プロフィール
2. 成果の概要
1) インプラント治療のリスクファクターの明確化
インプラント治療の術前スクリーニング検査としてすべての症例に対して行った骨代謝マーカーの臨床統計より約 20% の症例に何らかの骨代謝異常が認められた。本研究の目的は、これらの症例を CBCT データ、インプラント 治療の予後、骨吸収の程度、インプラント周囲炎の発症頻度等を長期的に検討し、血液・尿検査からインプラント の予知性を把握することが目的である。本年度の結果より、骨代謝マーカー検査と歯周病原菌検査、CBCT デー タからの骨構造パラメーターとの相関性が示唆された。また基礎研究としては、微小領域 X 回折装置を用いて下顎 骨における生体アパタイト配向性の計測により、BMD との相関性が認められないことから、骨密度のみならず骨質 の評価も重要である事が示唆された。
2) エクソソームを用いた新規診断法の確立
エクソソームはいろいろな細胞から放出される直径 100nm 程の小胞で、それを放出した親細胞由来の遺伝情報 を含み、これを他の細胞へと伝達する能力をもつ。近年、エクソソームを介した細胞間コミュニケーションがいろい ろな疾患と関連している事が明らかとなりつつある。エクソソームはあらゆる体液に存在すると考えられており、唾 液も例外でない。非侵襲性、運搬する情報量の多さから、口腔領域でのエクソソームを用いた新規診断法の開発 の可能性に注目が集まっている。現在、上皮細胞由来のエクソソームを、がん悪性度との関連が示唆されている EpCAM 分子を指標として分離する方法の確立に取り組んでいる。
3) 治癒期間の短縮化と患者負担の軽減
治療期間の短縮化、患者負担の軽減化を目的として、抜歯後即時埋入、即時負荷等が行われているがの適応を 決定する為の一定の基準は報告されていない。本研究ではこれらの症例における術前の画像診断やインプラント埋 入時の力学的定量結果、組織学的所見を検討することで適応症となる一定基準を確定することを目的として検討を 行っている。また、通常より免荷期間が長くなる骨粗鬆症患者に対して治癒期間の短縮化を図るために、骨粗鬆症 モデルマウス(SAMP6)の骨欠損に対する低出力超音波パルス(LIPUS)の効果を検討したところ、骨形成の促進 傾向が認められた。
4) 老人性骨粗鬆症モデルマウス(SAMP6)におけるスタチン系薬剤の影響
加齢に伴う合併症の一つである老人性骨粗鬆症は、骨髄細胞から骨芽細胞への分化能が低下していることが 報告されている。一方、高脂血症治療薬の HMG-CoA 還元酵素阻害薬であるスタチン系薬剤が、骨形成タンパク
(BMP2)を発現させ、骨芽細胞の分化促進や骨粗鬆症患者への骨量増加に効果があることが示唆されている。し かしながら、スタチン系薬剤が老人性骨粗鬆症の骨治癒過程に対してどのような影響を与えるかは知られていない。
そこで当講座では老人性骨粗鬆症モデルマウス SAMP6 を用いて、骨髄細胞に対するスタチン系薬剤の分化促進へ の影響を検討している。
5) ジルコニアインプラントに関する基礎的ならびに臨床的検討
金属イオン溶出によるアレルギーの問題、埋入長期経過後に生じる部分的な腐食が進行や審美的な観点から、
チタンにかわる材料としてジルコニアが注目されている。本研究では、ジルコニアの表面形状の違いによる幹細胞、
骨芽細胞(MC3T3-E1)の増殖・骨形成能の評価や熱間等方圧加圧処理イットリア添加正方晶ジルコニアにおける 材料学的、力学的な評価を行っている。
6) チタンインプラント埋入時の免疫応答に関する研究
インプラント埋入のリスクファクターとして免疫応答(Th1、Th2、Th17A )がどのように関わるのか、細胞性免 疫優位(Th1 優位) C57.BL6 のマウスと体液性免疫優位(Th2 優位) BALB.c のマウスを用いて検討を行っている。
マウスから血液採取を行い、IL2, IL4, IL5, IL6, IL10, IL12, IL13, IL17A, IL23, INFγ, TNFα, TGFβ1 のサイ トカインを調べ全身的な評価を行っている。
7) 付着上皮、口腔粘膜上皮、インプラント周囲上皮における遺伝子発現の比較検討
インプラント周囲上皮において特異的に発現している遺伝子の同定がインプラント周囲上皮の恒常性・免疫機 構の解明に繋がると考えられ、物理的な封鎖性の強化のみならず炎症の発現に関連した遺伝子の発現抑制や自 然免疫機能の強化といった新たな治療法への応用が期待できる。当講座では網羅的に遺伝子発現を解析できる Microarray 法を用い付着上皮と比較しインプラント周囲上皮に特異的に発現している遺伝子の同定を行っている。
その結果、lpo,scgb1a1,gbp2 がインプラント周囲上皮に特異的に発現している遺伝子であることが明らかとなった。
今後はこれら 3 遺伝子がインプラント周囲上皮においてどのような働きをしているか検討をしていく予定である。
8) 咬合がインプラント・アバットメント連結部に及ぼす影響についての研究
インプラントの長期経過症例では様々な偶発症が生じており、補綴学的偶発症の中でもスクリューの緩みに関す るものは約 10%であると報告されている。本研究では臼歯部単独歯欠損において咀嚼中の咬合を想定し、インプラ ント・アバットメント連結部に及ぼす影響を検討することを目的としている。エクスターナルジョイントタイプの場合、
インプラント・アバットメント連結部に加わる力が大きくなるほどアバットメントスクリューの緩みが大きくなることが示 唆された。今後はインターナルジョイントタイプについても検討を行う予定である。
3. 学外共同研究
担当者 研究課題 学外研究施設
研究施設 所在地 責任者
矢島 安朝 唾液エクソソームによる口腔癌及び全 身疾患の診断法の確立
癌研究会癌研究所 東京都江東区 芝 清隆
4. 科学研究費補助金・各種補助金
研究代表者 研究課題 研究費
矢島 安朝 インプラント周囲上皮の口腔粘膜疾患に対するリス ク評価法の確立
文部科学省科学研究費補助金・基盤研究(C)
佐々木穂高 骨代謝マーカー検査で顎骨のBone Qualityを評 価する
文部科学省科学研究費補助金・若手研究(B)
佐々木穂高 スタチン系薬剤の局所投与は老人性骨粗鬆症の 骨質改善に有効か?
