(MCI)
初期介入の 3 つの柱
3. 抗認知症薬の投与
資料4
診断のあとは何をすればいいのだろう?
初期支援のながれ 診断
症候学
神経心理検査+画像(形態+機能)
合併症と身体機能の評価
診断シェア と教育
本人に診断結果を伝える
家族に診断結果を伝える&教育的支援
初期の 介入
薬剤導入(ADの場合):コリンエステラーゼ阻害薬等 リハビリテーション:有酸素運動、知的活動、役割、心理療法 慢性疾患管理:糖尿病、高血圧等
環境調整:介護認定、デイサービス等のサービス導入 モニタ
リング
3か月に1回を基本とする
年に1回認知機能検査のモニタリング
本日の内容
1. 診断結果を伝えること・教育的支援 2. 慢性疾患の管理
3. 抗認知症薬の投与
診断結果を伝える場面の一例 ( パターン A)
かかりつけ医の先生から紹介された〇〇病院のものわすれ外来。
患者さんと娘さんが検査結果を聞きに来院。診察室に入ります。
「前回行った血液検査は異常ありませんでしたね。」「これはMRIで すが、海馬の萎縮がありますね。」「神経心理検査でも記憶の低下 が明らかですので、アルツハイマー型認知症で間違いないですね」
「そうですか」
「治す薬はありませんが、進行を遅らせる薬があります。飲んでみ られますか?」
「はい」
「紹介いただいた先生にお返事を書いておきますね。次回からは 近くの先生から同じお薬をもらってください。」
「あの~」「食事は何をたべればよいですか?」
「食事はあまり関係ないでしょうね」
「そうですか」
1. 診断結果を伝えること・教育的支援
認知症の診断開示への不満
認知症患者と介護者を対象とした研究より
①
正確な診断をして、診断や予後を説明することに対 する医師の遠慮②
無神経で突然な診断開示の態度③
診断に伴う認知症患者や介護者の情緒的なニーズ に対処する機会が十分ない④ 治療や対応の選択についての不十分な議論
⑤
診断後のフォローアップの欠如Faranak Aminzadeh et al CGS J OF CME 2012 1. 診断結果を伝えること・教育的支援
初期または軽度の認知症の患者さんご本人への 病名の告知について、どのようにお考えですか?
2012年9月ケアネット調べ
1. 診断結果を伝えること・教育的支援
初期または軽度の認知症患者さんご本人へ、
病名の告知はどのくらいの割合でされていますか?
2012年9月ケアネット調べ
1. 診断結果を伝えること・教育的支援
認知症の診断開示に医師が躊躇する理由と対応法
診断開示の躊躇理由 対 処 法
1 診断精度の不確実性 診断の精度向上。専門機関との連携。
2 診断を理解・保持でき ないというきめつけ
認知機能の事前評価と解釈モデル聴取。
認知機能に応じた説明の工夫。フォローアップ。
3 患者に心理的苦痛を 与えたくない
診断のシェアは初期のスピリチュアルな苦 悩を軽減する
4 時間の少なさとコミュニ ケーションスキルの欠如
診療の工夫(最後の時間で予約等)。
Bad news tellingの方法を学ぶ。
5 介入が無意味という 虚無的態度
遅らせることに意味がある。将来に備える ことができる。病が進んでも、心豊かに生 き、関係性が深まる援助は可能。
6 診断の開示が害を与 えるという予想
自殺率は一般高齢者と同程度(若年性、鬱 の合併者は注意)。ほとんどの人は診断を 受け止めて、生きていく力を持っている。
Faranak Aminzadeh et al CGS J OF CME 2012演者改変 1. 診断結果を伝えること・教育的支援
病気という理解、
→いたわり、絆 認知症の理解
→接し方、環境改善 ショック→安心、話せる
絆、穏やかな感情 安定した生活
診断をシェアするプロセスと教育的支援
医学的診断 約1年
約2年 本人の気づき ⇒ 解釈モデル うっかりした→ 何かまずい状況
理由づけ→隠す→隠し切れず
医療との出会い
家族の気づき⇒家族の解釈モデル 様子が変だ→○○のせいかも?
益々変だ→病気かも→どうしたら?
