第 3章 基礎能 力育成のための教授方略
1 指導内容の構築
階名読み、 リズム課題、歌唱課題の各テス ト結果か ら、以下の指導内容を構築 した。第
2章 4‑3)で
述べた通 り、現場に活かせる方略を目指 し、できるだけ簡易かつ実践的な 内容を検討す る。能力 の定着 と伸長を図ることを目的 として、毎回の授業の導入において 一定期間、継続的に実施することとした。マクファーソンら
0019に
よると、音楽的 リテラシーに関 して、次のように述べている。私たちの見解では
,二
種類の活動が音楽 リテラシニの発達の土台 となる。まず,
ト レーニングのは じめの数力月間 (年長 の学習者の場合は数週間)は ,丸
暗記や反復聴 取によつてよく知つている作品が教 え られ るべきである(多くの現行の教則本には,そ の本で学ぶ作品の録音が添付 されてい る)。 この段階では,初
心者 に歌わせ,そ
の後で 剛1染みのあるレパー トリー を演奏 させ ることに重点 を置 くべ きだろ う。(心の中であ れ,声
に出 してであれ)歌
わせ ることは有効である。なぜな ら,歌
うことでIEEな
心 的モデルが確立 され,す
でに覚 えているレパー トリー曲を生徒たちが楽器演奏に必要 な指使いへ と移 し替える際,有
効な道標 となるか らである。歌唱活動は,す
べての初 期 レッスンにおいてよく用い られ る自然な活動である。 しか し生徒は,た
だ歌 うことか ら
,楽
器 で作品を演奏す る際に必要 となる運指 と歌を結びつ けるまたは声に出 し 音を聴 きなが ら1練
習す ることは,体
を動か した り触 つた りす ることを通 して音を 体 験 す る と い う子 ど も の 能 力 を 発 達 させ る こ と に な り,こ
の こ と はGalvao&Kemp(1999が
′いと身体の統合にそ うした能力が役立つ と主張 してい ること とも符合す る。もし教師ができそ うであると感 じたなら,ソ ル フェージュを導入 して,記憶 (ラ唱のよ うな歌い方
)か
ら,理
解 纏銘 唱や運指唱を利用 した歌唱)へ
の移行を強化することも有効である42b。
̀
これを踏まえて、階名読み、 リズム、歌唱の
3つ
の能力の育成を目的 として、次の通 り 指導内容の柱を打ち立て、教授方略を構築 した。① 反復による トレーニングであること
② 馴1染みのある楽曲を用いること
③ 身体的な活動を取 り入れたものであること
指導期間は、
2014年
5月 1日〜 6月 12日 であつた。その間、9回
の授業(1単
位時間 は50分 )に
おいて、各国毎時、導入部の15分
程度を配当し、実施 した。内容は以下の通りである。
1)階
名読みに関する指導診断テス ト1の対象生徒を観察する中で、そもそも譜面上の音符を階名 に変換するとい う行為に不慣れなため、その結果、階名 の判別に時間を要する状況に陥つていると思われ た。そこで、生徒が年度 当初に学習 して剛1れ親 しむ『校歌』(楽譜5)(C・dur、
20,櫛
)を用いて、集中的に楽譜を階名 で読む トレーニングを構築 した。
① 楽譜 (1名につき
1枚)と
ス トップウォッチ (2名につき1個)を
用意する。② 2名
1組
で実施する。③ l名 は音符を ドレミでできるだけ速 く音読する。音程 とリズムを付ける必要はない ことを明示する。 もう1名 は音読のタイムを計測する。
④ 最後まで音読が終了 したら、計測 したタイムを記録する。
⑤ 同様の作業を、交代 して実施する。
9マ
クファーソン・ガブリエルソン,尾山智子・吉江路子訳001⇒「音から音符へ」『演奏を支える心と科学』誠 信 書 房,pp。166‐167
タイムを計測す るのは、生徒個々の能力 を目に見える形に置き換 えることで、各 自が縮 減に向けての 目標 を持 ちやすい点を考慮 したことによる。 これ を、授業時間の
5分
程度 を 用い、計6回
の授業にて トレーニングを実施 した。ただ し、前半 (第1回
〜第3回
程度 まで
)は
、時間のかかる生徒 もいるため、10分
近 くを要す る場合があつた。校 歌
音符 を ドレミで素早 く音読 しま しょう。音程 とリズムをつけるlZs要はありません。
1回日 2回目 3回目
4回目 5回目 最 終回
分 分 分 分 分 分
秒 秒 秒 秒 秒 秒
(楽譜5)
2)リ
ズム課題に関する指導四分音符 (休符)、 人分音符 (休符
)な
どの意味を理解 していない生徒、理解 していても 実際の リズム と結びついていない と思われ る、いわゆる楽譜 を読めない子 どもに対 して、熊木
(2013)は
「それぞれの音符の長 さ (音価)を
理解 していないので、リズムがわから ない」ため、「り・ズムカ‐ ドを使つた活動が有効」43pと 述べている。小学校の読譜指導で用いられることの多いカー ドによるリズム理解を取 り入れ、音符の 音価 と実際の リズムの紐づけを図るための トレーニングを、次の通 り構築 した。
① リズムカー ドとメ トロノ‐ムを用意する。
(三分、四分、人分を中心とした音符・休 符、計 12枚)(図 7.リ ズムカー ド参照
)② クラス単位一斉実施する。
③ メトロノ■ムを起動させる。テンポは生徒の実態により、」 =72〜 96の 範囲で設定 する。