東京歯科大学学長奨励研究助成
5. 研究活動の特記すべき事項
受賞
受賞者名 年月日 賞名 テーマ 学会・団体名
吉田 光孝 2013.11.30 優秀理事長賞 エクソソームを用いた診断法の開発 第17回日本顎顔面インプラン ト学会
シンポジウム
シンポジスト 年月日 講演演題 学会・研究会名 開催地
古谷 義隆 2013. 8. 4 神経損傷に対するリカバ リー
日本口腔インプラント学会関東・甲信越支部 第4回学術シンポジウム
東京都 千代田区 古谷 義隆 2014. 2.23 薄膜HAコーティングインプラ
ントの選択
バイオインテグレーション学会 第4回学術 大会・総会シンポジウム
東京都 文京区
矢島 安朝 2014. 3.30 糖尿病患者のインプラント 医療をより安全に進めるには
第22回日本有病者歯科医療学会学術大会 学術教育研修会
東京都 千代田区 学会招待講演・特別講演・教育講演
演者 年月日 講演演題 学会・研究会名 開催地
矢島 安朝 2013. 9.14 専門医制度推進委員会セミナー国 民から信頼される口腔インプラント 専門医のあり方
第43回日本口腔インプラント学会学 術大会
福岡市
矢島 安朝 2013.10.13 インプラント外科における医療事 故 現状と対応
第58回日本口腔外科学会学術大会 福岡市
矢島 安朝 2013.11. 3 インプラント治療における全身管 理について
日本口腔インプラント学会 東北・北 海道支部総会学術大会
弘前市
矢島 安朝 2014. 2. 9 高齢者に対するインプラント治療 健康長寿につながるインプラント
日本口腔インプラント学会第33回関 東・甲信越支部学術大会
東京都 新宿区 学術学会に相当しない団体が開催するセミナー・研究会・カンファレンス等における発表・講演
講演者 年月日 演題 会合の名称 開催地
矢島 安朝 2013. 4.13 インプラント医療を通して歯科医 療の未来を考える
社会的再評価構築のために
東京歯科大学同窓会山形県支部学術 講演会
山形市
矢島 安朝 2013. 6.15 インプラント医療を通して歯科医 療の未来を考える
社会的再評価構築のために
埼葛歯科医師会学術講演会 春日部市
矢島 安朝 2013. 7.11 インプラント医療を通して歯科医 療の未来を考える
社会的再評価構築のために
足柄歯科医師会 足柄郡
松田町
矢島 安朝 2013. 9.19 インプラント医療を通して歯科医 療の未来を考える
社会的再評価構築のために
東京歯科大学同窓会目黒支部 東京都 目黒区
矢島 安朝 2013. 9.20 インプラント手術の医療事故を通 して歯科医療の未来を考える
東京歯科大学同窓会日本橋支部あ ゆ会
東京都 千代田区 古谷 義隆 2013.10.20 薄膜HAコーティングインプラント
BiO長期経過報告
プラトンセミナー2013 東京都 千代田区 矢島 安朝 2013.10.26 失敗症例から学ぶインプラント治
療ガイドラインの重要性
東京歯科大学同窓会北多摩支部学 術講演会
多摩市
矢島 安朝 2013.11. 9 インプラント医療を通して歯科医 療の未来を考える
東京歯科大学同窓会東京地域支部連 合会城西ブロック総会
東京都 千代田区 矢島 安朝 2013.11.23 インプラントバッシングにどう対応
するか 社会的評価再構築のた めに
長崎大学同窓会 長崎市
矢島 安朝 2013.12. 7 インプラント医療を通して歯科医 療の未来を考える
社会的再評価構築のために
東京歯科大学同窓会愛媛県支部講 演会
松山市
矢島 安朝 2014. 1.27 インプラント医療を通して歯科医 療の未来を考える
東京医科歯科大学同窓会九州支部 福岡市