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授業における児童の対話スタイルに関する研究

第 1 節 本 章 の 目 的

第 4 章で は 、児 童 1名 を 抽 出し 、他 者 の 言 葉 へ の 応答 の プ ロ セ ス を 明 ら かに し た 。 し か し な がら 、 他 の 児 童 が ど の よう な プ ロ セ ス を 経 て いる の か 、 を 明 ら か に する こ と は で きて い な かっ た 。 そ こ で 、 小 論 では , 授 業 に お け る 児 童の 他 者 の 言 葉 へ の 応 答を 対 話 ス タ イル と し 、学 級 に お け る 児 童 ら の対 話 ス タ イ ル の 特 徴 を明 ら か に す る 。 具 体 的に は 、 2 名 の児 童 を 抽出 し 、 彼 ら の 特 徴 か ら、 学 級 に お け る 他 者 との 関 係 の 変 化 と 認 識 の変 化 が 相 互 に関 連 し てい る 過 程 を 明 ら か に して い く 。

64 第 2 節 研 究 方 法

1 対 象 (研 究 協 力 者 )

対 象(研 究 協 力 者)は 教 師 歴 22年 のM 教 諭(男 性),お よ び M 学 級の 児 童 で ある 。M 学 級 は,

公 立 小学 校 の 5 年 で , こ の クラ ス は 単 一 学 級 の た め, 5 年 間 ク ラ ス 替 え はな い 。 ク ラ ス児 童 数 は男 子 16 名 , 女 子 17名 の 計33名で あ る 。

2 対 象 児

対 象 児は , 次 の 2 名 で あ る 。2 人 を 抽 出 し た 理 由 は、 そ の 対 話 ス タ イ ル が大 き く 異 なる か ら で あ る 。 1 人 目 は , よ う す け く ん(仮 名)で あ る 。 よ う す け く ん を 抽 出 し た 理 由 は , M 教 諭 ,筆 者 と も に , よ う す けく ん を 他 の 児 童 の 発 言に 対 し , よ く 応 答 す る, と 認 識 し てい る 。 つま り , よ う す け く ん は, 他 の 児 童 の 発 言 に 対し 、 積 極 的 に 応 答 す るよ う な ス タ イル を 持 って い る と い え る 。

2 人 目 は , は る と く ん(仮 名)で あ る 。 は る と く ん を 抽 出 し た 理 由 は , よ う す け く ん と は 異 な る発 話 ス タ イ ル を 持 っ てい る こ と で あ る 。 M 教諭 は , 4 月 当 初 , は ると く ん を 以 下の よ う に認 識 し て い る 。

「 や っぱ は る と は ね , 昔 は てつ ろ う に し か 言 わ へ んか っ た 。 今 で も そ う やで 。 て つ ろう に 意 見を 言 う ね ん ,4月 の 最初 ず っ と 。 (中 略)一番 初 め に 変 え やな あ か ん子 っ て ク ラ ス の 中 で おる や ん か ? そ れ が 今 回 ,て つ ろ う と は る と やっ た も ん で 」(M 教 諭 への イ ン タ ビ ュー 記 録 抜粋)

つ ま り、 は る と く ん は 他 の 児童 に は あ ま り 応 答 せ ず、 特 定 の 児 童 に 応 答 する ス タ イ ルで あ る 、と い え る 。

以 上 のこ と か ら 、 よ う す け くん と は る と く ん は 、 異な っ た 対 話 ス タ イ ル を持 っ て い るこ と が 示唆 さ れ る 。

3 観 察 の 方 法

国 語 の授 業 の 参 与 観 察 を 2009年4 月 か ら 12 月 ま での 計 24 回 行 っ た 。国 語 の 授業 を ,ビ デ オ カメ ラ 1 台 で 録 画 し , それ を デ ー タ 化 し た 。 また , フ ィ ー ル ド ノ ー ツか ら エ ピ ソ ード 記 録 を作 成 し た 。 ビ デ オ 記 録の デ ー タ は M 教 諭 と 児童 の 発 話 が 中 心 で あ り, そ こ で 表 せな い 非 言語 的 情 報 や そ の 空 間 で感 じ た こ と な ど を エ ピソ ー ド 記 録 で 補 完 し た。 分 析 の 際 ,M 教 諭 への フ ォ ー マ ル イ ン タ ビュ ー や 休 み 時 間 の 雑 談な ど を 考 察 対 象 に 含 めた 。

