今、急速に進んでいる、ネット ワークのデジタル化とIPの広 範な普及がもたらす情報通信 産業の構造変化に対応する には、これまでの「通信」「放 送」という業種別の縦割り規 律であった情報通信法体系を 抜本的に見直し、「情報通信 法(仮称)」として、これからの 時代に即した新しい法律を中 心とした法体系を作る必要が あるということなんです。
ANSWER 01
2011年にアナログ波が停止して、デ ジタル波に変わることはみなさんご存知 だと思いますが、それまでに放送のみな らず、通信も含めて法律を抜本的に見直 すべきではないかとして、総務省のほうで この1年間ずっと議論してきたようなんで すが、その中間のとりまとめとして、「情報 通信法(仮称)」が出されたということな んです。
現在、日本の情報通信関係の法律は、
大きく「通信」と「放送」というサービスの 区分、さらに「有線」と「無線」という設備 の区分でそれぞれに対応した法律が作 られているうえに、通信・放送の融合や 連携による新たなサービスの出現に、随 時制度改正を行ってきたため、それぞれ の法律が複雑に関係する法体系となっ ています。
今回の総務省の中間取りまとめ案に おける「情報通信法(仮称)」は、この法
音楽主義61 体系を、これまでのサービスの区分によ
る縦割り型から、コンテンツ・伝送インフ ラなどの情報流通における役割に応じた レイヤー構造に転換することで、情報通 信産業の成長力・競争力の強化を図ろ うとする取り組みのようです。
このように「情報通信法(仮称)」は、
通信・放送法体系の再検討を行うものな ので、みなさんにより身近な著作権法そ のものは対象となっていません。しかし、
著作権法で重要な概念となっている「放 送」や「公衆送信」等の前提となっている 法体系が変わるわけですから、著作権法 そのものの見直しに波及する可能性がと ても大きいと思われます。
たとえば、現在の著作権法では「公衆 送信」では実演家に「許諾権」がある一 方で、「放送」では「報酬請求権」がある という制度になっていますが、その考え 方が変わるかもしれないということです ね(註1)。
総務省は19日、「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」(座長:堀部政男 一橋大 学名誉教授)においてとりまとめられた中間報告を公表し、ネットワークのデジタル化とIPの 広範な普及がもたらしている情報通信産業の構造変化を踏まえて、現在の通信・放送の縦 割り規律を撤廃し、従来の業種を超えた統合・連携・競争を通じてイノベーション(変革)を 促す「情報通信法(仮称)」の制定を提言した。従来の放送規制をベースに、メディアコンテ ンツ規律を再構成する案も盛り込まれている。
デジタルとIPが創る通信・放送融合の新たな法体系 総務省研究会中間報告
「情報通信法(仮称)」では、メ ディアが3つに区分されるそう ですが、具体的にはどう分類さ れるのでしょうか。
QUESTION 02
従来のように「通信」と「放送」
といった縦割り型ではなく、コ ンテンツの公然性、そして社 会 的 機 能 や 影 響 力によって
「特別メディア」「一般メディア」
「公然通信」に分け、規制ルー ルを再構成するという考え方 のようです。
ANSWER 02
「情報通信法(仮称)」では、情報通信法 体系を、従来のような「通信」「放送」と いう業種による縦割り型ではなく、「コン
テンツ」「プラットフォーム」「伝送インフ ラ」のようにレイヤー構造を持った1本の 法律にしましょうというものなのですが、
そのうちの「コンテンツ」に関しては、そ れが私信なのか、それとも公然性のある ものなのか、また、社会的な機能や影響 力がどの程度あるのかによって、その区 分を行っています。
ではどのように整理するかといえば、
まず第一に「メディアサービス」として、こ れまでの放送およびそれに近い配信が 可能なコンテンツサービスを位置づけま す。
この「メディアサービス」は、「特別メデ ィアサービス(仮称)」と「一般メディアサ ービス(仮称)」に細分されますが、前者
は、現在の地上テレビ放送を基本とする もので、現行の規律が原則維持されます。
これに対して後者は、現在の衛星放送
(CS)やケーブルテレビ(CATV)を念頭と したもので、現在の地上テレビ放送ほど ではないけれど、その社会的機能や影響 力に基づいたよりゆるやかな規制検討を する、とされているものです。
