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チパスの到来タイミングの推定および分離処理が必要となる。この両方式の性能比較が文献 [3.9]においてなされているが、MC-CDMAがDS-CDMAに比べて優れた特性を示すと結論 づけている。しかし文献[3.9]においては、DS-CDMAでは受信側がRAKE受信による最大 比合成を行っているのに対し、MC-CDMAでは最尤推定が用いられており、アルゴリズム が複雑であった。そこで本章では、MC-CDMAにおいて周波数選択性フェージングで落ち 込んだサブキャリアを使わないよう適応的に制御を行うこと(部分帯域伝送)で特性を改善

し、DS-CDMAと比較を行っている。落ち込んだサブキャリアを用いないことで性能向上

が期待できるため、逆拡散は最尤推定よりも簡易な最大比合成によって行っている。また、

MC-CDMAについては、サブキャリアへのマッピングの仕方が異なる手法についても併せ

て提案し、部分帯域伝送を適用してDS-CDMAと比較を行っている。

計算機シミュレーションの結果、部分帯域伝送を用いたMC-CDMAは、DS-CDMAより も優れた特性を示すことが確認された。

3.2.2 MC-CDMA S/Pタイプ(時間拡散)

MC-CDMAは、その名が示すように複数のサブキャリアを用いたCDMAである。このよ

うな伝送はIDFT (Inverse Descrete Fourier Transform)によって実現されるが、通常は処理 の高速化のためにサブキャリア数を2のべき乗としてIFFT (Inverse Fast Fourier Transform) が用いられる。

本章では、2つのタイプのMC-CDMAを考える。まず以下の図3.1に示すような形の MC-CDMAでは、直並列変換(図中S/Pと表記)された信号をサブキャリアに割り当てる。つま り異なるサブキャリアには異なるデータシンボルが割り当てられる。この手法では、拡散が 時間方向に行われるため周波数ダイバーシチ効果を得ることはできないが、通常の(拡散し

ない)OFDMのように、誤り訂正と組み合わせることで等価な効果を得ることが可能となる。

また、周波数軸上で等化処理を行うため、RAKE受信を行う必要はない。ただし近年では、

MC-CDMAと言えば通常は次節に示すMC-CDMA CPタイプを指す。こちらは周波数方向

に拡散を行うことによって周波数ダイバーシチ効果を得ることができる手法である。

S/P IFFT

符号化データ

P/S (i)

C0u(i) C0u

C0u

CPG-1u (i) CPG-1u CPG-1u (i)

time

(i) C0u(i) C0u

C0u

CPG-1u (i) CPG-1u

CPG-1u (i)

図3.1: MC-CDMA S/Pタイプの送信機概要

図3.1において、符号化されたデータは、直並列変換され、予め決められた拡散符号によっ て拡散される。拡散されたデータはIFFTされることで、周波数軸上にマッピングされる。

ここで、u番目のコードチャネルにおける送信信号は以下のように定義される[3.7]。 susp(t) =

+

i=−∞

P G1 n=0

P G1 m=0

bun(i)cum(i)pc(t−mTc−iTs)·exp{j2π(f0+(n−P G/2)∆f)t} (3.1) 3.1式において、各文字を以下のように定義する。

Tc およびP Gは、それぞれ拡散におけるチップ長(=OFDMシンボル長)および拡散 率である。なお、P Gはサブキャリア数と等しいものとする。

Tsは、直並列変換前のデータシンボル長Tsに対して直並列変換後のデータシンボル 長である。つまり、Ts =P G·Tsである。

bun(i)は、u番目のコードチャネルにおけるn番目のサブキャリアのi番目の変調シン ボルである。

cum(i)は、u番目のコードチャネルの拡散符号におけるm番目のチップである。

f0および∆f(= 1/Tc)は、キャリア周波数およびサブキャリア間隔である。

pc(t) = 1 (0≤t≤Tc), pc(t) = 0 (otherwise)とする。

3.2.3 MC-CDMA CPタイプ(周波数拡散)

MC-CDMA CPタイプは、周波数方向に拡散を行うCDMAである。通常、MC-CDMA

と言えばこちらを指す。この場合の本送信機構成を図3.2に示す。送信データはサブキャリ ア数分コピーされ、サブキャリアごとに拡散符号が乗算される。拡散された信号はIFFTさ れ、周波数方向に拡散が行われることとなる。なお、MC-CDMA CPタイプの構成は、1.4.3 節における図1.9でも記載している。その際には拡散符号で拡散したチップ単位のデータを 直並列変換するという形で記載しているが、図3.2と等価な処理である。u番目のコードチャ

Copier

C1u C1u

CPG-1u CPG-1u C2u C2u

IFFT 符号化データ

P/S (i)

C0u C0u

(i) (i)

(i) time

図 3.2: MC-CDMA CPタイプの送信機概要

ネルにおける送信信号は以下のように定義される[3.7]。 sucp(t) =

+

i=−∞

P G1 n=0

bu(i) cun(i)pc(t−iTc)·exp{j2π(f0+ (n−P G/2)∆f)t} (3.2) ここで、bu(i)は、u番目のコードチャネルにおけるi番目の変調シンボルであり、その他の 文字の定義については3.1式と同じである。