65 第 3 節 分 析 結 果

そ れ では 、2 人 の 特 徴 的 な 発言 場 面 と そ の 過 程 の 事例 分 析 か ら 、 2 人 の 対話 ス タ イ ルを 明 ら かに し て い く 。

1 事 例 1 よ う す け く ん の 対 話 ス タ イ ル

ま ず、表 6 の 場 面1 に お い て、よ う す けく ん は,よ し き く ん の「『 ま り ち ゃん な ら 大 丈 夫 』 っ て ,先 の こ と な の に 何 で わか る の ? 」と い う 疑 問に 対 し ,「 勘 や な 」と 自分 の 解 釈 を つぶ や い てい る 。 し か し な が ら ,こ の よ う な よ う す け くん の つ ぶ や き は , 発 言の 宛 名 が 明 確に あ る わけ で は な い 。

次 に 、表 6 の 場 面 2 に お い て、よ う す け く ん は ,児童 ら の 話 し 合 い を 聴 き,「 こ れは 事実 な ん か, 想 像 な ん か ど っ ち なん 」 と 疑 問 を 抱 い て いる 。 し か も , そ の 疑 問を 「 問 題 で きた ん だ けど 」 と 言 っ て , ク ラ ス全 体 に 向 か っ て 述 べ てい る 。

そ し て、 表 6 の 場 面 3 に お いて 、 よ う す け く ん は ,な ほ み ち ゃ ん の 「 お とり の ガ ン も残 雪 が 弱っ て し ま う か ら , ど っち も 失 っ て し ま う。」「お と り の ガ ン も 残 雪 もハ ヤ ブ サ に 持っ て か れて し ま う 」と い う 発 言に 対 し ,「 逆 に 好 都 合 。大 造 じ い さ ん は ,残 雪が 邪 魔 で 憎 かっ た か ら, 逆 に 好 都 合 ち ゃ う ?」 と 尋 ね て い る 。 ま た, し ゅ う く ん の 「 正 々堂 々 , 自 分 で打 ち た かっ た ん じ ゃ な い ? 」 や, ゆ う さ く く ん の 「 それ は , ラ イ バ ル を ハ ヤブ サ に 取 ら れる っ て こと ? 」と い う発 言 に 対し ,「そ れ は ,ラ イ バ ルを ハ ヤ ブ サ に 取 ら れ るっ て こ と 」と、 そ の 真意 を 確 認 し て い る 。 しか し な が ら , し ゅ う くん や ゆ う さ く く ん と よう す け く ん だけ の 話 し合 い に と ど ま ら ず , エピ ソ ー ド 2 の よ う に ,自 ら の 疑 問 を 他 の 児 童に 呼 び か け たり し な くて も , 他 の 児 童 が こ れら の 話 し 合 い に 参 加 して お り , ク ラ ス 全 体 の対 話 へ と 広 がっ て い る。

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表6 ようすけくんの対話スタイル

場面1 「児童の発言に対する自分の考えのつぶやき」5 月 13 日 国語:物語文・『新しい友達』

場面2 「クラス全体に投げかけられた疑問」 6 月 17 日 国語:詩・『春』

場面3 「特定の児童に向けられた対話のクラスへの広がり」 11 月 25 日 国語:物語文・『大造 じいさんとガン』

先生:ほいじゃあちょっときかせて、変だ、おかしい見つけた?

児童ら:見つけた。

先生:見つけた、見つけた。

児童ら:見つけた。

先生:わかりきったつもりになってるけど、ぜったいじゃないから、もう一回やってみたいんだよ。いい?

    出してみて。 はい、どうぞ。

よしき:まりちゃんが…

先生:はい、よしき。ぼく問題できたんだけど、変なとこあるんだけど 。 よしき:ぼく変なとこあるんだけども、

ようすけ:おー。

複数の児童:おう、なになに?

先生:なにってきくの、いいよ。

よしき:「まりちゃんなら大丈夫」って、先のことなのに何でわかるの?

まさふみ:あぁ、なるほど。それは思う。

複数の児童:あぁ。

ようすけ:勘やな。

てつろう:ぼく問題できたんだけど、一連の5番のとこの、「ぴょっこり浮かして」、って浮いてるの?

複数の児童:あぁ 先生:浮いてるの?

    (中略)

みつる:えっと、大きな空やから、大きな空にとって人間はちっちゃいから。

てつろう:なるほど。

複数の児童:あぁ。

先生:だから、浮いてるって、マジックで?そういうこと?(なほにきく)

なほ:(首を横にふる)

先生:絶対ありえない。

ようすけ:問題できたんだけど。

てつろう:なんや?

