1.観光都市ひろしまに求められる機能
広島経済同友会では,2003 年 3 月に「提言 観光都市ひろしまに求められる機能」を代表幹事 名にて公表している。これは「広島都市圏の観光入込客年間 1,500 万人を実現させる会(略称 1500 万人委員会)」の創設にあたり,何が必要で,何に優先順位をもって取り組むべきかを提言したも のである。この中で今後取り組むべき対策として挙げられている項目は,以下のとおりである。
①現状を危険水域と認識し県,市,商工業者一体となって危機意識を共有する ②観光振興は,広域的に連携し,他の政策に優先する意識改革を
③観光振興の施設での営業運営は民間にゆだねる ④整理すべきイベントとしての「祭り」
⑤急務な都心部の観光振興施設の入り込み客数の改善 ⑥広島観光コンベンションビューローの体力,戦力アップ ⑦入り込みのきっかけとなるイベントの提案
これらの提言は,広島経済同友会の会員が観光振興方策を考え,また,1,500 万人の来訪者実 現のために意識し,かつ実行していくべき内容となっている。地域経済委員会では,これらの主 旨を踏まえた上で,各種イベントや代表的な観光地における経済効果について定量的に分析を行 うとともに,関係する委員会へのアンケート調査やヒアリング調査などから得られた結果をもと にして,広島経済同友会会員も含めて,観光に携わる行政,関係機関・団体等において,今後の 広島県の観光振興に向けて取り組むべき内容を次項に取りまとめた。
2.経済効果からみた観光振興のあり方
(1)イベントの効果を最大限発揮させることにより観光客数の増加に取り組むこと
イベントの開催により観光客数(宿泊者も含めて)が増加し,地域への経済波及効果や雇用誘発 効果が大きいことから,イベントは観光振興策の目玉とされている。しかし,これまでのイベン トの結果を見ると,観光客の増加は一過性にとどまっているケースが多い。
このため,広島県の大型観光キャンペーンにおいても,開催期間中は計画どおりの観光客数を 確保する必要がある。また,本キャンペーンやイベントの終了後もリピーターの確保や口コミな どによる新たな観光客の増加に知恵を集めることが重要である。さらに,イベント終了後にリピ ーターなどの確保が見込まれないことがイベント開催前に予想されるのであれば,後年度に負担 を伴うことが少ないイベント内容とするなど,イベントの企画力が重要となる。
(2)魅力ある食・土産などを開発することにより観光消費の増加に取り組むこと
観光客数が増加しても,地域にお金が落ちなければ経済波及効果は限定的となる。観光客数の 増加が地域の産業活動(コミュニティ・ビジネスも含めて)に結び付くことが重要である。
このため,地域の特色を活かした魅力的な食事,飲料,土産品に加え,体験なども提供するサ ービスの開発をこれまで以上に行うことが,観光消費の増加にとって重要となる。
今回の広島県の大型観光キャンペーンでは,前項(1)の観光客数の増加とともに,本項の観 光客の消費単価増も見込んでいる。この実現の一方策として,本キャンペーン事業において,新 しい土産品や食事メニューの開発コンクールなどを実施することを通じて広くアイディアを募る 仕掛けが必要である。
(3)イベントなどに関連する都市型サービス産業の育成に取り組むこと
観光とは一見無縁のようであるが,イベントにおいてはソフト部分にあたる企画,デザイン,
設計,広告などが観光客を集めるツールとして不可欠な要素になっている。イベントの経済効果 を広島県内にとどめる(県外に流出させない)ためには,上記のようないわゆる都市型サービス産 業が県内,中でも都市部に集積していることが条件になる。
広島県,広島市とも高次都市機能の充実強化を施策に掲げ,その実現方策として都市型サービ ス産業の振興などに取り組んでいるところであるが,今後とも観光振興も視野に入れた施策の一 層の充実が望まれる。同時に,この分野の産業は首都圏一極集中が進んでいることから,ある程 度の経済効果が流出してしまうことはやむを得ないが,今回の大型観光キャンペーンでのイベン トなどを契機として,県内企業・産業の育成・支援に視点を置いた施策がより必要となる。
3.アンケート・ヒアリング調査等からみた観光振興のあり方
(1)観光資源に磨きをかけるとともに,広域連携に取り組むこと
県内には,世界遺産の原爆ドームや厳島神社のほかにも,酒都西条の酒蔵通り,竹原の伝統建 物群,呉に新しく作られる大和ミュージアム,福山の鞆のまちなみ,尾道の寺めぐり,三次のワ イナリーや古墳群,三原の筆影山からの瀬戸内海の眺望など,有力な観光資源が多数存在する。
しかし,いずれも観光に必要な時間は1〜2時間程度で済むことから,単独の観光資源としては 限界があり,観光地としても通過型にとどまっているというのが共通の認識である。