診断をシェアするプロセス 1. 診断結果を伝えること・教育的支援
早期からの介護者・家族への教育的支援
間違った 認識
間違った 対応
間違った 接し方 感情的
衝突
認知症の正 しい理解
正しい接 し方
良い反 応 融和 つながり
の強化
悪いサイクルから良いサイクルに
1. 診断結果を伝えること・教育的支援
タイムリーな認知症の診断開示の潜在的利点
認知症の方と介護者 家 庭 医 社 会
不確定性の減少(病状説明) 不確定性の減少(病状説明)
自律性、個々の権利に対する尊 敬
認知症者の選択と自律強化。
認知症者と介護者が前向きに 対応する力を強化できる 家庭医とマネジメントをシェアする
患者/介護者とマネジメントをシェ アする
患者-介護者-医師関係におけ る信頼関係構築
患者-介護者-医師関係にお ける信頼関係構築 病とその対応の選択について
良好な理解。推奨されるケアを 受け入れ良い
患者/介護者に教育の機会 を創る。推奨されるケアを受 け入れ良い
臨床および生活の質の改善 専門医/サービスのタイムリーな利
用
専門医/サービスのタイムリーな 紹介と接触
早期治療・対応の有益性 早期治療・対応の有益性
アドバンスドケアプランニング アドバンスドケアプランニング アドバンスドリソースプランニング 合併症/危機の予防や先延ば
し(アクシデント、障害、入院、
入所、介護者負担など)
合併症/危機の予防や先延 ばし(集中的なおよび緊急 の危機介入など)
合併症を予防し、遅らせる(救急 受診,入院,入所,ケアコスト増加,交通 事故リスク,他の公的安全の懸念)
研究への参加 研究のための動員 研究の発達
Faranak Aminzadeh et al CGS J OF CME 2012 1. 診断結果を伝えること・教育的支援
診断を伝えることと
初期の教育的支援によって何が得られるか?
患者と家族にとって 認知症の理解が深まり、様々な問 題への対応力が向上する(介護者 は介護負担が減少する)
予測した対応ができるようになり、
不確実性が減少する、
適正な時期にサービスを導入し、
生活のしにくさを和らげられる 医療への信頼が増し、薬やケアに 対するアドヒアランスが改善する。
合併症やBPSDによる危機を回避 しやすくなる
自律性が向上し、将来のことを先 に考えて、決めておくことができる
医療にとって
治療や推奨されるケアへのアドヒアランズ が改善する。
早期介入(リハビリ等)の効果が期待できる 診療の質、臨床の質が向上する 合併症の予防と病状の安定化 BPSDの悪化予防
認知症高齢者のQOL(生活の質)が向上 ACPの作成等の取り組みにより、エンドオ ブライフケアの質の向上が期待できる
社会に必要な資源が明らかになり、政策 提言に生かせる
救急受診や入院入所のリスクなどの社会 的コストを下げることができる
社会にとって
Faranak Aminzadeh et al CGS J OF CME 2012を参照に著者改変 1 診断結果を伝えること・教育的支援
診断結果を伝える場面の一例 ( パターン B)
2回目の診察で、軽度アルツハイマー型認知症の方と娘が検査結 果を聞きに診察室に入ります。
「この前は検査お疲れさまでした。」「1時間くらいかけて、脳の働 きについて調べていただきましたが、お疲れにならなかったですか
?」「今日はその結果を説明させていただきますね」
「お願いします」
「長谷川式という検査では30点中19点でした。20点以下では何等 かの認知症がある可能性が高いという検査ですので、残念ながら 少しですが基準を下回っています。」
「検査の内容では、時間の感覚が少しあいまいになっていること と、3つの単語を覚えていただき、あとで思い出してもらう記憶のと ころで取りこぼしていること、前頭葉の働きをみる野菜の名前を次 々いってもらう言語性流暢性が低下していました。」
1. 診断結果を伝えること・教育的支援
今日の診察の 目的について さりげなく説明
する
「いろいろな脳の働きのうち、このように記憶力の低下と時間の 感覚の曖昧さが先行してみられるパターンは初期のアルツハイマ ー型認知症の特徴に合致します。」
「○○クリニックで撮っていただいたMRIですが、最近の記憶を つかさどる側頭葉の内側、いわゆる海馬の部分が委縮しています
。これも、アルツハイマー型認知症でよく見られる所見です。」
「これらの検査の結果から、現在、初期ではありますが、アルツ ハイマー型認知症の状態にあると判断します。」
「一方、脳の働き全般でみると、論理的な思考力、空間認識や計 算、言語に関する機能など多くは保たれています。」
「つまり、記憶など脳の一部の機能は低下していますが、日常生 活を送るための他の多くの脳の働きは保たれていますので、日常 的な介護が必要な状況ではありません。」
少し難しいお話ですが、ここまでで質問はありませんか?
