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2.3 小結

 本章では、全国でも先進的な萩市の事例と、文化資源・文化遺産の抽出法を実践 したサルト市を事例に挙げ、分析をおこなってきた。

 萩市では、従来の文化財の枠を超えた空間遺産や生活遺産までも含むおたからの 考え方を用い、これまで忘れさられようとしていたモノやコトに息を吹き込み、価 値を顕在化させ、都市遺産として拾い上げる概念を実践していたが、こうした概念 が誕生した背景には、やはり、萩市が観光都市であると共に、早い段階から、文化 資源の面的な保護の必要性に気づき、歴史的な景観を伝統的建造物群や景観法によっ て護ってきたからこそだといえる。そうした面的な保護というところから、おたか らの必要性が認識されているのだと思われる。

 また、サルト市においては、近年新たに住むようになった住民はほとんどおらず、

16 世紀から 19 世紀に住み始めた 2 大部族、もしくは 1866 年にサルトに流入して きたナブルシー系部族の末裔が現在の住民であることで、代々歴史や文化が語り継 がれてきている地域といえる。そういった点は、サルト特有の条件下であったが、

第 1 章で提示した文化資源・文化遺産概念という新たな資産の把握の必要性を抽出 結果から明らかにし、そして、提示したエリア悉皆型抽出法とストーリー志向型抽 出法によって抽出できることを証明した。

 以上のことから、本章では、地域において文化資源・文化遺産概念による資産の 把握は必要であり、エリア悉皆型抽出法とストーリー志向型抽出法によって抽出で きることが明らかとなったといえる。

参考文献

1) 萩市史編纂委員会編 : 萩市史 第一巻 ,1983 2) 萩市史編纂委員会編 : 萩市史 第二巻 ,1987 3) 萩市史編纂委員会編 : 萩市史 第三巻 ,1988

4) 萩市 : 萩まちじゅう博物館 基本計画・行動計画 ,2005,3

5) 梶本祥子 : 歴史的都市における景観要素の把握に関する研究 萩を対象として ,1999 6) 萩青年会議所創立 20 周年記念事業萩青年会議所 : 萩図誌 ,1930

7) 萩郷土文化研究会編 : 萩城下町地図 - 嘉永年間萩城下・侍屋敷と町 -,1969 8) 東京都立大学 : 都市集住様式の歴史的研究 3(萩の場合),1976

9) 萩市教育委員会 : 萩市 [ 堀内・平安古地区 ] 伝統的建造物保存地区対策調査報告 ,1986 10) 吉村重昭・西山徳明・仲野綾・有川智子 :「萩まちじゅう博物館」における文化遺産マネジ

メントに関する研究 その 4 文化遺産データベース構築に向けた景観要素の現状分析 , 日本 建築学会九州支部研究報告論文集 , 第 44 号 ,pp.525-528,2005. 

11) 吉村重昭 : 文化遺産データベース構築に向けた景観要素の変容に関する研究 山口県萩市を 対象として .2005

12) ユネスコ : 世界の文化遺産及び自然遺産の保護のための政府間委員会 世界遺産センター文化 庁仮訳 , 世界遺産条約履行のための作業指針 ,2005,2 

13) The Hashemite Kingdom of Jordan Municipality of Salt:Salt Master Plan,1981

14) Salt Development Corporation:Salt Plan for Action vol. 1,Royal Scientific Society,1990 15) Salt Development Corporation:Salt Plan for Action vol. 2,Royal Scientific Society,1990 16) Salt Development Corporation:Salt Plan for Action vol. 3,Royal Scientific Society,1990 17) (株)かいはつマネジメント・コンサルティング 萬宮千代:ヨルダン・ハシミテ王国「観光

セクター開発事業 (JO-P11)」サルト観光振興に関する予備調査<面談、会議、ワークショップ 記録> ,2007 年 8 月 

18) Ministry of Tourism & Antiquities, The Greater Salt Municipality:Salt Nomination of Properties for Inclusion on the World Heritage List

19) 萩市教育委員会 : 萩市郷土博物館編「萩」再発見 ,1999 20) 萩市 : 萩市新博物館基本構想 ,2001,3

21) 大西直樹・西山徳明 : 萩市「まちじゅう博物館」構想を用いた文化遺産マネジメントに関 する研究 その1 住民意識の把握に関して , 日本建築学会九州支部研究報告論文集 , 第 43 号 ,pp.253-256,2004. 