ようすけ:これは事実なんか、想像なんかどっちなん?

先生:じゃあ、他の人も言って。

かず:びっくりしたから。

なほみ:今撃ったら、残雪が弱ってしまうから、どっちも失ってしまう。

なほみ:おとりのガンも残雪もハヤブサに持ってかれてしまう。

**:おとりはどうでもいいんやろ。

ようすけ:逆に好都合。大造じいさんは、残雪が邪魔で憎かったから、逆に好都合ちゃう?

まさこ:おじいさんがやらなくても、残雪がいなくなればいい。

ちひろ:ガン取り放題や。

しゅう:正々堂々、自分で打ちたかったんじゃない?

ゆうさく:うん、自分で殺したことにはならへん。

ようすけ:それは、ライバルをハヤブサに取られるってこと?

ゆうさく:そうじゃないけど。

れお:勝てない相手に立ち向かっていくほどの残雪に感動した。

さえこ:残雪が分かってたかは分からへんけど、大造じいさんに撃たれるかもしれないのに、自分の      命を捨ててまで仲間を救おうとする姿に感動した。

れお:「他のことは忘れて」って書いてあるから、残雪は大造じいさんのことも忘れていたんちゃう?

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表7 はるとくんの対話スタイル

場面4 「特定の児童への関わり」 4 月7日 国語:詩・『クロツグミ』

場面5 「教師との対話から生まれた全体への問い」 6 月1日 国語:物語文・『新しい友達』

場面6 「教師に対する答えが,他の児童にひろわれる」 11 月 25 日 国語:物語文・『大造じい さんとガン』

場面7 「他の児童から応答されることによる考えの再考」11 月 25 日 国語:物語文・『大造じい さんとガン』

先生:小鳥じゃないのって、ほい、ひよこなのか小鳥なのか、今ね、ひよこなのか小鳥なのかね。

    ひよこ、これはひよこの話だよ、って、これは小鳥の話だよって、ちょっと今ここに出てきて     るのはひよこなのか、小鳥なのか、他に出てきてるのってある?

**:グミが出てきてる。

先生:他に出てきてるのは?

児童ら:クロツグミ。

先生:おう、クロツグミっていうのは何なのっていうことだよな、クロツグミが出てきてる。

はると:鳥の名前。

先生:正解。

はると・ふゆき:いえーい。

先生:さぁ、こういう自分、こういう気持ちがある、自分のことがいややな、という気持ちがあって、この気持ちは、まりちゃん     ともぎくしゃくしてるんやろ、ぎくしゃくっていうのはあまり仲よくしてない、っていう、そういう気持ちが、自分のことが     嫌やという気持ちがいつ、消える?

はると:今日。

先生:今日っていつ?今日っていつのこと言ってるの?

**:昨日。

**:金曜日。

先生:わけわからんこと言ってるな。月曜日とか金曜日とか何のこと言ってるの?いつ、どこで、この気持ちが…

はると:今日。

先生:今日って言ったのだれ?

はると:おれ。

先生:どういうこと?

はると:その日の、気付いた日。

先生:気付いた日にこの気持ちはなくなる?

はると:そう。

先生:それがいつなくなるのか探してほしい。教科書のここ、っていうのを探して欲しい。この気持ちがなくなるのはどこか。

    読んで探してみて。みつけた、と思ったらしるしつけたらいい。おう、どこにあるやろ。ない?

先生:みんな、何か自分の考え持った?何でもええから、自分の考え持たなあかんで?はい、じゃあ、

    なんでやと思う?

はると:残雪はおとりのガンの近くにおったから、残雪を撃つと、おとりのガンにも当たるかもしれへん。

児童ら:そうかもしれない。

ゆうさく:はるとと少し違うけど…残雪の近くにおとりのガンがおって、おとりのガンに当たるとあかんから、あ、

     一緒か。

みつる:じゃあさ、それは、おとりのガンを死なせたらあかんの?

さえこ:おとりのためにそのガンを育てたんやから、おとりのガンを当たるとか考えてないんちゃうかな?

先生:大造じいさんにとってこれ(残雪からりょうじゅうのたまが届く範囲に入ってきたこと)はどういうこと     かってことを考えやなあかんよ。

みつる:ありがたいって気持ちが無いって人の意見が聴きたい。

先生:はい、じゃあ言って?

はると:すごい。

児童ら:え~?

はると:すごいっちゅうか。おどろいた。

先生:あ、撃たなかったんじゃなくて、撃てなかったんや?

**:撃たなかったは意思で、撃てなかったは自然。

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