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接触状態のモデル化

ドキュメント内 令和 2年 9月 (ページ 113-119)

5. 鉛プラグの接触状態を考慮した非線形熱・力学連成解析

5.2 接触状態のモデル化

5.1 節で示した接触解析結果から、せん断ひずみ量に応じて接触状態が変化することを確認し た。そこで本研究では、非接触部は空気層相当の熱伝導抵抗を有しており、接触部と比較して熱 伝導抵抗が非常に大きいと考え、図 5-3 に示す接触率のせん断ひずみ依存性を装置の半径方向に おける伝導伝熱の比率に置換することで、鉛プラグ境界部の接触状態を熱・力学連成解析に適用 するための手法を提案する。なお、-10N/mm2 以下の高面圧時は非接触部が殆どなく、―

5.0N/mm2を上回る低面圧時は接触解析解が得られていないことから、本研究では繰返し加力試

験において基準面圧とした―5.0N/mm2時を対象としてモデル化を行う。

本手法は、せん断ひずみ量に応じた伝導伝熱の比率を積層部の熱伝導率に乗じることで、接触 状態を考慮した等価な熱伝導率の算出を試みている。積層部を対象とした理由は、前章の熱エネ ルギー評価および再現解析にて、LRBの熱影響評価において半径方向の熱移動を再現することが 重要であったためである。また、境界部のみを対象とすると、収斂計算で処理できない不釣り合 い力が発生し、試験結果を正確に模擬できなかったため、せん断ひずみ量に応じた伝導伝熱の比 率を積層部の熱伝導率に乗じることとした。しかし、図 5-3に示す接触率は、接触している節点 数から評価しているのに対して、積層ゴムと中間鋼板は総節点数が異なっているため、近似折れ 線の比率を各部の熱伝導率に乗じることは適当でない。

そこで、図5-5で示した加力方向の断面図から、代表的な非接触分類であるType AとType B を図5-14の通りに設定する。次に、接触率とせん断ひずみの関係について、前述の通り接触状態 Aと接触状態Bの2種類に分類することができ、接触状態AではType A、接触状態BではType B が支配的になることが確認されていることから、各接触状態における非接触分類から算出した 接触率(図 5-14)と接触解析から得られた接触率(図 5-3)を比較することで、積層部の熱伝導 率に乗じる補正係数を算出する。なお、積層ゴムのみ共有節点以外も非接触となる場合(Type C)

については、ゴムの熱伝導率が鋼板と比較して僅少であり、放熱作用が顕著な中間鋼板の接触状 態がType Aに近いことから、本検討ではType Aに分類する。また、最下端の積層ゴム節点は全

体の2.5%と僅少であるため、接触状態A、Bともに積層ゴムと中間鋼板が1対で存在するものと

して検討を行う。

せん断ひずみ50%以下の範囲に該当する接触状態Aでは、非接触部がType Aであると仮定し てモデル化する。ここで、仮定した接触状態(Type A)から算出した接触率と接触解析から得ら れた接触率(ξ=0.8)に差異が見られるが、これは図 5-7 に示す通り加力直交方向の接触状態が 加力方向と異なる傾向を示すことが原因と考えられる。そこで、円周方向の補正値 ε を乗じるこ とで仮定断面において接触解析結果を模擬することとする。Type Aにおける積層ゴムおよび中間 鋼板の各部位が接触している面積比を算出し、円周方向の補正値 εA を乗じて係数α を算出する

(図5-14 (a))。接触状態Aはせん断ひずみに依らず一定値であるため、熱伝導率に係数αを乗じ て接触状態をモデル化する。

せん断ひずみ50%を上回るせん断ひずみの範囲に該当する接触状態Bでは、せん断ひずみに応 じて接触面積が異なるため、せん断ひずみγ=100%の非接触部がType Bであると仮定し、各ひず みレベルの接触面積比 ξ_γ との比率から接触状態をモデル化する。まず、各部位において接触し ている節点の支配面積比に円周方向の補正値εBを乗じて係数βを算出する(図5-14 (b))。次に、

せん断ひずみ 100%時の接触面積比𝜉 と各ひずみレベルの接触面積比𝜉 との比率(𝛽 𝜉 /𝜉 )

を熱伝導率に乗じることで、ひずみ依存性を考慮した接触状態をモデル化する。ここで、接触状 態Bではせん断ひずみが大きいため、図5-5にて鉛プラグと積層ゴムの節点同士が接触しないケ ースが見られることから、係数 β を算出する際、節点の支配面積比を使用している。なお、積層 ゴムはα、βとも同じ係数であり、鉛プラグの変形に追従して同様な接触状態が維持されることが 考えられるため、せん断ひずみに関わらず一定値とした。

上記の手法で算出した係数α、βの一覧表を表5-2に、係数α、βの算出方法を図5-14に、各部 位の熱伝導率に乗じる係数のせん断ひずみ依存性を図5-15に示す。

表5-2 熱伝導率の補正係数

積層ゴム 中間鋼板

α 0.75 0.50

β 0.75 0.30

(a) Type A(接触状態A)

(b) Type B(せん断ひずみ100%)

図5-14 非接触分類の接触面積

Rsum Rcont

Ssum Scont αrubber=Rcont/Rsum=3/4=0.75 αsteel=Scont/Ssum=1/2=0.50 εA0/(Ncont/Nsum)=0.8/(5/6) 1.0

