3.1 まえがき
近年の建設工事は、規模の拡大化と工事内容の複雑化、多様化により、従来の施工管理手法では 工事全体の施工管理状況を十分に把握することが困難となってきている。また、情報化技術の著し い発達もあり、建設CALS侶Cl)の導入にみられるように建設分野においても情報化技術を取り込 み、情報化産業として大きく変化しようとしている。こうした中、第2章で紹介した各分野におい て、CGアニメーションが広く利用されている事実と同様に、建設分野でもCGアニメーション利 用の可能性が期待される。
特に施工段階に着目すると、分業体制に起因する様々な施工関係者及び発注者や設計者などが複 雑に絡む段階である。ゆえに、それぞれの関係者に対するプレゼンテーションを行う場面も数多く
存在するという特徴がある。にもかかわらず、施工段階でのCGアニメーションの適用に関する研 究はあまり行われていないのが実状である。
本章では、建設プロジェクトのライフサイクルの中でも特に施工管理に着目した施工管理CGア ニメーションシステム概念を提案し、その構築を試みる。本システムの提案に先立ち、CGアニメ ーション適用の可能性を建設プロジェクトライフサイクルの各段階ごとに検討する。まず、建設プ
ロジェクトライフサイクルの各段階についての特徴を述べ、各段階における重要事項と問題点を抽
出する。次に、それらを踏まえ、従来の手法を支援するCGアニメーションの適用の可能性につい
て述べる。その後、施工段階については、詳細な考察を加えるとともに、その特徴と問題点を挙げ、
それらを解決するための手法として、WEB技術を取り入れた施工管理支援システムを提案する。
さらに、施工管理を支援する目的で作成されるCGアニメーションが建設プロジェクトの上流段階 にあたる企画、設計段階でも適用可能であることを示す。
3.2 建設プロジェクトライフサイクルにおける適用
3.2.1 建設プロジェクト
建設プロジェクトとは、「社会資本整備にかかわる公共土木事業や民間の開発事業のこと」2)を指 し、図3−1の建設プロジェクトライフサイクルに示すように、事業計画から調査、設計、工事・工 事監理、維持管理・運営を経て、解体撤去・廃棄に至るまでのサイクルから成り立っている。この
ライフサイクルに関わる人々は、発注者(Client)、設計者(Consultant)、施工者(Contractor)
の3つに大別される。この中で、発注者は建設プロジェクトライフサイクル全般において監督者と
して常に関わり、設計者は主として実際に施工する前の調査や設計、施工者は工事、廃棄・解体撤 去など施工に関して携わることになる。
本研究においては、これらの建設プロジェクトライフサイクルを図3−1の括弧書き部分に示すよ うに、企画段階、設計段階、施工段階、維持管理段階の4段階に分け、それぞれに対して適用の可 能性を示す。本節においてはそれぞれの可能性に言及する前に、それぞれの段階についてその特徴
を述べる。
図3・1建設プロジェクトライフサイクル
(1)企画段階
プロジェクトの発掘にあたる段階であり、当該プロジェクトの基本構想を策定することが目的と される。この段階で重要なことは、当該プロジェクトにその目的にかなった代替案がないかどうか 検討することである。プロジェクトの計画は、社会のニーズあるいは住民のニーズに見合うもので なければならないため、発注者は当該プロジェクトにより多くのニーズを取入れるように努めなけ ればならない。また近年、公共事業に対する国民の意識が向上していることもあり、プロジェクト を円滑に進めていくためには、住民に対する当該プロジェクト実施内容の説明や、事業の妥当性の
理解を促すことが重要となっている。さらには、事後の事業実施に関わる社会環境などの変化によ る計画変更などの際にも、プロジェクトの構想段階において代替案との比較評価を行なうことが重
要であるといえる。
(2)設計段階
建設プロジェクトの企画段階において実現可能とされたプロジェクトは、次に設計段階において
具体化される。まず、設計条件などが設定され、技術調査などが行われ、予備設計が行われる。設
計担当者は、それをもとに用地取得など諸問題を考慮しながら予備設計を詳細設計まで発展させる。
また、この段階は次の施工段階へ移行するための準備期間でもあるので、この段階での発注者、設 計者、地域住民間でのプロジェクトに関する合意形成は、建設プロジェクトを進めていく上で重要 であると考えられる。
発注者及び設計者は、設計段階においてプロジェクトを具体化するため、より詳しい現場データ や用地取得などに関する問題点を考慮した上で施工法を検討し、その施工法にもとづいた設計を行 っていく。発注者は、主に目的達成のための合理的手段を追求し、工期内にプロジェクトを完成さ せることを目的としている。設計者は、発注者の要求を満たしつつ、実際に施工可能な設計を行う
ことを目的としている。両者の間で目的を達成するために、設計の進捗状況を把握し、考慮すべき 問題点については早い段階で解決する必要がある。また、プロジェクトの成否を決定する重要な問
題として、当該地区の用地の買収・確保が挙げられる。用地の選定自体は、経済的・技術的に適当 な用地が事前に幾つか選定されており、それから当該地区住民との間で発生する問題、あるいは社 会問題など考慮しながら、用地を1つに絞っていく。実際、用地が選定されると住民側と用地買収 について話し合いを行い、建設プロジェクトの具現化を行っていく。これらの諸問題を解決するた
めに住民に対し建設プロジェクトの概要を説明し理解を求めることは、発注者側にとってプロジェ クトを成功させるための重要な課題である。そのため、この段階での発注者と設計者と地域住民の 間での合意形成が重要となってくる。
(3)施工段階
施工者は契約条件に従い、工期内に定められた品質と機能を有する構造物を完成させるための施 工計画書を作成し、発注者の承認を得た後に工事を開始する。その後、施工者は施工計画に従って 最大の技術力を発揮し、施工を進める。また、施工者は施工期間中にプロジェクトを円滑に遂行す
るために、品質管理、工程管理、原価管理、安全管理の各種工事管理業務を行う。この段階は、分
業体制に起因する様々な施工業者および発注者や設計者などが複雑に絡む段階である。また、他の
段階に比べ現場の状況が絶えず変化し、特に早急な対応が重要となる。そのため、常に現場の状況 を的確に把握し、突発的な不具合に対しても適切な処置、あるいは対処することのできる準備をし ておくことが重要である。
(4)維持管理段階
維持管理段階は、建設プロジェクトライフサイクルの最後の段階であり、一般には発注者が運営
並びに維持管理を行う。施設が当初の目的・機能を十分に発揮し、長期間の供用に耐えうるために
必要な維持管理を行う。この段階では、プロジェクトの事後評価をすることが、特に重要となる。
また、運営段階の実績情報の蓄積を行ない、他の類似した建設プロジェクトライフサイクルの各段 階にフィードバックさせることも重要となる。
3.2.2 CGアニメーション適用の利点
CGアニメーションは、建設工事の企画段階から維持管理段階まで全般的に展開可能で、その生産 性改善効果が期待できる。そこで、CGアニメーションの建設工事における有効性を以下のように建 設プロジェクトライフサイクルの各段階に分けて述べる。
(1)企画段階
現実的イメージの空間を作り出せることから、景観検討、構造物配置検討作業が可能である。模 型を作成する場合と比べると、模型は一般的には設計業務終盤に製作され、計画変更、代替案検討
に時間と費用が必要となる。しかし、CGアニメーションを適用すると模型を作成する必要がないの で、模型作成のタイムラグがなくなる。また、模型作成の作業が無くなることで、時間的余裕が生
まれ、決められた時間内でより深く設計検討(設計本来の目的)することが可能となる。