前節では,刺激速度に対するLK法の入出力特性が,MT細胞同様,単峰性のグラフ を描くことを示した.本節では,1.3節で述べたMT細胞の方向選択性について,提案 モデルで再現できることを示す.用いた刺激は,3.1節同様ガウシアンランダムドット 画像で,任意の方向に1 pixel/frame動かした画像を500組用意した.また,モデルパ ラメータも空間微分カーネルサイズをk = 3とした以外は3.1節と同じパラメータを 用いた.
図3.5に,様々な方向に動かした時の式(18)によるx軸方向(0◦方向)の推定速度 ˆ
vx の平均値を示す.vˆx はx 軸方向(0◦方向)の速度を推定するため,0◦方向に動く 刺激に対し最も強く反応する.図3.5が円形の軌跡を描くのは解析的にも明らかであ
第3章 MT細胞の反応特性の再現 36
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30
210
60
240
90
270 120
300 150
330
180 0
図3.5 様々な方向に刺激を動かした時のx軸方向(0◦方向)の推定速度vˆxの平均 値.偏角が刺激の動く方向ϕs,中心からの距離が刺激方向ϕsに対する推定速度vˆx の平均値である.刺激速度vが推定可能域の速度の場合 vcos(ϕs)がモデル出力と なり,このような正円状のグラフになる.
る.刺激の動く方向ϕs に対する推定速度vˆx は,正しく速度推定が行える刺激速度v であれば,vˆx = vcos(ϕs)となる.この推定結果 vˆx を図3.5 のような極座標系 (r, θ) でプロットすると,r =vˆx, θ = ϕsであり,直交座標系(x′,y′)とは次の関係にある.
x′=rcosθ= vcos2(ϕs)= vcos 2ϕ2 s + v2 y′=rsinθ = vcos(ϕs) sin(ϕs)= vsin 2ϕ2 s
(35)
整理すると
x′− v2 = v2cos(2ϕs) y′= v2sin(2ϕs)
(36)
第3章 MT細胞の反応特性の再現 37 である.ここで,cos2(2ϕs)+sin2(2ϕs)=1を用いると,
( x′− v
2 )2
+(y′)2= (v 2
)2
(37)
となり,半径 v2,中心座標(x′,y′)=(v2,0)の円を描く.式(23)に示すϕ方向の推定速 度vˆξ に関しても,同様に円形の軌跡を描く.刺激の動く方向ϕs に対する推定結果vˆξ は,正しく速度推定が行える刺激速度vであれば,vˆξ(ϕ) = vcos(ϕs −ϕ)となる.こ の推定結果vˆξ(ϕ)を図3.5 のような極座標系(r, θ)でプロットすると,r = vˆξ, θ = ϕs
であり,直交座標系(x′,y′)とは次の関係にある.
x′=rcosθ = vcos(ϕs−ϕ) cos(ϕs)=vcosϕ(cos 2ϕ
s
2 − 12)
+vsinϕ(sin 2ϕ
s
2
)
y′=rsinθ =vcos(ϕs−ϕ) sin(ϕs)=vcosϕ(sin 2ϕ
s
2
)−vsinϕ(cos 2ϕ
s
2 − 12) (38) 整理すると
x′− v2cosϕ= v2cos(2ϕs−ϕ) y′− v2sinϕ= v2sin(2ϕs−ϕ)
(39)
である.ここで,cos2(2ϕs−ϕ)+sin2(2ϕs−ϕ)=1を用いると,
( x′− v
2cosϕ)2
+ ( y′− v
2sinϕ)2
= (v 2
)2
(40)
となり,半径 v
2,中心座標(x′,y′)=(v2 cosϕ, v2sinϕ)の円を描く.
次に,刺激を動かす方向ϕs を30◦間隔にし,局所座標系の回転角ϕをϕ= 219◦と した時の式(23)によるξ 方向(動径方向)の推定速度vˆξ の平均値を求めた.その結 果を図3.6 に示す.ϕs の間隔が十分に小さい場合には円状の軌跡を描くが,30◦間隔 では多角形状の軌跡を描く.図1.6と図3.6との類似性から,MT細胞の方向選択性に ついても提案モデルで定性的に再現できることが分かる.MT細胞が最大反応を示す
方向(preferred direction)は,MT細胞を既存の速度抽出フィルタと見れば抽出すべ
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図3.6 局所座標系の回転角ϕをϕ=219◦とした時の式(23)によるξ 方向(動径 方向)の推定速度vˆξ の平均値.刺激の動く方向ϕsのサンプル間隔を30◦とした場 合.MT細胞の刺激方向に対する反応特性(図1.6)と類似した入出力特性を示す.
き刺激の移動方向であると解釈でき,新しい計算原理である速度推定器と見ればその MT細胞が速度推定を試みる方向であると解釈できる.