22) 仲野綾・西山徳明 : 萩市「まちじゅう博物館」構想を用いた文化遺産マネジメントに関する 研究 その 2 「まちじゅう博物館」のマネジメントシステムに関して , 日本建築学会九州支部研 究報告論文集 , 第 43 号 ,pp.249-252,2004.

23) 仲野綾・西山徳明・有川智子・吉村重昭 :「萩まちじゅう博物館」における文化遺産マネジ メントに関する研究 その 3 NPO 設立と文化遺産マネジメントに関わる主体 , 日本建築学会九 州支部研究報告論文集 , 第 44 号 ,pp.521-524,2005. 

24) 有川智子・西山徳明 :「萩まちじゅう博物館」における文化遺産マネジメントに関する研究 その 5 行動計画に基づく初動期の検証と今後の展望 , 日本建築学会九州支部研究報告論文集 , 第 45 号 ,pp.485-488,2006. 

25) 村上佳代・西山徳明 :「萩まちじゅう博物館」における文化遺産マネジメントに関する研究 その 6 商家町浜崎におけるサテライト整備の実践と課題 , 日本建築学会九州支部研究報告論文 集 , 第 47 号 ,pp.329-332,2008.

26) 村上佳代・西山徳明 :「萩まちじゅう博物館」における文化遺産マネジメントに関する研究 その 7 「まち博」構想に基づく世界文化遺産国内暫定一覧表への追加に向けた取組み , 日本建築 学会九州支部研究報告論文集 , 第 47 号 ,pp.333-336,2008. 

27) 柿原芳章・村上佳代・西山徳明 : 歴史文化基本構想及び歴史まちづくり法と萩まちじゅう博 物館構想の比較分析 それらの特徴と関係性について , 日本建築学会九州支部研究報告論文集 , 第 48 号 ,pp.393-396,2009.

28) 日本歴史地名大系第 36 巻 山口県の地名 , 平凡社 ,1988

29) 西山徳明 :「萩まちじゅう博物館」, 萩ものがたり vol.4,2004,10

30) 萩まちじゅう博物館:公式ガイドブック「萩まちじゅう博物館 城下町編」,2005,3 31) 萩市教育委員会内史都萩を愛する会 : 史都 萩 - 合冊本 -,1 号〜 50 号 ,1987

32) 萩市史編纂委員会編 : 萩市史年表 ,1988

33) 国土庁昭和 51 年度委託 地方都市整備構想策定等調査山口県 : 萩市における歴史的環境と 都市機能 モデル的都市機能調査(伝統的文化都市),1977

34) 萩市教育委員会 : 萩市 [ 浜崎地区 ] 伝統的建造物保存地区対策調査報告 ,2000 35) 佐藤滋 : 城下町の近代都市づくり , 鹿島出版会 ,1997

36) 村上佳代・西山徳明:歴史都市サルトにおける文化資源マネジメント(CRM)に関する研究  その1 - 文化資源を活用した持続可能な観光開発のための計画立案 , 日本建築学会九州支部 研究報告論文集 , 第 48 号 ,pp.601-604,2009

37) 村上佳代・花岡拓郎・西山徳明:歴史都市サルトにおける文化資源マネジメント(CRM)に 関する研究 その 2 - 町並みの保全に向けた都市形成史の把握 , 日本建築学会九州支部研究報 告論文集 , 第 48 号 ,pp.605-608,2009

38) 赤星眞弓・松原まりな・村上佳代・西山徳明:歴史都市サルトにおける文化資源マネジメン ト(CRM)に関する研究 その 3 - インタープリテーションの視点からみた景観形成 , 日本建 築学会九州支部研究報告論文集 , 第 48 号 ,pp.609-612,2009

39) 松原まりな・赤星眞弓・村上佳代・西山徳明:歴史都市サルトにおける文化資源マネジメン ト(CRM)に関する研究 その 4 - 文化資源抽出の手法の検証 , 日本建築学会九州支部研究報

告論文集 , 第 48 号 ,pp.613-616,2009

40) 中村真弓・赤星眞弓・村上佳代・西山徳明:歴史都市サルトにおける文化資源マネジメント

(CRM)に関する研究 その5 - エピソードに着目した文化資源抽出とディスカバリートレイ ルの設計 , 日本建築学会九州支部研究報告論文集 , 第 49 号 ,pp.365-368,2010

