第4章 海外の市場規模等の推計手法検討
I. 推計手法
2. 推計手法の全体像
本年度は、2つの手法により海外市場規模の推計を行った。
パターン
1
は、昨年度の手法と同様であり、いくつかの国・分類について実データを取得し、全ての国・分類に拡大推計を行い、市場規模を計算する手法である。推計精度を向上させるため に、経済レベルの定義、
1
人あたりGDP
予測、人口成長率などの国際機関データの更新や、実 データ取得項目の追加を行った。パターン
2
は、先進国の過去の傾向(2000
年~2013
年のパネルデータ)を基に、各国におけ るGDP
に占める各大分類の比率を算出し、その比率にGDP
を乗じることによって各国における 各大分類の市場規模を算出する方法である。パターン1
は個別データを積み上げるボトムアップ 方式であるが、パターン2
はマクロデータから推定するトップダウン方式である。本年度は、ボトムアップ方式とトップダウン方式の両パターンから市場規模推計を行うことに よって、数値の規模感や分類構成比など推計結果の比較を行う。
図
61
海外推計手法2.1
推計の考え方(パターン1)
推計の考え方は、昨年度の手法を踏襲し、以下
3
つのステップで実施する。まず、
Step1
で本推計の対象(期間・国・分類)を定義する。原則として、国内市場規模推計の全ての推計分類を対象とし、国は国際通貨基金(IMF)加盟国(189 カ国)を対象とする。期 間については
2000
年から2050
年とする。なお、ある国において、そもそも市場が存在しない可 能性があるなど、一部推計対象外とする分類等があれば、これを除く。続いて
Step2
では、実データを取得する範囲について定義し、取得方法の検討を行う。理想的には全ての国・分類について過去のデータを取得することが望ましいが、データ規制等により現 実的ではないことから、昨年度は市場規模が大きい主要な国・分類のデータを取得した。
最後に
Step3
では、Step2 で収集した主要な国・分類のデータに基づき、データを取得していない国(
Step3-1
他国展開)、及び項目(Step3-2
他項目展開)に拡大推計を行い、市場規模の計算を行う。さらに、データを取得できなかった過去及び将来へと拡大推計(Step3-3時系列展開)
する。
パターン1 実データを取得し、
拡大推計
(昨年度モデル)
パターン2 大分類別のGDP比率を
算出し、拡大推計
(新モデル)
先進国の傾向
(パネルデータ)を基に 拡大推計 海外推計
経済レベル見直し、
データ更新、
新規取得項目追加
164
図
62
海外推計の考え方2
.
1.
1Step1
:推計対象の定義(1)
推計対象項目上述のように、原則として国内市場規模推計で用いた全ての計算項目を網羅するが、以下 の条件のどちらかを満たす項目は、海外市場の定義・計算が困難であるため対象外とする。
1)海外市場が存在しない項目
市場が日本独自のものであり、海外では市場そのものが存在しないもの。具体的には、国 内の製品を用いることが環境への影響を低減する国産材利用が該当する。
2
)海外市場を定義できない項目国内の推計対象の中には、ある製品群の中から、国内基準を満たした製品のみを推計対象 としているが、海外では国ごとに基準の有無や基準値が異なるもの。
具体的には、低燃費・低排出認定車は、「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ ルギー法)」に基づく燃費基準(トップランナー基準)を早期達成し、かつ国土交通省の「低 排出ガス車認定実施要領」に基づく低排出ガス認定を受けている自動車が対象であり、国土交 通省が車種ごとに認定を行っている。
201z年 201y年 201x年
拡大推計
a11-1
a11-2
a11-X
B国 C国 D国 Z国
A国
a21-1 a21-2
a21-Y fa1
fa2
・ ・ ・ ・・ ・
・ ・ ・
・・・
Step1:推計対象外とする項目
Step2:実データの取得
Step2:実データの取得
・ ・ ・
Step3-1.他国展開
Step3-2.
他項目展開 Step3-3.
時系列展開
Step1:国の母集団はIMF加盟国
S te p
1 :
の母集団は全項目推計項目 将来 推計 分類推計 項目
Step3-2.
