• 検索結果がありません。

72

本 研 究 では、慢 性 腎 臓 病 患 者 に対 して、米 飯 時 の洗 米 方 法 の検 討 からリ ンおよびカリウムの低 減 による継 続 可 能 で効 果 的 な食 事 療 法 を構 築 すること を目 指 し、洗 米 によるリンおよびカリウムを効 果 的 に洗 出 する洗 米 方 法 を検 討 した結 果 、下 記 のことが明 らかとなった。

超 高 齢 化 社 会 を迎 える日 本 にとって、医 療 や福 祉 の費 用 の負 担 増 加 が予 想 される。中 でも透 析 医 療 費 をどう適 正 化 するかは今 後 の政 策 課 題 のひとつ になることが予 想 される。透 析 患 者 の年 間 医 療 費 は一 人 当 たり 500 万 円 とも 言 われ、他 国 では高 齢 者 透 析 の保 険 適 応 を制 限 しているところもある。そのた め、今 後 、透 析 患 者 に対 する生 活 習 慣 の改 善 、栄 養 指 導 、服 薬 指 導 の患 者 教 育 が重 要 となると思 われる。

CKD 患 者 に対 する食 事 療 法 のひとつとして、低 たんぱく米 や低 たんぱくパ ンの治 療 用 特 殊 食 品 の利 用 を勧 めることがある。しかし、地 方 の農 村 地 域 に おいて、米 は自 作 米 を摂 取 し、または縁 故 米 の購 入 で安 価 に米 を入 手 するこ とが出 来 るため、高 価 な治 療 食 の購 入 には至 らないことが多 い。また、高 齢 者 にとっての経 済 的 負 担 は大 きく、継 続 使 用 は困 難 に思 われる。

そこで、第 1 の研 究 では、洗 米 によって、米 に含 まれるリンおよびカリウムを 低 減 するために、洗 米 時 間 および洗 米 回 数 を検 討 した。その結 果 、米 中 のリ ンおよびカリウムを低 減 させるための洗 米 方 法 は 1 回 の洗 米 時 間 を 20 秒 間 と し、手 でかき混 ぜ、5 回 水 を取 り換 えることであり、 それによって米 中 のリンは 50%、カリウムは 46%低 減 することができた。

第 2 の研 究 では、米 中 のリンおよびカリウムを低 減 させるための必 要 な洗 米 時 間 と回 数 に加 え 、洗 米 に使 用 する水 量 がリンおよびカリウムの洗 出 する量 に影 響 を与 えるかどうかを検 討 した。米 に対 して 1.5 倍 の水 量 で洗 米 した場 合 は、洗 米 1 回 目 の濃 度 の高 い研 ぎ汁 が米 に残 存 し、次 の回 数 に洗 出 される ため、洗 米 回 数 を重 ねても十 分 に洗 出 されないことが考 えられた。 2、3、4 倍

73

群 では 5 回 洗 米 時 のリンおよびカリウムの残 存 率 の比 較 において、残 存 率 に 差 がなかった。したがって、少 量 の水 での研 ぎ洗 いは、効 果 的 にリンおよびカ リウムが洗 出 されていないことがわかり、米 に対 して 2 倍 以 上 の水 量 で洗 米 を 行 った場 合 は、リンおよびカリウムの残 存 率 に差 はなく、洗 出 効 果 に大 きな差 はみられなかった。よって節 水 や調 理 の手 間 を考 慮 し、米 中 のリンおよ びカリ ウムを低 減 させるための効 率 のいい洗 米 方 法 は米 に対 して 2 倍 量 の水 量 で、

1 回 の洗 米 時 間 を 20 秒 間 とし、手 でかき混 ぜ、水 を 5 回 取 り換 えることである ことが示 唆 された。

第 3 の研 究 では、上 記 のような米 中 のリンおよびカリウムを低 減 するための 洗 米 方 法 について高 リン血 症 の CKD 患 者 7 名 に指 導 し、血 清 リン値 および 血 清 カリウム値 に影 響 を及 ぼすかを検 討 した。また、米 中 のリンおよびカリウム への意 識 の変 化 、リンおよびカリウム低 減 を意 識 した 5 回 洗 米 が実 施 できたか、

5 回 洗 米 は継 続 可 能 な食 事 療 法 か、洗 米 回 数 、洗 米 時 間 を問 うアンケート調 査 を実 施 し、超 高 齢 化 した CKD 患 者 にも対 応 可 能 な継 続 可 能 であり、かつ 簡 便 な食 事 療 法 であるかどうかを、検 証 をした。 その結 果 、CKD 患 者 におい て 、 洗 米 指 導 後 の 血 清 リ ン 値 は 指 導 10 週 間 後 で 10.5 % 、 14 週 間 後 で 10.6%、および 16 週 間 後 で 17.5%の有 意 な低 下 (p<0.05)を認 めた。しかし、