1. 診断結果を伝えること・教育的支援
診断結果を伝える場面の一例 ( パターン B)
すべての機能が なくなったわけで なく、失われたのは 脳の一部の機能で あることを説明 アルツハイマー型 認知症であることを
根拠を示しながら
明確に述べる。 「軽いけれども、アルツハイマー型認知症になっているという
こいとですね。これから、認知症がどんどん進行してしまうと いうことでしょうか?」
「そうですね。残念ながらいったんアルツハイマー型認知症 と診断された方は緩やかに進んでいく方がほとんどです。」
「しかし、その進み方は一般的には、1年くらいたって去年よ り少し進んだかなというくらいの緩やかな進み方の人がほと んどで、急速に進むというものでは決してありません。」
「また、進行のスピードにも個人差があって、私の診させて いただいている患者様でも、去年と今年でほとんど変化がな いという方もいらっしゃいます。」
「進行を食い止めることはできませんが、お薬などで進行を遅 らせることができると言われています。」
1. 診断結果を伝えること・教育的支援
診断結果を伝える場面の一例 ( パターン B)
進行することを説明 しつつ、その速度は 緩やかであることを
伝える
診断結果を伝える場面の一例(パターンB)
「そうですか?お薬はやはり飲んだほうが良いでしょうか?」
「お薬は残念ながら進行を食い止めるほどの効果はありま せんが、一年ほど進行を遅らせることが期待できます。」 「 最初に飲むべき薬は、脳の中の学習物質であるアセチルコ リンを増やして、記憶や知覚などを高めるお薬で、3種類あ ります。」
写真を見せながら・・・薬の説明をする
「○さんは一人暮らしですから、一日一回のこの飲み薬か、
こちらの張り薬が良いでしょう」
1. 診断結果を伝えること・教育的支援
進行を遅らせる ために、できること
を説明する
「進みを遅くするために他にできることはありますか?食事とか気 を付けたほうが良いですか?」
「食事は認知症の予防には有効ですが、発症した認知症の進行 を遅らせるほどの効果はありません。でも〇さんは軽い糖尿病が あるので、血糖が上がりすぎないようにするのは大事です。」
「他に、生活上で注意することはありますか?」
「ご自分の体力にあった運動を行うことと、頭を活発に使う生活 を送ることは、認知症の進行を遅らせる可能性があります。今さ れている毎日の散歩を続けられたり、老人会の集まりなどもでき るだけ継続されたほうがよいでしょう。また、介護保険の認定がで たら、半日のリハビリデイサービスなども利用するとよいと思いま す。」
「なるほど。で、介護保険の手続きはどうすればいいですか?」・・
1. 診断結果を伝えること・教育的支援
診断結果を伝える場面の一例(パターンB)
生活の中で、
自分でとりくめる こと、努力できる ことを説明
そのための環境 調整について
説明する
本日の内容
1. 診断結果を伝えること・教育的支援 2. 慢性疾患の管理
3. 抗認知症薬の投与
2 慢性疾患管理の重要性
英国では、10年前から脳卒中と心臓病への対策を徹底的に行い、それらの疾患の死亡率を ともに10年で40%減少させた⇒ 認知症の発症率の低下に関係していると推察されている
1990年代
2010年代 全体で23%減少
65-69 70-74 75-79 80-84 85-89 90歳以上 35
30 25 20 15 10 5 0
Fiona E Matthews, et al , results of the Cognitive Function and Ageing Study I and II,2013