抗体価測定は、血液型不適合妊娠、ABO不適合造血幹細胞移植、高力価-低凝集性の特徴をもつ不規 則抗体(HTLA:high-titer low-avidity)の同定に有用である。抗体価は抗体濃度を測定する半定量 法であるため、その力価を評価する場合には測定に用いる方法、術式や試薬などの条件は統一する。
IgG型の抗体価測定には、原則として反応増強剤無添加の間接抗グロブリン試験を用いる。
抗体価をモニタリングする場合には、同一術式で検査する。
1. 操作
試験管番号 1 2 3 12 希釈倍数 1:1 1:2 1:4 1:2048
混和
血 清 0.1ml
生理食塩液
1 容 1 容
0.1ml 0.1ml
0.1ml
3~5%赤血球浮遊液を各試験管に 50μl ずつ加える
(抗体の当該抗原がホモ接合体であるO型赤血球で、3回生理食塩液で洗浄 し、3~5%に調整したもの)
37℃恒温槽
3~4回血球洗浄
(血球洗浄機又は用手法)
抗ヒトグロブリン抗体各 2 滴滴下
混和
37℃ 60 分間 加温 血清 1 容
<抗体価測定の注意点>
① 抗体価は希釈操作や凝集判定に個人差があるため、誤差が生じやすい。
② キャリーオーバーによる測定誤差を防止するため、希釈系列を作製する際には、希釈ごとに ピペットチップを交換するのが望ましい。
母児不適合妊娠の原因抗体が、抗Aや抗B、抗Mなどの場合には、その抗体にIgMのみならず IgG成分が含まれているか確認する必要がある。そのために患者血清(血漿)を2-メルカプ トエタノール(2-ME)やジチオスレイト-ル(DTT)で処理し、IgM成分を減弱又は失活 させ、IgG成分の抗体検出を行う。(方法の詳細は、『新輸血検査の実際』を参照する)
この際、血清を処理するため処理血清は2倍希釈されていることを念頭に検査を行うこと。
2. 結果の解釈
A ) 1+の凝集を示す最大希釈倍数をもって抗体価とする。抗体価だけでなく、スコアをつける。
3頁 2. 反応の見方 [表-1] を参照する
B ) 母児不適合妊娠が疑われる症例では、抗体価が16倍以上の時に胎児新生児溶血性疾患(HDFN)
のリスクが高い。
C ) 妊婦での抗体価をモニタリングする場合には、残った血清は再検査のため-20℃以下で保存して おくことが望ましい。
判定 混和 判定
※ 陰性には IgG 感作赤血球 1 滴滴下 900~1000G/15 秒 遠心
※ 凝集しない場合は再検査する 900~1000G/15 秒 遠心
Ⅴ.交差適合試験
1. 交差適合試験(主試験)
交差適合試験には、患者血清と供血者血球の組み合わせの反応で凝集や溶血の有無を判定する主試 験と患者血球と供血者血清の組み合わせの反応を判定する副試験とがある。主試験は必ず、実施しな ければならない。
術式としては、ABO血液型の不適合を検出でき、かつ37℃で反応する臨床的に意義のある不規則 抗体を検出できる間接抗グロブリン試験を含む適正な方法を用いる。なお、臨床的意義のある不規則 抗体により主試験が不適合である血液を輸血に用いてはならない。
A ) 操作
① 交差適合試験用の検体を遠心し、血清を分離する。
② セグメントの本数分と自己対照、および各3~5%赤血球浮遊液用の試験管を用意する。
③ 試験管に検体名(検体番号)、自己対照、セグメントの通し番号と検査方法を記入する。
④ 各3~5%赤血球浮遊液用試験管に生理食塩液を1~1.5ml分注する。
⑤ 自己対照浮遊液用試験管に血球沈層を1滴滴下し、3~5%赤血球浮 遊液を調整する。
⑥ セグメントの製剤番号を交差適合試験用伝票と照合しながら,セグ メントの赤血球側が下になるよう該当の試験管口に引っ掛ける。
⑦ セグメントの赤血球下側をハサミで切り、セグメント内の赤血球を それぞれ1滴滴下し、3~5%赤血球浮遊液を調整する。赤血球は 生理食塩液で、1回以上洗浄することが望ましい。
⑧ ②の検査用試験管に被検血清を各2滴滴下する。
⑨ ⑦で調整した3~5%赤血球浮遊液をそれぞれ1滴滴下し、よく混和する。
⑩ 反応増強剤を各試験管に各2滴滴下し、再度よく混和後37℃10~30分間加温する。注1
⑪ 生理食塩液にて3~4回洗浄する。注2
⑫ 洗浄した各試験管の赤血球沈渣に抗ヒトグロブリン抗体を各2滴滴下する。
⑬ よく混和後、900~1000G(3400rpm)/15秒遠心する。
⑭ 溶血・凝集の有無を観察する。注3
⑮ 判定結果を記録する。
⑯ 陰性結果の試験管に、IgG感作赤血球試薬を各1滴滴下し、よく混和後、900~1000G
(3400rpm)/15秒遠心し、凝集することを確認する。注4
〈注釈〉
注 1 反応増強剤(ウシアルブミン液、PEG、LISS など)の滴下数および反応時間、洗浄回数は 使用する試薬の添付文書に従う。
注 2 用手法で洗浄する場合は、4頁 3. 血球洗浄方法;用手法(間接抗グロブリン試験の血球 洗浄法) を参照する。
01-2345-6789
生理食塩液 1~1.5ml
不十分な洗浄により、被検血清が残っていると、その中の抗体と抗グロブリン抗体が反 応し、中和されてしまうので十分な洗浄を行う。
注 3 3頁 2. 反応の見方 を参照する。
再度の遠心判定は、反応を減弱あるいは陰性化させることがあるため避ける。
