-ツインレバーマスコン/ワンハンドルマスコンに関する研究-
杉本 守久 藤澤 厚志
図4 右ワンハンドルタイプ 図1 ツインレバータイプ(当社標準) 図2 左ワンハンドルタイプ
図3 中央ワンハンドルタイプ
44 あんけん Vol.4(2011)~研究成果レポート~
ることを目的として、電気指令式ブレーキの列車に乗務する5区所から各6名、計 30 名 の運転士を協力者としました。なお、予備調査では本調査で採用する課題の内容や提示 タイミング等の調査も実施しています。
また、当社では女性運転士が増加しており、今後もその傾向が続くと考えられること から 30 名中、12 名の女性運転士を協力者としました。
(2)本調査
予備調査に参加した 30 名の運転士を対象として本調査を実施しました。本調査では、
操作指示課題(加速・ブレーキ)での操作性(問題なく操作できているか、および操作 時間など)、踏切支障での非常ブレーキ操作、操作性に関する比較アンケート調査を実 施しました。
① 実験の構成
ツイン、左、中央、右の4種類のマスコンを比較対象とし、運転シミュレータに プログラムされた操作指示に従って、各マスコンを操作する構成としました。1試 行の所要時間は標準 16 分とし、ツインを除く各ワンハンドルマスコン試行前には、
各々5分間操作を思い出す時間を設けました。
また、各1試行終了ごとに計 20 分のアンケート 記入、休憩時間を設けました。1人が行った試行 数は計4回、要した時間は計 180 分でした。
なお、操作指示回数は1試行あたり計 20 回で、
P(力行)1~5、B(ブレーキ)1~7および 非常、ならびに踏切支障※の組合せとしました。
操作指示画面の例を図5および6に示します。
※ 操作は非常ブレーキ操作と同様
② 評価方法
ア 通常時操作性評価
マスコン別での操作指示に対する反応時間、
対応の正確性や操作位置ズレの発生頻度 イ 異常時操作性評価
惰行中および力行中の非常ブレーキ操作に ついて、反応速度、操作位置ズレの発生頻度
■ P3
■ P3
図5 操作指示画面の例(力行3)
▲B6
▲B6
図6 操作指示画面の例(ブレーキ6)
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ウ 運転士の主観評価
予備調査終了時および本調査終了時のアンケートを分析し、各マスコンに対す る運転士の主観的な評価を実施
3 結果
(1)通常時操作性評価
各マスコンごとの操作指示別平均反応時間を図7に示します。
各操作指示別の反応時間の順位は表1に示すとおりで、反応時間が最も短かった回数は、
ツインが 10 回(2回は中央と同時間)、中央7回(2回はツインと同時間)、右3回、左 2回でした。ツインは、普段使用していることから操作に熟練しているため、優位な結 果になったと考えられます。
操作位置ズレ(指示された位置にマスコンが入らない)については図8に示すとおりで、
操作指示との位置ズレの回数は中央が 28 回と最も少なく、右が 45 回で最も多い結果とな りましたが、各マスコン間で統計処理をしたところ有意な差は認められませんでした。
1.00 1.20 1.40 1.60 1.80 2.00
B5 P3 B4 P2 P1 B7 B4 B3 B5 P4 B2 P5 B6 P4 B1 P3 非常 P5 B3 踏切支障
反応時間(秒) 左 中央 右 ツイン
図7 操作指示別平均反応時間
B5 P3 B4 P2 P1 B7 B4 B3 B5 P4 B2 P5 B6 P4 B1 P3 非
常 P5 B3 踏 切 支 障
左 1 2 4 2 4 3 2 4 2 3 2 3 4 4 2 4 3 3 1 2 中央 2 1 1 1 2 2 1 3 3 1 4 1 3 1 3 2 2 4 3 3 右 3 4 2 3 3 4 3 2 4 4 3 4 2 3 4 3 1 1 2 1
ツイン 4 3 3 4 1 1 4 1 1 2 1 1 1 1 1 1 4 2 4 4
※ 図や表中のP1~5、B1~7および非常、ならびに踏切支障は操作指示を示します 表1 操作指示別平均反応時間の順位(短い順に 1 位→4位)
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ただし、操作位置ズレに含まれない ツインの特徴として、図9に示すとお りワンハンドルマスコンでは発生しな い操作エラーが発生しました。
その内容は、力行運転中のブレーキ 操作指示に対して、ブレーキ操作は行 うが力行ハンドルはそのままだったり、
ブレーキ運転中の力行操作指示に対し て力行操作は行うがブレーキハンドル はそのままだったりという「逆ハンド ル切れず」という事象や、操作は行う ものの遅れてしまうという「逆ハンド ル切り遅れ」という事象です。これは 左側ハンドルで力行操作、右側ハンド ルでブレーキ操作を実施するため、と っさの操作時にあらわれる特性である と考えられます。
(2)異常時操作性評価
各マスコン別における惰行中の非常 ブレーキ(非常)および、力行中の非 常ブレーキ(踏切支障)の平均反応時 間については、表2に示すとおりでし た。
