第3章 教育課程の編成及び実施
第2節 教育課程の編成
1 各学校の教育目標と教育課程の編成(第1章第2の1)
1 各学校の教育目標と教育課程の編成
教育課程の編成に当たっては,学校教育全体や各教科等における指 導を通して育成を目指す資質・能力を踏まえつつ,各学校の教育目標 を明確にするとともに,教育課程の編成についての基本的な方針が家 庭や地域とも共有されるよう努めるものとする。その際,第5章総合 的な学習の時間の第2の1に基づき定められる目標との関連を図るも のとする。
本項は,各学校における教育課程の編成に当たって重要となる各学校の教育目 標の設定と,教育課程の編成についての基本的な方針の家庭や地域との共有,総 合的な学習の時間について各学校が定める目標との関連について示している。
各学校の教育課程の編成の基本となる学校の教育目標は,法令に定める学校教 育の目的や目標及び教育課程の基準に基づき,各学校が当面する教育課題の解決 を目指し,両者を統一的に把握して設定することが重要となる。各学校における 教育課程は,当該学校の教育目標の実現を目指して,指導内容を選択し,組織 し,それに必要な授業時数を定めて編成する。
今回の改訂においては,次項のとおり,言語能力,情報活用能力,問題発見・
解決能力等の学習の基盤となる資質・能力や,豊かな人生の実現や災害等を乗り 越えて次代の社会を形成することに向けた現代的な諸課題に対応して求められる 資質・能力を,教科等横断的な視点に立って育成することを規定している。ま た,各教科等においても,当該教科等の指導を通してどのような資質・能力の育 成を目指すのかを,「知識及び技能」,「思考力,判断力,表現力等」,「学びに向 かう力,人間性等」の三つの柱に沿って再整理し,当該教科等の目標及び内容と して明確にしている。
各学校において,教育目標に照らしながら各教科等の授業のねらいを改善した り,教育課程の実施状況を評価したりすることが可能となるよう,各学校が設定 する教育目標は具体性を有するものであることが求められる。法令や教育委員会 の規則,方針等を踏まえつつ,児童や学校,地域の実態を的確に把握し,第1章 総則第1の3に基づき,学校教育全体及び各教科等の指導を通じてどのような資 質・能力の育成を目指すのかを明らかにしながら,そうした実態やねらいを十分
2教育課程の 編成 反映した具体性のある教育目標を設定することが必要である。また,長期的な視
野をもって教育を行うことができるよう,教育的な価値や継続的な実践の可能性 も十分踏まえて設定していくことが重要である。
「社会に開かれた教育課程」の理念に基づき,目指すべき教育の在り方を家庭 や地域と共有し,その連携及び協働のもとに教育活動を充実させていくために は,各学校の教育目標を含めた教育課程の編成についての基本的な方針を,家庭 や地域とも共有していくことが重要である。そのためにも,例えば,学校経営方 針やグランドデザイン等の策定や公表が効果的に行われていくことが求められ る。
また,第5章総合的な学習の時間第2の1に基づき各学校が定めることとされ ている総合的な学習の時間の目標については,上記により定められる学校の教育 目標との関連を図り,児童や学校,地域の実態に応じてふさわしい探究課題を設 定することができるという総合的な学習の時間の特質が,各学校の教育目標の実 現に生かされるようにしていくことが重要である。
以上のことを整理すると,各学校において教育目標を設定する際には,次のよ うな点を踏まえることが重要となる。
(1) 法律及び学習指導要領に定められた目的や目標を前提とするものであるこ と。
(2) 教育委員会の規則,方針等に従っていること。
(3) 学校として育成を目指す資質・能力が明確であること。
(4) 学校や地域の実態等に即したものであること。
(5) 教育的価値が高く,継続的な実践が可能なものであること。
(6) 評価が可能な具体性を有すること。
2 教科等横断的な視点に立った資質・能力
児童に「生きる力」を育むことを目指して教育活動の充実を図るに当たって は,学校教育全体及び各教科等の指導を通してどのような資質・能力の育成を目 指すのかを,資質・能力の三つの柱を踏まえながら明確にすることが求められ る。育成を目指す資質・能力の具体例については,様々な提案がなされており,
学習指導要領に基づき各学校において,児童や学校,地域の実態に応じてどのよ うな資質・能力の育成を図っていくのかを明らかにしていく必要があるが,平成 28年の中央教育審議会答申では,数多く論じられている資質・能力を以下のよう に大別している。
・ 例えば国語力,数学力などのように,伝統的な教科等の枠組みを踏まえなが
第3章教育課程の 編成及び実施
ら,社会の中で活用できる力としての在り方について論じているもの。
