今後の「おやこ元気アップ!事業」をよりよくするための視点
本事業の実行委員である外部有識者の方々より、平成 21 年度の事業総括をふまえた 今後のさらなる工夫や改善に対する視線を提供いただいた。
まずは大人の意識を変えること
今の子どもが遊ばなくなったのは、三つの「間」が 不足しているからだといわれる。 「空間」 「時間」 「仲 間」である。これが、体力低下の問題にもつながって いるのではないかと思う。昨年、学力テストと体力テ ストの結果に相関性があるのではないかということ が話題となった。体力も学力も高い子どもは、正しい 生活習慣を持っている子どもであるという結果であっ た。 「早寝、早起き、朝ご飯」が標語にもなっているよ うに、当たり前のことを当たり前にできる子どもをどう 育てていけばいいのかということが、今の社会の課題 になっているように思われる。それを受けて、学校で の体育も様変わりしている。学習指導要領の中の体 育の時間も増え、今までのように、体育の時間は運動 していればよいということではなく、できる・わかる・関 わる子どもを育てようという目標を掲げ、健やかな身体 と健やかな心をバランスよく育てる授業を行っている。
学校での体育的行事(運動会、球技大会など)、
PTA行事では、いつも地域のみなさんのバックアッ プを必要としている。私の前任校でも、PTA行事と して元気アップセミナーを行った。全国、だいたいど の小学校でも、教育目標の中に体力向上は入ってい ると思われる。それをご理解いただいたうえで、積 極的に声をかけていただき、学校やPTAとの連携を 深めていただきたいと思う。また、学校からは、保健 だよりなど、健康教育に関する情報がさまざま発信 されている。学校との情報交換、情報の共有もキー ポイントとなるであろう。
保護者は、成績の話には高い興味を示すが、体力の 話になると興味を示さない、というご意見もある。そう いう場合には、前述した、体力と学力の相関性について 説明し、ぜひ、地域の小学校とうまく連携を取り、元 気アップ運動を進めていただければと思う。
山梨大学教育人間科学部 准教授
中村和彦
今日、子どもたちの運動能力には二極化現象が起 こっているといわれている。そんな中で我々は、ス ポーツを不得意とする方の子どもたちと、積極的に 関わっていかなければならないだろうと考えてい る。運動だけではなく、おいしく食べる、ぐっすり眠 るという、 正しい生活習慣を身につけることも大切だ。
みなさんには、その辺りの話も含めた、総合的な情 報発信を、ぜひお願いできればと思う。
学校の中で、子どもたちがどう遊びを作っていく のか、という点にも注目して見取りを行っていただ ければと思う。 どんなことを体育でやっているのか、
放課後の子どもたちは何をしているのか、どんどん 知って、どんどん学校とリンクしていただきたい。
土・日、そして放課後の学校の使い道というのも、
大きな課題になっている。みなさんのアイデアで、連 携を取りながら、継続的な活動を展開していただけ たらと思っている。そして、なによりも、一番変えなく てはいけないのが、大人の意識。保護者、そして地 域の大人たちの理解を促すことにポイントを置いた 活動展開をお願いしたい。
みなさんが来年度に向けて、よりよい事業を作って くださることに、期待したいと思う。
小学校での体力向上の取組について
品川区立小中一貫校伊藤学園 校長青木哲男
私たちの身体の生体リズムを司っているのは、脳 の中にある生体時計と呼ばれる部位で、数多くの神 経細胞が集まっている。生体時計は24時間周期より 長く、人間が視覚から太陽の光を認識することによって 毎日リセットされていることがわかっている。
夜ふかしの生活によって、子どもたちの生体時計も狂 ってきている。統計によれば、3才児で夜10時過ぎまで起 きている子が半数を超えている。朝食を食べない子ども は小学生で 7人に一人、中学生で 5人に一人。体を使 った遊びの消失やメディア漬けによって、運動不足となり、
排便が不規則となる子どもが増えている。体力の低下と
いう問題も、運動量、運動経験の不足に起因している。
この負のスパイラルから子どもたちを脱却させる ためには、 「快眠・快食・快活(運動) ・快便」が必要 である。この「4快建ての生活再建」によって、子ども たちの生活を立て直したいと私は考えている。そし て、その突破口となるのが、運動なのではないか。
適度な運動は食欲を増進させ、睡眠、排便につなが る。そういう意味でも、体力の向上を目標としたこの 元気アップ事業は、ライフスタイルを変えるパイロット 事業だと思う。みなさんの活動が子どもたちの生活 改善と健やかな成長につながっているのである。
生活リズムから見た子どもの体力
ルポライター/子どもを育てる地域懇談会 会長瀧井宏臣
運動能力の発育発達過程を考慮した プログラム作りを
慶應義塾大学体育研究所 教授
佐々木玲子
人間の運動機能の発達において、子どもの時期と いうのは、基礎的なことから専門的なことへと運動機 能が育つ段階である。この時期には、生まれながらに 身体に組み込まれた動きに加え、投げる、跳ぶなど、
新たな運動ができるようになるための回路を外からの 刺激で強化してやることが必要である。この段階の子 どもたちをターゲットとした、元気アップ活動における 運動の重要性がご理解いただけると思う。1986年の 調査によれば、幼児の普段の遊びの中に見られる動 きは、80種類を超えるとのこと。大人の日常とは比べ ものにならないほどの多種多様さである。ところが今 の子どもたちではその種類も減少しているのではない だろうか。遊ぶ場所不足、用具が危険を理由に撤去 されるなど、いろいろと原因は考えられるが、こんな ことも結果として、体力低下、動きの質の低下につな がっていく可能性はある。人間の脳は、運動指令を 出すだけではなく、その動作が違っていれば修正し ようとし、合っていれば強化しようという方向にフィー ドバックが働く。神経機能の発達が著しい幼少期は、