血 中 尿 素 窒 素 および血 清 カリウム値 、栄 養 状 態 の指 標 である血 清 アルブミン およびヘモグロビン値 は、指 導 前 後 で差 は認 められなかった。また、患 者 アン ケートの結 果 、継 続 可 能 な簡 便 な食 事 療 法 であるとの回 答 が 100%であった。

この 5 回 洗 米 食 事 療 法 は治 療 用 特 殊 食 品 に比 べ、経 済 的 負 担 が少 なく、日 常 の家 事 の範 囲 内 で行 われている洗 米 を丁 寧 に行 い、調 理 作 業 としての負 担 の 少 ない簡 便 な食 事 療 法 であり、実 用 的 であり、かつ有 用 であることが示 唆 された。

以 上 のことから、CKD 患 者 に対 する洗 米 方 法 の指 導 は、米 に対 する水 量

74

を米 の 2 倍 量 注 ぎ入 れた後 、手 で 20 秒 間 かき混 ぜ、水 を取 り換 える作 業 を 5 回 繰 り返 すことであった。それによって米 中 のリンを 50%、カリウムを 46%低 減 させることができ、経 口 からの米 中 のリン量 およびカリウム量 を低 減 させ、血 清 リン値 の低 下 につながったことが示 唆 された。

透 析 施 設 には常 勤 の栄 養 士 が不 在 の場 合 も多 く、十 分 な食 事 療 法 を受 け ることができない患 者 も多 くみられる。本 研 究 で得 られた 5 回 洗 米 食 事 療 法 は 栄 養 士 のみならず、医 師 、看 護 師 、臨 床 工 学 士 、透 析 に携 わるすべてのスタ ッフにおいて指 導 内 容 が簡 便 であることから、CKD 患 者 への指 導 が容 易 であ ると考 える。また、CKD 患 者 またはその家 族 も洗 米 経 験 は誰 にでもあり、リンお よびカリ ウムを 低 減 させるた めの調 理 の工 夫 とし て、直 ぐに実 行 可 能 であり、

簡 便 であることから継 続 可 能 な食 事 療 法 である。

患 者 ひとりひとりが食 事 療 法 に取 り組 むことによって、経 口 からのリンおよび カリウム量 を減 らすことができるため、5 回 洗 米 食 事 療 法 の実 施 は、透 析 関 連 薬 剤 増 加 抑 制 に貢 献 できることが期 待 される。 また、医 療 関 係 者 は、日 本 国 内 の現 在 31 万 人 の透 析 患 者 に対 して日 々の洗 米 調 理 作 業 においてリンお よびカリウム低 減 を意 識 した指 導 を行 い、毎 日 食 する米 からのリンおよびカリウ ムを低 減 させ、国 の医 療 費 の適 正 化 に向 けた 努 力 をする必 要 があると考 えら れた。

この 5 回 洗 米 食 事 療 法 は、食 事 管 理 に対 し怠 慢 になる傾 向 のある長 期 透 析 患 者 において、毎 日 行 う洗 米 を介 し、食 事 管 理 に対 する意 識 の醸 成 がなさ れ、継 続 的 な自 己 管 理 が可 能 になると思 われる。

CKD は全 世 界 で増 加 傾 向 である疾 病 である。米 を食 する民 族 は日 本 だけ でない。近 年 は日 本 食 ブームもあり、世 界 的 に米 を摂 取 する機 会 も増 えてい ることが想 像 でき、米 の摂 取 頻 度 や摂 取 量 も増 えていると思 われる。水 問 題 を 抱 える国 々も多 く、十 分 に洗 米 を行 わずに食 していることも 推 察 される。また、

75

洗 米 を行 わずに料 理 するパエリア、ピラフなどを頻 繁 に摂 取 している民 族 もい る。CKD 患 者 が制 限 しなくてはならないリンやカリウムが米 糠 に多 く偏 在 するこ とを世 界 に発 信 し、CKD 患 者 のための 5 回 洗 米 食 事 療 法 の必 要 性 を強 く訴 えていきたいと考 える。

さらに、この簡 便 で継 続 可 能 なリンおよびカリウムを低 減 できる 5 回 洗 米 食 事 療 法 を、現 場 で働 く管 理 栄 養 士 を始 めとする医 療 関 係 者 に CKD の食 事 療 法 として、浸 透 させて行 きたいと思 う。

76

参 考 文 献

1)John H. Dirks,Didk de Zeeuw, Sanjay K. Agarwal, Robert C Atkins, Ricardo Correa-Rotter, Giuseppe D`Amico, Peter H. Bennett, Meguid El Nahas, Raul Herrera Valdes, Dan Kaseje, Ivor J Katz, Sarala Naicker, Bernardo Rodriguez-Iturbe, Arrigo Schieppati, Faissal Shaheen , Chitr Sitthi-Amorn, Kim Solez, Giancarlo Viberti, Giuseppe Remuzzi, and Jan J.