:接触節点 :非接触節点 :上端節点と同じ

Rsum

Rcont

βrubber=Rcont/Rsum×ε=5/8×1.2=0.75 βsteel=Scont/Ssum×ε=1/4×1.2=0.30

Ssum Scont εB100/(Ncont/Nsum)=0.6/(3/6)=1.2

:接触節点 :非接触節点 :上端節点と同じ

Rcont:積層ゴムの接触面積 Rsum:積層ゴムの総断面積 Ncont:接触節点の総数

Scont:中間鋼板の接触面積 Ssum:中間鋼板の総断面積

図5-15 各部位の熱伝導率に乗じる係数のせん断ひずみ依存性

図5-15に示す熱伝導率の補正係数はせん断ひずみ100%以下を対象としている。一方、せん断 ひずみ±100%を超えるひずみ域において、鉛プラグや積層部の大変形を伴う接触解析では強い非 線形性の影響で収束解が得ることが困難であり、接触率のせん断ひずみ依存性を算出出来なかっ た。ここで、せん断ひずみの増大に伴いLRBの有効軸断面積が低下することが知られている。せ ん断ひずみと有効軸断面積の関係式を式5-2および図5-16に示す。免震装置の支持荷重はせん断 ひずみ量に係わらず一定となるため、有効軸断面積の低下に伴い高面圧化する。また、前項に示 す面圧依存性の検討から、高面圧化によって接触率が増加する傾向が確認されている。そこで、

せん断ひずみ 100%を超える接触状態について、有効軸断面積の低下に応じた高面圧化により接 触率が増加するものと仮定して接触率のせん断ひずみ依存性を設定する。接触率の面圧依存性に ついては、図5-11より全ての面圧で解析解が得られている1/2サイクル時(せん断ひずみ0%)

の接触率と面圧の関係を図5-17で整理し、最小二乗法を用いた対数近似から算出した。接触率の 面圧依存性を式 5-5 に示す。せん断ひずみが 100%を超える範囲において各部位の熱伝導率に乗 じる補正係数κは、式5-5をせん断ひずみ100%時にκ=1.0となるように基準化(式5-6)して算 出する。各部位の熱伝導率に乗じる補正係数を図5-18に示す。

また、本節で示した鉛プラグ境界部の接触状態を熱・力学連成解析に適用するための手順を図 5-19に示す。

𝐴 𝛾 1

4𝜃𝐷 1

2𝐷|𝛿|𝑠𝑖𝑛 1

2𝜃 5 2

𝜃 2 cos |𝛿|

𝐷 5 3

𝛾 𝛿

𝐻 100 5 4

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

-100 -50 0 50 100

熱伝導率の補正係数

せん断ひずみ(%)

積層ゴム 中間鋼板

ここで、

𝛿:水平変位(mm)

𝐻 :ゴム総厚(mm)( 𝑇 𝑁 ) 𝐷:装置直径(mm)

𝛾:せん断ひずみ(%)

𝐴 𝛾 :せん断ひずみ𝛾%時の有効断面積(mm2

𝜉′ 0.153 ln 𝜎 0.55 5 5

ここで、

𝜉′:面圧依存性を考慮した接触率 𝜎:面圧(N/mm2

𝜅 𝜉′

𝜉′ 𝛽 5 6

𝜉 0.153 ln 𝜎 0.55 5 7

𝜎 𝐴

𝐴 𝛾 𝜎 5 8

ここで、

𝜅 :せん断ひずみ𝛾%時(𝛾 100)における熱伝導率の補正係数

𝜉′ :せん断ひずみ𝛾%時(𝛾 100)における面圧依存性を考慮した接触率 𝜎 :せん断ひずみ𝛾%時の面圧(N/mm2

𝜎 :初期面圧(N/mm2) 𝐴 :装置の断面積(mm2

図5-16 せん断ひずみと面圧の相関関係 0

10 20 30 40 50

0 100 200 300 400

面圧(N/mm2)

せん断ひずみ(%)

図5-17 面圧と鉛プラグの接触率ξ’の相関関係

図5-18 各部位の熱伝導率に乗じる係数のせん断ひずみ依存性

0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1

-20 -15

-10 -5

接触率ξ'

面圧σ(N/mm2

近似式 接触解析結果

0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

-200 -100 0 100 200

熱伝導率の補正係数

せん断ひずみ(%)

積層ゴム 中間鋼板

図5-19 鉛プラグ境界部の接触状態を熱・力学連成解析に適用する提案手法

接触状態A:接触面積比が一定

接触状態B:接触面積比のひずみ依存を

β×ξγ100で評価

(図5-15)

接触面積比と円周方向の補正係数を 乗じて熱伝導率の補正係数α、βを算出

(表5-2)

円周方向の補正係数εを算出

(図5-14)

仮定した接触状態から

各部位の接触面積比を評価(図5-14)

代表的な接触状態を仮定(図5-14)

接触状態A:Type A, せん断ひずみ100%:Type B 接触率ξのせん断ひずみ依存性を算出

(図5-3)

接触解析から鉛プラグ境界部の 接触状態を確認(図5-5)

≦せん断ひずみ100%

接触率ξ’の面圧依存性を算出

(図5-11、図5-17)

各部位の熱伝導率に乗じる補正係数 を算出(図5-18)

せん断ひずみと有効軸断面積の関係から 補正係数κを算出(式5-6)

>せん断ひずみ100%

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