さまざまな環境で、できるだけ多くの動きを、自分の 身体で経験することが必要なのである。子どもの発 達を考慮した運動の要素があり、それぞれの動きに 意味がある。これを理解していると、体操を作るとき
や、声かけなどに役に立つこともあるだろう。親子一 緒の運動プログラムのいいところは、親の気づきを促 し、体力向上の大切さを体感してもらうことができる ところである。その時「あー楽しかった」で終わらせ ず、 「うちの子大変!」 「結構できる!」など、気づきを 促すプログラム作りが大切である。そのためには、
動きっぱなしにはせず、 「お子さんたちの様子はどう ですか?」、 「パパもできてた?」などと声をかけ、一 呼吸入れて考えてもらうこと。 「この遊びなら家でもで きるね!」 、 「続ければもっとうまくなるよ!」など、継続 を促すメッセージも発信しよう。子どもは「全力」の 目安を自分の中にはなかなか持ちにくいので、 「ここ までやろう!」などと促し、設定された目標をクリアで きた成功体験を味わわせたい。 「5年生は15回、年長 さんは5 回でいいよ!」等、発達段階を考慮した指示 も大切である。競争的要素を取り入れ、 「何回できた かな?」 と問いかけることで、子どもは楽しさが増し、
親は気づきが増すということもある。内容としては、
たとえば巧緻性(巧みに動く) ・柔軟性・敏捷性を必
要とするプログラムを組み合わせ、その中で楽しさを
感じさせ、 「できた!」という達成感、できなくても 「次
はできるように!」という意欲をもたせられるような指
導ができればよいだろう。
コーディネーターにとって大切なことは、 人を、
団体をどう活かすかという力量だと思う。人を見 る目、適材適所を見抜く力、素材の内容を見抜く 力、そして、つなぐ力である。事例発表では、こ のような力量がしっかりと見て取れたと思う。各 所に協力を仰ぎながら、いろいろな人たちを上手 に活動に巻き込んでいく、ということだ。小学校 を会場としておられるところも多いと思う。小学 校と地域とをどう結ぶかという目線も大切。受け 入れ側の事情を把握して、受け入れられやすい企 画を作ってあげることも大切であろう。
みなさんの共通の悩みとして、 「参加者の確保」 、
「指導者の確保」、「事前準備の効率性」というこ とがあげられる。万能な特効薬はないが、やはり、
地域団体との連携ということは大切である。スポ ーツとは関係のない団体を巻き込み、日ごろ運動
はあまりしていない子どもたちを取り込むという 戦略も考えられる。どんな場合も、打ち合わせ、
そしてふりかえりは大切で、スタッフの配置は適 切だったか、機能すべきところは思惑通り機能し ていたかなどを確認したい。 事前の連絡が十分で、
参加者集めがスムーズにいけば、また取組たいと いう結果につながる。
最後に、私自身が、一
いち
コーディネーターとして心 がけていることをお伝えしたい。第一に「愛される ように努めるということ」。人の心を動かす、人の 心に響く人になるためには、愛される人になるよ うに心がけることが大事である。そして第二に「影 の人になること」である。時として表に出ることも 求められるが、若いスタッフが育てばその人を前 に立たせ、自分は影から見守る。そんなコーディ ネーターを目指して皆さんで共に歩みたいと思う。
立教大学コミュニティ福祉学部 教授
松尾哲矢 幼稚園で開催する体力向上イベントでは、身体
を動かす楽しさ、心地よさを親子共に実感しても らうことが最も大切である。たとえば、追いかけ っこのような単純な繰り返し遊びは、運動の楽し さだけでなく、人との関わり合い、ふれあいの心 地よさを学べる良質な遊びであるが、今の若いお 母さんには、そういうことが認識されていない場 合が多い。その辺りも合わせて、保護者への学び の機会を提供していく場、と位置づけるとよいだ ろう。具体的に遊びの中に盛り込みたい要素をま とめると、
① 爽快感 ブランコやすべり台などで感じるス ーッとする心地よさ
② 競い合う楽しさ 勝つ喜び、負ける悔しさ
③ 偶然性 ジャンケンのように小さい子どもで も、誰でも勝つ可能性
④ 模倣 ごっこ遊びやもの真似など
⑤ リズム リズムを合わせる喜び、いろいろなリ ズムを取り入れる楽しさ (例:ヨサコイソーラン)
このような、子どもたちの大好きな要素が入っ た遊びを繰り返し、「自分はできる!」という実 感を持たせるとよい。
幼稚園との連携のポイントとしては、提案は早 めに、ということがまず一点。年間計画は前年度 の2月には決まってしまうので、それ以前に声をか ける。園スタッフの手伝いは? 用具は? また、
事故の対応はどうするか、保険の有無など、具体 的な内容や役割分担を確認する。 経費についても、
事前にはっきり話し合う。園にとってのメリット をしっかりと伝えることで、スムーズに協力が得 られるだろう。広報は、園のホームページやネッ トワークを利用させてもらうとよい。イベント終 了時には、園スタッフや保護者のみなさんと、成 果を共有し合い、一度で終わらせないこと、「ま た来年も!」と言ってもらうことが大切である。
定期的な行事としていくことが、地域の活動へと つながるので、その広がりを園に意識させること ができれば成功である。
幼稚園での体力向上の取組について
全国国公立幼稚園長会 会長岡上直子
コーディネーターにとって大切なこと
ドキュメント内
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