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第5章 今後の市内外での需給量を踏えた目標値の検討

5.2 個別目標

(1)太陽光発電

太陽光発電は、本市で当面最も普及が期待できる再エネである。魅力的な買取り価格、

環境アセス不要、遊休地と送変電容量があれば開発の可能性があること、初年度一括償却

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の特典等を背景に、全国で開発が急ピッチで進んでいる。日射量時間の差はあるものの、

全国で事業性に大きな差はないといわれている。本市内でも、2民間事業者が合計 3 万 kW を超えるメガソーラー建設計画をたてており、補助金対象事業として公表されている。工 場等自社の設備に設置する動きもある。

県の目標値からの世帯按分によれば、31,816kW となる。導入規模は大きいが、以下の様 に民間事業者の間で活発な動きがあり、その計画が順調に推移すれば達成が十分に見込め る水準である。

本市でも太陽光発電が普及する可能性は大きく、現に地元でも多くの事業者が関心を示 しており、地元密着型モデルとも言える動きが生じている。系統接続等手続きが容易であ ること、変圧器の設置が不要であること、地元のファイナンスを受けやすいこと等から、

10kW 以上 50kW 未満の事業は、地方の事業者にとってやりやすいモデルである。この身の 丈にあった事業モデルは、再エネ協議会が国の支援を受け、よりきめ細かく個人でも投資 できるような事業を仕立て上げようとしている。市も、公共施設を活用して事業機会を提 供する予定である。

再エネ推進協議会は、専門家の話を聞き、全国で先行施設を見学するなど研究を積んで きたが、当面はこの小規模太陽光発電事業が、地元が取組みうる現実的な事業との判断を 固めている。協議会結成による最初の成果となることが期待されている。

太陽光発電の特徴や地元の活動状況を背景に、県の目標値を世帯数で按分した 31,818kW を目標値とする。既に民間計画のメガソーラー事業も予定されており、これに地元事業者 の 50kW 未満の分譲計画が 1000kW 程度あり、計画がそのまま実現すれば、容易に目標を達 成も困難ではない。目標をオーバーする場合は、不透明性が残る他の再エネが下振れする 場合をカバーする、と位置づけるのが適当である。

(2)太陽熱

太陽熱利用は、太陽光に比べて、機器メーカーの開発力が劣る、固定価格買取り制度の ような国の支援がまだ準備されていない等により、普及が遅れている。しかし、太陽光に 比べてエネルギー効率がよく、設置コストが低いというメリットがある。集熱器と貯湯槽 が分離しているソーラーシステム型でも太陽光発電の 1/2 程度であり、集熱器・貯湯槽一 体型だと 20~30 万円でも設置できる。

東京都が東京ガス等の協力をえて普及策を講じており、国も普及に積極的になってきて いる。FIT のような制度ができると一気に普及する可能性をもつ。県の目標値からの世帯 按分によれば、1,075kl となり、同水準の 1,000kl を目標値とする。これは、パネルの広 さでは 7960 ㎡であり、1住宅当たり3㎡とすると 2653 世帯に相当する。

(3)風力

本市域では、残念ながら風力や小水力の利用可能な資源量は多くない。風力発電は、県 の目標値からの世帯按分によれば、2,215kW と大規模風車1基分になるが、適地を探すの は容易ではない。しかしながら、政府は、再エネ全体の普及のために、ポテンシャルの大 きさやコストの低さから、風力への期待が大きくなっている。風力を念頭に置いた送電線

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の整備や蓄電池補助、広域での調整システム構築等の施策を相次いで打ち出している。本 市内でも今後可能となる地点が出てくることもありうる。

一方、小型風車については、地域消費等の観点もあり期待されてはいるがまだ普及して いない状況である。環境意識や教育的な意味合いからも、他地域に先行して設置していく ことは、有意義であると考えられる。低速でも回る技術の先行導入を含めて、小型風車に ついて積極的な導入を検討していくべきである。

