(1)基本的考え方
静岡県が目指す集約型都市構造では、様々な都市機能が集積する集約拠点を機能階層別に配置 し、その拠点を中心に歩いて暮らせる日常生活圏を形成する都市モデルをイメージしている。
この都市モデルを実現させるためには、目指すべき市街地の姿に向けて、民間の活動や投資を 誘導することが必要となるが、成長力が低い中で土地利用を単純に規制するだけでは効果は低く、
基盤整備や各種事業を具体的に展開するとともに、民間の活動や投資を誘導するインセンティブ の仕組みを取り入れていくことが重要となる。
特に集約拠点の場合、単純に規制を強化しただけでは、規制が緩やかで自由度の高い他都市や 郊外部へと民間活動を流出させることとなり、単純に規制を緩和しただけでは、無計画な開発を も許容してしまうこととなる。このため、集約拠点の場合は、特定の用途以外に対して厳しく制 限を加えるのではなく、むしろ、特定の用途が立地しやすくなる環境(税負担、融資・助成、手 続等)を整備することを重視する必要がある。
一方、工場や物流施設を中心とする産業拠点や、住宅地を中心とする日常生活圏においては、
生活又は事業活動に必要な施設以外を複合的に組み入れる必要性は低く、安定した土地利用が維 持され続けることの方が重要となる。こうした市街地の場合は、望ましくない用途の建築物によ って環境が阻害されるような事態をあらかじめ防止することが必要であり、既に立地している望 ましくない用途の建築物に関しても、長期的に排除されるよう制限を加えることが必要となる。
こうしたきめ細かい土地利用の規制・誘導を行う場合、現行の用途地域による制限だけでは十 分な効果を期待することはできず、高い容積率を指定された商業地域においてマンションの建設 が進んでいる例や、工業系の用途地域内の跡地において商業店舗が立地する例など、用途地域の 分類と実際の土地利用とが乖離している状況も見られる。
このため、拠点市街地における土地利用に関しては、目指すべき市街地の姿を踏まえて、用途 地域以外の地域地区や地区計画などを適切に組み合わせてきめ細かく土地利用制限を行うか、い ったん厳しい土地利用制限を実施した上で、望ましい建築物等の立地に際しては、特例措置や地 区計画等で個別に緩和するといった方策を取り入れる必要がある。特に、現行の用途地域等より も規制内容を緩和させる必要がある場合は、規制内容変更に対する住民の合意形成を図る観点や、
規制緩和による無秩序な開発容認を防止する観点から、地区計画の決定が一体的に行われること を基本ルール化することが望まれる。
(2)拠点市街地における土地利用
都市拠点、地域拠点といった集約拠点においては、様々な機能、用途を複合的に組み入れ、比 較的密度の高い市街地の形成を目指す必要がある。また、比較的高い密度を保ちながら、安全で 安心して暮らすことができる利便性と快適性の高い空間を形成する必要がある。このため、中心 市街地においては、次のような方策を取り入れることが望まれる。
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① 機能集積の効果を発揮するための用途複合化
中心市街地においては、商業、業務だけでなく、居住、文化、行政、医療・福祉、教育、観光、
娯楽など多様な機能を集積させる必要性があり、一定の範囲を対象として土地利用の高度化・高 密度化を目指すことが望まれる。このため、中心市街地では、多様な用途が許容され、高い建ぺ い率・容積率を指定できる商業系用途地域が適切に指定・運用されるべきである。ただし、実質 的に中高層マンションが中心の土地利用となる見込みが高い場合は、風俗営業施設等の立地によ る環境の悪化や、日照・通風の阻害による居住環境の悪化などのおそれもあるため、高い容積率 を有する住居系用途への見直しを検討することが望ましい。また、商業系用途地域のままで住居 中心の土地利用を維持する場合でも、特別用途地区による用途規制強化や、高度地区による高さ 制限を導入することが望まれる。
計画的な用途複合化を進めるには、導入すべき用途を明確にした上で、商業系用途地域を補完 する特別用途地区や地区計画等の制度を併用することが望ましい。また、中心市街地において居 住機能を確保しようとする場合、逆に、マンション建設の際に商業・業務機能の充実を図ろうと する場合は、住居又は商業・業務施設の併設を定めた特別用途地区や地区計画(一般型のほかに 街並み誘導型地区計画や用途別容積型地区計画など)を活用することが考えられる。
また、平成 24 年 12 月の「都市の炭素化の促進に関する法律(略称:エコまち法)」施行に伴 い、低炭素まちづくり計画作成、都市機能の集約化、公共交通機関の利用の促進等に関する支援 制度が創設されたことから、これら制度を活用することも考えられる。
② 低未利用地の有効活用
中心市街地内及びその周辺において大規模遊休地などの低未利用地が存在する場合は、拠点内 に集積を図るべき都市機能(商業・業務、医療・福祉、行政、居住など)の受け皿として有効に 活用することが望まれる。こうした低未利用地では、良好な開発事業の誘導、支援を図るため、
優先的な基盤整備を実施するほか、民間の活動や投資を促すための規制緩和、又は低未利用地や 空家に対する課税等の見直しを検討することが考えられる。また、計画的な高度利用を担保する ために、高度利用地区や建物の高さの最低限度を定める高度地区の運用を行うことが望まれる。
なお、具体の開発計画の見通しがない段階で規制緩和だけを実施した場合、地価の上昇や無秩序 な小規模開発を引き起こすおそれがあるため、不適切な土地利用転換が進まないように、あらか じめ地区計画(一般型のほかに再開発等促進区など)等で規制を強化しておくといった方策も検 討する必要がある。
③ 安全で快適な市街地形成
高い建ぺい率・容積率を持つ商業系用途地域では、建物が密集した市街地が形成される可能性 を含んでおり、特に、城下町や宿場町を起源として古くから成立した中心市街地の中には、災害 危険性の高い木造密集市街地が形成されているケースも多く見られる。このため、商業系用途地 域をはじめ、高い密度を持つ市街地においては、緊急輸送路や延焼遮断帯として位置付けられる 幹線道路沿道を含めて、防火地域又は準防火地域を原則として指定する。
(3)産業系市街地における土地利用
大規模な工業・物流団地をはじめとする産業拠点については、今後とも工業系の土地利用が安 定的に維持されるよう、原則として工業専用地域が指定されることが望ましいが、立地施設の関 係から準工業地域、工業地域を指定する場合は、特別用途地区の指定により、工業系土地利用以 外の用途への転換を防止することが望ましい。特に、工場の移転などにより大規模な跡地が発生 した場合、望ましくない用途の建築物が立地しないよう、事前に土地利用の制限内容を見直すこ とが望まれる。
準工業地域や工業地域のように、工業を主体としながら用途の混在が許容される用途地域では、
建築物の建て替えに伴い、用途混在による居住環境の悪化が進むケースもあるが、逆に、工場や 事業所の移転によって用途の純化が進んでいるケースもある。このため、こうした用途混在型の 用途地域においては、基礎調査等により建物用途混在の実態を把握し、土地利用の実態及び目指 すべき土地利用の方向性を踏まえながら、適切な用途地域へと見直しを進めることが必要である。
なお、用途地域の見直しに当たっては、現在の指定範囲のまとまり全てを一度に対象にする必 要はなく、いくつかの小さいまとまりに区分して段階的に見直しを進めることも考えるべきであ る。また、用途地域の見直しまでは至らなくとも、目指すべき土地利用の方向性が明らかになっ た時点では、望ましくない用途を制限する特別用途地区や地区計画等を指定し、段階的に用途純 化が進むような仕組みを取り入れることが望ましい。