して、独自の取り組みを行っている。
関係省庁、特殊法人による事業は日本政府としての外交指針をもとに実施されているも のであり、安全保障面、人道面、経済面等多面的な外交政策の一環とみるべきであるが、
他の団体の活動は、そのほとんどが、独自性に富み相互の連携も乏しく、内容が重複した り、相互の交流により効率化出来るものも多いことから、平成 12年6月を初回として実 施した、「日中環境協力関係者定例懇談会」に於ける各講師の講演と意見交換内容ならびに 従来から収集した情報等を基に各主体の活動概要と連携強化策を下記に示した。
Ⅰ.各主体の活動概要
(詳細については、平成12年度環境省委託調査「日中環境協力情報資料集」参照)
1.関係省庁による活動
我が国は「ODA 大綱」の4つの基本原則の一つに「環境と開発の両立」をうたい、中 国に対しても環境分野を協力の重点分野と位置づけている。円借款においては、日本側の 働きかけの成果もあり、環境案件が大きなウェイトを占めている。
外務省、環境省、経済産業省、農林水産省等の関係省庁は各々の所管事項に従い、多方 面にわたる活動を実施している。一例を挙げれば、日中友好環境保全センタ−の設立、日 中環境開発モデル都市構想、環境情報ネットワ−ク整備計画等である。
また、従来指摘されていた、縦割り行政の弊害も、関係省庁等が一同に会し、中国側関 係者と協議する「日中環境協力総合フオ−ラム」の定期開催等により、相互の情報交流は 緊密なものなっている。
2.関係特殊法人による活動
国際協力事業団による無償資金協力、国際協力銀行による有償資金協力等がこれに該当 し、我が国 ODAの実行主体となっている。ちなみに、1999年度の有償資金協力案件19 件中、14件が環境案件であり、資金面でも環境案件が全体の2/3を占めている。
また、環境事業団は地球環境基金制度を設け、NGO による開発途上国の環境改善支援 活動を行っているが、対象国として中国が最多となっている。
3.学術団体による活動
大学に於ける研究は、教官個人の関心、興味が主体となっている場合が多く、体系的、
組織的な中国側との協力研究例は少ないが、一例として、文部省科学研究費補助金による、
名古屋大学の「中国の環境汚染の地域的拡散防止のための環境政策と我が国の経済強力の あり方」等を挙げる事が出来る。
慶応義塾大学を主体とする「中国環境研究会」による 10 年間にわたる実践的な日中共 同活動も特質に値する。
4.公益法人による活動
公益法人による活動も多方面に渡り、活動資金で区分すると、①所管官庁等からの委託 事業によるもの②各種助成金(例えば、環境事業団地球環境基金)によるもの③公益法人 自体の自主財源によるものに大別される。
①については、所管官庁の構想により実施しているが、実施段階においては、各法人と も、個々に形成した中国側機関との連携、専門家・会員企業等の協力を得て実施している 例が多いようである。
②については、助成金支給要綱と整合したテ−マを継続的に実施している例が多いが、
助成金の使途制約(専従職員の人件費が助成金対象外であること等)があり、ボランタリ
−アクションとなっている。
③は財政的には、外部に依存せず自主財源で実施しているものであるが、規模、件数等 それほど多くないと思われる。
5.地方自治体による活動
日本の地方自治体による対中国際協力において、環境保全分野の比重は極めて高いもの となっている。これは地方自治体が公共財としての上下水道、廃棄物処理施設等を所管し、
運営ノウハウも保有していることに起因している。代表例は北九州市と大連市の「大連市 環境モデル地区整備計画調査」であり、これは大型案件としての「日中環境開発モデル都 市構想」として結実しており、広島市と重慶市の酸性雨研究交流センタ−も事例として挙 げることが出来る。いずれにせよ、昨今の経済情勢もあり、企業サイドの協力が得にくい こと、中国側が形に現れる協力(例えば、測定機材の供与等)を要請することが多いが、
視察団の派遣、研修生の受入れ等が主体となっているものが多い。日本の地方自治体は政 府の縦割り行政の欠陥を補完し、実効性のある規制、政策を打ちだしてきたが、こうした 地方自治体の培ってきたノウハウの伝達の意義も大きいものと考えられる。
6.NGOによる活動
国内で多数の環境関連 NGOが中国への協力を行っているが、これらのNGO は種々の