惰行中では右および中央で反応時間 が短く、力行中では右および左の反応 時間が短い結果となりました。
また、各マスコンの反応時間につい て、分散分析および多重比較を実施し たところ、惰行中の非常ブレーキでは 各マスコン間に有意な差は認められま せんでしたが、力行中においては 図 10 に示すとおり、ツインと左、ツイン
と中央、ツインと右の各々に有意な差が認められました(※
p
<.05)。各n=600
28 31
36 45
0 10 20 30 40 50
左 中央 右 ツイン
ズレ回数
図8 操作指示との位置ズレ回数
左 中央 右 ツイン 惰行中 1.10 1.09 1.07 1.16 力行中 1.27 1.29 1.20 1.46
表2 マスコン別反応時間(秒) 9
5
2 1 0
4
1
2 3 4
0 5 10 15
B5 P1 B4 B5 踏切支障
操作指示内容
エラー回数 逆ハンドル切り遅れ
逆ハンドル切れず
図9 ツインでみられた操作エラー
図 10 力行中の非常ブレーキ反応時間 1.00
1.10 1.20 1.30 1.40 1.50
左 中央 右 ツインレバー
反応時間(秒)
※
※
※
1.00 1.10 1.20 1.30 1.40 1.50
左 中央 右 ツインレバー
反応時間(秒)
※
※
※
1.27 1.29 1.46 1.20
左 中央 右 ツイン
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なお、左、中央、右との間では各々の組合せにおいてその差は認められませんでした。
(3)運転士の主観評価
図 11 から 13 に示すとおり、予備 調査および本調査時において、各調 査終了後に「最も運転しやすかった マスコン」、「直感的な感覚(好み)と して最も好きなマスコン」、「現在の 作業標準ではなく、自由な作業標準
(指差等)や時刻表の位置変更(現 在はほとんどが右側)が可能であれ ば最も運転しやすいマスコン」など についてアンケート調査をしました。
その結果 、「最も運転しやすかっ た」「直感的な感覚」「自由な作業標 準」の各々において、ツインは予備 調査よりも本調査時で得点が減少し ました。
逆に、中央では予備調査より本調 査時に全ての得点が増加しており、
予備、本調査と慣れるにしたがって 協力者の評価が高くなりました。
また、左では予備調査時より得点 の増減は僅かとなりました。さらに、
右は「最も運転しやすかった」が微 増「直感的な感覚」が微減でしたが、
「自由な作業標準」は得点が減少し ました。
4 まとめ
運転操作指示に対して反応時間が最も短かったマスコンはツインであり、次いで中央 が短い結果となりました。また、操作位置ズレについては、中央の発生回数が最も少な い結果となりましたが、4種類のマスコン間に統計的な差はありませんでした。
また、惰行中の非常ブレーキ操作については各マスコン間に統計的な差は見られませ
14 12
1 2
11 16
4 0 0
5 10 15 20 25
ツイン 習熟
ツイン 本調査
左 習熟
左 本調査
中央 習熟
中央 本調査
右 習熟
右 本調査 人
ツイン ツイン 左 左 中央 中央 右 右 予備 本調査 予備 本調査 予備 本調査 予備 本調査
図 13 自由な作業標準などでのマスコン 図 11 最も運転しやすかったマスコン
21
13
2 1
15
0 1
7
0 5 10 15 20 25
ツイン 習熟
ツイン 本調査
左 習熟
左 本調査
中央 習熟
中央 本調査
右 習熟
右 本調査
人
ツイン ツイン 左 左 中央 中央 右 右 予備 本調査 予備 本調査 予備 本調査 予備 本調査
図 12 直感的に好むマスコン
12 10
1 3
15
4 2 13
0 5 10 15 20 25
ツイン 習熟
ツイン 本調査
左 習熟
左 本調査
中央 習熟
中央 本調査
右 習熟
右 本調査
人
ツイン ツイン 左 左 中央 中央 右 右 予備 本調査 予備 本調査 予備 本調査 予備 本調査
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んでしたが、力行中においてツインは反応時間が長く、他の3種類のマスコンとの間に 有意な差が認められました。(
p
<.05)アンケート調査による主観評価の結果からは、運転士は熟練するほど中央への評価が 高くなっているため、使用頻度が増すほどこの傾向が進む可能性が示唆されました。
今回の実験内容における各マスコン間の評価は以上の結果となりましたが、今後の課 題として操作しやすい運転台の開発を目指すにあたっては、それらの操作性の評価を基 に鉄道システムと整合をとる形で全体最適を目指し、まとめていく必要があります。
平成 23 年度以降これらにも着目した研究を実施することで、次世代通勤・近郊型車両 の標準運転台モデルの提言を目指します。
なお、本研究を進めるにあたり多くのみなさまから多大なご協力・ご支援をいただき ましたことに、心より感謝いたします。