本市での導入目標値については、以上のような観点から発電規模ではなく、設置個所と しての設定を行うこととする。

(4)小水力

小水力は、県の目標値からの世帯按分によれば、478kW となるが、資源量からして容易 に達成できる数字ではない。現在、可能性のある立地点について国の補助制度を利用して 事業可能性調査が実施されているところである。この調査を基に、事業性を確保する手段 も含めて具体的な地点を検討していくことになる。このため、本市での導入目標値につい ては、発電規模ではなく、設置個所としての設定を行うこととする。

(5)木質バイオマス発電

木質バイオマスは、県の目標値からの世帯按分によれば、11,306kW となるが、既に 11,500kW の発電所(白河ウッドパワー)が立地・稼働している。このような実績を踏まえ、

豊富なバイオマス資源や地域特性からこの分野での更なる発電を目指していくことが必要 である。

一方で豊富なバイオマス資源はあるが、現状の課題としては原料となる資源の放射能汚 染の影響が大きく、短期間でさらに積み上げていくことは容易ではない。可能性はあり、

やる気のある事業者も存在するが、セシウム等放射性物質の対応には時間がかかっており、

スケジュールが立て難い状況にある。この分野は政府の役割が大きくまた技術開発を伴う 領域であり、個々の自治体や事業者で対処していくのはかなりの困難を伴う。

このように地元での事業化に向けた動きは短期の実現は困難であるが、木質バイオマス 発電は本市の特徴を踏まえたポテンシャルの高い再生可能エネルギーであるため、中・長 期的な観点からこの実現に向けて国や県に支援を働きかけるとともに、広域なレベルでの 住民理解を深めていくための取り組みが不可欠である。

(6)木質バイオマス熱利用

バイオマス熱利用は、発電に比べてエネルギー効率が高い、熱は長距離輸送には不適で 発生元の近くで消費される分散型である、小規模から対応でき比較的容易に事業化が可能 になる等の理由で、注目が高まっている。林業の盛んな欧州では、長年にわたる熱導管の 整備とも相まって、木質バイオマスを利用した地域熱供給が広く普及している。日本も、

これを見習おうとする風潮が高まっている。

きつねうち温泉および都市農村交流センターの温浴施設への導入検討を始め、バイオマ スボイラーの設置を進めていくことは、現実性のある施策と考えられる。公共施設への導 入はもとより、民間施設・農業での導入の可能性がある。

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(7)下水汚泥、ごみ焼却

下水汚泥およびごみ焼却の一部はバイオマスである。公的施設が行う処理施設でバイオ マス事業を実施することは、燃料の安定調達が保証されているとも言え、経済性の面で大 きな可能性がある。

下水処理汚泥に関しては、2011 年に民間事業者から、国土交通省の補助金を利用した実 証事業を実施したいとの申し出があり、市で前向きに検討を行ったものの、放射能の風評 被害が大きくなり断念を余儀なくされた経緯がある。下水汚泥を燃料とする発電は国も力 を入れており、ボイラーの種類によっては、乾燥させた下水汚泥を燃焼することも可能で ある。民活方式を含め、検討に値する。

ごみ焼却施設を利用する発電事業は、環境省において発電事業化を推進する方向が打ち 出されており、支援が期待できる。本市の一般廃棄物は、周辺町村を含む上白河地方広域 市町村圏整備組合が処理している。現在の焼却施設は築 20 年を経過しており、供用年数が 25 年目途とされていることから、更新のタイミングで発電設備を導入することは十分考え られる。

(8)その他

福島県の再エネビジョン等では、スマ-トグリッドの構築促進について、一定の比重を 置いている。再エネの地元消費拡大や省エネの推進、蓄電池使用による産業化への足がか りとなるものであり、地域エネルギ-会社の創設にも繋がる可能性をもつ。小売自由化、

送配電分離等電力システム改革が進んでいくと、こうした可能性は高まってくる。

太陽光発電等再エネや省エネ家電等の一定規模の普及、省エネマインド等個々人の意識 向上等が進んでいくなかで、本市においても、検討する土壌が整ってくることが期待され る。

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