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7.4 指揮能力向上評価実験
表 7.2: 実験に利用した計算機
CPU Intel Corei7 4771 3.5 GHz
Memory DDR3 32GB
OS Ubuntu 14.04
Java VM Java8 OpenJDK 1.8.0 111
定した台東区の人口の約4割となる.これは消防署1か所あたりの平均人口を超える 数字となり,本試作システムは実用規模の問題に対応可能な性能を有していると考え られる.
また,1エージェントを1人で割り振った場合においても,小規模自治体の人口,中 規模都道府県の警察官数,防衛においては旅団規模に相当し,その適用範囲は広いと 考える.
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図 7.2: 性能評価実験結果
7.4 指揮能力向上評価実験
本試作システムを利用することによる指揮能力の向上効果を評価するため,図7.3に 示すように実験協力者を2つのグループに分け,指揮能力テストを用いて評価実験を 行った.意思決定を行うのは前章までに説明した消防指揮所の指揮官及び消防リーダー とし,本試作システムを意思決定訓練として用いた.
7.
また,指揮能力の評価には,実際に部下役の人間を指揮する必要があることから,実 際の指揮活動に近い環境で実施できるよう,指揮能力評価システムを開発し,評価実 験に利用した.実験は最大5日間にわたって行われ,1回目の評価と2回目の評価の間 は必ず1日以上開けることとした.
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図 7.3: 指揮能力評価実験のスケジュール
7.4.1 指揮能力評価システム
指揮能力評価システムは,上司役の評価対象者が,部下役の実験スタッフと自然言 語を用いてコミュニケーションをとりながら指揮活動を行うシステムである.評価対 象者と実験スタッフは,CPXにおける訓練対象者とレスポンスセルの役割を担う.そ れぞれPC端末を用い,それぞれに必要な情報が表示される.指揮能力評価システム の画面表示の例を図7.4に示す.実験スタッフと評価対象者に面識がある場合等の先入 観が実験結果に影響することを防ぐため,実験協力者と実験スタッフは別室で実験を 行うこととした.評価対象者の命令はボイスチェンジャーによって変換して話者を特 定させないようにした音声を用い,スタッフからの報告はテキストによるチャットを利 用することとした(図7.5).
7.4.2 訓練モード
訓練対象者が訓練を実施する場合,画面表示は訓練対象者が操作するエージェント を中心としたレイアウトとなる(図7.6).画面に表示される内容は部下等からの報告に より得た,エージェントが知覚している内容のみが表示される.
7.4 指揮能力向上評価実験
図 7.4: 指揮能力評価システム
訓練対象者が消防指揮所を担当する場合には部下からの情報が集約された情報とな り,消防リーダーを担当する場合には自分の指揮する消防隊が認識している情報とな る.訓練対象者は自分の行動アクションまたは部下エージェントへの命令アクション を選択してパラメーターを設定することで行動を決定し,指揮を行う.
7.4.3 実験方法
実験協力者は大学生10名とし,インフォームドコンセントによる同意が得られた学 生を対象として実施した.また,1回目の実験の際には,司令部モード及びリーダー モードの評価の前にそれぞれ1回ずつ練習を行うこととした.また,1回目と2回目の 評価において火災パターンは同じ3種類を利用するが,それは実験協力者には知らせ ず,さらに1回目と2回目では順番を入れ替えて実行した.
実験協力者は指揮能力評価システムを用いた1回目の評価結果により,平均値に大き な差が出ないよう訓練群と対照群に振り分けた.訓練群に所属する実験協力者には,本 試作システムを訓練プログラムとして用いた指揮能力訓練を司令部モードとリーダー
7.
A Commander at Headquarter
Leaders
Command by Voice (C)
Report by Text Chat (R)
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An objective of the headquarter is given An objective of
the leaders
HQ mode
A Leader
Fire fighters 㻴 㼡 㼙 㼍 㼚 㼏 㼛 㼚 㼠 㼞 㼛 㼘 㼘 㼑 㼐 㼑㼢㼍㼘㼡㼍㼠㼕㼛㼚 㼑㼚㼢㼕㼞㼛㼚㼙㼑㼚㼠 A trainee
An objective of the leader is given
An objective of the fire fighter
Leader mode Command by Voice
(C)
Report by Text Chat (R)
図 7.5: 指揮能力評価実験の構成
モードで各1時間以上実施した.マップの広さは評価システムと同様に,司令部モード では160× 160セル,リーダーモードにおいては40× 40セルの範囲を消火することと した.今回,評価システムには上司及び避難民を設定しなかったため,訓練プログラ ムにおいても避難民及びリーダーモードにおける消防指揮所は設定しないこととした.