Weening, on Behalf of the International Society of Nephrology Commission for the Global Advancement of Nephrology Study Group2004.

Prevention of chonic kidney and vascular dis ease:Toward global health equity ― The Bellagio 2004 Declaration. Kidney International 2005;

68,Suppl98:1-6.

2)社 団 法 人 日 本 腎 臓 病 学 会 .CKD 診 療 ガイド 2012.東 京 ;東 京 医 学 社 , 2012;1-21.

3)今 井 圓 裕 .改 訂 3 版 やさしい慢 性 腎 臓 病 の自 己 管 理 .大 阪 :医 療 ジャー ナル社 , 2012;22-28.

4)日 本 透 析 医 学 会 統 計 調 査 委 員 会 .図 説 わが国 の慢 性 透 析 療 法 の現 況 2013 年 12 月 31 日 現 在 .東 京 :日 本 透 析 医 学 会 ,2013;2-29.

5)高 橋 進 .慢 性 腎 不 全 対 策 と医 療 費 問 題 .日 本 透 析 医 学 会 雑 誌 2008;

23:362-373.

6)太 田 圭 洋 .特 集 腎 代 行 治 療 (RRT)のイノベーション 医 療 経 済 から見 た RRTイノベーション.臨 牀 透 析 2008;24:723-729.

7)小 椋 正 立 .健 康 診 断 の検 査 は医 療 費 の予 測 に有 効 か.医 療 と社 会 2004;

14:147-173.

8 ) 湯 村 和 子 . 新 腎 不 全 ・ 透 析 患 者 指 導 ガ イ ド . 東 京 : 日 本 医 事 新 報 社 , 2012;2.

77

9 ) 湯 村 和 子 . 新 腎 不 全 ・ 透 析 患 者 指 導 ガ イ ド . 東 京 : 日 本 医 事 新 報 社 , 2012;3.

10)今 井 圓 裕 .改 訂 3 版 やさしい慢 性 腎 臓 病 の自 己 管 理 .大 阪 :医 療 ジャー ナル社 ,2012;10-12.

11) 湯 村 和 子 . 新 腎 不 全 ・ 透 析 患 者 指 導 ガ イ ド . 東 京 : 日 本 医 事 新 報 社 , 2012:;8-9.

12)門 川 俊 明 .レジデントのための血 液 透 析 患 者 マネジメント第 2 版 .東 京 : 医 学 書 院 ,2015;1-54.

13 ) 湯 村 和 子 . 新 腎 不 全 ・ 透 析 患 者 指 導 ガ イ ド . 東 京 : 日 本 医 事 新 報 社 , 2012;56-59.

14 ) 湯 村 和 子 . 新 腎 不 全 ・ 透 析 患 者 指 導 ガ イ ド . 東 京 : 日 本 医 事 新 報 社 , 2012;102-103.

15)日 本 の将 来 推 計 人 口 (平 成 14 年 1月 推 計 )

http://www.ipss.go.jp/pp-newest/j/newest02/4/ref_z2.html

16)中 元 秀 友 .末 期 腎 不 全 患 者 の透 析 導 入 基 準 と腹 膜 透 析 導 入 の意 義 ― 慢 性 腎 臓 病 (CKD)治 療 において総 合 医 の果 たす役 割 ―.東 北 腎 不 全 研 究 会 誌 2009;19:14-18.

17)全 国 腎 臓 病 協 議 会 .2011 年 度 血 液 透 析 患 者 実 態 調 査 報 告 書 .東 京 :

(社 ) 全 国 腎 臓 協 議 会 (公 ) 日 本 透 析 医 学 会 ,( 財 ) 統 計 研 究 会 , 2012 ; 3-5.

18)宮 地 武 彦 , 加 藤 明 彦 .特 集 高 齢 患 者 への看 護 実 践 ―認 定 ・指 導 看 護 師 からの報 告 . 臨 牀 透 析 2008;24:1491-1498.

19)杉 崎 弘 章 ,太 田 圭 洋 ,山 川 智 之 ,山 崎 親 雄 .実 態 調 査 透 析 患 者 の高 齢 化 ・長 期 化 による問 題 点 と透 析 提 供 体 制 に関 する将 来 予 測 ―アンケー ト調 査 ―.日 本 透 析 医 学 会 雑 誌 2013;28:80-93.

関連したドキュメント