41) 赤星眞弓・村上佳代・西山徳明:歴史都市サルトにおける文化資源マネジメント(CRM)に 関する研究 その 6 - 歴史的建造物の保全・管理状況 , 日本建築学会九州支部研究報告論文集 , 第 49 号 ,pp.369-372,2010

42) 赤星眞弓・村上佳代・西山徳明:歴史都市サルトにおける文化資源マネジメント(CRM)に 関する研究 その 7 - 歴史的建造物の用途の変化からみる文化資源としての価値 , 日本建築学 会九州支部研究報告論文集 , 第 49 号 ,pp.373-376,2010

43) 村上佳代・西山徳明:歴史都市サルトにおける文化資源マネジメント(CRM)に関する研究  その1 - 文化資源を活用した持続可能な観光開発のための計画立案 , 日本建築学会 2009 年 度大会(東北) 学術講演梗概集 F-1 都市計画 , 日本建築学会 ,pp.263-264,2009.8

44) 赤星眞弓・村上佳代・西山徳明:歴史都市サルトにおける文化資源マネジメント(CRM)に 関する研究 その 2 - インタープリテーションの視点からみた景観形成 , 日本建築学会 2009 年度大会(東北) 学術講演梗概集 F-1 都市計画 , 日本建築学会 ,pp.265-266,2009.8 45) (株)かいはつマネジメント・コンサルティング 萬宮千代:ヨルダン・ハシミテ王国「観光

セクター開発事業 (JO-P11)」中間監理報告書 ,2006 年 9 月

46) (株)かいはつマネジメント・コンサルティング 萬宮千代:ヨルダン・ハシミテ王国「観光 セクター開発事業 (JO-P11)」中間監理報告書 ,2007 年 2 月 

47) 九州大学 西山徳明:ヨルダン・ハシミテ王国「観光セクター開発事業 (JO-P11)」サルト観 光振興に関する予備調査<報告書> ,2007 年 8 月

48) 村上佳代・西山徳明:萩市における文化資源の発掘と都市遺産概念について - 歴史文化まち づくりにおける文化資源マネジメントに関する研究(その 1), 日本建築学会計画系論文集 , 第 75 巻 , 第 657 号 , 2615-2624, 2010-11

注釈

注 1) 萩旧城下町の大半を占める三角州の範囲の地元での呼称

注 2) 萩市主催、伝統的建造物群保存啓発シンポジウム『21 世紀に伝える歴史のまちなみ・萩再 発見』1999.10.22

注 3) 当該調査は、浜崎地区の伝統的建造物群保存対策調査(九州芸術工科大学:後の九州大学 芸術工学府が担当)に関連して実施された修論研究(文 5)であり、吉村(文 10,11)が、そ の一部の発表を引用して発表しているが、研究そのものは未発表であるため、本論文では共同 研究として扱っている。『萩再発見』の冊子(文 19)や『萩まちじゅう博物館』(文 4)等に引 用掲載されて高い評価を得ている。また建築物調査には東京都立大の 1970 年代の調査(文 8)

を用いている。

注 4) 萩の城下町が完成した江戸期の地図である(文 6,7)の嘉永 2 年(1849)作成絵図を使用。

注 5) 現在のサルト市名称は The Greater Salt Municipality。

注 6) Salt Plan for Action vo.1-3 で、当初は 657 件とされていたが、本調査により、番号が重 複した歴史的建造物が 2 つあることが確認され、659 件と改められた。

注 7) 用途の変化とは、建造物を建設した当初の用途と現在の用途を指す。もし当初と現在の間 に変化があった場合も記録した。

注 8) 1017 件調査を実施したが、SPFA の登録物件である 659 件のうち、20 年の間に 27 件が 消失していた為、990 件が文化資源として把握できる。

注 9) Salt Plan for Action vo.1-3 で、当初は 657 件とされていたが、本調査により、番号が重 複した歴史的建造物が 2 つあることが確認され、659 件と改められた。

注 10) コンクリートで覆われているものは、切石が粗石か判断できないため、数値に含んでいな い。

注 11) サルトでは、建物の躯体を指す大きなアーチ構造を Qantara'ah(カンタラ)と呼んでいる。

専門家によると、カンタラはアラビア語であるが、英語では表現できないということで、本論 文ではカンタラを用いる。窓枠等のその他のアーチ構造はカンタラとは呼ばず、あくまで躯体 を指す。

注 12) クテシャート系部族は、アワームレ系部族から 1866 年頃派生した。もともとアワームレ 系の為、1866 年以前から住んでいる住民も含まれることから表記した。

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