他項目展開
Step1:
推計対象外 とする国
165
このような国内法に基づく基準によりガソリン車の中から一部の車種を推計対象としてい る場合、海外では国ごとに基準の有無や基準値により推計対象となる車が変動することから、
海外市場を定義することが困難である。そのため、低燃費・低排出認定車は海外推計の対象 外とする。
一方で、ハイブリット車のように、製品の構造で市場が定義されており、国横断の統計上 で市場が定義されているものについては、推計対象とする。
(2)
推計対象国1
)対象国推計対象国の母集団は、Step3-3にて時系列展開を行う際、国際通貨基金(IMF)の
1
人あ たりGDP
予測値を使用することから、国際通貨基金(IMF
)に加盟する189
カ国とした。これらの国を市場の母集団としながらも、一部の国は推計対象外とする。
具体的には、
Step2
及びStep3
にて市場規模を推計する際、多くの項目は(数量)×(単価)の式で市場規模を推計する。この際、単価についてはデータが欠損していても他国の値や平 均値を類推適用可能であるが、数量データが欠損している場合には、以下の理由から数量を 類推することが難しい。
使用する国横断の統計の対象外の国においては、もし市場が存在したとしても数量の 判断が困難であること。
特に新興分野(再生可能エネルギーなど)で、統計の対象内であっても、現在は市場 がないものの、将来市場が発生する可能性がある場合、市場の立ち上がり時期や成長 スピードを事前に予測することは困難であること。
そこで、Step2において、数量データを取得できない国については、その分類の市場規模を 推計対象外とする。
2)対象国の経済レベル分類
図
63
と図64
に示した2015
年時点における世界銀行(WB)基準を使用し、対象国を経済 レベル毎に分類する。本推計内では、各国の経済成長に関わらず、経済レベルを固定してい る。すなわち、経済成長により1
人あたりGDP
が将来的に増加しても、その国が属する経済 レベルは変化させていない。昨年度からの更新点としては、パラグアイとモンゴルが経済成長したことにより後発途上 国から中進国・新興国に成長した。
なお、対象国の経済レベル分類の定義や、本推計で推計対象とする国の母集団及び属する 地域・経済レベルは、表100と表101に示す。
166
図
63 対象国の経済レベル分類
図
64 世界銀行(WB)の経済レベル分類
先進国
•
世界銀行(WB)分類でHigh-income OECD membersが対象。•
さらに、世界銀行(WB)分類High-income economiesのうち、香港、台湾、シンガポールを追加。
•
ただし、以下を除外する。• OECD加盟国だが世間的には中進国・新興国扱いのチリ、
チェコ、エストニア、韓国、ポーランド、スロバキア、スロベニ ア、トルコ、メキシコ、ハンガリー
中進国 新興国
•
世界銀行(WB
)分類でHigh-income economies
及びUpper-middle-income economies
が対象。•
さらに、OECD
加盟国のうち、先進国から漏れたチリ、チェコ、エ ストニア、韓国、ポーランド、スロバキア、スロベニア、トルコ、メ キシコ、ハンガリーを追加。•
ただし、先進国に追加した香港、台湾、シンガポールは除外。• Lower-middle-income economies
からUpper-middle-income economies
に上がったモンゴル、パラグアイを追加。後発 途上国
•
世界銀行(WB)分類でLower-middle-income economies及びLow-income economiesが対象。
•
中進国・新興国に変更したモンゴル、パラグアイを除外。分類
定義(1人あたりGDP)
2014
年2015
年High-income economies $12,746
~$12,736 ~
High-income OECD members
上記のうち
OECD加盟国
上記のうち
OECD加盟国
Upper-middle-income
Economies $4,126~$12,745 $4,126~$12,735
Lower-middle-income
economies $1,046~$4,125 $1,046~$4,125
Low-income economies
~$1,045 ~$1,045167
表100 【参考】国の属性(地域軸、経済レベル軸)(
1/2
)先進国 中進国・新興国 後発途上国
Africa Algeria Benin
Angola Burkina Faso
Botswana Burundi
Equatorial Guinea Cabo Verde
Gabon Cameroon
Libya Central African Republic
Mauritius Chad
Namibia Comoros
Seychelles Democratic Republic of the Congo
South Africa Republic of Congo
Tunisia Côte d'Ivoire
Djibouti Egypt Eritrea Ethiopia The Gambia Ghana Guinea Guinea-Bissau Kenya Lesotho Liberia Madagascar Malawi Mali Mauritania Morocco Mozambique Niger Nigeria Rwanda
São Tomé and Príncipe Senegal
Sierra Leone South Sudan Sudan Swaziland Tanzania Togo Uganda Zambia Zimbabwe North America Canada
United States
OCEANIA Australia Fiji Kiribati
New Zealand Marshall Islands Micronesia
Palau Papua New Guinea
Samoa Solomon Islands
Tonga Vanuatu
Tuvalu
South America Argentina Bolivia
Brazil Guyana
Chile
Colombia
Ecuador
Paraguay
Peru
Suriname
Uruguay
Venezuela
168
表101 【参考】国の属性(地域軸、経済レベル軸)(
2/2
)先進国 中進国・新興国 後発途上国
Asia Hong Kong SAR Azerbaijan Afghanistan
Israel Bahrain Armenia
Japan Brunei Darussalam Bangladesh
Singapore China Bhutan
Taiwan Province of China Cyprus Cambodia
Islamic Republic of Iran Georgia
Iraq India
Jordan Indonesia
Kazakhstan Kyrgyz Republic
Korea Lao P.D.R.
