5.3.1 Modulation and Coding Scheme (MCS)
AMCにおいては、変調方式と符号化率の組としてMCSを設定し、これを切り替えるこ とで適応変調・符号化を行う。MCSを最も簡易に選ぶ方法は、伝送速度が均一になるよう に選ぶといものである。今回は簡単化のため、伝送速度を基に表5.1に示される5つのMCS を用いることとした。
表5.1: MCS Set
MCS(#) Modulation Coding Normalized Scheme Rate Physical Rate
MCS(1) QPSK R = 1/2 1.0
MCS(2) 16QAM R = 1/2 2.0
MCS(3) 16QAM R = 3/4 3.0
MCS(4) 64QAM R = 2/3 4.0
MCS(5) 64QAM R = 5/6 5.0
5.3.2 MCS切り替えおよびコードチャネル数制御方式
VCにおいては、5.6式におけるλkの大きさに依存して各コードチャネルのSN Rが決定 される。固有値分解の際に、λkを大きい順にソートすることにより、kで示される番号が大 きくなるほどλkの大きさは小さくなる。そして、小さいλkに対応するコードチャネルは、
時として誤り率を大きく劣化させる可能性がある。そこで、小さいλkに相当するコードチャ ネルを用いず、その電力を他のコードチャネルに割り当てることで、伝送速度は低下するが 性能の向上が可能となる。このような制御は、V 行列において対応する列ベクトルを用いな いことで実現できる。つまり、5.4式におけるCをV の部分行列とする。このような制御を 適応的に行うことを、適応コードチャネル数制御(ACCE)と呼ぶ。
AMCにおいては、MCSをどのように切り替えるかが重要となる。その際には、SNRが 切り替え基準として用いられる。提案方式では、AMCを拡張し、ACCEと併せた制御を
行う。これを図5.2に示す。Nactは現在利用しているコードチャネル数、Nminは最低限利 用されるコードチャネル数、Nmaxは利用できる最大のコードチャネル数である。M CS(n) (n= 1,2, . . . , Nmcs)は、n番目のMCSであり、NmcsはMCSの総数である。なお今回は表 5.1に示されるように、Nmcs=5である。
M CS(n)が選択されている場合にNact(n)がNmin(n)より小さくなった場合には、M CS(n− 1)に切り替える。一方、Nact(n)がNmax(n)より大きくなった場合には、M CS(n+ 1)に切 り替える。ここで、Nact(n)は、受信側で測定したSNR値であるSN Rmesと、M CS(n)に 対応するSNR閾値であるSN Rth(n)を比較することで決定される。このSNR閾値を超え たコードチャネルのみがNact(n)としてカウントされる。この様子を図5.3に示す。ここで、
ACCEが行われた場合でも、送信電力は一定になるように制御される。つまり、Nact(n)直 前の送信よりも小さな値になった場合には、使われないコードチャネルの電力が他のコード チャネルに割り振られることになる。
SNR is measured by every code channel Decide the number of available code channels
Nact(n)
Nact(n) < Nmin(n)
MCS(n) is the lowest MCS?
Nact(n) > Nmax(n)
MCS(n) is the highest MCS?
Yes
Yes
Yes
Yes
No No
No
MCS is not changed
Nact(n) = Nandmin(n)
Change to MCS(n-1) Nact(n-1) = Nandmax(n-1) Received Signal of
MCS(n)
MCS is not changed
Nact(n) = Nandmax(n)
Change to MCS(n+1) Nact(n+1) = Nandmin(n+1)
MCS is not changed
No Nact(n)
is the number of code channels satisfying
SNRm(k) > SNRth(n).
SNRm(k):
Measured SNR of code channel
kSNRth(n):
SNR threshold for MCS(n)
図5.2: 提案のAMCおよびACCE
4章で示したように、SNR閾値は、伝搬路状況とMCSに依存する。そのため、閾値は適 応的に制御する必要がある。そこで4章と同様に、SNR閾値をCRC結果に応じて以下のよ うに制御する。
SNR
Index of Code Channel SNR Threshold of MCS(n)
Not used SNRth(n) is controlled
according to the CRC result
Nmin(n)
Nmax(n) Nact(n)
Total K code channels
= SNRth(n)
図 5.3: ACCEの詳細
• CRC OK : SN Rth(n)をδdown減少させる
• CRC Error : SN Rth(n)をδup増加させる
このように制御する理由については、4章における4.3節を参照されたい。本章では、δdown = 0.01[dB]、およびδup= 0.99[dB]を用いることとした。
5.3.3 NmaxおよびNmin
前節で示したNmax(n)を、以下のように定義する。
Nmax(n) = {
K ifn=Nmcs,
K−1 otherwise. (5.9)
5.9式が意味するところは、仮にn̸=Nmcs、かつNact(n)> K−1であった場合に、M CS(n+
1)に切り替えることを意味する。ここで、Nact(n)の最大値はK である。このことは、現在 選択されているMCSの特性が十分に良い場合には、Nact(n)はKに到達することになり、
その時点で上位のMCSに切り替えることを意味している。
一方、Nminを以下のように定義する。
Nmin(n) =
1 ifn= 1,
⌈Nmax(n−1)·P(n−1) P(n)
⌉
otherwise. (5.10)
ここで、P(n)は正規化されたM CS(n)の伝送速度を表している。これは表5.1に示されてい る。また、⌈x⌉は、xを超える最小の整数を表している。5.10式の意味するところは、M CS(n) の最小の伝送速度(Nmin(n)に相当)が、M CS(n−1)の最大の伝送速度(Nmax(n−1)に相 当)を下回った場合には、その時点で下位のMCSに切り替えることを意味している。
time
N
intsamples
Preamble Symbols Data Symbols
K samples G samples
図 5.4: パケットフォーマット
time
pilot
Channel Estimation
Feedback of
h(k)• CRC Check
• SNR Threshold control
• MCS Selection
• Code Channel Elimination SNR
Mea-surement time
• MCS Feedback
• Number of Code Channels
NintSTA-A
STA-B
Updated MCS and Nact
Vector Coding starts based on the updated channel
SVD
SVD
図 5.5: 提案方式のシーケンス