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技術伝承指導法と指導側のあり方

ドキュメント内 JMAJMA JMA (ページ 118-200)

5−1  技術伝承指導側のあり方

技術伝承は図5-1に示すように、ある程度のレベルになるまで、また、被技術 伝承者が指導者の手を放れ、一人立ちして個々の能力を伸ばし、個人にあった 技能を発揮して行くためには、ある期間、受けてと送り手という両者の協業に よる腕の研磨が必要になる。そこで、ここからは、G-研で検討した取り組みと 共に、今度は教える側の教育・育成術という立場から、各種の情報を集め整理 した結果を含め、G-研各社が実施した内容を紹介することにする。

図 5-1  OJTと教える側の技術

誰に渡すか?

何を渡すか?

出来るか?

教えられる内容か?

渡しても将来役立つか?

教える技があるか?

講師の活動

受け手 教え手

教師として

 ・何をしたいのか?

 ・どのようにしたいのか?

 ・問題と改善点は何か?

① 具体的な   アウトプット?

  (目的と目標?)

③P-D-C?

② 評価?

  (生徒のアンケート?)

イメージとアウトプット、ファースト

(1) 実体験者から学ぶ指導の過程と得たもの

G-研に所属する委員の方々の職場には、既に多くの高度技能者がおられる。

そこで、その技を見学させていただきながら、高度な技能修得で得た体験談を お聞きした。その理由は、教育する側の対策に入る前に現場に即した内容を探 るためだった。では、今回、この対応に㈱堀場製作所で勤務され、pHメーター の心臓部であるガラス電極を製作されているBさん(37歳)様より、現場で作 業しながらお話いただいた内容を紹介することにする(2006 年 11 月 16 日見 学・聴取、見事なまでの技とこつ、到達への努力を目前で拝見しながらの内容、

但し、内容は順不同)。

①上級技能者は、定年後も次世代の技能者育成や雇用延長などのニーズがあり、

これは、就業に関するひとつの良い状況を意味する。だが、反面、他の仕 事を次々と経験することを希望する者に、この種の仕事は向かない。

② 大学院出の方々が名工の仕事につけば解析力が高いはずなので有効だが、

恐らく就業目的が異なる。多分人生の目的が異なるので、この種の仕事に 就く例は少ないと思われる。

③ 「師匠が出来て自分に出来ないはずはない」と思って、失敗しても技の修 得に努力した。面白いことに、100回失敗し、101回目に成功すると、そ れ以降は全く失敗しない自分を、もう一人の自分が見ていて楽しかった。

④ 私は、他の職場からこの仕事に応募した。しかし、当時の上司は半年間、

今の職場へ配属することはしなかった。多分、本当に私に根性があるの か?を見ていたのだろうと思う。だが、この仕事が好きだし、何としても 身につけたかったので前の職場から毎日通うことで、多くのガラス工芸技 能を学んだ。ご承知の通り、ガラスは熱で溶けるが同時に収縮する。その 加減を見ながら内部へ空気を吹き込み、重力と粘土のバランスを保ちなが ら目的とする形をつくる技能です。見ていると簡単だが、やって出来ない のがこの技能です。

⑤ 大学の研究室でガラスをさわってきた方が、見ていて出来そうなので「や らせて欲しい」というが、使用しているガラス素材の性質が異なるため、

そう簡単にはできません。また、中国へ業務で出張して、現地の状態を見 ましたが、終身雇用の文化は根付いておらず、日本と大きく状況が異なっ ています。いつ辞めるかわからない社員に教育しても、本当に企業の財産 になっていくか疑問です。こういった環境では、技術伝承や定着の問題か ら日本の最高レベルの技術と同じぐらいに到達することは、難しいのでは ないかと思います。

⑥ 腕をあげるにつれ、新製品開発の事前検討段階に加わるようになりました。

現在までに私が基本寸法を決定した製品がそのまま新製品として世に出 ています。図面を理論的に研究者がガラス製品の製作図を作成しても、実 務的に出来ないものがあります。だが、逆に、モノづくりの立場から今回 のような内容が生まれることは楽しい仕事だと思って取り組んでいます。

⑦ ある特殊な新製品は、師匠は手をつけない部品です。ガラス細工上、大変 に難しいことが図面を見ただけでわかるからです。でも、私は出来ると思 って手をつけました。既に製品はこのように実現しています。

⑧ 今後、この種の仕事に就く方、特に、若い方々には、マイスターにプラス するものとして、職人・終身雇用制度のような扱いを会社で別に作らなけ れば仕事を選択する魅力とはならないのではないだろうか?

