ADCP
直下からのビーム射出角度が 60 度で 2.6% 程度以内であった(及川ほか, 2010 )。
また、及川ほか(
2010)と同様の手法で、実際の測深データによる不確かさを評価した例 を図
3に示す。比較的海況が良く、平坦な海底面の調査結果を用いて、船の直下からのビー ムの射出角度毎に不確かさを評価すると、及川ほか(2010)と同様に、直下からの角度が高 角度側ほどデータの不確かさが大きいが、概ね
55度以内で拡張不確かさは
0.5%(約
25 m)以下であった。また、直下の両側
3度程度で若干不確かさが大きいが、直下水深の拡張不確 かさは
0.1%(約
5 m)であった。ただし、同一航海の同一測線での評価であるため、バイア スや潮汐等の不確かさはここでの評価には含まれない。
図
3海洋地球研究船「みらい」でのマルチビーム測深機による測深データの不確かさ評価 の例。青丸は水深、赤三角は相対拡張不確かさ(標準偏差の
2倍)を表す。
そこで、海底直上まで実施した
CTD観測データを用いて、測深データを検証する。水圧 測深による海面から海底までの距離
Dpは、静水圧近似により、
Dp = ∫0������1�� + Alt
(
3)
として求めることができる。ここで、
pは圧力、
ρは海水密度、
gは重力加速度、
pmaxは
CTDの最大圧力、および
Altは
CTDの最大圧力における
CTDから海底までの距離を表す。通常、
Alt
は
CTDに取り付けた音響水中高度計による音波往復時間の測定値、あるいは
CTDフレー
ムに取り付けた音波発信機(ピンガー)と船舶の音波受波器を用いて求める。
CTDデータか
ら求めた水深(式(
3)の右辺第
1項)と
CTDのケーブル長が同程度の測点において、音響
測深による直下水深と比較する(表
1)。両者の差は最大
0.13%程度であり、測深データによ
る直下水深の不確かさの見積もり(
0.1%)と同程度の大きさであった。測深データの精密な
検証は、データ処理プログラムの不具合等予期しない問題点の発見に有用である。
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海洋観測ガイドライン Vol. 7 Chap. 3 水深 ©内田裕・末吉惣一郎2016 G703JP:001-008
表
1海底直上までの
CTD観測による水圧測深と、マルチビーム測深機による音響測深(直 下水深)の比較。水圧測深は式(
3)から、音響測深は
CTDデータから求めた平均音速を用 いて式(
2)から求めたものに喫水補正(
6.6 m)を施したもの。海洋地球研究船「みらい」
MR12-05
レグ
3航海の例。
測点名 ケーブル長
(m)CTD
水深
(m)CTD
から 海底までの 距離 (m)
水圧測深
(m)音響測深
(m)音響測深 の誤差
(m)S04I 93 4396 4395 8 4403 4406 3
S04I 94 4414 4416 9 4425 4424 −1
S04I 115 2937 2935 9 2944 2944 0
S04I 116 3934 3934 7 3941 3942 1
S04I 144 4748 4747 9 4756 4762 6
S04I 151 4834 4833 9 4842 4847 5
5
、データの管理
観測船による水深の調査(特にマルチビーム測深)では、非常に大量のデータが蓄積され る。そのため、処理の段階で分類した以下のデータを適切に管理する必要がある。
a)
生データ
補正前の測深データに加えて、補正に必要な音速プロファイル等の付随データ。将来の再 編集や再較正の可能性に備えたもので、観測日誌等のドキュメントを含む。
b)
編集・較正データ
必要な補正やノイズ除去等を施した編集・較正データ。
c)
格子データ
編集・較正データを元に、水平方向に適当な間隔の格子上に内挿しデータを間引いた格子 データ。
d)
メタデータ
メタデータには、最低限以下の項目を記載する(
International Hydrographic Organization, 2008)。
・ 調査概要(目的、日時、海域、使用装置、使用船舶等)
・ 測地基準系(水平・鉛直基準面と、それらの国際地球基準座標系
[ITRS]との関係)
・ 較正方法と較正結果(喫水補正、動揺補正)
・ 音速補正
・ 水深基準面(潮汐補正)
・ 不確かさと信頼区間
・ 特記事項
・ データの間引き方法
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、マルチビーム測深データのノイズ除去と格子データの作成
マルチビーム測深機で得られる生データには、様々な要因により異常値が含まれる。これ らの異常値を除去するためのデータ処理ソフトウェアが、測深機メーカーや海図測量用ソフ ト ウ ェ ア 会 社 か ら 提 供 さ れ て い る ( 例 え ば カ ナ ダ
Caris社 製
HIPSソ フ ト ウ ェ ア
[http://www.caris.com]
)。一般的には、船首方向と直交する地形断面を時系列として表示し、
スワス両端の不自然な水深変化やスパイク状のノイズを目視で検出・削除する。この方法は 確実なデータ編集方法であるが、調査海域が広範囲にわたる場合や浅海域ではデータ量が膨 大になるため編集に非常に時間がかかり、また、削除する基準が編集者の判断に依存するこ とが問題となる。使用するマルチビーム測深機の仕様(測深精度等)を元に、削除する測深 データの目安(調査海域の水深を元に何メートル以上の水深変化を削除対象にする等)をデ ータ編集者間で決めておくことが重要である。
測深機で得られる生データは、水深の空間変化や航走速度の変化などにより、データの空 間間隔にばらつきが生じるため、空間的に等間隔な格子データを作成することが多い。格子 データを作成する際の留意点として、格子間隔、および格子データを作成する際の測深デー タの採用方法がある。測深機による生データの時空間間隔は発信する音波の時間間隔(ピン グレート)、および航走速度に依存して変化する。例えば水深数十
mの浅海では
Hz単位で 測深データが得られるが、数千
mの深海では数十秒で1つの測深データしか得られない場合 もある。通常、ピングレートは、水深、およびスワス角に基づいて測深機により自動的に決 定される。そのため調査海域におけるピングレート、および航走速度から測深データ間隔を 求め、そのデータ間隔に対応した格子間隔を設定する。格子データの作成に使用する測深デ ータの一般的な採用方法は、格子点を中心に一定範囲(
3×3、または
5×5の格子点範囲)に 存在する各測深点までの距離に応じて重みを付ける方法である。また、マルチビーム測深で はスワス中央部分に比べて両端部分の誤差が大きいので、スワス角度に応じて重みを付ける 場合もある。
測量水深調査などの浅海域でのマルチビーム測深データの処理には、各センサーの不確か さ 情 報 を 元 に 格 子 点 で の 水 深 値 を 周 囲 の 測 深 デ ー タ か ら 推 測 す る
CUBE (Combined Uncertainty and Bathymetry Estimator)アルゴリズム(
Calder, 2003)が主流になりつつあり、前
述の
Caris社製
HIPSソフトウェアでも利用可能である。
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海洋観測ガイドライン Vol. 7 Chap. 4 海上気象 ©中野俊也2015 G704JP:001-141
海上気象
○中野俊也(気象庁 地球環境・海洋部)
気象業務は、国際協力のものに成り立っており、船舶における気象観測とその結果を収集することは、
予報や暴風雨警報の発表を通じて、自船だけでなく他の船舶の安全航行に役立つ。日本における気
象業務を行っている気象庁は、船舶に気象観測測器を備え、観測を行い、観測結果を報告することを 義務付けている。本章は、気象庁が刊行した「船舶気象観測指針(改訂第7版)」(2013)による。
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