このため,前述の「提言 観光都市ひろしまに求められる機能」における②の提言と重複する が,広島都市圏と周辺の集客能力を持つ地域との連携したモデルコース作りを行うことにより,
都市間の広域連携を実現することが必要である。今回の広島県の大型観光キャンペーンや広島市 の「ひろしまビジターズ・インダストリー(VI)戦略」などを契機として,野球,サッカー,コン サートなどのイベント内容の向上や,個々の観光資源に歴史・文化などの背景も組み合わせ,見 せ方も含めて磨きをかけるとともに,一層の連携を促進していくことが重要である。また,事業 者によるこのような取り組みに対して,広島県を中心に各市町などが協力していく必要がある。
さらに,県境を越えた中国地域内での広域連携については,中国経済連合会などが中心となって 活動している中国地域観光推進協議会における広域観光ルート商品の開発成果等も活用しながら,
関係者が連携していくことが必要である。
(2)「広島ブランド」の確立を図ること
近年,関鯵・関鯖に代表されるように地域の名前を冠したブランド産品がマーケットにおいて
威力を発揮している。広島市のVI戦略においても,食の特産品ブランド化を掲げ,お好み焼,牡 蠣,黒鯛(チヌ),小いわし,広島菜漬などを全国的に知名度を持つブランドとするための取り組 みを進めることとしている。この他にも,めばるほか瀬戸の小魚の煮付け,おこぜの唐揚,全国 の駅弁の中でも人気が高いあなご飯などは,広島県を代表する食文化であり,来訪者への接待の ポイントとなるものと考えられる。特産品の開発については,関鯵・関鯖に匹敵するような,広 島に行かないと手に入らない,味わえない,体験できないなどといった「広島ブランド」を確立 することが重要である。
このため,広島県においても大型観光キャンペーンを契機として,ブランド確立のための専任 部署を設置し,各市町や事業者と一体となって「広島ブランド」品の実現を推進していく必要が ある。また,広島県の施策では,韓国・台湾を主要ターゲットに観光地「ひろしま」の知名度向 上を図ることが掲げられている。他地域では,地域名そのものがブランドとなり成功している温 泉地などがあるように,広島も世界に通用している「平和都市ひろしま(ヒロシマ)」ブランドを 一層活用していくことを基本としつつ,例えば,宮島については,外国人,特に欧米からの観光 客は宮島を観光地としてよりもリゾート地として見ることから,瀬戸内海と一体となったリゾー トとしてのブランドを確立していくという方法もある。また,宮島の弥山は冬でも安全に登れる ことから,中高年に好まれている登山やハイキングの対象として登山ブランドとすることも有望 と考えられる。
このほか,スポーツ面からは,カープ,サンフレッチェ,都道府県対抗男子駅伝などがあり,
さらに,文化・芸能面からは,県内各地で実績がある神楽,広島国際アニメーションフェスティ バル,広島アニメーションビエンナーレなども将来のブランドとなる可能性を秘めている。今後,
広島県としてどのような地域ブランドを確立していくのかについて,行政のみならず事業者など も含め,幅広く検討していくことが重要である。
(3)PRを推進し,国内外からの観光客の誘致に取り組むこと
首都圏や近畿圏の主要駅において,広島県の観光パンフレットやポスターをあまり見かけるこ とがない。
このため,今回の大型観光キャンペーンを最大限活用して,PRを図ることが重要である。本 キャンペーンの実施により中央を含む各マスコミ,放送局などの注目が広島に集まるなか,上手 に情報発信することでマスメディアもさまざまな番組化の取り組みがしやすくなる。広島県にお いては関係市町などと連携し,本キャンペーン期間中はPRの専任部署を設置し,記者クラブな どへ情報発信を行う必要がある。また,東北の仙台駅では常設ブースを設置し,各地域が持ち回 りで観光PRを行っている。このように,広島県においても,都市部の各駅や中心場所などに情 報発信のための常設ブースを設置し,各地域が持ち回りでPRを行うことも必要である。持ち回 りであることから常に新鮮な情報の提供が可能となる。
この他にも,関西・関東などの主要駅でのインパクトのある広告の掲示や,県内で無料配布さ れている飲食店情報誌などを東京や大阪でも入手できるようにすることに加え,東京広島県人会 などとの連携を通じた日常的なPRも強化していく必要がある。また,全国各地のデパートなど で行われる広島県物産展と連携して観光PRを推進していく方法や,土産品・名産品の中に広島 県の共通観光リーフレットなどを入れる方法も考えられる。さらに,広島市のVI戦略にあるとお り市民による広島セールスが重要であるが,現実的には,出張などで首都圏はじめ他地域さらに