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BCVはRNA依存性RNAポリメラーゼであるNS5Bのthumb site 1を阻害する非核酸系阻害薬である。

BCVは哺乳類のポリメラーゼに対して活性を示さず、ヒトにおいて既知の本薬の標的は存在しない。

BCVはHCVの複製を阻害し、レプリコンアッセイでのジェノタイプ1に対するEC50値は1.6~9.5 nM、 ジェノタイプ3a、4a及び5aに対するEC50値は0.8~18 nM、ジェノタイプ6aに対するEC50値は8.6

~79.5 nMであり、V494Aの変異が存在する場合に低感受性であった(79.5 nM)。本変異の保存率

はEuropean Hepatitis C Virus Databaseでは21%である。ジェノタイプ2a及び2bのレプリコンに対す

るEC50値は87~1000 nM超であった。レプリコンアッセイにおいてBCVとDCV及びASVとの間に

交差耐性は認められず、BCVとDCV及びASVとの併用で相加又は相乗作用が認められた。また、

BCV、DCV及びASVの3剤併用によりHCV RNAの排除の増強が認められた。臨床使用に相当する 濃度の BCVをDCV及びASVと併用することにより、DCV及びASVにそれぞれ耐性を示すNS5A

(L31M-Y93H)及びNS3(D168V)のアミノ酸置換を有するジェノタイプ1bの変異レプリコンが排

除された。したがって、BCVが他のHCV治療薬との併用投与によりC型慢性肝炎患者に対する有用 な治療法となること、また、NS5A及びNS3阻害薬の治療によりウイルス学的耐性を獲得した患者に 対する選択肢となることが期待される。

BCVの非臨床PK及びADMEのプロファイルについて、in vitro及びin vivoの試験系(マウス、ラッ ト、ウサギ、イヌ及びサル)で評価した。各種動物を用いた非臨床毒性試験において、ヒトでの安全 性を評価するのに十分なBCV及び代謝物の曝露量が得られた。

BCVのバイオアベイラビリティの種差は大きく(15%~100%超)、消失半減期はマウス及びサル(そ れぞれ3.2及び1.4~2.1時間)よりもラット及びイヌ(それぞれ8.4及び13.8時間)で長く、マウス、

ラット、イヌ及びサルの血漿クリアランスは小さかった(肝血流量の1.10%~19.5%)。BCVは動物 及びヒトで血管外に分布することが示唆された。BCV及び BMS-794712の血清又は血漿蛋白結合率 はすべての動物種及びヒトで高値(97.2%~99.4%)を示した。すべての動物種で蛋白結合率が同程 度の値を示したことから、曝露量を比較検討する際にBCV及びBMS-794712の遊離型分率で補正し なかった。ラットにおける分布試験(有色ラット含む)では、薬物由来の放射能は体内に広範に分布 し、反復投与後の蓄積は認められなかった。放射能の組織内分布は副腎、肝臓、胃、小腸及び盲腸で 高く、中枢神経系組織中及び眼レンズ中で低度又は定量下限未満であった。投与後7日以内に組織か ら放射能が消失した。有色ラットでは、薬物由来の化合物とメラニン含有組織との結合は認められな かった。

BCV は動物及びヒトで広範に代謝され、代謝物プロファイルはすべての動物種で質的に類似した。

サル及びヒトでは[14C]BCVの主要な代謝経路がN-脱メチル化(スルホンアミド窒素原子及び二環性 ピペラジン窒素原子に結合したメチル基の脱離)であったのに対し、マウス、ラット及びイヌでは N-脱メチル化、ヒドロキシ化及びO-脱メチル化が主な代謝反応であった。BCVの酸化的代謝は主と

