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恩師山本安次郎先生   ~先生の教えを心に留めて~

        一   柳   善   郎

(大

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「つくられるものがつくるものをつくる」。

  山本先生が静かに語られたこの言葉は、生涯忘れることのできない一言であった。西田幾多郎博士のこの言葉が、山本先生の経営哲学「行為的主体存在論」の原点であることを知る由もない学生に対して、優しく「彫刻家と彫像」との関係として解説され、学生達の理解を深めさせようとご努力されていたお姿を、今も鮮明に記憶している。

  大学を卒業後、名古屋市に就職し配属されたのが水道局であった。水道事業は、地方公営企業として、独立採算制の下で水道事業経営を行っており、全ての費用を原則水道料金により賄うこととされている。既に高度成長期を迎えていた日本経済の下で、膨張する水需要に対処するため、全国の水道事業者は巨額の設備投資を行い、その結果、原価の高騰、水道財政の悪

化、そして水道料金の改定という悪循環に遭遇していた。一般に、水道料金を含む公共料金の改定は、「総論賛成、各論反対」が常態である。水道局在任の

30年間に、

著書を開いて解決策を模索すること、屡々であった。 を求められたとき、あるいは二者択一を迫られたときには、常に基本に立ち返り、山本先生の 験し、敢えて火中の栗を拾わねばならない事態にも幾度となく遭遇してきた。難しい経営判断 10回の料金改定を経

  平成

23年3月

れた事業と企業との明確な区分に基づく理論展開の必要性を強く感じている。 業に携わる一人として、経営客体と経営主体とを混同する議論は許されず、山本先生の主張さ それぞれの公益事業には官公庁・民間という経営主体が実存している。公営企業である水道事 道事業は、公益事業学会の規約に定める「日常不可欠な用役を提供する一連の事業」であり、 業」と経営の主体としての「企業」とは、明確に区別されるべき概念である。電気・ガス・水 であるため発生した事故であるが如くに、論じられていた。本来、経営の客体としての「事 究明が調査進展する過程で、一部の報道機関や研究者等においては、恰も電力会社が民間企業 11日に発生した東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所事故の原因   東日本大震災の余波が残る平成

らず、未だ明確な理論構築には至っていないとき、山本先生の著書「経営学本質論」に出会 専門家と懇談する機会があった。この専門家によれば、長期にわたる公益事業研究にもかかわ 24年の秋に、公益事業学会員で某銀行系シンクタンクの経営

い、初めて公益事業の理論体系を確立することが可能となった、との話を聞くことができた。山本ゼミ出身者としてこれほどの喜びはなく、改めて

の誇りを、心密かに味わうことができた。 50年間山本理論とともに生きてきたこと   古稀をすぎた現在も、某精密機械製造会社に籍を置く一方、公益事業学会にも参加して、常に新鮮な情報の収集と更新に努めている。今後とも、山本先生の教えを心の糧、そして判断基準の基本として、大切に守っていきたいと思っている。

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