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市川総合病院角膜センター

プロフィール

1.教室員と主研究テーマ

講  師  篠崎 尚史  腎臓移植の成績向上をめざした臨床データ解析を目的とした症例登録と追跡制度の確 立並びにドナー及びレシピエントの安全性確保とQOL向上に関する研究(国際的な臓 器移植登録の動き)

    移植医療の社会的基盤に関する研究

    提供施設における院内体制整備に関する研究

客員教授  May Griffith  再生角膜の作成および移植に関する研究

客員講師  安井 正人  涙液・唾液分泌制御におけるアクアポリンの役割の解明

    加齢に伴うドライアイ,口腔内乾燥症病態生理の理解

  菅谷  健  慢性腎障害の重症化防止を目的とした幹細胞移植による残存腎機能再構築

  吉田  悟  ヒト体性および胚性幹細胞を利用した人工角膜の作成(角膜上皮幹細胞のニッチに関 する研究)

2.成果の概要

1)腎臓移植の成績向上をめざした臨床データ解析を目的とした症例登録と追跡制度の確立並びにドナー及びレシピエ ントの安全性確保とQOL向上に関する研究

[国際的な臓器移植登録の最新事情と今後の展望] 

移植医療の安全性確保、透明性の確保は、医学的な立場のみならず倫理性からも必要不可欠である。近年の情報 化により、移植情報の電子化によるレジストリーの整備により投薬や他の疾患との関連も明らかになるなど、今後の 医療の方向性を示唆する情報が得られるリソースとなっている。

国際的にも 1991 年に世界保健機関(WHO)が 1991 年に「臓器移植ガイドライン」を制定したが、臓器売買 や渡航移植が、成人病の増加や医療技術の国際的な発展により増加の一途を辿っていた事から、2003 年の総会

(WHA)において、その改定が決議された。04 年の WHA で予算化され 08 年までの 4 年間、世界各地で移植 ガイドラインの改定に向けた会合を重ねられた。その過程で、行政関係者や医療従事者による国際的なレジストリー 制度や有害事象の発生に対応する発報システムに関して比較評価された。

米国においては、臓器移植患者の登録、並びに臓器提供の情報は米国臓器移植ネットワーク(UNOS)が管理し、

各臓器提供組織(OPO)が運用している。Region 内でのあっせんに関しては、OPO 内の選択で臓器配分がなさ れるが、Region を超えるあっせんに関しては UNOS でのあっせんとなり、患者登録から患者選択のログに基づき 算出されている。近年、従来のデータベースではなく、Claude に SaaS で提供している。つまり UNOS が Web 上 で管理するソフトウェアを各 Region に割り振り、そのソフト上で運用している。しかしながら当該システムは、患者 選択に用いる情報を入力した患者情報、臓器提供時のドナー情報とあっせん情報に限られ、移植患者 ( レシピエン ト) に関する情報は、移植手術に関わる基本情報以外はリンクされていない。移植患者の情報は、移植関連の学 会が取り纏めるものが存在し、上記、臓器提供に関わる情報とのリンクは、研究事業を実施する際に UNOS にデー タ使用を依頼し、研究の倫理性、必要性が認められる場合に許可されるシステムになっている。

欧州では、2008 年の EU Directive が最終稿となり、EC にて承認されたが、臓器移植に関する項目と、細 胞・組織移植に関する項がそれぞれ決定し記載された。2006 年からは、EU,EC それぞれがこれらの収載に向け た会議を開催し、それぞれの議案について検討された。臓器においては、WHO からの recommendation に基 づき、技術的な部分は別として EU における共通コードで管理される事が決定した。細胞・組織においてはさらに 安全性に関する管理体制を整えるため、European Union Standards for Inspection of Tissue Establishment 

(EUSTITE project) が発足され、3 年間にわたる検討の結果、2009 年 12 月の EUSTITE project 終了と同時に、

SOHO Vigilance & Surveillance (SOHO S&V) が招集された。本プロジェクトでは、細胞・組織・臓器移植に おける警戒・監視システムを国際的に構築するための基準が設けられた。

2011 年 2 月に、イタリアの Bologna において臓器移植も含めた SOHO S&V 会議が、WHO と EU の共催によ り開催され(http://www.sohovs.org/soho/)、最終的なフレームワークとして NOTIFY プロジェクトが形成された。