して CYP3A4 を介し、CYP3A5 がわずかながら代謝に寄与した。すべての動物種で、BCV 及び

BMS-794712が血中の薬物由来の主化合物であった。BMS-794712は放射能検出によりヒト血漿中に

検出された唯一の代謝物であり(BCVのAUCの15%~30%)、非臨床試験で用いたすべての動物種

でも検出され、抗 HCVアッセイでは未変化体と同程度の活性を示した。BMS-794712の曝露量は、

ヒトでは単回投与後及び反復投与後も同程度であり、臨床推奨用量においてはヒトよりマウス、ラッ ト及びイヌが高値を示した。BCVをヒトに反復投与した結果、微量代謝物である BMS-948158の曝 露量の増加がみられたが、総薬物曝露量の10%未満であった[総AUCの1.1%~2.9%(初回投与後)

及び 8.5%(反復投与後)]。ヒトに特有の代謝物は検出されなかった。動物及びヒトでは、代謝ク リアランスが主要な消失経路であり、次いで代謝物の糞便中及び胆汁中排泄であった。胆汁中排泄も BCV の消失経路の一つであった。なお、動物及びヒトでは腎クリアランスは主要な消失経路ではな かった。

In vitroで、BCV及びBMS-794712は様々な薬物代謝酵素及びトランスポーターの基質、誘導剤又は

阻害剤であることが示された。BCVは主としてCYP3A4を介して代謝され、また、P-gp及びBCRP の基質であるため、CYP3A4、P-gp又はBCRP活性の変化がBCVの体内動態に影響を与える可能性 が考えられた。

In vitroで、BCV及びBMS-794712は、CYP1A2及びCYP2B6の誘導剤ではなかったが、CYP3A4の

誘導剤であり、CYP3A4 の可逆的かつ時間依存的阻害剤(IC50:9.6~33.4 µM)でもあった。このこ

とから、BCVは CYP3A4の誘導及び阻害を同時に起こす可能性が考えられた。臨床試験において、

BCVとミダゾラム(CYP3A基質)との間で薬物相互作用が認められ、ミダゾラムの曝露量が約44%

~50%減少したことから、BCVの投与は相対的にはCYP3Aを誘導すると考えられた。

BCVはCYP2C8の軽度~中等度の可逆的阻害剤であることが示された(IC50:23.7 µM)。そのため、

BCV は CYP2C8 基質の曝露量に影響を与える可能性があると考えられた。しかしながら、臨床で

DCV/ASV/BCV配合錠の併用投与がモンテルカスト(CYP2C8基質)の曝露量に与える影響は軽微で

あり、BCVは臨床で使用されている他のCYP2C8基質のPKに影響を及ぼす可能性は低いと考えられ た。BCVはヒト肝ミクロソームのUGT1A1を阻害した(IC50:12.6 µM)。

BCVとその代謝物であるBMS-794712及びBMS-948158は、複数の取り込み又は排出トランスポーター を阻害した。FDA6及びEMA7ガイダンスに従い、in vitroのトランスポーター阻害データからin vivo のプロファイルを予測した結果、BCVはP-gp、BCRP、OATP1B1、OATP1B3及びNTCPの基質との 薬物相互作用を起こす可能性が考えられた。また、BCVとOAT1、OAT3及びOCT2基質との相互作 用は、臨床推奨用量で起こる可能性が低いと考えられた。BSEP及びMRP2阻害作用のin vitro試験結

果をin vivoの予測に外挿するための方法はFDA及びEMAから提案されていないため、文献9で報告

されている手法を用いてBSEP及びMRP2阻害に起因した薬物相互作用の可能性について検討した。

その結果、BCV及びBMS-794712によるBSEP又はMRP2阻害の可能性は低いと考えられた。しかし ながら、BMS-948158によるMRP2阻害は否定できず、BCVを75 mgの用量で1日2回投与したC型 慢性肝炎患者の一部で薬物相互作用が起こる可能性が考えられた。