注 4 凝集しない場合は再検査する。
<交差適合試験の注意点>
① ABO血液型検査検体とは別の時点で採血した検体を用いて検査を行わなければならない。
② 連日にわたって輸血を受けている患者では、少なくとも3 日(72 時間)ごとに検査用検体を採 血する。また、過去3ヶ月以内に輸血あるいは妊娠歴のある患者では、輸血予定日に先立つ72時 間を目安に患者から検査用検体を採血する。
③ 血清分離が難しい場合は、血漿を用いてもよい。但し血漿検体に切り替える場合、EDTA加検体 では弱反応性を示す臨床的に意義のある抗体が検出できることを確認する。
④ 検体については、5頁 4. 検体の取り扱い を参照する。
⑤ 試験管やディスポピペットの汚染、検体、試薬、生理食塩液の細菌などによる汚染、血清のフィ ブリン塊の混入は、偽陽性反応を引き起こす原因となるので注意する。
B ) 交差適合試験の限界
① Rho(D)型誤判定および不適合は防止できない。
ABO血液型判定に誤りがあれば規則抗体(抗A、抗B)が存在するため交差適合試験で容易 に不適合を避けることができるが、Rho(D)型には規則抗体が存在しないため、誤判定、不 適合(陰性者に陽性者血液の輸血)は防止できない。
② 血液型抗原による免疫は防止できない。
輸血前にあらかじめ確認される血液型はABOとRho(D)型であり、その他の血液型につい ては検査しないため、輸血される赤血球が患者の有しない抗原を持っている場合は免疫される 可能性がある。
③ 遅発性溶血性輸血副作用を防止できないことがある。
患者が前感作されている場合や検出レベル以下の免疫抗体をすでに有している場合には、適合 血として輸血された赤血球に対応抗原があれば、二次免疫応答を起こし、遅発性溶血性輸血副 作用を発症することがある。
④ 白血球、血小板、血漿蛋白などに対する抗体は検出できない。
⑤ 検出法が適切でなければ抗体は検出されず、またすべての赤血球抗体が検出されるとは限らな い。
⑥ 検査の術式、操作の誤りは防止できない。
⑦ 患者血清や試薬など入れ忘れ、操作の未熟による不適合反応の見逃しは発見できない。
【交差適合試験の一例】
・・・ ・・・
混和
37℃ 157分間 加 温
抗ヒトグロブリン抗体各 2 滴滴下
37℃ 15 分間 加温
混和
900~1000G/15 秒 遠心
混和 混和
判定
判定
※ 陰性には IgG 感作赤血球 1 滴滴下
混和
判定
アルブミンを用いた間接抗グロブリン試験 生食―ブロメリン法
自己
IAT
900~1000G/15 秒 遠心
900~1000G/15 秒 遠心
判定
判定
3~4回血球洗浄
(血球洗浄機又は用手法)
900~1000G/15 秒 遠心 Alb 各 2 滴滴下
900~1000G/15 秒 遠心
Bro 各1滴滴下 37℃恒温槽
37℃恒温槽
※ 陰性には酵素コントロールを加え て遠心し、凝集することを確認するの が望ましい。
凝集しない場合は再検査する。
混和
IAT
1
IAT
2
自己
Br Br
2
Br
1
2. 交差適合試験陽性時の対応
A ) 生食法で凝集が認められる場合
原因 対処
検体間違い 再採血後に再検査する。
血液型間違い 受血者の血液型と供血者の血液型を確認する。
室温で反応する不規則抗体の存在
不規則抗体検査を実施し、必要に応じて(抗体スクリーニン グの37℃反応相にも凝集が見られる場合)抗原陰性血で再検 査する。
寒冷凝集素(自己対照陽性) 37℃で加温後再判定し、凝集が消失しているか確認する。
連銭形成(自己対照陽性)
生食置換法(血清と血球を5分ほど室温で反応させ、遠心後 上清を除き、生理食塩液を2滴加え、遠心判定する)を実施 する。
冷式自己抗体(自己対照陽性) 37℃で加温後再判定し、凝集が消失しているか確認する。
B ) ブロメリン法で凝集が認められる場合
原因 対処
ブロメリン非特異凝集
(自己対照陽性)
(1) 自己対照と供血者血球との反応で同等の凝集がある。
(2) 他の方法では、凝集・溶血を認めない。
(3) 直接抗グロブリン試験陰性。
以上の3項目を全て満たしていること。
ブロメリン法以外の方法で検査を実施する。
不規則抗体の存在 不規則抗体検査を実施し、抗原陰性血で再検査する。
寒冷凝集素(自己対照陽性) 37℃で加温後再判定し、凝集が消失しているか確認する。
冷式自己抗体(自己対照陽性) 37℃で加温後再判定し、凝集が消失しているか確認する。
C ) 間接抗グロブリン試験で凝集が認められる場合
原因 対処
不規則抗体の存在 不規則抗体検査を実施し、抗原陰性血で再検査する。
不規則抗体スクリ-ニング陰性 低頻度抗原に対する抗体(血液センタ-へ相談する)
冷式自己抗体(自己対照陽性) 37℃で加温後再判定する。
供血者血球の直接抗グロブリン試
験陽性 供血者血球の直接抗グロブリン試験を実施する。
自己対照も陽性
直接抗グロブリン試験・間接抗グロブリン試験を実施する。
共に陽性ならば、受血者血清中の自己抗体を自己赤血球で吸 収し、同種抗体の有無を確認する。
同種抗体が存在する:対応抗原陰性血にて対応する。
同種抗体が存在しない:様子をみながら輸血を実施する。