一方,対照群に関しては訓練を行わずに2回目の評価を実施することとした.
部下役を演じる実験スタッフは,評価システムの操作に十分習熟した大学生3名と した.訓練群及び対照群ともに2回目の指揮能力評価テストを実施するが,この際実 験スタッフには実験協力者が訓練群か対照群かの情報は与えないこととした.訓練プ ログラムの効果は,評価システムを用いた初回の評価値及び2回目の評価値と,その 向上率によって評価することとした.なお,評価システムと訓練プログラムの表現を 近づけるため,訓練プログラムは2D表示のみで動作させた.
また,向上の余地をどれだけ埋められたのかを評価するために,達成向上度という 項目を設定した.達成向上度P は以下の式によって求められる.ただし,Scoremaxは 満点,Score1stは1回目の評価の点数,Score2ndは2回目の評価の点数である.
7.4 指揮能力向上評価実験
図 7.6: 訓練モードの画面
P = Score2nd−Score1st
Scoremax−Score1st (7.1)
この項目は,初回に高スコアを得て単純な向上率が上がりにくくなった場合におい てもスコアの向上を評価するために設定した.
7.4.4 結果及び考察
実験結果を表7.3及び表7.4に示す.スコアは満点に対する100分率で表現している.
なお,実験のすべての試行において,満点を達成した実験協力者は存在しなかった.
訓練群と対照群の双方において,スコアは初回よりも2回目のほうが向上した.こ れは,1回目の評価が訓練としても機能していると考えられ,人間を率いる訓練を行う ことで指揮能力が向上したと考えられる.
次に,訓練群のスコアの向上率及び達成向上度は,司令部モードとリーダーモード のそれぞれにおいて対照群を上回った.これは訓練プログラムによる訓練効果と考え られる.リーダーモードと比較して,司令部モードの向上率,達成向上度が共に高く なったが,これはマップの大部分を直接視認できるリーダーモードよりも,初期に得 られる情報量の少ない司令部モードの方が,偵察及び消火の効率が結果に与える影響
7.
が大きく,訓練によるスコア向上の余地が大きかったものと考えられる.
表 7.3: 訓練群と対照群の得点及び向上(司令部モード) 訓練群 対照群 初回スコア平均値(%) 73.3 75.7 2回目スコア平均値(%) 84.4 82.8 向上率(%) 15.2 9.37 達成向上度(%) 41.6 29.2
表 7.4: 訓練群と対照群の得点及び向上(リーダーモード) 訓練群 対照群
初回スコア平均値(%) 44.2 45.4 2回目スコア平均値(%) 47.5 46.1 向上率(%) 7.33 1.34 達成向上度(%) 5.82 1.12
続いて,訓練群と対照群から,それぞれ最も向上率の高かった実験協力者について データを考察する.訓練群及び実験群のうち,それぞれの中で最も向上率の高かった 実験協力者Alpha及びBravoについて,司令部モードのスコア及び向上を表7.5に示 す.両者とも1回目のスコアは平均値を下回ったが,2回目は平均を上回って向上して いる.また,Alpha及びBravoが部下を動かした軌跡の例を,その際の火災分布の情 報と重畳して図7.7及び図7.8に示す.図より,1回目の評価の際には両者とも部下を 手分けしてマップ全体を踏破する意図が見られ,Bravoは2回目の評価の際も戦略その ものは同様であった.一方,2回目のAlphaの場合にはマップ右下に集まる大きな火災 を集中的に消火しようとする顕著な戦略の変化が見られ,それによってスコア自体も 大きく向上した.
これらのことから,本試作システムが提案するマルチエージェントシミュレーショ ンによりコンピュータエージェントに命令を与えて目標を達成する訓練は,レスポン スセルを必要としないにも関わらず,実際の人間を指揮する能力を向上させるために 有効であると考えられる.