最後の「公然通信」は、まさしくインタ ーネット上のホームページなどの通信コ ンテンツに代表されますが、この分野に ついては関係者全員が遵守すべき共通 ルールの策定や、有害コンテンツに関す るゾーニング規制の導入の適否の検討 を要するものとされています。
これらのコンテンツの枠組みがそのま
【特別メディアサービス(仮称)】
地上テレビ放送によるコンテンツ配信が基本
○マスメディア集中排除原則の維持
○現行の放送法の規律を原則維持(政治的な公平確保、災害時の報道義務 他)
【一般メディアサービス(仮称)】
衛星放送(CS)、ケーブルテレビ、現在の放送と同等の機能を持った映像配信サービスなど
○最小限度のマスメディア集中排除原則の維持
○適正内容の確保の規律に限定し、災害時の報道義務等を緩和
【公然通信】
インターネットのホームページ、ブログなど
○必要最小限の規律の制度化(関係者全般が順巣すべき「共通ルール」の基本部分の規定、
有害コンテンツ流通に関する「ゾーニング規制」(※)の導入の検討など
※ゾーニング規制:特定の行為等に対して一定のゾーン(範囲や利用方法)に限り規制するこ とを許容する規制手法
メディア区分とコンテンツ規制の例(中間報告から類推)
ま著作権法に反映されるとはかぎりませ んが、この考え方に沿うなら、現在の地 上テレビ放送と同様に考えられる「特別 メディアサービス(仮称)」はともかく、「一 般メディアサービス(仮称)」および「公然 通信」については、また議論が必要とさ れるものになるのではないでしょうか。
我々として一番懸念しているのは、マ ルチユースを前提に法律ができるときに は、ともすれば、コンテンツ流通の利便 性への配慮のみが重視されることで、実
演家の権利が弱められ、配慮を欠く制度 となってしまう可能性があるということで す。つまり、「許諾権」という強い権利を 持っていると、国策としてとりあげている
「コンテンツ促進」に弊害が出るかもしれ ない、だったら「報酬請求権」にしてしま えと。IPマルチキャストのときと同じこと が起こりうる可能性がある。それが今、
我々にとって一番怖いことではないかと 思います。
そうならないためには、権利をきちんと 集中管理し、適切な運営(コントロール)
を行うことで、コンテンツの流通促進に も十分対応できているところを見せてい かないといけない。今年から我々が取り 組み始めたCPRAによる実演家権利の 集中管理(註2)は、今後そのような役割 を担ってますます重要になってくるものと 考えています。
音楽主義63 IPマルチキャストのときと同じ
ように、コンテンツ流通の利便 性への配慮が重視され、実演 家側の権利への配慮を欠く制 度になってしまう危険性がある 点です。だからこそ、実演家の 権利の集中管理と適切な制 度運営がますます重要になる わけです。
ANSWER 03
註1
「許諾権(著作隣接権)」では、実演家が実演の利 用を許諾、またはことわることができる。「報酬請求 権(報酬・補償金請求権)」では、実演家は利用を 禁止できないかわりに、その報酬や補償金を請求 することができる。
註2
現在、CPRA・FMPでは、放送実演等(テレビ番 組出演等)にかかわる権利管理・徴収業務を行っ ている。権利を集中管理することで、利用者は交 渉しやすくなり、権利者は出演チャンスが広がるな ど、双方にメリットがあると判断してのもの。ひい ては、コンテンツ促進にもつながるはずだ。(詳細 は『音楽主義006号』の「教えて!音制連」に掲載)
「情報通信法(仮称)」が施行 された場合の、我々プロダク ションにとって、一番の懸念事 項は何ですか?
QUESTION 03
「大丸有」シリーズ第2弾、というわけ ではないのですが、先月の「大手町カフ ェ」に続き、今回も最近なにかと話題の
「大丸有」のお話です。東京国際フォ−
ラムを中心に「大丸有」の様々な会場で 行われた、ゴールデンウィークのクラッ シックイベント、ラ・フォル・ジュルネ
「熱狂の日」音楽祭です。3年目になる今 年は、ついに観客動員数が106万人と なり、大都会東京のまっただなかの一大 クラッシックイベントに成長しました。
今月のヒットプロデューサーは、その 音楽祭の、日本側の旗振りリーダーのお 1人、株式会社東京国際フォーラムの 取締役、坪田卓哉さんです(現在は出向 元 の J R 東日本 にお 戻りになっていま す)。
昔、あのモナコ妃となった大女優「グ レース・ケリー」にファンレターを書い たこともあるという情熱家の坪田さん、 このイベントのプロデュースにかかわっ てから、子供のときに少しかじったこと