• 検索結果がありません。

1974年暫定テロ防止法( the Prevention of Terrorism ( Temporary Provisions )

E.    政府案への反応

(1)下院内務委員会は、2007年6月および7月の政府による意見聴取に対して、

留置期間の延長には不支持を表明している検察長官K. Macdonaldや前司法長官

Goldsmith

そして強い反対運動を展開する

Liberty

までもが――そして政府に寄

せられた回答の多くも――この告発後尋問の許容という方策には支持を表明し ていることを示した上で(54)、この委員会もこの方策を支持することを表明する。

――――――――――――

(51)Lord Carlile of Berriew, supra note 10, paras. 22-3.

(52)Lord Carlile of Berriew, supra note 10, para.24.

(53)Home Office, supra note 14, at 9.

(54)Home Affairs Committee, First Report of Session 2007-8vol.Ⅰ, supra note 26, paras. 87-91.

すなわち、「当委員会は告発前尋問におけるのと同様の保護手段――法的助言 を受ける権利、自己負罪拒否特権、抑圧的尋問からの自由――を前提として、

応答拒否からの不利益推認の許容をも含めて、テロリストである被告人に対す る告発後の尋問によって得られた証拠の利用を認めようとする提案を支持す る」、と明言する(55)

(2)両院合同人権委員会は、政府が告発前留置期間延長を正当化するために、

告発後尋問の拡張をも含めた他の「考えられる具体的方策」の可能性をおざな りにしか検討していないとして強く批判する(56)。告発後尋問に関しては、とく にそれが告発についての予備テストと組み合わせられることによって、告発前 の留置期間の延長の必要性を大きく減少させること、そして他の様々な方策を も組み合わせることによって問題の解決が可能であることを指摘する(57)。逆に いえば、この告発後尋問という方策についての強い懸念を有していないように 思われる。

Ⅲ-3 小括

本章では、告発前留置期間の延長と告発後尋問の許容範囲の拡張を目指す政 府案およびそれに対する反応を見てきたわけであるが、これをまとめれば以下 の通りである。

(1)政府は、現時点では28日を超える留置期間を必要とする事件が生じていな いことを認めつつ、将来においてそれが必要となるとした上で、いくつかの選 択肢についての国民からの意見聴取を行った(58)。結果として公表された政府案 は――寄せられた多くの意見に反して――十分な安全装置を備えた上で一定期 間に限り(30日または60日間)留置期間を42日に延長しようとするものであった

(59)。その安全装置は複雑であるが、主として議会によるものを重視したものと

――――――――――――

(55)Home Affairs Committee, First Report of Session 2007-8vol.Ⅰ, supra note 26, para. 92.

(56)Joint Committee on Human Rights, Second Report of Session 2007-8, supra note 31, para.46.

(57)Joint Committee on Human Rights, Second Report of Session 2007-8, supra note 31, paras. 46and 48.

(58)前記Ⅲ-1A,B参照。

(59)前記Ⅲ-1C参照。

なっている。これに対して、その提案されている安全装置の十分性およびとく に司法による安全装置の欠如について強い疑問が提起された(60)

(2)現在はその許容範囲が限定されている告発後の尋問を緩やかに許容しよう とする提案は、一般事件のコンテクストにおいてもなされているが、テロ関連 事件においては――告発前留置期間の延長には強い反対を示す組織や委員会を も含めて――幅広い支持を集めてきた(61)。一般からの意見聴取を踏まえてなさ れた尋問の許容範囲を拡張しようとする政府の提案も、大きな反対に遭遇する ことはなかった(62)

――――――――――――

(60) 前記Ⅲ-1D参照

(61) 前記Ⅲ-2A参照。

(62) 前記Ⅲ-2D,E参照。

Ⅳ 法案の下院での審議

反テロリズム法案は2008年1月に下院に提出されたが、議会外での活発な反 対運動をも背景にして、下院そして上院での審議は複雑な経緯をたどり、最終 的には――告発前留置期間を延長する規定は削除され、告発後の尋問(取調べ)に関 する規定は大幅な修正を経た上で――ようやく同年11月26日に国王の承認

(Royal Assent)が与えられ、法律として制定されるにいたった。上院での審議 については次章に譲り、本章では下院での審議の過程を――議会外での議論を も視野に入れて――概観しておきたい。

Ⅳ-1 法案の内容

政府は、2008年1月24日に反テロリズム法案(the Counter Terrorism Bill)を 下院に提出した(1)。この法案は、提出時点で92条の条文と6つの附則を含む大 部なものであるが、以下では告発前の留置および告発後の尋問に関する部分の みを取り上げたい(2)

A 告発前の留置期間に関する規定

(1)当初の法案は、22条で「本法の附則第1は、2000年テロリズム法41条によ って留置され得る期間についての変更を定める」と規定するのみであるが、法 案中の附則第1には詳細な規定がおかれている。この附則第1の第1部は、2000 年テロリズム法附則第8(現在は3部37条からなる)の後に第4部として38条から 46条までを追加し、また、法案附則第1の第2部は、現行の附則第8等の一部を 変更するものである(3)

――――――――――――

(1) The Counter-Terrorism Bill(HC Bill 63).