・ 例えば言語能力や情報活用能力などのように,教科等を越えた全ての学習の 基盤として育まれ活用される力について論じているもの。
・ 例えば安全で安心な社会づくりのために必要な力や,自然環境の有限性の中 で持続可能な社会をつくるための力などのように,今後の社会の在り方を踏ま えて,子供たちが現代的な諸課題に対応できるようになるために必要な力の在 り方について論じているもの。
1点目の教科等の枠組みを踏まえて育成を目指す資質・能力については,各教 科等の章の目標や内容において,それぞれの教科等の特質を踏まえて整理されて いる。これらの資質・能力の育成を目指すことが各教科等を学ぶ意義につながる ものであるが,指導に当たっては,教科等ごとの枠の中だけではなく,教育課程 全体を通じて目指す教育目標の実現に向けた各教科等の位置付けを踏まえ,教科 等横断的な視点をもってねらいを具体化したり,他の教科等における指導との関 連付けを図りながら,幅広い学習や生活の場面で活用できる力を育むことを目指 したりしていくことも重要となる。
このような教科等横断的な視点からの指導のねらいの具体化や,教科等間の指 導の関連付けは,前述の答申が大別した2点目及び3点目にあるような教科等の 枠組みを越えた資質・能力の育成にもつながるものである。変化の激しい社会の 中で,主体的に学んで必要な情報を判断し,よりよい人生や社会の在り方を考 え,多様な人々と協働しながら問題を発見し解決していくために必要な力を,児 童一人一人に育んでいくためには,あらゆる教科等に共通した学習の基盤となる 資質・能力や,教科等の学習を通じて身に付けた力を統合的に活用して現代的な 諸課題に対応していくための資質・能力を,教育課程全体を見渡して育んでいく ことが重要となる。
(1) 学習の基盤となる資質・能力(第1章第2の2の (1))
(1) 各学校においては,児童の発達の段階を考慮し,言語能力,情報活 用能力(情報モラルを含む。),問題発見・解決能力等の学習の基盤と なる資質・能力を育成していくことができるよう,各教科等の特質を 生かし,教科等横断的な視点から教育課程の編成を図るものとする。
本項は,児童の日々の学習や生涯にわたる学びの基盤となる資質・能力を,児 童の発達の段階を考慮し,それぞれの教科等の役割を明確にしながら,教科等横 断的な視点で育んでいくことができるよう,教育課程の編成を図ることを示して
2教育課程の 編成 いる。学習の基盤となる資質・能力として,言語能力,情報活用能力,問題発
見・解決能力等を挙げている。
ア 言語能力
言葉は,児童の学習活動を支える重要な役割を果たすものであり,全ての 教科等における資質・能力の育成や学習の基盤となるものである。教科書や 教師の説明,様々な資料等から新たな知識を得たり,事象を観察して必要な 情報を取り出したり,自分の考えをまとめたり,他者の思いを受け止めなが ら自分の思いを伝えたり,学級で目的を共有して協働したりすることができ るのも,言葉の役割に負うところが大きい。したがって,言語能力の向上は,
児童の学びの質の向上や資質・能力の育成の在り方に関わる重要な課題とし て受け止め,重視していくことが求められる。
言語能力を育成するためには,第1章総則第3の1(2) や各教科等の内容 の取扱いに示すとおり,全ての教科等においてそれぞれの特質に応じた言語 活動の充実を図ることが必要であるが,特に言葉を直接の学習対象とする国 語科の果たす役割は大きい。今回の改訂に当たっては,中央教育審議会答申 において人間が認識した情報を基に思考し,思考したものを表現していく過 程に関する分析を踏まえ,創造的・論理的思考の側面,感性・情緒の側面,
他者とのコミュニケーションの側面から言語能力とは何かが整理されたこと を踏まえ,国語科の目標や内容の見直しを図ったところである。言語能力を 支える語彙の段階的な獲得も含め,発達の段階に応じた言語能力の育成が図 られるよう,国語科を要としつつ教育課程全体を見渡した組織的・計画的な 取組が求められる。
また,外国語科及び外国語活動は,学習対象とする言語は異なるが,言語 能力の向上を目指す教科等であることから,国語科と共通する指導内容や指 導方法を扱う場面がある。そうした指導内容や指導方法を効果的に連携させ ることによって,言葉の働きや仕組みなどの言語としての共通性や固有の特 徴への気付きを促し,相乗効果の中で言語能力の効果的な育成につなげてい くことが重要である。
(参考:言語能力を構成する資質・能力)
(知識・技能)
言葉の働きや役割に関する理解,言葉の特徴やきまりに関する理解と 使い分け,言葉の使い方に関する理解と使い分け,言語文化に関する理 解,既有知識(教科に関する知識,一般常識,社会的規範等)に関する 理解が挙げられる。