Kuwait Myanmar
Lebanon Nepal
Malaysia Pakistan
Maldives Philippines
Mongolia Sri Lanka
Oman Syria
Qatar Tajikistan
Saudi Arabia Timor-Leste
Thailand Uzbekistan
Turkey Vietnam
Turkmenistan Yemen
United Arab Emirates
Central America Antigua and Barbuda El Salvador
The Bahamas Guatemala
Barbados Haiti
Belize Honduras
Costa Rica Nicaragua
Dominica
Dominican Republic Grenada
Jamaica Mexico Panama
St. Kitts and Nevis St. Lucia
St. Vincent and the Grenadines Trinidad and Tobago
Europe Austria Albania Kosovo
Belgium Belarus Moldova
Denmark Bosnia and Herzegovina Ukraine
Finland Bulgaria
France Croatia
Germany Czech Republic
Greece Estonia
Iceland Hungary
Ireland Latvia
Italy Lithuania
Luxembourg FYR Macedonia
Netherlands Malta
Norway Montenegro
Portugal Poland
Spain Romania
Sweden Russia
Switzerland San Marino
United Kingdom Serbia
Slovak Republic
Slovenia
169
2.
1.
2Step2
:実データの取得推計対象とした項目全てのデータを取得することが理想だが、日本のようにデータが揃ってい ない国・分類が多いため、全てのデータを手に入れることは困難である。そこで昨年度、2013 年の日本の市場規模の大きい分類を中心に実データを取得し、市場規模の大勢の把握に務めた。
それらに加え、本年度は将来推計分類のうち
4
分類(「fa4:騒音、振動防止」、「fb1:クリーン エネルギー利用」、「fc4
:リフォーム、リペア」、「fd4
:環境保護意識向上」)について全ての項目 のデータを収集する。これら4
分類では、従来Step3-2
で行っていた「他項目展開」が不要にな るため、推計精度が向上する効果が見込める。なお、これら4
分類は、全4
つの「大分類」から それぞれ1
将来推計分類ずつ選択するようにしており、データ取得の難易度が高くないものを選 定している。データソースは、基準を一定に保つために国横断で行われている統計を使用する。具体的には、
国際連合(
UN
)、世界銀行(WB
)、国際通貨基金(IMF
)、国際エネルギー機関(IEA
)、国際連 合食糧農業機関(FAO)など国際機関のデータを中心に取得する。なお、個別の国が発表してい る統計は、国ごとに統計基準が一定ではないことから使用しない。実データを取得した項目については、表103から表107に示した。
2.1.3
Step3:市場規模計算
Step2
で取得した実データは、一部の国・項目に限られており、また時系列でも一部の年のみ取得ができている。そのため、市場規模の全体像を求めるために、国・項目・時系列の
3
つのス テップで拡大推計を行う。(1) Step3-1:
他国展開Step2
で実データを取得した項目のうち、実データが取得できなかった国について、データの類推を行う。
Step1
で言及したように、数量データが取得できなかった国は推計対象外としているため、数量データが取得できているものの単価データが取得できていない国については、単価データを補 完することで市場規模の計算を行う。