(2) 本法案は、他のテロリズム関連法を多くの点で変更するものであるが、主要な点は――

本稿で取り上げる2点をのぞいて――テロリズム対策その他の目的のための情報の収集 と関連機関による情報の共有、テロリズム犯罪の訴追と有罪とされたテロリストの処 罰、テロ関連犯罪で有罪とされた者の告知義務(notification)、資産凍結手続き、非開 示情報を扱う審問・検屍審問(inquest and inquiry)等である(Counter-Terrorism Bill

(HC Bill 63)Explanatory Notes, para.3 )。また、本法案は、北アイルランドやスコ ットランドの法を改正する部分をも含んでいるが、以下では「イギリス」(イングラン ドとウェールズ)に関するものに焦点を当てて取り上げる。

(3) Counter-Terrorism Bill(HC Bill 63)Explanatory Notes, paras.62-3and 85.

(2)28日を超えて42日まで留置を継続する留保権限(

reserve power

)が国務大臣

(Secretary of State)に認められる(4)。留保権限が行使されるための前提条件は、

検察長官(

DPP

)および警察本部長の共同の報告書が提出されることである。そ の報告書中には、関連する証拠の収集もしくは保全のために、または関連する 証拠のもしくは関連する証拠を生じさせる資料の検査・分析を待つために、28 日を超える留置が必要と信じる合理的な理由(reasonable belief=reasonable

grounds for believing that---

)があると検察長官および警察本部長が判断してい ることが、その理由の詳細とともに示されなければならない。また、当該被疑 者に対する捜査が真摯・迅速になされていると判断している旨の記載も必要で ある(5)

(3)国務大臣は、前記の報告書を受けて、留保権限が発効した旨を命令によっ て宣言することができる。留保権限の効力は、この命令時点で2000年法41条に よって留置されている者および有効期間中に留置される者に及ぶ(6)

(4)国務大臣は、命令後2日以内に(不可能な場合はできる限り早く)議会に対 し、①テロリズムの実行・準備・扇動に対する、または、テロリズム目的でな されたと思料される行為に対する捜査が進行中であり、当該捜査が例外的な捜 査活動の必要性を生じさせているとの情報を入手したこと、②当該捜査のため に留保権限が必要で、その必要性が切迫(urgent)しており、その権限行使が欧 州人権条約に適合すると満足していること、を示す陳述書(

statement

)を提出 する。この報告書には、命令が適切であると思料させる資料を記載してもよい が、被留置者の氏名等その後の刑事手続きに予断・偏見を及ぼすような記載は 許されない(7)

(5)留保権限の発効中、検察長官またはその同意の下で行動する検事(

Crown

――――――――――――

(4) The Terrorism Act 2000, Schedule 8, paras. 38and 42in the Counter-Terrorism Bill

(HC Bill 63).(以下法案中の改正附則を Sch.8in the Bill として引用する)。

(5) Sch. 8in the Bill, para.39.さらに、当該捜査が例外的な捜査活動の必要性(an excep-tional operaexcep-tional need)を生じさせていることをも記載する必要がある(Sch. 8in the Bill, para.41(2)(b))。

(6) Sch. 8in the Bill, para.40.

(7) Sch. 8in the Bill, para.41.

Prosecutor

)は、上席判事(

senior judge

)――高等法院判事、または、このため に首席裁判官(Lord Chief Justice)によって指名された巡回判事(circuit judge)

――に対し、28日を超える留置の延長を請求することができる。請求の手続き、

判断基準等は28日までの留置延長の場合と異なるところはない(8)。延長される 留置期間は、令状に記載された留置期間の終了時から起算して7日以内で、(複 数回の延長は認められるが)基準時(通常の場合逮捕時)から42日を超えてはな らない。延長が認められた場合、請求者は国務大臣が後述する陳述書を作成す るために必要な情報を提供する(9)

(6)28日を超える留置の延長が裁判所によって認められた場合、国務大臣は直 ちに議会に対して陳述書を提出する。この陳述書には、留置が認められた日時、

延長された留置期間、基準時からの留置期間の他、留置を認めた裁判所および 留置される場所等が記載されるが、被留置者についての詳細や事後の訴追に予 断・偏見を生じさせる資料は含まれてはならない(10)

(7)留保権限は、(議会の承認があったとしても)発効後60日で失効するが、発 効後30日以内に両院の承認議決が得られない場合には30日で失効する。この場 合、留保権限によって留置されている者は直ちに釈放される(11)

(8)留保権限が行使された場合、独立テロ立法調査官は、命令の失効後6月以 内に調査して報告書を国務大臣に提出し、大臣はそのコピーを議会に提出する。

調査報告事項は、留保権限発動判断の合理性に関する調査官の評価、28日を超 える留置がなされた個々の事件での手続きの正当性等についての評価を含む(12)

(9)法案の附則第1の第2部は、上述した改正の結果として必要となる関連立 法の改正を含むものであるが(13)、2000年テロリズム法36条を――内容的には

――――――――――――

(8) Sch. 8in the Bill, para.43(1).ただし、請求に対する審問は――28日までの場合と異な り―― 延期されても、必ず令状の定める留置期間内になされなければならない(para.43

(2))。

(9) Sch. 8in the Bill, para.41and 43(4)(a).

(10)Sch. 8in the Bill, para.44.

(11)Sch. 8in the Bill, para.45. なお、発効後30日以内に、担当大臣(Minister of the Crown)が承認を求める動議を提出しこれが否決された場合には、その時点で発動され ていた留保権限は失効する(para.45(3))。

(12)Sch. 8in the Bill, para.46.

関連したドキュメント