BCV、DCV 及び ASV 間の薬物相互作用を薬物相互作用試験で検討しなかったものの、第 2相試験

(AI443014試験)のPKデータとこれまでに得られたPKデータ(他のBCV、DCV及びASV投与試

験のPKデータ)との比較検討から、3種類の薬物間に臨床的意義のある薬物相互作用が起こる可能 性は低いと考えられた。

BCVの毒性について、GLP適合下でICHガイドラインに準拠して実施した非臨床毒性試験により評 価した。主要な毒性の標的器官及び所見を以下に考察し、その発現曝露量とヒト曝露量との比較を Table 4-1に示す。

単回投与毒性試験の結果、マウス(最高用量1250 mg/kg)における概略の致死量は375 mg/kg、ラッ ト(最高用量625 mg/kg)における概略の致死量は625 mg/kgであった。イヌでは60 mg/kg以上で全 例に嘔吐がみられ、最高用量200 mg/kgでも死亡はみられなかった。

反復投与毒性試験で認められた毒性の標的器官は、ラットにおける消化管であった。ラット6ヵ月間 試験では、80 mg/kg/day(AUC:1380 μg•h/mL、ヒトAUCの79倍)で消化管内の液体貯留と、これ に関連した胃及び小腸絨毛上皮の変性・壊死、腺窩上皮過形成、小腸粘膜固有層のリンパ形質細胞浸 潤、胃及び腸管腺窩上皮のアポトーシス(ごく軽微~中等度)及び胃粘膜基底部の混合性炎症細胞浸 潤が認められた。ラット6ヵ月間試験の無毒性量は20 mg/kg/day(AUC:175 μg•h/mL、ヒトAUCの 10倍)であった。同様の消化管の所見は2週間試験でも1ヵ月間及び6ヵ月間試験より高用量でみら れており、慢性投与による毒性の亢進や新たな標的器官毒性はみられなかった。

イヌにおいては、最高用量25 mg/kg/day(AUC:1135 μg•h/mL、ヒトAUCの65倍)の9ヵ月間投与 で嘔吐及び軟便・粘液便の発現頻度の増加がみられた以外に消化管毒性を示唆する病理組織学的所見 は認められなかった。

ラットのみにみられた消化管の組織学的変化は明らかな毒性量(ヒトAUCの79倍)以上で発現し、

イヌでは高曝露量下(ヒトAUCの65倍)でも認められなかったことから、ヒトにおいて消化管毒性 が発現する可能性は低いと考えられた。BCV の臨床試験では臨床推奨用量における安全性が確認さ れた。国内第3相試験(AI443117試験)ではDCV/ASV/BCV FDC投与例(217例)でGrade 3又は4 の胃腸障害の有害事象として便秘、胃静脈瘤出血及びイレウスが各1例に認められ、このうちイレウ スは治験薬投与中止に至ったものの、治験薬との関連はないと判断された。

ラット及びイヌの肝臓中に高濃度のBCV及びBMS-794712が検出されたが、ラットで適応性変化と 考えられる肝細胞肥大及びこれに関連した肝臓重量の増加以外に病理組織学的変化は認められなかっ た。

併用投与による毒性の相互作用について、ラット及びイヌを用いたBCVとDCV及びASVとの2剤 又は3剤併用投与試験により評価した。これらの試験におけるBCVの投与量は、十分なヒト曝露量

(ヒトAUCの10倍)が得られる用量を設定した。いずれの併用投与試験においても毒性学的意義の ある相互作用は認められなかった。2剤併用投与試験(BCV + DCV、BCV + ASV)では、毒性の相互 作用を示唆する所見はみられなかった。イヌの3剤併用投与試験では肝臓のクッパー細胞の肥大・過 形成が認められたが、イヌのDCV単剤投与試験で認められたものと同様の所見であり、変化の程度 が軽微で発現頻度も低かったことから、毒性学的意義は低いと考えられた。

遺伝毒性について、in vitro試験(細菌を用いる復帰突然変異試験、CHO細胞を用いる染色体異常試

験)及びin vivo試験(ラット小核試験)を組み合わせて評価した結果、ICHガイドラインで推奨され

る最高濃度及び用量まで陰性の結果であった。

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