④ 12枚のカー ドを1枚ずつ提示し、メトロノームに合わせて手拍子を打つ。これを
12枚分おこなう
(導入の初期は、教員のデモンス トレーションを最初に追加する
)。⑤ 次に任意のカー ドを2枚提示し、メトロノームに合わせて手拍子を打つ。これを4 回繰り返す。
⑥ すぐに2枚 のうちの1枚 を差し替え、同様に手拍子を打つ。これを12枚のカー ド全 てを使用するまで繰り返す。
⑦ 状況に応じて、全体から数名程度のグループまたは個人を指渚 して実施する。
これ を、授業時間の冒頭
5分
程度を用い、計9回
の授業にて トレーニングを実施 した。49熊木員見子0019「 子どもたちに読譜の意義を伝えよう」『教育音楽小馳 013年7月亀音楽之友社p.22
(図
70リ
ズムカー ド)3)歌
唱課題に関する指導診断テ ス ト1の生徒観察か ら、音高感覚に課題のある生徒 は階名の把握 に不慣れである ことは既に述べた。これ以外の重要な要素 として、「音が上がる・ 下がる」とい う感覚をつ かめていない生徒の存在があげ られ る。例 えば、「も う少 し音を高 くJと指示す ると、音高 は変わらずに音量のみを大きくすることが見 られた。小畑
000つ
は、「音痴」克服のための 指導法の提言の中で、「音階の構造について、まず知識 として理解させることが有効である。その際に、視覚的に簡略化 したモデルを見せ ることが効果的である」44bと 述べている。音 高をわか りやす く認識 させ感覚を養 うことが急務であると捉え、音高を視覚で認識 し、動 作で確認 しながら トレーニングする方法を、次の通 り構築 した。
黒板に音符 を板書 し、教員が音を示 しなが ら階名 唱の範唱をす る(図
80黒
板板書 参 照)。範唱の際、音高感覚を補助す るための
30cm定
規 (以下、「ドレミ定規」 と称す る)小畑千尋000つ「降動制 克服の指導に関する実践的研究」多賀出版,p.197
①
②
を人数分用意する。この 「ドレミ定規」には、事前に「 ド・ レ・ ミ・ ファ・ ソ・ ラ・
シ・ ド」を長
2度
は4 cln、 短2度
は2・m感
覚でシールによ リマーク してお く。(図90「ドレミ定規」 参照)
③
続いて、生徒は定規の該 当音名 を指差 しなが ら階名 唱す る。階名 唱の流れは以下の 内容 を基本 とし、生徒の習得状況 を勘案 して範唱は徐々に省略 してい く。
a。 上行す る
3音
(ドレミ、 レミファ、 ミファソ、ファソラ、 ソラシ、ラシ ド)b.下
行す る3音
(ドシラ、シラソ、ラソファ、 ソファミ、ファミレ、 ミレ ド)。
.2度
のイ ンターバル (ドレ ド、 レミレ、 ミファミ、ファソファ、 ソラソ、 ラシラ、シ ドシ 。・・ 同様 に下行形)
d.3度
のインターバル (ドレミ ド、レミファレ、ミファソミ、ファソラファ、ソラシ ソ、ラシ ドラ、シ ドレシ、ドシラ ド・・・ 同様 に下行形)
e。
4度
のインタ∵バル (ドレミファ ド、レミファソレ、ミファソラミ、フアンラシフ.
ァ、 ソラシ ドソ、ドシラソ ド・・・ 同様 に下行形)
■
5度
のインターバル (ドラミファソ ド、レミファソラレ、ミファソラシ ミ、ファシ ラシ ドファ、ドシラソファ ド・ 。・ 同様 に下行形)
④
次に、教員 は範唱をせずに、黒板 の任意の
1音
を差す。生徒はそれ を見た後、ドレ ミ定規の該 当箇所 を指差 しなが ら該 当の音 を階名 唱す る (フェルマータで保持す る)。
⑤
④の動作を繰 り返す。教員の指す音は、上記③に記載のa〜fの内容を目安に、生徒 の習得状況を勘案 して実施する。生徒が出す音をイメージし、
ドレミ定規で確認す
る動きをしながら音高感覚をつかめるペースに留意する。
これを、授業時間の冒頭
5分
〜10分
程度を用い、計6回
の授業にて トレーニングを実施 した。ただし、
1回
日か ら3回
目までは、階嬌読みの習得状況を勘案 して、①②③を主とする5分
程度の内容 とし、4回
目以降は①②③に加え④⑤を主 とする10分
程度の内容 として 実施 した。なお、本項 目については ドレミ定規の有効性 を確認す るため、
ドレミ定規 を使用 した実 践群 と、使用 しない対照群 を設定 した。
(図 8・ 黒板板書)
(図 9・ ドレミ定規)
2
診断テス ト2(指
導後 における調査)1)テ
ス ト内容(1)鋤
嘲実施時期は
2014年
6月 23日 〜7月 1日 であつた。(2)実
施の方法全て 「診断テス ト1」 と同一の方法を取 り、階名読み、 リズム課題、歌唱課題の
3種
類に分けて実施 した。ただ し、読譜 についての能力 を見るとい う趣 旨を踏まえ、「診断テス ト
2」 は 「診断テ ス ト1」 と同一のものを使用す るのではな く、同程度 の難易度で異なる旋 律 を改めて作成 した。以下に階名 読み (楽譜6)、 リズム (楽譜7)、 歌唱 (楽譜
8)の
各 楽譜 を示す。作成にあたつては、第
1章
第2節 2)で
示 した留意点に沿つて行 つた。診断テス ト 2‑1(階 名読み
) ( )内に音の名前 をカタカナで記入 して くだ さい:終了
:( )分
()秒
(楽譜6)
診断テス ト 2‑2(リ ズム
)リズム を手で打ちま しよう。「1,2,3,4Jとカウン トしてか ら始めて ください。
① 十■ ユ ニ 上 ↓