第 3 章 参考文献
4.2 従来方式
ここではまずMobile IP[2]のネットワーク構成および動作を示す.次に本研究に おける従来方式であるNeighborCasting方式[4]およびFASTMIP方式[5]について 説明する.
4.2.1 ネットワーク構成
Mobile IPネットワークは以下の端末により図4.1のように構成される.
• 移動端末MN(Mobile Node)
第4章 Mobile IPにおける位置情報を用いた低レイテンシなハンドオフ方式 85
Internet
HA FA
CN
MN MN
Forwarding to MN Data
図 4.1: Mobile IPのネットワーク構成図
• ホームエージェントHA(Home Agent)
• フォーリンエージェントFA(Foreign Agent)
• 固定端末CN(Correspondent Node)
MNがFAのセル内に移動した場合,MNはFAのアドレスCoA(Care-of-Address)を HAに登録し,HAがMN宛てのパケットを外出先のFAに転送することで,送信端 末CNから見てMNが存在する場所に関係なく,同じIPアドレスで通信することが 可能になる.
4.2.2 移動端末の登録
Mobile IPでは,MNが外出先のFAのセル内に入った場合,FAのアドレスCoA をHAに登録する.具体的な手順は以下の通りである.
1. FAはTadv[msec]おきにAgent Advertisement(ADV)メッセージをブロードキャ スト
2. ADVメッセージを受信したMNは,FA宛てにRegistration Request(REQ)メッ セージを送信
第4章 Mobile IPにおける位置情報を用いた低レイテンシなハンドオフ方式 86
MN Previous FA New FA
HA Handoff is
detected by L2 HNTFY
FACK ARP Req.
ARP Rep.
Forwarding Start
ADV
REQ
REP
Enter the area of New FA
Handoff Latency L2 Handoff
Latency
Forwarding End
FNTFY
図 4.2: NeighborCasting方式におけるハンドオフの手順
3. REQメッセージを受信したFAは,そのREQメッセージをHAに転送
4. HAはMNのCoAを記録
5. HAはFA宛てにRegistration Reply(REP)メッセージを返信
6. REPメッセージを受信したFAは,そのREPメッセージをMNに転送
7. REPメッセージを受信したMNは,HAへの登録の完了を確認
MNが新たなFAのセル内に入った場合,新たなFAからのADVメッセージを受信後 にHAへの登録を行なう.従って,FAにおけるADVメッセージ送信間隔Tadvを小 さく設定することで,ハンドオフレイテンシを短縮することができる.しかし,Tadv
を小さく設定すると無線チャネルにおけるオーバーヘッドが大きくなってしまう.
4.2.3 NeighborCasting 方式
Mobile IPにおいてハンドオフレイテンシ特性を短縮する方式として
Neighbor-Casting方式[4]が提案されている.図4.2にNeighborCasting方式におけるハンド オフ手順を示す.各FAは周辺FAのアドレスを事前に交換し,以下の手順でハンド
第4章 Mobile IPにおける位置情報を用いた低レイテンシなハンドオフ方式 87 オフを行う.
1. MNはL2でハンドオフを検出し,移動元FAにハンドオフ通知(HNTFY)メッ セージを送信
2. HNTFYメッセージを受信した移動元FAは,全ての周辺FAにパケット転送通
知(FNTFY)メッセージを送信
3. FNTFYメッセージを受信したFAは,パケット転送確認(FACK)メッセージを
返信
4. FACKメッセージを受信した移動元FAは,すべての周辺FAにパケット転送を
開始
5.転送パケットを受信した周辺FAは,ARP(Address Resolution Protocol)によ りMNが自セル内に入ったことを確認しMNにパケットを送信
6.移動先FAは定期的にADVメッセージを送信し,MNはMobile IPと同様の手 順で移動先でのアドレスをHAに登録
NeighborCasting方式は,ハンドオフ検出時に全ての周辺FAにハンドオフを通知し,
さらにパケット転送を開始するため,セルのオーバーラップしない環境においても ハンドオフレイテンシ特性を改善できる.しかし,NeighborCasting方式では,ハ ンドオフ期間中において周辺FAの全てにパケット転送することにより有線ネット ワークの負荷が増大する.
4.2.4 FASTMIP 方式
FASTMIP方式[5],[6]では,各FAはGPSを備え,周辺FAのアドレスおよび位 置情報を交換する.FASTMIP方式では,一つのドメイン内の複数のFAを管理する ドメイン管理ルータが設置される.そのドメインに到着した全てのパケットはまず ドメイン管理ルータが受信する.ドメイン管理ルータは到着したパケットをMNが 接続しているFAおよびその全ての周辺FAに複製し転送する.周辺FAは転送され
第4章 Mobile IPにおける位置情報を用いた低レイテンシなハンドオフ方式 88 たパケットをバッファに格納し,MNの登録が完了後に送信する.さらに,FAだけ でなくMNにもGPSを搭載することでパケットの転送先を限定し,有線チャネルの 負荷を軽減できることが示唆されている.しかし,FASTMIP方式においては,ハ ンドオフに関係なく常にパケット転送を行なうため,有線チャネルにおける負荷の 低減効果は小さい.また,ハンドオフに関してはMobile IP方式と同様の特性しか 得られない.