特に、副作用情報の重症度を統一し、緊急アラートを発報する基準を設けたことが、今後の移植医療のモデルとな るものと考える。

血液においては有害事象の発生による管理体制が確立されており、国際的なフレームワークが確立しており、

ISBT128 (International Standards for Blood Transfusion) が国際コードとして国際的に通用している。我が国 における血液行政は、国内での献血、使用を主眼としていたため、現状ではこのコードに属していないが、骨髄移 植等においては国際化の規格が検討されだしている。

ヒト由来の製剤、移植に関しては、提供の状態が生体か死体かにより、提供の場面が変わる。つまり献血や羊 膜などの提供と、死体下での臓器、組織、細胞の提供では、重複し時間も異なる場合も考えられる。現状では提 供時に固有の ID を発行する方法が効果的であるとされているが、国際的社会法相番号制などの将来的な個人を特 定できる状況になるまでは、止むを得ない事であると判断される。

また、Vigilance & Surveillance の観点から、移植後のトレーサビリティーも必要である。その際に医療機関 からの情報が必要であるが、移植のみならず、移植後のフォローの情報、更には、任意となる可能性が高いが、一 定期間後の副作用情報の入力にも、移植利用施設、ならびに一般医療機関からのアクセスが可能なシステムを構築 する必要がある。現状では、コンピューターのソフトウェアベースでのデータ管理では不可能で、クラウド上で管理 するシステムを試行している。WHO 移植課では、地域毎、各国レベルでのデータを調査し、これらの連結する方 法を模索している。移行期間としては、恐らく各データに ISBT128 などのサブコードを発行し、これらを世界的に 管理する方法が有力である。しかし、その後の恒久版となるシステムを視野に設計する必要が叫ばれている。

2)移植医療の社会的基盤に関する研究

改正臓器移植法が施行され、本人意思が不明の場合家族の承諾により臓器提供が可能となり、脳死下臓器提 供数が増加した。また、健康保険証、運転免許証等による臓器提供意思の表示機会増加に伴い、ますます国民の 意思確認が重要になってきている。これまで我々が厚生科学研究にて実施し、心停止下腎臓提供数増加に一定の 効果を示したドナーアクションプログラム(DAP)は、不幸にして終末期を迎えた患者の家族に臓器提供の意思確認

(オプション提示)がされない場合の原因を探り、改善するツールである。そしてその DAP を展開するにあたり、実 務者教育として参考としてきたモデルが、スペインで過去 10 年間で臓器提供者を 100 万人当たり 20 人から 37人 に上昇させ、他のヨーロッパ諸国の平均 20 人に比較しても劇的な増加を認めた TPM(Transplant Procurement  Management) である。当該研究事業ではこれらの先行研究の知見に基づき、我が国における国民意思尊重のた めの意思確認推進に、更に必要な社会的基盤について研究を行った。DAP、TPM といった手法の日本の医療文化 に則した形でのカスタマイズ、移植コーディネーターの教育内容と在り方、提供施設の負担軽減等、それぞれが重 要な社会的基盤であるが、もっとも重要なことはそれらを一元的に、かつ継続的に実施する機関の設立である。

組織移植に関しては、我が国における組織移植のための基盤整備が十分でないため、全国にある組織バンクが どの程度の採取・摘出し、保存組織を有しているか把握できていない。また、組織バンクに寄せられる情報や、採 取した組織の関する情報がどのように管理されているのか定かではなかった。このような状況を鑑み日本組織移植 学会ではレジストリー委員会による組織移植の定点調査を 2002 年から始められたが、これもリアルタイムでの組織 の把握ができるものではない。また、世界中では国際標準コード(ISBT128)に準拠したシステムへの発展が勧め られている中、移植医療においてもデータの一元管理が必須とされるようになってきている。そこで当該研究では、

平成 22 年 5 月の WHO 総会(WHA)にて国際コーディングシステム導入についても可決したことを受けて、国際 標準化システムに沿っての臓器・組織移植医療の円滑な一元管理システムの作成、また既存のバンク管理システム を現場に即した設計のハードにインストールし、さらに Web を用いて前述の一元管理システムへのアクセスを可能と するプロトタイプを作成した。

3)提供施設における院内体制整備に関する研究