基盤、方針を有し、活動分野も様々である。一般的に資金力、マンパワ−等の基盤は弱い が、その多様性、柔軟性、地域密着性、個別領域における専門性等から実効を挙げている 例が多く行政サイドの支援強化が望まれる。
政府間では硬直化した関係になりがちな協力分野、地域密着型協力、専門的技術交流が 対象となっていることが多く、資金面での制約の解決策の一つとして、JICA の「開発パ
−トナ−事業」の対象国に中国が折り込まれれば、これも有効に機能するものと考えられ る。
現状、資金源として、各NGO が活用しているものは、①環境事業団地球環境基金②公 益信託地球環境日本基金③イオングル−プ環境財団助成金・経団連自然保護基金等である。
7.企業による活動
民間企業では、国際協力事業団(JICA)を通じての研修生受入れ・技術者派遣、業界団 体による定期交流・セミナ−開催・技術指導、企業独自の基金設立等、数々の協力が行わ れている。
しかし、有償・無償を問わずこれらの協力は、資金的には持ち出しとなっており、また、
環境保全対策・省エネルギ−対策等、具体的提言を取りまとめて提供しても、生産設備そ のものが、旧態以前たるものであるため提言内容の具体化が困難であったり、中国側の資 金不足から、日本側の提言が実施に至る例は少なく、支援企業・業界団体の意欲をそいで いる例も少なくない。
かたや、上記のようなボランタリ−アクションではない、対中環境ビジネスも、順調に 推移している訳ではない。以下、環境コンサルテイングと環境( 装置) 産業に大別して記 述する。
(1)環境コンサルテイング
日本の環境コンサルタント企業による対中コンサルタント業務のほとんどは、環境省、
経済産業省、厚生労働省、農林水産省、国際協力事業団、国際協力銀行等を発注者とする ものであり、日本企業と中国側政府機関・中国企業との直接契約事例は少ない。直接契約 事例が少ない理由は、①発注者側の責任体制が明確にならないこと②契約条件の不履行、
支払い遅延 発注者側から提示されるデ−タに不備が多いこと等であり、中国側の知的業 務に対する評価(対価)が低すぎることが、直接契約事例の少ない最大の要因であろう。
(2)環境(装置)産業
形態としては、①ODA②日本企業の直接投資③現地合弁企業に大別出来る。環境コンサ
ルテイングと同様、日本企業の進出が拡大しない最大の理由は、投資環境の未整備にある と思われる。
具体的には、①外資参入ならびに出資規制②国産化と輸出要請③外資法の運用・優遇政 策の改変が頻繁に行われること④為替管理・利益回収・金融政策の不備⑤税制の不備⑥雇 用上の制約⑦知的財産権の不備、意匠・商標等の侵害等である。
いずれにせよ、日本企業による事業は政府開発援助案件がほとんどで、純民間ベ−スの 直接取引事例は少ないのが実態であり、WTO 加盟はあるものの、投資環境が整備される まではこの状況が続くものと考える。かっての日本の技術の開発途上国への技術移転の本 格化は、買い手(開発途上国)側の十分な検討をもとにした純民間ベ−スの契約案件の拡 大と連動していることを考えれば、中国側の投資環境の整備が最大の課題であろう。
Ⅱ.各主体間の連携強化案
各々の活動の主体性を尊重することを前提に、以下の連携強化策が考え得る。
1.活動報告等の積極的な公開と情報交換(インタ−ネットの活用等)
例 え ば 、 環 境 省 の ウ エ ブ サ イ ト ( 持 続 可 能 な 開 発 に 向 け た 国 際 環 境 協 力 ; http://www.env.go.jp/earth/coop/)で、以下の情報が公開されている。
・日中環境協力情報資料集
・日中環境協力交流事業(日中環境協力関係者定例懇談会)開催案内 ・日中環境協力推進事業補足調査報告書
また、関係者の情報交換の手段としてのメ−リングリストについては、当事業に関連す る 、 日 中 環 境 協 力 環 境 者 メ − リ ン グ リ ス ト ( J C E C − N E T )
(http://www.iij-mc.co.jp/MLOnline/IIJ/2000/jcec-net.html)の他に、日中環境協力ネッ トワ−ク(http://www.freeml.com/GroupInfo.cgi?Group=ce-net)等がある。
2.事業の共同実施(同一事業に対する複数団体による分野分担・地域分担等)
現状、各主体が個々に実施している活動について、上記による情報等をもとに、共同実 施による成果の拡大を期待できるケ−スもあるものと思われられる。
3.専門家の相互紹介と定期的会合の開催