1999年10月から2002年7月までに収集された85.1×106BB¯事象の中からB±→ J/ψ ρ±事象を検出効率9.9%で45.9事象観測し、そのうちバックグラウンドを62.1 事象と見積もった。以上の結果よりB±→J/ψ ρ±過程の崩壊分岐比を求める。崩 壊分岐比は以下の式を用いて得ることができる。
Br(B±→J/ψρ±) = Nobs−NB.G
Br(J/ψ→l+l−)·NB±· (3.3) ここで、
• B±→J/ψρ±の事象数:Nobs = 108事象
図 3.6: B± → J/ψ ρ±のモンテカルロシュミレーションによる∆E −Mbcの二 次元プロット(上段:左)、−0.07 < ∆E < 0.05GeV の範囲のMbc分布(上段:右)、 5.270 < Mbc < 5.290GeV /c2の範囲の∆E 分布(下段:左)。矢印はシグナル領域を 表す。
-0.2 -0.15 -0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2
5.2 5.225 5.25 5.275 5.3
Mbc(GeV/c2)
∆E(GeV)
0 2.5 5 7.5 10 12.5 15 17.5 20 22.5 25
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
∆E(GeV)
Events/(0.01GeV)
0 5 10 15 20 25 30
5.2 5.225 5.25 5.275 5.3
Mbc(GeV/c2) Events/(0.002GeV/c2 )
図3.7: B±→J/ψ ρ±の候補事象。:エラーバー付きの点はデータ。ヒストグラム部
分がシュミレーションによるバックグラウンドの期待値を表している。∆E−Mbc の二次元プロット(上段:左)、−0.07<∆E <0.05GeV のMbc分布(下段)、5.270<
Mbc <5.290GeV /c2の∆E分布(上段:右)
• バックグランド事象数 :NBG = 62.1事象
• J/ψ→l+l−の崩壊分岐比:Br(J/ψ→l+l−) = 0.1181±0.020 [9]
• B+またはB−の数:NB± = 85.1×106個
• 検出効率 := 9.9%
統計誤差は相対誤差の形で
√Nobs
Nobs−NB.G (3.4)
で与えられ、その値は22.6%である。
次に、系統誤差(表3.1)について考察する。
飛跡の再構成 6 % レプトン同定 4 % π0の検出効率 7 %
π±/K±識別 2 %
偏極が未知であることによる検出効率 10%
Best candidate selection 6 % シグナルのモンテカルロの見積もり 3.2%
Non-resonantの寄与 21.1%
Br(J/ψ→l+l−) 1.2 %
B中間子数 0.7 %
計 26.4 %
表3.1: 系統誤差 [14]
• 飛跡の再構成
荷電粒子の飛跡検出効率の不定性は、η →π+π−π0崩壊過程と、η →γγ崩壊 過程を用いて、二つの過程から独立に得たηの数の比を実験データとシュミ レーションで比較することにより見積もった。π0はほぼ100%2つの光子に 崩壊するので、η → π+π−π0の終状態には2つの光子と2つの荷電粒子が現
れる。それで二つの過程の比をとると、π+π−の検出効率のみが寄与し、光子 の検出効率の不定性が相殺し、荷電粒子二つの検出効率がわかる。そして、荷 電粒子一つ当たりの不定性は半分となる。
• レプトン同定
J/ψを再構成するときに用いるレプトンの同定に関する不定性は片方の飛跡 にだけレプトンと識別されることを要求した場合と、両方ともレプトンと識別 されることを要求した場合で、観測されるJ/ψの個数の比からレプトン同定 の検出効率を求めた。そして、この検出効率の実験データとモンテカルロシュ ミレーションの差をレプトン同定の不定性とした。
• π0の検出効率
π0の検出効率の不定性はD0 →K−π+π0崩壊過程とD0 → K−π+崩壊過程 を用いて行なった。この二つの過程を比較すると飛跡最構成の不定性を求める 時とは逆に、荷電粒子の飛跡を検出する不定性が相殺して π0の検出効率がわ かる。
• π±/K±識別
π±中間子とK±中間子の識別に関する不定性はD∗+→D0π+、D0 →K−π+ 崩壊過程を用いる。この時、D∗+とD0の質量はほとんど等しいため D∗+か ら生じるπ+中間子の運動量は小さい。しかし、D0から生じるπ+中間子の 運動量は大きいため、D0中間子の崩壊で生じる粒子のうち、低運動量のπ中 間子と同じ電荷を持つものはπ中間子、異符号の電荷を持つものはK中間子 と識別できる。この崩壊過程で、低運動量のπと電荷が同符号、異符号の荷 電粒子について、πあるいはKであるLikelihoodの分布をとり、実験データ とモンテカルロシミュレーションの間に生じる差から見積もった。
• 偏極が未知であることによる検出効率
ρ中間子の偏極を考慮しての検出効率を求めなかったので、偏極が未知である ことによる検出効率の不定性が生じる。B±→J/ψ K∗[15]と同じ偏極を設定 したシグナルのモンテカルロシミュレーションと偏極を運動学的限界まで変更 して作ったシグナルのモンテカルロシミュレーションで見積もった検出効率の と差を検出効率の不確定差を見積もった。
• Best candidate selection
シグナル領域内に複数個の候補が見つかる事象の数の割合をシグナルモンテ
カルロシュミレーションで調べ、これを Best candidate selectionの不定性と した。
• Non-resonantB±→J/ψπ±π0の寄与
Non-resonantとはB±から崩壊する時にρ±という中間状態をとらずに直接 π±π0が生じるB±→J/ψπ±π0という崩壊過程を指す。このNon-resonantの 寄与の不定性はB0 →J/ψρ0の場合と同じと仮定した。[14]
以上より、B±→J/ψ ρ±過程の崩壊分岐比は
Br(B±→J/ψρ±) = (4.6±1.0(統計誤差)±1.2(系統誤差))×10−5 (3.5) である。