  以上、技の詳細はとてもここに記載出来ないが、実務を行ってきた方には共 感する実務的な内容が多くあった。なお、この種の内容は業種が異なるが多く の匠や名工の方々が述べてきた内容と似た内容が多い。だが、今回のお話は① 馬場様という若手の方のお話であること、②ご自身がここ数年指導者から教育 を受けた内容に加え、③今後の部下指導に当たって、人を得て教育する上で重 要な内容を示しておられることが、以降、今回G-研で指導者側に立った側で被 技術伝承者の育成に役立つ内容となっている。そこで、この内容を重点に置き、

以下、指導者の指導術、特に、新人育成の要点を解説することにする。

(2)技術伝承の対象者について

  技術伝承教育を進める先生側の指導の前に、誰を生徒の対象として特定する か?というテーマがある。適材適所が前提となるが、教育効果をあげるための 要件を整理したので、その内容を紹介させていただくことにする。

図 5-2 に示すように、伝承教育の前に、第 1 章で述べた技術・技能戦略が必 要になるが、この前提条件についてはすでに解説済みなので、次に、この分野 で究極的には、対象となるOJT教育対象者の選定をベースに、その人選の概要 を解説することにする。

図 5-2  OJT対象を誰にすべきか?

新目標 2 6 2 前向きの2だけが活動する状況 前向き  付和雷同型 反対派

 技術・技能伝承の前提条件:

技術伝承戦略と地図が必要!

  OJT対象

① やる気と人生の目標を持つ方

② 教育目的 :

  イニシャルリーダーづくり

③ 主な手法はコーチング   投入100→成果200〜300

OFF・JT研修対象

① 成功例と評価があれば   活動するが、当面は   参画のふりをして静思

② 皆がやっていることから   外れると寂しい

③ 一応のレベルがあれば   会社も評価

反対、評論家

・研修しても成果は  少ない

(投入10023%)

図5-2に対象者の選定内容を示したが、この種の教育に当たっては2:6:2の原 則の活用をお奨めしたいと考える。一般に、革新的な要件を成功に導く活動を

定めると、集団は、前向きの20%、付和雷同型の60%、抵抗勢力の20%の構成 となることが知られている。この前向きの 20%を教育すると、100 の力を投入 すると、本人自体が努力するため、アウトプットは200〜300となる。自助努力 の成果がこうなるそうである。この 20%の方々は、少しの情報をヒントに自ら 努力して目標達成に向かうグループであり、イニシャル・リーダーとして成功 ストリーをつくる方々である。これに反し、抵抗勢力の 20%は、同じ 100%に 教育しても2〜3%程度とムダになるので、この対象は最初から技術伝承教育対 象者から外すべきことになる。教育はイニシャル・リーダーを中心に裾野が広 い体系が望まれる。このような意味合いからすると、付和雷同型の 60%をどの ようにやる気のグループへ引き込むか?が課題となる。2:6:2の原則では、やる 気の 20%の方々の成功事例づくりと、成果を会社側が高く評価したお手本づく りの成果を出すことが最も有効な対策とされている。要は、成功モデルをつく り、未来の姿を目前に示し、一種の目に見える成功事例を示す対策である。「百 聞は一見にしかず」、「論より実践」、「案ずるより産むは易し」の実践がこの種 の人材育成プロジェクトの要点であり、技術伝承の対象となる人材選定の骨子 となる。

では、このように極論に近い内容で、教育対象を選ぶ理由と教育法について 断言した理由を解説することにする。技術伝承対策における教育は経営戦略の ひとつであって、成功を前提とするためである。そこで、一般的に行われ、問 題の多い教育法との差異とここまで述べた内容の比較を行うことにする。図5-3 は日本で問題とされてきた、教育効果の少ない事例の要点をまとめたものであ る。要は、「アウトプットを定めず、教育を図った例だが、この種の内容を技術 伝承問題の場に持ち込むと、時間と人材育成のムダを大きく産むので、ご注 意!」となる。

次に、OJT 教育される方々は被技術伝承者の個人的ニーズを把握する必要が ある。人が人を教える時には、相手のニーズやレベルに応じた教育だけでなく、

個人的な意思や感性上の内容も考慮することが必要になる。過去、名工や匠達 は手に職をつけ、生計を立てるためにひとつの技を修得する努力をしてきた。

主に、図 5-4 の左上の崖っ淵・環境で仕事に取り組んだわけである。苦しくて も我慢する。殴られ叱られても我慢する、といった背景には、このような必死 にならなければ生きて行けないという環境があったことが大きな要因だった。

だが、現在は飽食の時代である。欲しい物は何でも揃い、転職も自由な時代で ある。このような社会的条件に加え、「若者が入社して3年で37%が会社を辞め る」という内容を考えるなら、被技能伝承者は過去職を得るために、何として も技を盗むというニーズは少ない。従って、弟子をコヅきまわして、我慢させ、

つらいことをあえて行う教育法は納得性が少なく、無理がある。

ドキュメント内 JMAJMA JMA (ページ 118-200)

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